女性ジャーナリストレイプ事件

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女性ジャーナリストレイプ容疑告発事件(じょせいジャーナリストレイプようぎこくはつじけん)は、2017年、フリージャーナリスト伊藤詩織(当時28歳)が、その著書『Blackbox』を出版し、嘗て自らが受けた強姦被害を告発した事件。当時は声を上げるのが難しいとされていた性暴力被害の勇気ある告発として話題になり海外のメディアでも連日取り上げられる等、一大ムーブメントを巻き起こした社会現象となった。

概要[編集]

事件の真相が明らかになっておらず、裁判も係争中で結論が出ていないため事件名は特に決まってはいないが、ここでは便宜上、このように扱う。また著名人等を含め、事件に関わった或いは巻き込まれ、当事者又は関係者、及びその取り巻きとして既に名前がテレビやネットの公共メディアで大々的に報道されてしまっている一部の者については既出の情報として実名で記す。

また、伊藤自身は著書も含め同意なき性行為があったと主張しているが、準強姦に関しては山口の不起訴が確定しており、情報の少なさ故に不可解な点も数多くある点や、伊藤が提訴した複数の訴訟について、現在も審理中で未だ判決が確定していない事を鑑み、レイプ「容疑」告発事件とする。

事件の発端[編集]

2017年、それまで無名だったフリージャーナリストの女性が1冊の本を出版した。『BlackBox』というタイトルのその著書は、著者自身が2015年に受けた強姦被害の内容を告発するものだった。この本は伊藤詩織という名義で出版されており、後に伊藤に対し強姦を行ったとされた人物は当時TBSワシントン支局長だった山口敬之(当時49歳)だったと判明しているが、山口はほぼ全面的に否定しており、強姦とまでは行かずとも多少の性行為には及んだが、全ては両者の合意の上であったと主張している。伊藤は出版の後、刑事訴訟し検察審査会への再審理まで持ち込まれたが決定的な証拠が見つかるには至らず山口は嫌疑不十分で不起訴となった。その後、伊藤は民事訴訟も起こし、一審で勝訴したが山口はすぐに控訴、その上で名誉棄損や虚偽告訴等により伊藤に対して反訴するなどして泥沼化し、後に伊藤はこの事件に対しSNS等で自身を中傷した者に対しても法的な措置を講じるとして提訴した事で益々混迷を極め、2022年控訴審判決がでて、伊藤側の主張が概ね認められることになったが、デートレイブドラッグに関しては伊藤側が名誉毀損しているという判決で損害賠償請求がなされた。

二人ともこの判決に対しては不服として、上告した。

背景[編集]

伊藤の著書『BlackBox』に依れば、自身がニューヨークの大学に留学していた2013年(地裁資料によれば12月)、当時アルバイトをしていたピアノバーに当時TBSのワシントン支局長だった山口敬之が知人の誘われて訪れた。当時、大学でジャーナリストと写真を専攻していた伊藤は将来的に世界的なジャーナリストとしての活躍を夢見ており、また、嘗て外国特派員としてエコノミストやアルジャジーラでジャーナリストとしての現地取材経験があった事からメディア関係の就職を考えていた。 アメリカでの伝手は殆どない中で山口と知り合った伊藤は、山口に就職相談した。しかしその後の経緯から伊藤はこの時点ではまだ就労VISAを取得していなかったと思われ、学生VISAで入国したとも考えられるが、学生VISAの場合、大抵は深夜の風俗営業等は出来ない規定となっており、学生で就労VISAもない伊藤がどうやってピアノバーに入ったのかは不明でありこのあたりの経緯は伊藤の著書にも書かれていない。一方で日本はESTA参加国であるが、ESTAで就労出来るのかは不明である。 その直後、伊藤は金銭的理由から一時フィレンツェの学校で単位をとるためにイタリアにむかった。次にニューヨークに戻ったのは、2014年9月頃。ここで伊藤は山口に日本テレビのインターンを紹介してもらっている。ただしこの時二人は会っていない。

2014年12月にはさらに金銭的困窮が続き、親から呼び戻されて、2015年1月には日本に帰国している。同年2月から伊藤はTBS本社近くのロイター日本支社の事務所でインターンをし、再び3月に山口にワシントンでの就職相談を持ち掛けた。山口は伊藤のメール直後に文春記事の件で日本の本社に呼び出され、一時帰国することになった。それで行きつけの居酒屋で待ち合わせ、その後近くの寿司屋に移動した。

文春の記事がベトナムの韓国軍慰安所の記事であったこと、この記事が出る前日に伊藤が「東京」でお会いできたらうれしいという内容のメールを出していること、直後に山口がTBS東京本社に呼び出されていること、伊藤の裁判支援団体が韓国の慰安婦問題と深くかかわっていたため、伊藤の行動に様々な疑問を持つ声もある[誰によって?]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

伊藤によると寿司屋のトイレで席を外した隙に山口からいわゆる「ディープレイプドラッグ」と呼ばれる薬物を酒に入れられたと主張。二度目のトイレでトイレタンクに頭をもたせかけてから、下腹部の痛みで目が覚めるまでの記憶がなく、痛みで目が覚めた時には山口がまたがって性行為を行っていたという。(しかし、この寿司屋のトイレにはトイレタンクはなかったことが控訴審中に発覚した。) 伊藤はホテルで部屋内にあったバスルームに逃げ込み、鍵を閉めた。その際に男性用のアニメティーが置いてあるのを覚えており、それを見て山口の取った部屋にいると気付き、鏡を見たら全裸にされていて体に傷がついており出血もあった事から、山口に裏切られ強姦目的で部屋に無理矢理連れ込まれた上で服を剝ぎ取られたと確信したとしている。

4月9日に警察に行き被害を訴え、4月30日になって準強姦罪で警視庁へ被害届を出した。 しかしこの店の店員からは伊藤自身が自ら手酌で酒を呑んでいたとの証言が出ており、山口の主張によれば伊藤が1人で酒を次々と注文し勝手に泥酔した挙句、店の中を徘徊して他の客に絡み始めてしまった為に手に負えなくなり、仕方なく伊藤の酔いが醒める迄、偶然に同席していた馴染みの常連客と話し込んでいたという。ちなみにこの動画内にて、山口が話していた相手はタレントのさかなクンだった事を山口自らが公表しており、さかなクンもこの店の常連客だった様である。また山口は後に、居酒屋での酒宴の後、伊藤をホテルに連れ込み少々の性行為を行った事実を認めたが、それに関しては両者の合意があった上での事だったと証言している。更に伊藤の著書によるとこの時の酒の席では山口からVISA取得に関する話はなかったとしているが、居酒屋の店員から伊藤が山口に対し早急にVISA取得を斡旋して貰える様しきりに懇願していた旨を証言しているとされている。店員によると何度も「VISA」という言葉が聞こえたとの事。

また山口がこの時選んだホテルもまた自身が行きつけにしているホテルで、フロアの構造について山口は熟知しており支配人や従業員とも顔馴染みだったとされている。その上で、居酒屋からホテルに行く際タクシーを利用した事が判明しており、後に伊藤はホテル前で、酩酊していた自分を山口がタクシーから引きずり降ろそうとしたと主張しており、これについては当時、その場で目撃したとされるドアマンも同様の証言をしている。 タクシーの件について山口は、ホテルに行くのを嫌がり中々降りない伊藤に対し早く降りるよう促したが無理矢理引っ張り出したりはしていないとしている。両名がタクシーに乗車していたのはそのタクシーの運転手が覚えていたらしい。山口によると最初は駅まで送ろうとしていたが、泥酔した伊藤がタクシーの中で嘔吐してしまい、回復するまでどこかで休ませた方が良いと判断し、急遽ホテルにしたとの事。

以上の様な経緯を、2017年になってから伊藤が自著『BlackBox』にて告発し、性暴力被害者として山口を提訴し事件が発覚した。

経過[編集]

先の伊藤による被害届の提出を受けた東京地検は捜査に乗り出したが、ポリグラフでは山口はシロ、デートレイブドラッグの証拠はなく、2016年7月に嫌疑不十分で山口を不起訴相当とした。伊藤はそれを不服とし検察審査会に審査を申し立てたものの、2017年9月に東京第6検察審査会は不起訴を覆すだけの理由がないとしてやはり不起訴相当とした。 この議決も不服とした伊藤は2017年9月28日、山口に対して「望まない性行為で精神的苦痛を受けた」と主張して1100万円の損害賠償を求め民事訴訟を起こした。この直後に告発本『Blackbox』を出版している。出版にあたり伊藤は日本外国特派員協会で会見を行った。この告発に対して賛否両論巻き起こった。

この間、2015年6月に山口に対して逮捕状が請求さたとされているが、執行されないまま返納されている、伊藤は自身の著書で「上からの圧力があったから止むを得ない」と捜査員から聞かされたと証言しており、後のインタビューでは「山口氏が安倍首相(当時)に非常に近しい存在だった為にその方面から圧力がかかったんじゃないかと思う」旨の発言をしている。この件に関しては後に警視庁刑事部長(当時)だった中村格が逮捕状の執行を止めたのは自分の判断だと認めたものの、圧力については否定している。また伊藤は同著内で、この際に山口が間もなく逮捕される旨、事前に捜査員から連絡があったとしている。

告発された山口は10月26日発売の月刊誌『Hanada』誌上にて手記「私を訴えた伊藤詩織さんへ」を発表して伊藤の主張を全面的に否定し、2月に「伊藤さんの記者会見での発言などで社会的信用を奪われた」と主張して慰謝料1億3000万円と謝罪広告の掲載を求めて反訴した。審理の末、2019年12月18日に伊藤の請求を認めて330万円の支払いを山口に命じ、山口の反訴は「名誉毀損には当たらない」と請求を棄却し一審は伊藤の勝訴となった。判決後、「なぜ伊藤さんがこれだけの嘘を言っているか分かりません」とコメントしたとされる山口は2020年1月6日に地裁判決を不服として東京高等裁判所控訴した。また山口は控訴直前の2019年12月20日に虚偽告訴罪(虚偽告訴等罪)と名誉毀損罪の容疑で伊藤を告訴した告訴状が警察に受理されたと発表している。2020年9月、これにより伊藤がこの件で捜査を受けた事を自身のFacebookにて明かしている。尚、伊藤はこの裁判に際し、山口に抵抗した際に負傷した膝を治療する為に病院で治療を行っていたとして診断書を提出した。伊藤は膝がズレていると言われたと著書に書いているが、診断書は膝内障、挫傷を示すのみで、しかもカルテには本人が事件前に仕事で受傷したのではないかと話していたことが記載されていたという。さらにホテルから退出するときの伊藤の映像がネット上に流出し、しっかりと早足で歩行していたため、膝の受傷が山口と会ったときのものか疑う向きもある[要出典]

また伊藤は自らの著書内で山口から性的暴行を受け、逃げようとして抵抗した際に膝を負傷しまた傷も負ったとしており、これが事実なら山口は強姦罪だけでなく傷害罪や暴行罪にも問われた可能性があったが、伊藤が山口に対して刑事告訴した際は一貫して準強姦罪のみを主張していた。尚、準強姦罪については不起訴となっている為、一事不再理の原則から山口の無罪が確定しているが、傷害罪ないしは暴行罪についてはまだ争われていない。

刑事裁判で不起訴になった事で山口は、この件については沈黙を守っていたが、刑事訴訟での不起訴を不服とした伊藤が民事訴訟に踏み切ると、山口は突如として沈黙を破った。月刊誌『Hanada』誌上に寄せた「【独占手記】私を訴えた伊藤詩織さんへ」では「もしあなたが民事訴訟に打って出なければ、私はこれ以上の議論をしないつもりでいました。それは、これまで沈黙を守ってきた判断と同様に、傷ついているように見えるあなたがさらに傷つく危険性があると判断したからです。しかし、あなたがあえて「不法行為があった」との主張を民事訴訟の場で繰り返すのであれば、無関係な他者を巻き込んで騒動を継続しようとするならば、私は自らの主張の中身を公表せざるを得ません。それは「あなたの主張が事実と異なっている」ことを示すことを一義的な目的としますが、そのために「全く根拠がないことを事実だと思い込むあなた特有の傾向」まで指摘することになります。残念ですが、あなたが選んだ道ですから、冷静かつ論理的に、私の主張の一部をここに示すこととします」と述べている。

反響[編集]

この事件が与えた社会的影響は大きく、これまで性暴力で声を上げる事は難しかった中での勇気ある告発として世界中で称賛された。これに対し#Me too運動が起こったり、海外メディアでも取り上げられるなどして大きな反響を呼んだ。

しかしその一方で一部不可解な点もあったとされ、漫画家はすみとしこが自身のTwitterに数回に渡って伊藤の枕営業を匂わせる風刺漫画を投稿する、自民党の衆議院議員杉田水脈が伊藤に対する中傷に対していいね!ボタンを押す、元東京大学特任教授で現在は株式会社Daisy代表取締役CEOの大澤昇平が自身のTwitterにて伊藤に対して「ねつ造」などの否定的な投稿を行うなどしており賛否両論が巻き起こった。この3名は後に伊藤から名誉棄損で訴えられており2021年現在は係争中。裁判記録に依ると3名共に争う姿勢を示している。

他に2021年3月31日には愛知県弁護士会所属の弁護士北口雅章が、自身のブログにて伊藤の告発当初に伊藤を侮辱したとして愛知県弁護士会から戒告処分を受けている。北口は伊藤の著書『BlackBox』に対し、出版当初から「捏造」「妄想」「虚構」などとブログに書き込んでいたとされており、伊藤が山口に対し民事訴訟を起こした際、山口は北口を代理人として立てていた。伊藤は提訴に際し、「SNS等における誹謗中傷やセカンドレイプに対しては法的措置を講じる」と公言していた。

この事件以降、伊藤は「世界で最も影響を与えた女性100人」にも選ばれており、各地で性暴力の被害について考えるシンポジウムに等が数多く開かれるようになった。伊藤も度々招かれ、被害者として講演を行う等している。

脚注[編集]

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