土下座
土下座(どげざ)とは、土の上に直に坐り、平伏して礼(お辞儀)を行うこと。
日本の礼式のひとつで、姿勢は座礼の最敬礼に類似する。本来は極度に尊崇高貴な対象に恭儉の意を示したり、深い謝罪や請願の意を表す場合に行われるため、互礼ではなく、一方のみが行うが、土下座の意図に対して土下座された相手が謝絶を示すために同じ礼を行うことがある。
相手に向かい正座した上で、手のひらを地に付け、額が地に付くまで伏せ、しばらくその姿勢を保つ。現代では土の上とは限らず、本来は座礼をしないような床(洋間の床など)や舗装地などで行われるものも土下座と称される。
原則としては相手の位置以下の高さから行うべきものではあるが、多数を相手に行う際に相手の位置まで下りて行うと一部からしか見えなくなってしまう場合などで、変則的に壇上などの高い位置から行われることもある。
歴史・用途[編集]
『魏志倭人伝』には邪馬台国の風習として、平民が貴人から話を聞くときには、「うずくまったりひざまづいたりし、両手を地に付けて、敬意を示す。」との記載があり、古くからの日本の習慣であったと思われる。古墳時代の埴輪の中には平伏し、土下座をしているようなものも見受けられる。
また、近代まで庶民が貴人に面会するときも土下座をするのが通常であった。近世の大名行列に対し、行きあわせた庶民は土下座をしなければならないという認識もあるが、実際に土下座の義務があったのは将軍、御三家、およびその地の領主に対する場合のみであった。他方で義務がなくとも自発的に土下座をする庶民もいた。
武家社会において土下座は「そのまま斬首されても異存はない」という意味合いを与えられていた。
日本人の生活意識では、土の上に座って額を地面につける動作が日常の行動から大きく逸脱しているために、それだけ並はずれた恭儉・恐縮の意を含む礼式であると解釈された。一方ではこれを大変な恥辱とする考え方もあった。
『誰も調べなかった日本文化史』(パオロ・マッツァリーノ著)では、謝罪や懇願の目的で庶民に広まったのは大正後期以降と推測している(『大菩薩峠』などの時代小説で江戸時代の圧政における庶民の土下座シーンが頻繁に登場した影響という考察)[1]。
現代でも土下座を恥とする考え方が根強く残っているが、他方では、選挙の際の国会議員がマスメディアの面前で簡単に土下座を繰り広げる、あるいは不祥事や事故を起こした企業の経営者などがマスメディアの追求や国民の批判の前に土下座に追い込まれる光景が繰り返されているその影響からか、現在では土下座自体に謝罪というよりも「なりふり構わぬ自己保身の手段」というネガティブなイメージを抱く人が多くなった一面があり[2]、土下座の使い方や使いどころ次第でかえって世間の反感や冷笑を買ってしまい、逆効果になってしまうケースも見られる様になっている。
土下座に対する法的効果[編集]
土下座を強要することは強要罪にあたり、店員に土下座をさせた画像をTwitter上にてアップロードした客が逮捕されており、以後刑事事件化に至る事例が増加している[3]。その事件の直前まで放映されていたテレビドラマ『半沢直樹』にて主人公が土下座を強要するシーンがあり、疑問を呈する意見も存在している[4] [5] [6]。
土下座が問題となった事例[編集]
- 「しまむら店員に土下座強要」で「炎上」した女性が逮捕 - ハフィントン・ポスト 2013年10月07日
- コンビニ土下座強要事件
- ボウリング場店員に土下座強要で起訴 滋賀・近江八幡 - 京都新聞 2015年02月09日
- 鳩山元総理が韓国の植民地刑務所跡地で土下座 - 時事通信 2015年8月12日
出典・脚注[編集]
- ^ 読売新聞、2015年4月21日夕刊2面「はじまり考」
- ^ 【甘口辛口】使い方次第で反感を買う土下座 - MSN産経ニュース 2011年5月8日
- ^ 「半沢」ではスカっとしたけど…本当は怖い「土下座」強要 - iza! 2013年10月8日
- ^ 半沢直樹のマネ? 「しまむら」店員への「土下座強要」は法律的にどうなのか? - 弁護士ドットコム 2013年10月04日
- ^ 「半沢直樹」で火がついた?巷で広がる“土下座ブーム” - 週刊文春WEB 2013年10月09日
- ^ 「半沢直樹」、土下座シーンへの違和感 - WEB論座 2013年9月27日