如意輪観音
如意輪観音(にょいりんかんのん、梵: Cintāmaṇicakra[1]、チンターマニチャクラ)は、仏教における信仰対象である菩薩の一尊。観音菩薩の変化身(へんげしん)の一つであり、六観音の一尊に数えられる。
三昧耶形は如意宝珠、紅蓮華。種字はキリーク(ह्रीः、hrīḥ)[2]。
概要[編集]

日本では「如意輪観音菩薩」、「如意輪観世音菩薩」、「大梵深遠観音」などさまざまな呼び方があるが、重要文化財等の指定名称は「如意輪観音」となっている。また「救世菩薩」とも呼ばれる。
如意とは如意宝珠(チンターマニ)、輪とは法輪(チャクラ)の略で、如意宝珠の三昧(定)に住して意のままに説法し、六道の衆生の苦を抜き、世間・出世間の利益を与えることを本意とする。如意宝珠とは全ての願いを叶えるものであり、法輪は元来古代インドの武器であったチャクラムが転じて、煩悩を破壊する仏法の象徴となったものである。六観音の役割では天上界を摂化するという。
像容[編集]
如意輪観音像は、原則として全て坐像または半跏像で、立像はまず見かけない。片膝を立てて座る六臂の像が多いが、これとは全く像容の異なる二臂の半跏像もある。六臂像は6本の手のうちの2本に、尊名の由来である如意宝珠と法輪とを持っている。
日本における如意輪観音の作例のうち、大阪・観心寺本尊像は六臂像の代表作である。6本の手のうち、右第1手は頬に当てて思惟相を示し、右第2手は胸前で如意宝珠、右第3手は外方に垂らして数珠を持つ。一方、左第1手は掌を広げて地に触れ、左第2手は未開敷蓮華(ハスのつぼみ)、左第3手は指先で法輪を支える。西国札所である滋賀県の園城寺(三井寺)、兵庫・神呪寺像、観音堂本尊像、奈良・室生寺本堂像、京都・醍醐寺像などはいずれも観心寺像と同様の六臂像である。
二臂の如意輪観音像として古来著名なものは、滋賀・石山寺の秘仏本尊像である。飛鳥の岡寺の本尊像も二臂である。 法隆寺の隣にある中宮寺の本尊像は、右脚を左膝に乗せ(半跏)、右手を頬に当てて考えるポーズを取る(思惟)、典型的な半跏思惟像である。この像は古来如意輪観音像と称されているが、造像当初の尊名は明らかでなく、弥勒菩薩像として造られた可能性が高い。
なお近世、十九夜講の信仰の対象となっている。
真言[編集]


如意輪観音を祀る寺院の例[編集]
- 石山寺 - 滋賀県大津市
- 園城寺 - 滋賀県大津市
- 観心寺 - 大阪府河内長野市
- 神呪寺 - 兵庫県西宮市
- 明王寺 - 兵庫県神戸市
- 圓教寺‐兵庫県姫路市
- 岡寺 - 奈良県明日香村
- 中宮寺 - 奈良県生駒郡斑鳩町
- 頂法寺(六角堂) - 京都市
- 橘寺 - 奈良県明日香村
- 青岸渡寺 - 和歌山県那智勝浦町
- 如意尼(真名井御前 - 如意輪観音に帰依して、六甲山系甲山に如意輪観音を祀る神呪寺を創建した。
- 護国寺 - 東京都文京区
- 清法寺-埼玉県鴻巣市
- 妙音院‐千葉県館山市
- 隨心院‐京都市山科区
- 願徳寺‐京都市西京区
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
参考文献[編集]
- 伊藤丈『七観音経典集』大法輪閣(2005年)
- 松原泰道『観音菩薩』集英社(1987年)
- 羽田守快 『あなたを幸せにみちびく 観音さま ―その教えと信仰の秘訣―』大法輪閣、2014年。ISBN 978-4804613611。