コンテンツにスキップ

奇跡の人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1960年の公演。アン・バンクロフトパティ・デューク

奇跡の人』(きせきのひと、The Miracle Worker)は、ヘレン・ケラーの家庭教師を務めたアニー・サリバンを描いた、ウィリアム・ギブソン同名のSF作家とは別人)による戯曲である。アン・バンクロフトタイトル・ロールであるアニー・サリバン)とパティ・デューク(ヘレン・ケラー)が演じて1959年に初演された。

この『奇跡の人』はアン・サリヴァンの記録をもとに書かれたものである[注 1]が、有名な井戸水を手にかけて「ウォーター」という言葉を理解し発した、というエピソードはこの戯曲における創作である(実際にはサリバンの著作では、ケラーはこの時"water"と綴っている。ケラーが発声できるようになるのはもっと後のことである)。

オリジナルのアメリカ舞台

[編集]

映画

[編集]

舞台で好評を博したため、3年後には同じキャストで映画化された。1980年にはヘレン・ケラー役のパティ・デュークが、アニー・ サリバン役でテレビ映画化されている。

日本での公演

[編集]
1964年8月29日から『奇跡の人』が有楽町の芸術座で上演された。公演に先立ち、有馬稲子(アン・サリヴァン役)と湯浅恵子(ヘレン・ケラー役)は、ヘレン・ケラーの生家の面影があるとされる駐日タイ王国大使館でプロモーション用の撮影を行った[1]。写真は左から、演出の松山善三、湯浅、有馬。

日本での公演は、近年では額田やえ子の翻訳版がテキストとして使われている。アマチュアにおいても多く演じられている。歴代の主演者の内、鈴木杏高畑充希はヘレン役とサリバン役の双方を演じている。

  • 鈴木:ヘレン・ケラー(2003年)→アニー・サリバン(2009年)
  • 高畑:ヘレン・ケラー(2009・14年)→アニー・サリバン(2019・22年)
場所 演出 アニー・サリバン 役 ヘレン・ケラー 役 備考等
1964年 芸術座 菊田一夫 有馬稲子 湯浅恵子 翻訳
小津次郎
1965年 名鉄ホール
1979年 芸術座 伊藤俊也 市原悦子 荻野目慶子[2][3]
1986年 日生劇場 大竹しのぶ 安孫子里香
1987年 荻野目慶子
1992年 東京芸術劇場中ホール テリー・シュライバー 中嶋朋子
1994年 シアターサンモール 野伏翔 石村とも子 鈴木奈央
1997年 Bunkamuraシアターコクーン マイケル・ブルーム 大竹しのぶ 寺島しのぶ
2000年 鈴木裕美 菅野美穂
2003年3月 - 4月 鈴木杏
2003年4月 近鉄劇場
2006年 青山劇場ほか 田畑智子 石原さとみ [4]
2009年 Bunkamuraシアターコクーンほか 鈴木杏 高畑充希
2011年8月 ダイジョースタジオ Dスタジオ  – 平田愛咲
岡井結花
※ダブル・キャスト
上白石萌音[注 2][5][6]
2014年 天王洲 銀河劇場ほか 森新太郎 木南晴夏 高畑充希 [7]
2019年 東京芸術劇場ほか 高畑充希 鈴木梨央 [8]
2022年 東京芸術劇場プレイハウス 平祐奈 [9]

その他、漫画『ガラスの仮面』でも劇中劇として利用されており、『奇跡の人』のシーンがテレビアニメ、ドラマ化され放映されている。2010年には、この漫画版を原作として音楽劇『ガラスの仮面〜二人のヘレン〜』が公演されている。

  • 音楽劇『ガラスの仮面〜二人のヘレン〜』 2010年 彩の国さいたま芸術劇場大ホール 他

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ クレジットには書いてないが、英語版ウィキペディアほかはすべてヘレン・ケラーの『自伝』(en:The Story of My Life (biography))に基づいているとなっている。(フランス語版、ロシア語版、アルメニア語版はそうでもない)
  2. ^ 芸能関係者や少数の一般客を対象とした試演会であり、商業目的の公演ではない。プロフィール上の初舞台はミュージカル『王様と私』とされている。

出典

[編集]
  1. ^ 『映画情報』1964年8月号、国際情報社。
  2. ^ 樋口尚文「昭和」の子役: もうひとつの日本映画史国書刊行会、2017年8月、367頁。ISBN 978-4-336-06198-0https://books.google.com/books?id=QRW1tAEACAAJ 
  3. ^ 伊藤俊也監督インタビュー2018”. アクターズ・ヴィジョン (2018年11月13日). 2019年5月27日閲覧。 “1979年に市原悦子さんのサリヴァン先生で「奇跡の人」の演出を芸術座でやっているのですが、ヘレン・ケラー役の少女をこれも児童劇団でオーディションをして。(中略)それらしい子がいると言って連れて来たのが14歳の荻野目慶子だったんです。”
  4. ^ 石原さとみ田畑智子石原さとみ、田畑智子インタビュー掲載!!『奇跡の人』特集」『e+ Theatrix!』(インタビュー)(インタビュアー:田中里津子)、イープラス。2006年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年11月13日閲覧
  5. ^ “TMA-Extra 「奇跡の人」”. 箕輪菜穂江公式ブログ はなつづり。。。。. (2011年7月22日). オリジナルの2017年3月31日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170331210702/http://ameblo.jp/yellowbrickroad/entry-10961191246.html 2019年4月24日閲覧。 
  6. ^ “9月☆”. 木内健人オフィシャルブログ. (2011年9月4日). http://ameblo.jp/nb-kinouchikento/entry-11007524385.html 2017年3月31日閲覧。 
  7. ^ 高畑充希高畑充希が『奇跡の人』で5年ぶりの再演!ヘレンに再び挑む!!」『Walkerplus+』(インタビュー)、KADOKAWA、2014年7月26日。2024年11月3日閲覧
  8. ^ “ヘレン・ケラー演じた高畑充希が念願サリバン先生役”. 日刊スポーツ. (2018年10月29日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201810280001008.html 2018年10月29日閲覧。 
  9. ^ “高畑充希、舞台初出演の平祐奈と奇跡呼ぶタッグ「最後には光をつかめる作品」”. Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2021年11月30日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2021/11/30/kiji/20211130s00041000090000c.html 2021年11月30日閲覧。 

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]