坂本健一 (古書店主)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

坂本 健一(さかもと けんいち、1923年 - 2016年7月[1])は、大阪市北区黒崎町天五中崎通商店街にある古書店青空書房」の店主[2]

坂本は、大阪の薬種問屋に生まれた[3]1943年近畿大学専門学校法学部に入学後、学徒動員で入営した[2][4][5]。坂本は少年期から読書家で、15歳のときに読んだモーパッサンの『女の一生』に衝撃を受け[6][7]召集令状が来た日にはロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』を一挙に読み、『論語』を携えて入営したという[6]

戦時中は千葉県九十九里浜などに配置され[3]茨城県で終戦を迎えた[4][5]

坂本は、1946年から[2]、「父親の薬代を稼ぐ」ために[8]岩波文庫[3][7]などの古書を「戸板に並べて」[3]、あるいは大八車に載せ[8]御堂筋闇市で商売を始めた[5]

1947年2月に、店舗を構えて「青空書房」を開業した[4][9]。店舗はおよそ13平方メートルで、文学、思想、美術史関係の書籍2千冊ほどが置かれている[8]

坂本は「大阪一売れない本屋」を自称し[6]、「たばこを吸いながら本はさわらないで」「本は生きています。オビをきったら怒ります」といった注意書きや[8]、週刊誌のチラシなどを手描きで作り、店内に貼り出す独特の店づくりをした[6]

坂本と個人的な親交のある青空書房の常連客の中には、作家もおり、筒井康隆は『不良少年の映画史』で坂本について言及し[8]山本一力は坂本から『寛政重修諸家譜』を買ったエピソードを踏まえて「青空書房は、本好き全員の海路を照らす灯台だと確信する」と評したほか[10]田辺聖子とも親交があり[4][11]、店内には筒井、山本、田辺からそれぞれ贈られた色紙が飾られている[12]

青空書房は、元日以外は休まない営業を、2002年ころまで長らく続けていたが[8]、その後、坂本が脳梗塞を患ったこともあって、日曜日を定休日とし[13]2010年に妻に先立たれた[9]前後から、さらに木曜日にも休むようになった[13]。日曜日を休むようになった坂本は、定休日であることを告げる手描きポスターを、そのつど新たに作成してシャッターに貼り、やがて、そこに添えられた絵や言葉が徐々に注目されて、メディアにも取り上げられるようになった[13]。その後、この手描きポスターは、大阪の画廊[14]や書店で展示され、さらに書籍として出版された[13]

著書[編集]

さかもとけんいち 名義

  • 浪華の古本屋 ぎっこんばったん、SIC、2010年[7]
  • 夫婦の青空、天理教道友社、2012年[9]
  • ほんじつ休ませて戴きます : 人生最晩年、あふれ出た愛の言葉集、主婦の友社、2013年[13]
  • だれにも一つの青空がある : 大阪「青空書房」店主90歳、休業ポスターに込めた人生の応援メッセージ。、天理教道友社、2013年

出典・脚注[編集]

  1. ^ 青空書房の店主逝く 93歳「本に埋もれて死ねたら…」
  2. ^ a b c 夫婦の青空 道友社きずな新書”. 天理教道友社. 2013年11月23日閲覧。
  3. ^ a b c d 加来誠 (2008年2月11日). “(週刊まちぶら 第143号)天五中崎通商店街 大阪市北区”. 朝日新聞・大阪朝刊・大阪府: p. 31  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  4. ^ a b c d “青空書房の戦後65年記 生きる道しるべ 交流つづる”. 読売新聞・大阪朝刊: p. 24. (2010年8月15日)  - ヨミダス歴史館にて閲覧
  5. ^ a b c “エッセー集:本は人生の心の糧 大阪の古書店店主・坂本さん「浪華の古本屋」”. 毎日新聞・大阪朝刊: p. 25. (2010年8月18日)  - 毎索にて閲覧
  6. ^ a b c d 近藤順子 (1998年1月23日). “感動売ります、古本屋(関西現代焼 カンサイモダンヤキ)”. 朝日新聞・夕刊: p. 3  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  7. ^ a b c 宮崎園子 (2010年8月23日). ““古本店主、自らの一冊 大阪の87歳、本通じた出会い回想録”. 朝日新聞・夕刊: p. 10  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  8. ^ a b c d e f “頑固50年、本モノ店主 天五の「青空書房」坂本健一さん”. 朝日新聞・夕刊: p. 12. (2002年11月18日)  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  9. ^ a b c 宮崎園子 (2012年10月13日). “愛する妻へ、永遠のメッセージ 大阪の古書店主、手紙110点を本に”. 朝日新聞・朝刊: p. 33  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  10. ^ 山本一力 (2006年10月31日). “(陽を浴びた朝つゆ)本好きの海路照らす灯台”. 朝日新聞・夕刊: p. 4  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  11. ^ 宮崎園子 (2012年4月14日). “本日休業、愛を込めて 絵と言葉、名物ポスター 大阪・中崎町「青空書房」”. 朝日新聞・夕刊: p. 1  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  12. ^ 橋本誠司 (2009年6月20日). “[今日のノート]本は生きもの”. 読売新聞・大阪朝刊: p. 24  - ヨミダス歴史館にて閲覧
  13. ^ a b c d e 宮崎園子 (2013年7月10日). ““出版させて戴きます”古書店主・坂本さん「休み伝えるポスター」一冊に”. 朝日新聞・大阪朝刊・大阪府: p. 32  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  14. ^ 宮崎園子 (2012年11月9日). “「休みます」ポスター110点 古本屋店主の手描き集め個展”. 朝日新聞・大阪朝刊・大阪市内: p. 31  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧

外部リンク[編集]