変身 (カフカ)

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『変身』
Die Verwandlung
『変身』初版
『変身』初版
作者 フランツ・カフカ
ドイツ(出版)
言語 ドイツ語
ジャンル 中編小説
発表形態 雑誌掲載
初出 『ディ・ヴァイセン・ブレッター』
1915年10月号
刊行 1915年12月、クルト・ヴォルフ
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変身』(へんしん、Die Verwandlung)は、フランツ・カフカの中編小説。ある朝目覚めると巨大な虫になっていた男と、その家族の顛末を描く物語であり、カフカの作品の中ではもっともよく知られている小説である。1912年執筆、1915年の月刊誌『ディ・ヴァイセン・ブレッター』10月号に掲載、同年12月にクルト・ヴォルフ社(ライプツィヒ)より「最後の審判叢書」の一冊として刊行された。

カフカはこれ以前に執筆していた「判決」「火夫」とこの作品を合わせて『息子たち』のタイトルで出版することを考えていたが、採算が合わないという出版社の判断で実現しなかった。

執筆背景[編集]

この作品は1912年10月から11月にかけて執筆された。当時カフカは労働傷害保険局に勤務しており、作中のグレーゴル・ザムザと同じく出張旅行も多かった。この作品の執筆も出張によって中断を余儀なくされ、カフカはこのことによって作品が出来が悪くなってしまったと日記にこぼしている。またこのころはのちに婚約を交わすことになるフェリーツェ・バウアーとの文通を始めたばかりで、彼女への手紙では『変身』の執筆状況を逐一知らせていた。

「人間が虫に変身する」というモチーフはカフカの作品のなかで前例があり、1907年ごろに執筆された未完の作品「田舎の婚礼準備」には、主人公ラバンが通りを歩きながら、ベッドの中で甲虫になっている自分を夢想するシーンがある。『変身』のザムザ (Samsa)、「田舎の婚礼準備」の主人公ラバン (Raban) の名はいずれも同じ母音2つと子音3つの組み合わせからなり、作者自身の名カフカ (Kafka) を想起させる[1]

しばしば暗い内容の作品と見なされるが、カフカはこの作品の原稿をマックス・ブロートらの前で朗読する際、絶えず笑いを漏らし、時には吹き出しながら読んでいたという。『変身』の本が刷り上がると、カフカはその文字の大きさや版面のせいで作品が暗く、切迫して見えることに不満を抱いていた[1]

「虫」について[編集]

作中でグレーゴル・ザムザが変身するものは通常「虫」「害虫」と訳されるが、ドイツ語の原文はUngezieferとなっており、これは鳥や小動物なども含む有害生物全般を意味する単語である。作中の記述からはどのような種類の生物かは不明であるが、ウラジミール・ナボコフは大きく膨らんだ胴を持った甲虫だろうとしている[2]

『変身』の初版表紙絵は写実画家のオトマール・シュタルケが担当したが、カフカは出版の際、版元のクルト・ヴォルフ社宛の手紙で「昆虫そのものを描いてはいけない」「遠くからでも姿を見せてはいけない」と注文をつけていた。実際に描かれたのは、暗い部屋に通じるドアから顔を覆いながら離れていく若い男の絵である(冒頭右図参照)。

翻案・影響[編集]

映画[編集]

漫画[編集]

  • 手塚治虫 『ザムザ復活』 講談社『月刊少年マガジン』掲載 1976年
  • ロバート・クラム 『Introducing Kafka』 1993年
  • 桜壱バーゲン 『変身』 双葉社『A-ZERO』連載、2008年-
  • 久米田康治 『さよなら絶望先生』 講談社『週刊少年マガジン』連載 (発表期間 2005年22・23号 - 2012年28号) キャラクター名原案に『フランツ・カフカ』内容に『変身』を使用

その他[編集]

評価[編集]

NHK Eテレの番組『100分de名著』のMCを務める伊集院光は、番組で取り上げた名著で印象に残っているもので本書をあげ「僕が高校時代に学校に行かなくなった理由ってこんな感じだった!」と、すごく具体的に結びつく感じがしたと述べた[5]

日本語訳[編集]

参考文献[編集]

  • 池内紀、若林恵 『カフカ事典』 三省堂、2003年
  • 池内紀 『カフカの描き方』 新潮社、2004年
  • リッチー・ロバートソン 『一冊でわかるカフカ』 明星聖子訳、岩波書店、2008年
  • ウラジミール・ナボコフ 『ヨーロッパ文学講義』 野島秀勝訳、阪急コミュニケーションズ、1992年

脚注[編集]

  1. ^ a b 池内紀『カフカの描き方』
  2. ^ ナボコフ『ヨーロッパ文学講義』
  3. ^ 『仮面ライダーBLACK・RX超全集 完全版』小学館、1992年8月、p.102
  4. ^ FICTION SAMSA IN LOVE BY HARUKI MURAKAMI. OCTOBER 28, 2013
  5. ^ 伊集院光が語る“名著”「若者に『変身』を薦めたい」”. ニュースウォーカー (2015年8月11日). 2015年8月12日閲覧。

外部リンク[編集]