天地明察

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天地明察
著者 冲方丁
発行日 2009年11月30日
発行元 角川書店
ジャンル 時代小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判
公式サイト 天地明察
コード ISBN 978-4-04-874013-5
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天地明察』(てんちめいさつ)は、冲方丁による日本時代小説である。『野性時代』(角川書店)にて、2009年1月号から7月号まで連載された。第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞し,第143回直木賞の候補となった。2012年には映画化された。

江戸時代前期の囲碁棋士天文暦学者渋川春海の生涯を描く。

受賞歴[編集]

漫画[編集]

槇えびし作画で『月刊アフタヌーン』にて2011年6月号から2015年12月号まで連載された。

書誌情報[編集]

  1. 2011年9月23日発行、ISBN 978-4-06-310778-4
  2. 2012年3月23日発行、ISBN 978-4-06-387814-1
  3. 2012年8月23日発行、ISBN 978-4-06-387836-3
  4. 2013年3月22日発行、ISBN 978-4-06-387874-5
  5. 2013年9月20日発行、ISBN 978-4-06-387920-9
  6. 2014年3月20日発行、ISBN 978-4-06-387966-7
  7. 2014年10月23日発行、ISBN 978-4-06-388002-1
  8. 2015年5月22日発行、ISBN 978-4-06-388057-1
  9. 2015年12月22日発行、ISBN 978-4-06-388105-9

映画[編集]

天地明察
監督 滝田洋二郎
脚本 加藤正人
滝田洋二郎
原作 冲方丁
出演者 岡田准一
宮崎あおい
佐藤隆太
市川猿之助
横山裕
笹野高史
岸部一徳
渡辺大
白井晃
市川染五郎
中井貴一
松本幸四郎
音楽 久石譲
撮影 浜田毅
編集 上野聡一
製作会社 『天地明察』製作委員会
配給 角川映画/松竹
公開 日本の旗 2012年9月15日
上映時間 141分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 9億1000万円[3]
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監督は『おくりびと』の滝田洋二郎2012年9月15日公開。主演はV6岡田准一。岡田は以前ラジオ番組で冲方と対談したことがあり、そのときに原作を読んでいた。

映画の内容は、山崎闇斎が、改暦作業に渋川春海の後見として積極的な役割を果たし、反対派の襲撃を受けて死亡するなど、原作・史実と異なる点があり、このことはエンディングロールのあとで断られている。

映画版あらすじ[編集]

まだコペルニクス地動説が知られていなかった時代の日本に、天体の運行を観察し日本独自の正しい暦を作り出そうと試みた一人の男がいた…。
時は江戸。4代将軍徳川家綱の治世。一介の棋士(囲碁)ながら会津藩主にして将軍後見役保科正之に目を掛けられる安井算哲(後の渋川春海)は天文・数学にも深い興味を示す好奇心旺盛な男。上覧碁(将軍の前で碁を打つ)を翌日に控えた算哲は会津江戸藩邸の屋根に登り星を眺めていた。親しい会津藩士安藤有益から金王八幡宮に新たな和算の設問が奉納されたと聞いた算哲は居ても立ってもいられず、翌日早朝に参詣する。そこで早速問題に取りかかろうとするのを掃除をしていたえんという若い女性に見咎められる。登城の刻限が迫り、算哲は急いで神社を飛び出すが大事な棋譜を忘れてしまう。算哲が慌てて取りに戻ると棋譜に気づいたえんが持っていた。ふと設問の書かれた絵馬に目をやると算哲が解こうとした設問には全て答えが記され、新たな設問が奉納されていた。えんの目の前で一瞥しただけで解いた人物・・・このとき算哲は関孝和の事を知る。
遅刻して登城した算哲は対戦相手となる旧知の本因坊道策から真剣碁を持ちかけられる。かねてから将軍に碁の本当の面白さを伝えたいと考えていた二人はそれぞれの師からあらかじめ指示されていた打ち筋を外れ、算哲は初手天元(碁盤の中央)という奇手を打つ。このことで立ち会いの幕臣たちは色めき立つが家綱は面白いと承知。道策と算哲の真剣な対局に家綱は身を乗り出して観戦していたが蝕(日蝕。古来凶兆の前触れとして忌まれた)が発生したとの報告が入り、城中の儀式は全て取りやめとなり、算哲と道策の勝負も水入りとなってしまう。それぞれの師にこっぴどく叱られる二人だったが、算哲は正之に呼び出される。正之は初手天元の真意を尋ねた後、「半月後から日本各地で北極星の位置を確認せよ」(北極出地)という命令を与える。その遂行に当たって刀を下賜される。つまりは武士として職務に当たれという命令であり、これは幕府の正式な事業であった。
関孝和に会いたいと考えた算哲は手がかりとなる村瀬塾という和算塾を訪ねるが、そこでえんと思いがけぬ再会を果たす。塾長・村瀬義益の妹だというえん。義益が関の書いた本を見せると算哲は食事も忘れて夢中になる。算哲は関に挑戦するため関の難問を解いた上、自身の設問を掲げる。算哲は関から解答があったら預かって欲しいとえんに頼む。算哲とえんは互いにほのかな恋心を抱くのだった。一方、道策は師の制裁で公開の場での対局を禁じられていた。算哲が公務を果たした暁には封じ手とした上覧碁の続きを対局することを約束する。
北極出地の一行は雪の舞い散る中、江戸を出立する。気のいい上役の建部伝内伊藤重孝に気に入られた算哲は小田原での観測において二人が歩測と方角を元にした計算から角度を割り出し競っていることを知らされ、この競争に参加することになる。熱田での観測において算哲は完璧な解答を出して建部、伊藤を驚かせる。幼少期から高名な山崎闇斎に師事して北極星を観察してきた算哲はそのことを語り、算術については独学で学んだと語る一方で関の本を二人に差し出す。すると建部、伊藤共に夢中になり、関に弟子入りしたいと言い出す。その発想はなかったと算哲は語り、関の設問を解き、自らの設問を置いてきたと語る。だが、算哲の設問を二人が計算したところ答えが無数に存在する「誤問」だと指摘され、算哲は酷く恥じ入り落ち込み。そのことをえんに手紙で伝える。だが、設問を見た関は美しいと賞賛していた。出地一行が宿泊まりをしていると小者の弥吉が月が欠けている(月食)と知らせる。だが、あらゆる暦を確認してもその日の月食について予見したものはなかった。建部と伊藤は日本国内のすべての暦の元となっているのは800年前のから伝わった宣明暦であり、年月を経てズレが生じているのだと指摘する。だが、暦の変更(改暦)については朝廷が拒み続けていたのだった。
北極出地は過酷を極め、行程には大幅な遅れが生じる。そして旅の最中、年配の建部は健康を害してしまう。病床にて建部は天の理を解き明かし我が二腕にて抱いて三途の川を渡るという大望を語る。出地一行と銚子で落ち合う約束していた建部だが身罷ってしまう。算哲は建部の遺志を継ぐことを誓う。
ようやく北極出地を終え、設問を手に村瀬塾を訪ねた算哲だったがえんは既に嫁いでしまっていた。藩邸にいた算哲は水戸光圀に呼び出される。北極出地について語った算哲は暦のズレが2日にもなろうとしていることを報告する。光圀は朝廷の公家衆が既得利権のために暦を独占していると語る。だが、公家の中にも算哲の同門で闇斎を師とする土御門泰福のようにそれで良いと思っていない者もいた。
正之に呼び出された算哲は正之の悲願である改暦について光圀、建部、伊藤、安藤そして恩師・闇斎からの推挙により責任者に任じられる。「天を相手に真剣勝負を見せよ」という正之の言葉に算哲は「御意」と答えるのだった。こうして幕府の威信をかけた一大事業が始まる。だが、暦を巡る戦いは熾烈を極め、算哲は幾度となく苦境に立たされるのだった・・・。
これは江戸初期に実在した暦の改革者・安井算哲、和算を完成させた不遇の算術家・関孝和、史上最強の棋士・本因坊道策という「知の巨人」と言うべき男たちと、江戸幕府の黎明期を支えた保科正之、水戸光圀といった偉大な名君たちの物語である。

登場人物とキャスト[編集]

※実在の人物に関してはリンク先を参照。ここでは簡単に人となりだけを記す。

主人公。博識にして探究心、好奇心の強い男。人柄は謙虚。囲碁は得意だがあまり好きではない。正之の命令で士分となるが刀を置き忘れてしまうほど自覚に乏しい。天文には詳しいが魚の名前には無頓着。苦心の末に『大和暦』(貞享暦)への改暦に成功する。作中は安井算哲を通し、本作では改暦の功をもって渋川春海と改名したとされる。妻えんとは同日に他界したとされる。本作での言及はないがこの人物は二世安井算哲。実父は初代安井算哲。実弟は三世安井算知。
武家嫌いで縁談を断り続けた美女。あまりにも断りすぎていたせいで金王八幡宮に行儀見習いに出されてしまい、そこで算哲と知り合った。家の事情で嫁いだものの離縁。算哲に半年、三年と待たされた末に再嫁した。
和算の私塾を構える温和で気のいいえんの兄。算哲の人柄を気に入り、妹の婿にしても良いと考えている。その後も算哲の理解者として支える。
長屋で貧乏暮らしをしながら和算の研究に没頭する孤高の算術家。後世の評価が嘘のように恵まれず報われない暮らしぶりをしている。存在は冒頭から示唆されているが算哲と対面を果たすのは劇中終盤。無役ながらプライドは高く、幕府に買われる算哲に対しては愛憎入り交じった複雑な心情を吐露する。
二代水戸藩主。珍しい物好きで学問にも理解がある名君。『水戸黄門漫遊記』があまりにも有名でそのイメージが強いが大日本史の編纂に心血を注いだ勤王の士。水戸藩の勤王の士風は彼が確立したと言っても良い。若い頃は辻斬りをしていたこともあって血の気の多い人物。算哲の良き理解者の一人。

会津藩保科家

二代将軍秀忠の庶子で家光の異母弟。初代会津藩主。通称は『会津中将』。徳川連枝ながら養家への恩義から終生『保科姓』を名乗り続ける[注 2]。兄、家光の死後も家綱の後見役として江戸幕府黎明期を支えた名君。ことに神田上水を整備し、江戸の治水には多大な成果を残した。彼の遺訓[注 3]が会津藩の佐幕の士風を確立した。算哲にとっては光圀と並ぶ、理解者であり最大の支援者。
会津藩士。正之の忠臣。算哲とは馴染みでなにかと世話を焼く。観測所が襲撃された際には獅子奮迅の働きを見せる。
当代随一の天文学者で神道家。大役を請け負った愛弟子を支援する。本作中では襲撃者から算哲を庇い亡くなる。

北極出地隊

北極出地隊隊長。向学心が強く気の良い老人。下記の平助を拾って育てるなど奇特な人物。若い算哲の才を見出して側に置き、北極出地を旅するが過酷な旅で健康を損ねて離脱。再会と合流を約束するも無念の病死を遂げる。その死は算哲に大きな影響を与えた。
相役の建部とは仲が良い反面、良きライバルでもある。建部の離脱後は出地隊を率いる。銚子にて建部の死を算哲に伝えた。
無口で怪力が自慢の男。建部に拾われ育てられた恩義から、甲斐甲斐しく支える。建部の死後は算哲の改暦事業に協力した。
口が軽くお調子者の小者。北極出地が縁となり平助同様に算哲を支える。

幕府

家光の嫡子。幼少にして将軍職を継承し、治政の前半期は由井正雪の乱など不穏な事態も発生するが後見役の正之が主導した外様大名への配慮策を容れ、武断政治から文治政治への大転換を成し遂げた隠れた名君。父の遺臣とその後も相次いで登壇した優秀な人材に支えられ幕府の安定に貢献する。だが、男子には恵まれず将軍家直系の血筋は彼の代で絶える。
家康譜代の忠臣酒井忠世の孫。家光が家綱に遺した『寛永の遺臣』の一人。後の大老。家綱を傀儡に権勢を恣にした『下馬将軍』として悪名名高い。本作ではそうした描写はない。
後の大老。前述の忠清とは家綱の死後対立し、綱吉を擁立した。だが生類憐れみの令を巡って謀殺されたともされる人物。本作ではそうした描写はない。 
春日局稲葉正成の孫。家綱の治政を支えた幕閣の一人。

朝廷

陰陽頭。算哲と幕府が行おうとする改暦事業を快く思わず様々な妨害工作を加える公家のリーダー格。算哲が『大和暦』を上奏すると明の『大統暦』の採用を上奏し、闇に葬ろうとするなど、本作中では悪辣とした姿が描かれた。
友麿に迎合する公家衆。
平安期から続く陰陽師。闇斎の門下生であり、改暦推進派。本作では宮廷内で孤立するも同門の算哲を支持し『大和暦』(貞享暦)への改暦を上奏した。

囲碁関係

江戸初期の天才的碁士。師・道悦の後継者ではないが当代最強を謳われる算哲のライバル。幕末の本因坊秀策と並び、『史上最強の棋士』として名を挙げる者が多い。先番無敗(先手の黒石を握ったら負けたことがない)という伝説を打ち立てる。算哲との棋譜も多く遺している。
道策の師。上覧碁での道策・算哲の真剣碁を諫めるが、後に算知と囲碁日本最強の座を賭けて六十番勝負を戦った。更に道策からも挑まれる。
通称『名人算知』。算哲の師匠筋。前述の道悦の師本因坊算悦と六番勝負を戦い引き分けた。これが争碁の始まり。その後、第三世名人となり、これを不服とした本因坊道悦と六十番勝負を争う。実際には初代安井算哲が嫡子幼少のため養子とした安井算知に名跡を継がせたが、後に初代算哲の実子である二世安井算哲(本作の主人公)、三世安井算知(算哲の実弟)が台頭した。つまり、算哲とは直接の師弟関係はない。

スタッフ[編集]

受賞[編集]

テレビ放送[編集]

  • 2016年1月3日に、TBSの0:35 - 3:35(JST)で「新春映画特別企画」として地上波初放送された[5]

オーディオドラマ[編集]

2015年7月17日、オーディオブック配信サイト「FeBe」にて配信開始[6]

キャスト(オーディオドラマ)[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 撮影当時は市川亀治郎。初期の広告(原作文庫本の帯など)では亀治郎名義となっているものがある。
  2. ^ 保科氏は甲斐武田氏の名跡。次代以降は『松平姓』に復姓し、会津松平家となり、幕末の松平容保まで続く(血縁は途絶えている)。
  3. ^ 主君が反幕、倒幕を掲げたら従ってはならないという苛烈なもの

出典[編集]

外部リンク[編集]