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国道43号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
一般国道
国道43号標識
国道43号
地図
総延長 30.0 km
実延長 30.0 km
現道 30.0 km
制定年 1958年昭和33年)
起点 大阪府大阪市西成区
花園北交差点(北緯34度39分1.59秒 東経135度29分51.47秒 / 北緯34.6504417度 東経135.4976306度 / 34.6504417; 135.4976306 (花園北交差点)
主な
経由都市
兵庫県尼崎市西宮市芦屋市
終点 兵庫県神戸市灘区
岩屋交差点(北緯34度42分14.32秒 東経135度13分30.22秒 / 北緯34.7039778度 東経135.2250611度 / 34.7039778; 135.2250611 (岩屋交差点)
接続する
主な道路
記法
国道26号標識 国道26号
阪神高速17号西大阪線
国道172号標識 国道172号
阪神高速3号神戸線
E1 名神高速道路
国道2号標識 国道2号
テンプレート(ノート 使い方) PJ道路
全ての座標を示した地図 - OSM
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国道43号 起点
大阪府大阪市西成区 花園北交差点
国道43号 終点
兵庫県神戸市灘区 岩屋交差点

国道43号(こくどう43ごう)は、大阪府大阪市西成区から兵庫県神戸市灘区に至る一般国道である。

概要

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兵庫県神戸市東灘区魚崎南町
(2019年8月)

大阪 - 神戸間の交通インフラの一翼を担う道路で、国道2号阪急神戸本線阪神本線JR西日本東海道本線などと並走する[1]大阪市西淀川区出来島2丁目以西は全区間阪神高速3号神戸線が真上を通り、阪神高速17号西大阪線の全区間はこの国道43号と並行に経路をとる。尼崎 - 西宮間は往時の中国街道(中国路、浜街道)と、西宮 - 神戸間は西国浜街道および明治・大正時代の国道[注釈 1]とほぼ重なる区間をとっている。

かつて高度経済成長期に増え続けた自動車交通量が深刻な大気汚染を引き起こし、西淀川公害訴訟では自動車排気ガスの健康被害が初めて認められた。これを受けて、速度規制、逆位相による防音措置、多数のオービス設置などの処置が施された。

西淀川公害訴訟の結果に加え、1995年平成7年)の兵庫県南部地震阪神・淡路大震災)の被災・復興も兼ねて国道43号は広域防災帯に位置づけられ、両側車線数削減を実施し用地買収がなされている。このため、開通当時は片側5車線だったが、その後緑地帯の追加措置で片側4車線となり、震災後は阪神高速湾岸線へ交通移動も考慮し片側3車線となっている。さらに歩道を挟んで外側に、緑地が確保されている場所もある。また、西淀川公害訴訟の原告団は、時間帯を区切るかたちでの罰則付きでの大型車規制を盛り込んだルールの制定を求めていたが、同訴訟の和解内容に盛り込まれていなかったことや、原告の高齢化などの事情で断念し、「環境レーン」を設けるかたちで、罰則無しでの規制を実施し、通行禁止を事実上断念することになった[2]

路線データ

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一般国道の路線を指定する政令[3][注釈 2]に基づく起終点および重要な経過地は次のとおり。

歴史

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大正時代まで、大阪 - 神戸間の交通は中国街道に頼ってきたが、車のすれ違いもままならない狭い道であったことから、のちに国道2号となる「阪神国道」(第一阪神国道)が整備され、1927年昭和2年)に開通した[6]。しかし、周辺市街地や阪神工業地帯の発展により、昭和10年代には阪神国道も増え続ける交通量に対応できなくなってくると、これに代わる道路建設を求める世論の声が高まってゆく[6]。戦後の1946年(昭和21年)から、のちに「第二阪神国道」とよばれる道路の用地取得が始められた[6]。戦前より市街地として発展してきた阪神間に、新たに広大な道路用地が確保できたのは、戦時疎開の名目で周辺住民や商店を追い出していたためだともいわれている[6]。阪神国道(国道2号)の交通渋滞を緩和するために、この大阪市西成区より神戸市灘区に至る道路がはじめて国道に指定されたのは1953年(昭和28年)5月二級国道の第一次路線指定のときで、「二級国道173号大阪神戸線」として指定を受けている[6]。それがのちに、国道としての重要性が評価されて、1958年(昭和33年)9月一級国道路線の第二次指定により二級国道3路線が一級国道に追加された中の路線の一つとして「一級国道43号」への昇格を果たし、同時に「二級国道173号大阪神戸線」は廃止された[7]。その後、1965年(昭和40年)4月の道路法改正に伴い、一級国道・二級国道が廃止統合されて「一般国道43号」となる。

1970年(昭和45年)、大阪万博開催を機に片側5車線の道路が完成[7]。増大し続ける交通量に対応するように、さらに1970年代に国道43号上に高架構造で阪神高速道路公団の管理する自動車専用道路「阪神高速3号神戸線」が建設され、1981年(昭和56年)に全線供用された[7]。急激に増えた自動車やトラックの交通量は、沿道住人には耐えがたいほどの騒音と振動と、排気ガスがもたらした喘息などの公害病も引き起こし、ついには沿道住民は国と阪神高速道路公団に対して、国道43号線道路公害訴訟をおこした[8]。数度に及んだ訴訟は最高裁まで争われ、裁判では国道43号および阪神高速道路が沿道住民に与える苦痛は受忍限度を超える違法的なものと認定され、その対策が打たれることとなった[8]

1976年(昭和51年)5月1日、西宮市本町地内に速度違反自動取締装置が設置された。その後、1年の間に交通事故の減少などの効果が認められたため、全国に普及する契機となった[9]

阪神・淡路大震災発生時の
神戸市灘区岩屋交差点周辺
1995年1月17日

阪神高速3号神戸線全線供用後の1982年(昭和57年)、片側5車線あった道路は4車線へ削減[8]1995年平成7年)に発生した阪神淡路大震災では、国道43号上を走る高架の阪神高速道路が倒壊して大きな被害が出た[8]。震災復興事業により国道43号を再整備したときには、車線数をさらに削減して片側3車線とし、もともと道路があった場所にはさらなる騒音防止を目的として防音壁の設置や街路樹の植樹が行われた[8]

年表

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路線状況

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神戸市灘区青木付近
かつて片側5車線あった道路は2車線削られて緑地帯になり、防音壁が設置されている(写真:上)。大型車は道路の中央よりを走る通行規制が敷かれている(写真:下)。
国道172号への交差
大阪府大阪市港区

多くの区間で、速度規制40 km/h(一部区間で50 km/h)に制限速度は抑えられており、オービスが多数設置されている[1]。沿道住民の生活環境に配慮して、振動や騒音の影響を少しでも抑制するために、兵庫県内では通常の交通ルールとは反対に、大型車両は一番右側の中央線寄りのレーンを走行する通行規制が敷かれている[1]

大阪市西淀川区出来島から港区安治川大橋までの5 kmほどの区間は連続立体交差となっている。大阪市内では、国道172号みなと通)と交差する市岡元町3交差点を中心に、大正通と交差する泉尾交差点、中央大通と交差する弁天町駅前交差点で渋滞が頻発する[12]

通称

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  • 二国(にこく)
兵庫県内では、「こくどう」と呼ばれる「第一阪神国道」(国道2号)の0.5 kmから1.5 kmほど南側に並行していることから、「第二阪神国道」→「にこく」と呼ばれる[13]。しかし、近年では国道2号を「にこく」と略称することも多い。
  • 43(よんさん)
国土交通省が機関紙として『よんさん』を発行し、この「よんさん」が「二国(にこく)」に代わる国道43号の通称になりつつある。

道路施設

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橋梁

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  • 大阪府
    • 安治川大橋(安治川・六軒屋川、大阪市港区 - 大阪市此花区)
    • 正蓮寺橋(阪神高速2号淀川左岸線、大阪市此花区)
    • 新伝法大橋(下り線:淀川、大阪市此花区 - 大阪市西淀川区)
    • 伝法大橋(上り線:淀川、大阪市此花区 - 大阪市西淀川区)
    • 出来島大橋(出来島川、大阪市西淀川区)
    • 中島大橋(中島川、大阪市西淀川区)
    • 辰巳橋(左門殿川、大阪市西淀川区 - 兵庫県尼崎市)
  • 兵庫県
    • 庄下川橋(庄下川、尼崎市)
    • 蓬川橋(蓬川、尼崎市)
    • 武庫川橋(武庫川、尼崎市 - 西宮市)
    • 津門川橋(津門川、西宮市)
    • 宮川橋(宮川、芦屋市)
    • 芦屋川橋(芦屋川、芦屋市)
    • 高橋川橋(高橋川、神戸市東灘区)
    • 天上川橋(天上川、神戸市東灘区)
    • 住吉川橋(住吉川、神戸市東灘区)
    • 石屋川橋(石屋川、神戸市東灘区)

車線・最高速度

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区間 車線
上下線=上り線+下り線
最高速度 備考
花園北交差点 - 南開交差点 6=3+3 50 km/h
南開交差点 - 中開3北交差点 8=4+4
中開3北交差点 - 北津守ランプ前交差点 6=3+3
北津守ランプ前交差点 - 北津守出入口 40 km/h 阪神高速17号西大阪線と並行
北津守出入口 - 大正東出入口 2=1+1
大正東出入口 - 泉尾交差点 4=2+2
泉尾交差点 - 泉尾商店街前交差点 6=3+3
泉尾商店街前交差点 - 大正西出入口 4=2+2
大正西出入口付近 2=1+1
大正西出入口付近 - 弁天町駅前交差点 4=2+2
弁天町駅前交差点 - 安治川大橋南詰 6=3+3
安治川大橋南詰 - 安治川出入口 4=2+2
安治川出入口 - 中島大橋交差点 8=4+4 本線・側道各4車線
中島大橋交差点 - 岩屋交差点 6=3+3 阪神高速3号神戸線と並行
旧10車線区間

※大阪府、兵庫県とも40 km/h区間には「環境対策」の補助標識が設置されている。兵庫県内では「市内全域」から交換されたが、速度自動監視機設置路線を示す四角い青色標識に40 km/hのイラストを描いたものは「市内全域(高・中速車を塗り潰した跡がある)」のまま存置されている。

地理

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甲子園球場ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが道路沿線上にあり、関西地域を代表する大幹線道路となっている[1]

通過する自治体

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大阪府大阪市港区弁天1丁目
(2019年8月)

交差する道路

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交差する道路 都道府県名 市町村名 交差する場所
国道26号 大阪府 大阪市 西成区 花園北1丁目 花園北交差点 / 起点
大阪府道41号大阪伊丹線 / なにわ筋 中開2丁目 中開交差点
大阪府道29号大阪臨海線 / 新なにわ筋 中開3丁目 中開3北交差点
大阪府道29号大阪臨海線 津守2丁目 北津守ランプ前交差点
阪神高速17号西大阪線 北津守2丁目 17-01 北津守出入口
阪神高速17号西大阪線 大正区 千島丁目 17-02 大正東出入口
大阪府道173号大阪八尾線 / 大正通 泉尾4丁目 泉尾交差点
大阪市道浪速鶴町線 / 大浪通 泉尾4丁目 泉尾公園前交差点
阪神高速17号西大阪線 泉尾7丁目 17-03 大正西出入口
国道172号 / みなと通 港区 市岡元町3丁目 市岡元町3交差点
阪神高速17号西大阪線 市岡元町3丁目 17-04 弁天町出入口
大阪市道築港深江線 / 中央大通 弁天1丁目 弁天町駅前交差点
阪神高速17号西大阪線 弁天5丁目 17-05 安治川出入口
大阪市道福島桜島線
北港通
此花区 梅香3丁目 梅香交差点
大阪市道福町浜町線 / 姫島通 西淀川区 福町2丁目 福町交差点
大阪府道101号大和田千舟線 大野1丁目
大阪府道10号・兵庫県道100号大阪池田線 / 淀川通 大野1丁目 大和田西交差点
阪神高速3号神戸線 兵庫県 尼崎市 東本町1丁目 3-06 尼崎東出口
兵庫県道339号昭和東本町線 東本町3丁目 東本町交差点
兵庫県道57号尼崎港線 / 玉江橋線 重複区間起点 西本町1丁目 西本町交差点
兵庫県道57号尼崎港線 / 五合橋線 西本町3丁目 五合橋
兵庫県道341号甲子園尼崎線 西向島町 出屋敷交差点
阪神高速3号神戸線 道意町6丁目 3-07 尼崎西出入口
兵庫県道192号尼崎港崇徳院線 武庫川町2丁目 武庫川交差点
阪神高速3号神戸線 西宮市 池開町 3-08 武庫川出入口
兵庫県道340号浜甲子園甲子園口停車場線 甲子園七番町 甲子園球場前交差点
E1 名神高速道路 今津久寿川町 38 西宮IC
兵庫県道343号今津港津門大箇線 今津社前町 西宮インター交差点
兵庫県道342号甲子園六湛寺線 重複区間起点 用海町
兵庫県道342号甲子園六湛寺線 重複区間起点 用海町 用海交差点
兵庫県道193号西宮港線 宮前町 戎前交差点
阪神高速3号神戸線 宮前町 3-10 西宮出入口
阪神高速3号神戸線 芦屋市 大東町 3-11 芦屋出入口
兵庫県道344号奥山精道線 精道町 精道交差点
兵庫県道722号東灘芦屋線 神戸市 東灘区 深江南町4丁目 深江交差点
阪神高速3号神戸線 青木(おおぎ)1丁目 3-12 深江出入口
兵庫県道345号本山本庄線[注釈 4] 青木5丁目
阪神高速3号神戸線 魚崎南町5丁目 3-13 魚崎出入口
兵庫県道95号灘三田線 御影塚町4丁目 東明交差点
国道2号
国道171号 重複
兵庫県道491号摩耶埠頭線
灘区 味泥町 岩屋交差点 / 終点

交差する鉄道

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沿線

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脚注

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注釈

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  1. ^ 阪神国道(現在の国道2号)の開通以前から存在していた国道。
  2. ^ 一般国道の路線を指定する政令の最終改正日である2004年3月19日の政令(平成16年3月19日政令第50号)に基づく表記。
  3. ^ a b c d e f g 2023年3月31日現在
  4. ^ 上りのみ接続。

出典

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  1. ^ a b c d 佐藤健太郎 2015, p. 151.
  2. ^ “国道43号に「環境レーン」 尼崎、大型車禁止は断念”. MSN産経west (産経新聞社). (2011年12月22日). オリジナルの2011年12月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111222175104/http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/111222/wec11122213220002-n1.htm 
  3. ^ a b 一般国道の路線を指定する政令(昭和40年3月29日政令第58号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2013年8月29日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g 表26 一般国道の路線別、都道府県別道路現況” (XLS). 道路統計年報2024. 国土交通省道路局. 2025年4月3日閲覧。
  5. ^ 一般国道の指定区間を指定する政令(昭和33年6月2日政令第164号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2013年8月29日閲覧。
  6. ^ a b c d e 佐藤健太郎 2015, p. 148.
  7. ^ a b c 佐藤健太郎 2015, p. 149.
  8. ^ a b c d e 佐藤健太郎 2015, p. 150.
  9. ^ 装甲車ごと谷に転落 自衛隊員三人が死傷『朝日新聞』1977年(昭和52年)4月24日朝刊、13版、23面
  10. ^ ウィキソースには、二級国道の路線を指定する政令(昭和28年5月18日政令第96号)の原文があります。
  11. ^ ウィキソースには、二級国道の路線を指定する政令(昭和43年9月30日政令第281号)の原文があります。
  12. ^ 「地域の主要渋滞箇所」の公表について~官民一体で京阪神圏内の主要渋滞箇所を選定~” (PDF). 京阪神圏渋滞ボトルネック対策協議会 (2013年2月15日). 2017年10月7日閲覧。
  13. ^ 佐藤健太郎 2015, p. 71.

参考文献

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  • 佐藤健太郎『国道者』新潮社、2015年11月25日。ISBN 978-4-10-339731-1 

関連項目

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外部リンク

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