嘔吐恐怖症

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嘔吐恐怖(おうときょうふ)とは、自分が吐くこと・他人が吐くことに対して、強迫的に恐怖を感じる状態を指す。パニック障害の一種と考えられている。不安神経症うつを伴う例もみられる。

原因[編集]

幼少期などに、自分が嘔吐したことで苦しい思いをしたり、恥ずかしい思いをしたこと、または他人の嘔吐を目撃して激しい嫌悪を感じたことなどによる場合が多い。

症状[編集]

  • 嘔吐の恐怖に直面した際に起こる、激しい動悸めまい・震え等。
  • 万が一体調不良によって吐き気に襲われても、恐怖心が勝って吐くことができない(無理やり我慢する)場合が多い。
  • 恐怖心が昂じると、常に「自分自身に起こる吐き気」への恐怖に囚われ、「吐いてしまうのではないか」という強迫観念から外食やげっぷができなくなったり、家での食事や外出もままならなくなることがある。
  • 恐怖を感じるのは、主に自分自身が吐き気を感じた時、家族・他人が吐いている現場を見た時、嘔吐物を見たり嗅いでしまった時など。また、文面など嘔吐を連想させるものや出来事にも極度に敏感な場合がある。
  • 予期不安を感じて、吐き気が生じる場合もある。
  • 恐怖のパターンは人によって様々で、中には「自分の嘔吐は平気だが他人の嘔吐が怖い」またはその逆、という人もいる。
  • 他人の嘔吐(指を舌の奥に入れて刺激するなどの「嘔吐反射」を含む)を停止させようと強要する。

治療法[編集]

外出ができない場合は行動療法が有効だと言われる。たとえば一駅ずつ電車に乗る範囲を広げ、大丈夫だったという体験等を積み重ねることである。嘔吐感を軽減する投与薬としてドンペリドンが使われることがある。

行動療法の中でも嘔吐恐怖症に対する治療効果が実証されているのは認知行動療法である[1][2]

認知行動療法の介入法の例として、患者が「気持ち悪くなっても、吐いてしまうわけではないという実体験を積む(不安場面での安全確保行動の減少)」・「吐いてしまうかもしれないというイメージ・予測と、実際起きていること(吐いていないということ)の違いをよく観察する(セルフモニタリング)」・「食事時や不安時に、胃や吐き気への注意から、食べ物やおしゃべり、授業を聞くことなどへ注意を向けなおす(注意のシフトトレーニング)」・「離席せずとも、不安が時間とともに減っていくことを体験する(不安の経時的変化、馴化の実体験をする)」ことなどを治療者がサポートするという事例が挙げられている[3]

また、認知行動療法の一種である曝露療法の有効性も報告されており、患者が嘔吐や吐き気に対する不安がある場面でも回避せずに直面し続けることによって、「不安が時間とともにだんだんと下がってくること(不安の馴化体験)」・「予期していた恐ろしい結果は起こらないということ(認知の修正)」を学ぶことを治療者が支援することを通じて、症状が軽快するとしている[3]

出典[編集]

  1. ^ Hunter, P. V., & Antony, M. M. (2009). Cognitive-Behavioral Treatment of Emetophobia: The Role of Interoceptive Exposure. Cognitive and Behavioral Practice, 16, 84-91.
  2. ^ Riddle-Walker, L., Veale, D., Chapman, C., Ogle, F., Rosko, D., Najmi, S., Walker, L. M., Maceachern, P., & Hicks, T. (2016). Cognitive behaviour therapy for specific phobia of vomiting (Emetophobia): A pilot randomized controlled trial. Journal of Anxiety Disorders, 43, 14-22.
  3. ^ a b 野口 恭子 (2017).吐き気恐怖に対する認知行動療法.東京家政大学附属臨床相談センター紀要,14,29-37.

関連項目[編集]