天草大王

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復元された天草大王

天草大王(あまくさだいおう)は、熊本県内でのみ飼育生産されている日本最大級の肉用地鶏

概要[編集]

天草大王は明治中期に熊本県天草地方で作出され、その巨躯と肉質のよさが珍重されたが昭和に入って絶滅。残された1枚の油絵と僅かな文献を基に復元された「原種天草大王」を利用して2000年(平成12年)に開発された肉用の大型2004年地鶏と認定され、熊本県下はもとより博多大阪東京にも出荷されている。

歴史[編集]

江戸時代から昭和にかけて肥後(現在の熊本県)には、「肥後ちゃぼ」、「九連子鶏(くれこどり)」、「熊本種」、「地すり」、「天草大王」という5種類の地鶏がいた(現在では「肥後六花」にちなんで「肥後五鶏」と呼ばれている)。ところがいずれの種も大正末期から昭和初期にかけて衰退の一途をたどり、中でも天草大王は世界的にも稀な大型肉用鶏として、その肉質のよさから博多名物の水炊きに欠かせないと珍重されていたが絶滅してしまい、残っていたのは、雌雄の堂々たる雄姿を描いた1枚の油絵と僅かな文献だけだった。その文献には「天草大王は明治中期頃、中国から長崎・島原経由で輸入されたランシャン種を基に、天草地方で肉用に適すように極めて大型に改良されたもので、大型の雄は背丈が90センチ、体重が一貫七百匁~一貫八百匁(6,375 - 6,750g)に達した」とあった。

熊本県農業研究センター(旧熊本県畜産試験場)は、1976年から肥後五鶏の改良・復元を開始したが、天草大王はすでに1羽も生存せず、基礎鶏であるランシャン種が中国から輸入できないため一時、復元は不可能と考えられた。しかし、アメリカでランシャン種が飼育されていることがわかり、1992年に輸入。これにシャモ(軍鶏)と熊本コーチンを交配させた後、7世代にわたり選抜淘汰を繰り返すことによって遂に復元に成功した(2000年)。復元された天草大王は姿形、羽色、鶏冠ともに絵画そのままで、成長した最大の雄は体重約7.5kgと文献を超える大きさに達した。

同センターでは天草大王の復元と並行して、これを利用した肉用鶏の開発を進め、天草大王に九州ロードを交配させることによって、産卵性、産肉性に富んだ肉用天草大王を作出した。復元された天草大王は「原種天草大王」、肉用天草大王は「天草大王」と呼び、天草大王は2004年3月に特定JAS法により地鶏の認定を受けた。

「原種天草大王」の特徴[編集]

  • 鶏冠は単冠、羽色は濃猩猩色、耳朶は鮮赤色。
  • 体型はランシャン種に酷似し、脚が長く胴が詰まっており、尾の角度が高い。
  • 雄の平均体重は6.7kg、雌は5.7kg。

天草大王の肉質[編集]

  • 一般的に鶏肉は成長するに従って、その鶏独特の風味、こくを増すが硬くなる。若いと肉質は柔らかいが風味、こくに欠ける。
  • 通常、大量生産されるブロイラーは生後51日で出荷されるが、地鶏はJAS法によって80日以上の飼育が定められており、天草大王は日齢100~130日で出荷されている。
  • 鶏肉の風味は飼料に影響されるため、天草大王の飼育にあたっては特定の配合飼料が使われている。
  • 天草大王の肉質はブロイラーと比べると硬い。

参考文献[編集]

  • 『肥後五鶏の復元並びに保存に関する研究』松崎正治
  • 『熊本県のニワトリ遺伝資源』松崎正治、山下裕昭
  • 『その後の「天草大王」』肥後ちゃぼ37号、松崎正治
  • 『天草大王の復元とその利用』熊本県畜産広場、松崎正治・山下裕昭・高橋敏則

関連項目[編集]

外部リンク[編集]