大津漁業協同組合
大津漁業協同組合(おおつぎょぎょうきょうどうくみあい)は、茨城県北茨城市大津町に所在する漁業協同組合。地元の漁業や直売、観光振興などを通じて地域水産業の活性化に取り組んでいる。
概要
[編集]所在地:茨城県北茨城市大津町2799[1]
アクセス:JR常磐線大津港駅からタクシーで約5分、常磐自動車道北茨城IC・勿来ICから車で約15分[1]
歴史
[編集]大津漁業は、江戸時代から続く伝統的な漁業地であり、特にかつお漁が盛んであった。明治40年頃からは石油発動機を搭載したかつお船が登場し、遠洋漁業へと発展したが、出船数は次第に減少した。[2]
役員
[編集]活動
[編集]- 鮮度・衛生管理の徹底
- 資源管理(稚魚放流、禁漁区設定など)
- 加工・直販事業による付加価値向上
- 観光振興(直売所やイベント参加など)
これらは「浜の活力再生プラン」(浜プラン)の一環として推進されている[7]。
不祥事
[編集]放射性物質検査値の改ざん疑惑(2021年)
[編集]2021年3月、週刊文春が、大津漁業協同組合において放射性物質検査結果の改ざん疑惑があったと報じた。記事によれば、2012年8月に実施されたシラスおよび加工品の放射性物質検査において、本来の測定値より低い数値が手書きで書き換えられていたとされ、翌日の茨城県の公表資料でもその修正値が用いられていたという[8]。
報道では、2020年9月に漁協関係者が多数出席する会議で問題が取り上げられ、当時の幹部が「風評被害を避けるため」「安全性を強調するため」などの理由を挙げたとされる。また、震災後に加工工場の設備に放射性物質が残留し、一部の加工品で高い値が出ていたことから、県の正式文書では該当データが「削除された」とする県担当者の説明も紹介されている[9]。
一方で茨城県側は、検査値は健康に影響するレベルではなく、データの公表が消費者の信頼につながった可能性を示したという。漁業経済学の専門家による「データ非公表は不信につながる」との指摘も報じられている。漁協幹部は取材に対し、当初は加工設備の洗浄不足により一時的に高い数値が出ていたが、改善により低い値に落ち着いたと説明した[10]。
解雇・内部告発をめぐる訴訟(2022–2025年)
[編集]2022年2月、元職員の男性2人が週刊誌への情報提供や内部告発を理由に解雇されたとして、解雇無効や未払い賞与の支払いを求め、水戸地裁日立支部に提訴した。訴状によると、解雇理由には、東日本大震災後のシラス放射性物質の分析結果改ざん疑惑や補助金不正受給の告発が含まれていた[11][12][13][14]。
水戸地裁は、解雇が合理的理由を欠き権利の乱用に当たるとして無効と判断し、未払い賃金の支払いを命じた。東京高裁の控訴審でも一審判決が支持され、漁協側の控訴は棄却された。最高裁も漁協側の上告を棄却し、解雇無効および未払い賃金の支払いが確定した[15][16][17][18][19][20]。
訴訟を通じて、漁協内部の不正行為に対する告発や情報提供が公益通報として認められ、解雇は不当であったと判断された。
事故・災害
[編集]2023年6月6日、北茨城市大津漁港沖で漁船同士が衝突し、漁船「第二野口丸」の船長(当時85歳)が死亡した。事故原因は「日吉丸」の船長が周囲に他の船がいないと誤認し、適切な見張りを行わなかったこととされる。[21][22]
2025年1月6日、茨城県鹿島港沖で、大津漁協所属の巻き網漁船「第8大浜丸」(約80トン)が転覆した。乗組員20人のうち17人が救助され、2人が死亡、3人が行方不明となった。事故原因として網の重みで船体バランスが崩れた可能性が指摘され、全員がライフジャケットを着用していなかったことも判明している。[23][24]
補助金返還(復興事業)
[編集]がんばる漁業復興支援事業(2025年)
[編集]大津漁業協同組合(北茨城市)は、国の助成制度「がんばる漁業復興支援事業」において、事業外経費を計上していたとして、約1,315万円の補助金を自主返還したことが報じられた。
同事業は、東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の影響を受けた漁業者の生産量回復や収益性向上を支援するもので、事業管理費については総事業費の2%以内が補助対象となる。大津漁協は2015年から2018年にかけ、直接事業に関わっていない職員の人件費も計上していたことが国の指摘により明らかとなった。漁協側は、「事業を直接担当する職員の業務をカバーした職員の人件費も対象とみなし計上していた」と説明しつつ、令和7年8月28日付で返還した。
製氷工場復旧補助金(2022年)
[編集]大津漁協が保有する製氷工場は、2011年の東日本大震災で建物の傾きや機械の浸水などの被害を受け操業を停止した。漁船に積み込む氷を製造するために利用されていた施設で、1979年に建設された。
復旧にあたっては、水産庁の「水産業共同利用施設復旧支援事業」により約2,700万円の補助金が交付され、建物の補強および製氷機械の修理が行われた。工事後、2013年4月に一度再稼働したものの、建物の傾きの影響で排水機能に支障が生じ、溶けた氷が低所に滞留してモーターが再び浸水し、操業困難となった。モーターのかさ上げなどの対策を試みたが改善せず、同年度内に再稼働を断念したと報じられている。
漁協は再稼働断念を県に報告していたが、県は国に報告していなかった。県水産担当者は震災対応業務の多忙を理由に遅れを認めている。この復旧事業については、2022年1月に会計検査院が「補助の目的が達成されていない可能性がある」として実地検査を実施し、補助金返還が求められる可能性も指摘された。
なお、漁協はその後、水産庁の「水産業加工利用施設復興整備事業」による約8億1,500万円の補助金を受け、2015年度に新たな製氷工場を建設し、そちらを稼働させている。
雇用調整助成金詐取事件(2022年、2023年)
[編集]大津漁業協同組合が運営する「市営市場食堂」(北茨城市関南町)に関して、2020年2月から8月の新型コロナウイルス感染拡大期に申請された雇用調整助成金(雇調金)について、不正受給の疑いが生じた。茨城新聞の報道によれば、勤務実態のない人物を「休業した従業員」として申請し、助成金を受給していた疑いが持たれ、2022年10月、茨城県警は漁協関係者の自宅や事務所など複数箇所を家宅捜索した[31]。
その後の捜査により、漁協の前専務理事である石川秀夫(当時60歳)が、複数の従業員について虚偽の休業申請を行い、不正に助成金を受給した疑いが強まり、茨城県警は2023年2月8日、石川を詐欺容疑で逮捕した。不正受給額は約192万円とされる[32][33]。
石川は震災後、「復興の旗振り役」として漁協内外で注目されてきた人物であったが、地元漁業者の間では以前から「独断的な意思決定があった」とする不信感があったと報じられている[34]。
2023年5月15日、水戸地方裁判所は石川に対し、懲役2年・執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。判決では、勤務実態のない人物を従業員として申請した虚偽性が認定され、不正受給の意図が明確であったと判断された[35]。
行政処分(2025年)
[編集]令和7年8月1日、法務省と厚生労働省は大津漁協に技能実習法に基づく改善命令を行った。出入国在留管理庁と厚生労働省は株式会社加藤工業ほか8者に対し技能実習計画の認定取消しを行った。[36]
脚注
[編集]- ^ a b 北茨城市観光協会「大津漁協」 公式サイト
- ^ 北茨城市デジタルアーカイブ「大津港とその漁業」
- ^ 茨城県報 第435号 令和5年8月24日
- ^ 茨城沿海地区漁業協同組合連合会 役員一覧
- ^ 茨城新聞「北茨城市・大津漁協 専務理事 坂本義則」 [1]
- ^ 「第21回常磐・鹿島灘の漁業を考える」 プログラム(2007年3月9日)『日本水産海洋学会』
- ^ 「浜プラン 大津漁協」『浜の活力再生プラン』 hama-p.jp
- ^ 週刊文春 2021年3月11日号
- ^ 週刊文春 2021年3月11日号
- ^ 週刊文春 2021年3月11日号
- ^ 毎日新聞 2022年2月25日
- ^ 茨城新聞 2022年2月26日
- ^ 読売新聞 2022年2月25日
- ^ 朝日新聞 2022年2月5日
- ^ 東京新聞 2024年4月27日
- ^ 毎日新聞 2024年4月27日
- ^ 朝日新聞 2024年4月27日
- ^ 赤旗新聞 2025年11月19日
- ^ 茨城新聞 2025年2月13日
- ^ 読売新聞 2025年2月16日
- ^ 茨城新聞「漁船衝突、船長死亡 見張り怠ったか 運輸安全委が報告書」2024年8月30日
- ^ 読売新聞「漁船衝突死亡、見張り怠ったか」2024年8月30日
- ^ 茨城新聞 2025年2月5日
- ^ 朝日新聞 2025年2月5日
- ^ 毎日新聞「補助金1315万円 大津漁協返還 事業外経費を計上/茨城」
- ^ 茨城新聞「補助金1315万円を自主返還 大津漁協」[リンク切れ]
- ^ 茨城新聞「補助金工場の再稼働断念 大震災被災 北茨城、復旧も不具合」2022年2月1日、4面
- ^ 毎日新聞「震災被害の工場再稼働断念 国補助金で復旧工事したけど…」2022年2月2日、23面
- ^ 朝日新聞「復興補助金で修復の漁協施設、9年近く稼働せず『見積もり甘かった』」2022年2月3日
- ^ 会計検査院「水産業共同利用施設復旧支援事業で復旧した工場が稼働を停止していて補助の目的を達していなかったもの」
- ^ 茨城新聞「大津漁協、不正受給か 詐欺容疑 県警が家宅捜索」2022年10月30日
- ^ 茨城新聞「大津漁協元幹部逮捕へ 県警 コロナ助成金詐取容疑」2023年2月8日
- ^ 茨城新聞「大津漁協前専務を逮捕 雇調金192万円詐取容疑」2023年2月9日
- ^ 茨城新聞、2023年2月9日
- ^ NHK水戸放送局「雇用調整助成金192万円余不正受給 大津漁協元専務に有罪判決」2023年5月15日
- ^ 厚生労働省「技能実習法に基づく行政処分等を行いました」
参考文献
[編集]- 北茨城市観光協会「大津漁協」 公式サイト
- 北茨城市デジタルアーカイブ「大津港とその漁業」
- 「hama-p.jp 浜プラン 大津漁協」『浜の活力再生プラン』
- 会計検査院「水産業共同利用施設復旧支援事業で復旧した工場が稼働を停止していて補助の目的を達していなかったもの」
- 茨城新聞・毎日新聞・朝日新聞各記事(本文引用済み)