土佐電気鉄道600形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
土佐電気鉄道600形電車
土佐電気鉄道600形(写真は626)
基本情報
運用者 とさでん交通
製造所 ナニワ工機・土佐電気鉄道若松町工場
製造初年 1957年
製造数 31両
全幅 2275 mm
主電動機出力 50.0kW×2
テンプレートを表示

土佐電気鉄道600形電車(とさでんきてつどう600がたでんしゃ)は、土佐電気鉄道路面電車車両2014年10月1日付で土佐電気鉄道が高知県交通土佐電ドリームサービスと経営統合し、新会社とさでん交通による運営に移行したのに伴い、土佐電気鉄道からとさでん交通に承継された。

1957年から1964年にかけて、土佐電気鉄道若松町工場とナニワ工機で31両が製造された。とさでん交通軌道線の主力車両である。

概要[編集]

東京都電7000形電車(更新前)をモデルにして、土佐電気鉄道若松町工場で601~621の21両、ナニワ工機で622~631の10両が製造された。大きな相違点は自社工場製グループが半鋼製、ナニワ製が全鋼製である点である。自社工場製グループは構体部分を社外の鉄工所に外注し、若松町工場で艤装や最終仕上げを行っている。

601・602・608・609・612~631は間接制御車であり密着連結器ジャンパ線、エアホースを装備しており二両連結で安芸線に乗り入れていた。安芸線廃止後も伊野線での連結運用に活用されていたが1987年の桟橋線桟橋車庫前への車庫移転に伴いはりまや橋での入出庫時に左折が必要となり、二両連結では直進する自動車の通行を支障する時間が長くなり[1][2]左折信号現示中に後免線及び伊野線に出ることができないため同年11月30日をもって廃止された。現在は非常用として存置されている連結器を除き取り外されている[3]。残りの603~607・610・611号は直接制御車である。

製造が7年に渡って行われ窓や台車など細かな違いがある。特に自社工場製の21両は細部の形態が違っており、車両ファンの興味をそそる存在である。

全車とも製造から50年以上が経過しており、2015年11月5日には老朽化等の事情から606・629号の2両が廃車された。

また、607号は300形に代わって2代目貸切兼用車「おきゃく電車」となった(300形とは異なり貸切専用車ではなく、引き続き通常の営業運転にも使用される)。しかし、一部の車両が2000形へ置換えられている200形に対し、現在稼働中の29両については置換えの予定はない。

1982年の627・629号を皮切りに間接制御車から冷房化改造が開始され、1996年の611号をもって全車完了した[4]。冷房装置は初期に改造された車両は富士電機製、後期に改造された車両は三菱電機製を搭載している。1998年に前面窓右下にドアが開いている時に「乗降中」と点滅する表示機を設置、また1999年には方向幕布を字幕表示書体毛筆体表記の布製のものから丸ゴシック体表記のテトロンフィルム製へと交換、さらに2003年にはLED式に交換され、車内にも停車電停・料金を表示するLED式電光表示板が設置された。その他、車内放送装置がそれまでの4トラックテープを用いたテープ式からネプチューン製の音声合成装置に交換された。 営業運転時には進行方向側の前面窓右下に四角い行先表示のサボがはめられ、特に「ごめん」(後免町行き)・「いの」(伊野行き)と平仮名で書かれたサボをはめた電車は沿線利用者や観光客、鉄道ファンに親しまれている。最近ではミュージックホーンの増設改造および一部車両には腐食防止・事故復旧のため前面窓の完全Hゴム固定化[注釈 1]もされている。

本形式は車体長が12m級と200形の11m級に比べて長く、2001年まで高知駅前に急曲線が存在した桟橋線高知駅前 - はりまや橋間への入線は1994年まで基本的になかったが[5][注釈 2]、同年夏季からはそれまで桟橋車庫への出入庫車を除き基本的に200形限定で運用されていた[7]桟橋線の冷房化率向上を名目として[注釈 3]運用されるようになった[8]。 現在は全路線において幅広く運用されている。

とさでん交通への移行に伴い、本形式のうち618号車が新会社のコーポレートカラーであるオレンジとグリーンをベースとした新塗装車の第1号となった[9]

主要諸元[編集]

諸元表
車番 全長
(mm)
全幅
(mm)
全高
(mm)
自重
(t)
車体
構造
定員(座席)
(人)
主電動機
(出力×個数)
製造
初年
601, 602 13,120 2,275 3,939 16.61 半鋼製 67 (34) 50.0kW×2 1957年
603 12,760 2,275 3,939 15.83 半鋼製 67 (34) 38.0kW×2 1958年
604 - 607 12,760 2,275 3,939 15.94 半鋼製 67 (34) 38.0kW×2 1958年
608, 609, 612 13,120 2,275 3,939 16.71 半鋼製 67 (34) 50.0kW×2 1959年
610 12,760 2,275 3,939 15.74 半鋼製 67 (34) 38.0kW×2 1960年
611 12,760 2,275 3,939 15.63 半鋼製 67 (34) 38.0kW×2 1960年
613 - 615 13,120 2,275 3,939 16.57 半鋼製 67 (34) 50.0kW×2 1959年
616 - 620 13,120 2,275 3,939 16.47 半鋼製 67 (34) 50.0kW×2 1960年
621 13,120 2,275 3,939 16.50 半鋼製 67 (34) 50.0kW×2 1961年
622 - 631 13,120 2,275 3,939 16.50 全鋼製 67 (34) 50.0kW×2 1963年

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ この改造が開始される以前にも同じく改造により前面窓を上下2分割化し、上側をHゴム固定化、下側は引き続き開閉できる構造のものにした車両は存在していた。608・614・620号がこれに該当する。
  2. ^ それ以前に本形式が高知駅前に入線した例としては1969年に運行を開始した全面広告電車の出発式が603号を使用して同年2月23日に高知駅前で行われている[6]
  3. ^ 200形の冷房車は201・202号の2両のみである。

出典[編集]

  1. ^ 山本淳一 「現況11 土佐電気鉄道」「鉄道ピクトリアル」1989年3月臨時増刊(通巻509)号 「特集:九州・四国・北海道地方のローカル私鉄」 166頁。
  2. ^ 楠居利彦 「日本の路面電車 第4回」 「鉄道ダイヤ情報」 1993年2月(通巻106)号 49頁。
  3. ^ 楠居利彦 「日本の路面電車 第4回」 「鉄道ダイヤ情報」 1993年2月(通巻106)号 52頁。
  4. ^ 浜田光男 「土佐電鉄600形冷房改造完了」「鉄道ピクトリアル」1996年12月(通巻630)号 81頁。
  5. ^ 小林隆雄 「シリーズ 路面電車を訪ねて12 土佐電気鉄道」 「鉄道ファン」 1986年11月(通巻307)号 102頁。
  6. ^ 『土佐電鉄八十八年史』 326頁。
  7. ^ 楠居利彦 「日本の路面電車 第4回」 「鉄道ダイヤ情報」 1993年2月(通巻106)号 50頁。
  8. ^ 浜田光男 「土佐電鉄桟橋線の運行状況」「鉄道ピクトリアル」1995年1月(通巻601)号 113頁。
  9. ^ 新しいデザインのバスを紹介しました。ここでは、新しい電車のデザインを紹介します。 (とさでん交通経営企画室 twitter)