哭悲/THE SADNESS
哭悲/THE SADNESS | |
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タイトル表記 | |
繁体字 | 哭悲 |
簡体字 | 哭悲 |
拼音 | Kū Bēi |
英題 | The Sadness |
各種情報 | |
監督 | ロブ・ジャバズ |
脚本 | ロブ・ジャバズ |
原案 | ロブ・ジャバズ |
製作 | デヴィッド・バーカー |
製作総指揮 | 廬維君 |
出演者 |
レジーナ・レイ ベラント・チュウ ジョニー・ワン |
音楽 | TZECHAR |
撮影 | バイ・ジエリー |
編集 | ロブ・ジャバズ |
アクション指導 | ジミー・ハン(洪天祥) |
衣装 | 余冠儀 |
美術 | 劉晉輔 |
製作会社 | 麻吉砥加スタジオ(麻吉砥加電影有限公司、Machi Xcelsior Studios) |
公開 |
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上映時間 | 100分 |
製作国 |
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言語 | 国語(標準中国語) |
『哭悲/THE SADNESS』(こくひ ザ・サッドネス、繁体字: 哭悲、英語: The Sadness)は、2021年に製作された台湾のホラー・スプラッター映画。
カナダの映画製作者でアニメーターのロブ・ジャバズによる、長編映画監督デビュー作である。
概要
[編集]未知のウイルスによるパンデミックが引き起こす人間の凶暴化(ゾンビ化)というアイデアは、2019年から始まった新型コロナウイルスの世界的流行から生まれ、政治や性暴力などの社会問題も風刺し、ブラックジョークとして盛り込んでいる[2]。
2021年8月12日、スイスで開催された第74回ロカルノ国際映画祭でワールドプレミア上映された[3]。 また、カナダのモントリオールで開催された第25回ファンタジア国際映画祭で上映され[4]、最優秀新人映画賞を受賞した[5]。 2022年の第3回台湾映画批評家協会賞で特殊メイクアップ賞を受賞した[6]。
極めて過激な暴力描写(走行中の密室になった地下鉄や、患者の命にかかわる病院といった公共施設での凄惨な虐殺シーンは、危険な無差別殺傷事件やテロを誘発する恐れがある)を含んでいるため、日本では「R18+」の指定を受けた[2]。
あらすじ
[編集]台湾で発見され流行の一途を辿っている新種のウイルス・「アルヴィン」を巡り、医療専門家や政府関係者の議論が繰り広げられている。アルヴィンウイルスによる感染症はインフルエンザに似た軽度の症状で死者も出していないことから大して問題視されず、政府も過剰な反応は社会不安を煽り選挙に影響するなどの政治的理由でウイルスの拡散を防ぐための大規模な措置を講じようとしない。しかし、ウイルス専門家のウォン博士は、アルヴィンウイルス内のRNAが狂犬病ウイルスと酷似していることを挙げ、いずれアルヴィンは突然変異し重篤な病を発症させる危険があると世論に訴え続けていた。
ある日の朝、台北に住むカップルのカイティンとジュンジョーは翌週の休日の予定について揉めていた。ジュンジョーは予定を確認せず仕事を入れてしまったことをカイティンに謝り、仕事に出かける彼女を駅まで送っていく。その途中で警察が何らかの流血沙汰を抑えている異様な光景を見掛けながらも、到着した駅でカイティンと別れると、帰りに飲食店に寄って持ち帰りのコーヒーを注文し、新たな住居を探そうと不動産物件のチラシを取る。その背後で、血の付いた寝間着姿で目の黒い裸足の老婆がやって来ると、心配して声をかけてきた男性客の顔に痰を吐きかけ、店員の頭にもフライヤーの煮立った油を浴びせて頬を引き裂いてしまう。さらに、老婆の痰を浴びた男性客も豹変し、一緒に来ていた客をナイフで滅多刺しにし始めた。老婆はアルヴィンウイルスの感染者で、ウイルスが突然変異を遂げたことで凶暴化しており、男性客も同じく感染してしまったのだ。驚いて後ずさるジュンジョーにも迫る老婆だったが、突如として突っ込んできた別の感染者が運転する車に轢き殺される。
次々とその場に現れた多くの感染者に追われながらもジュンジョーは何とか自宅アパートへと逃げ帰り、ほとんどのテレビ局が緊急事態による屋内待機の指示を告げる中、スマートフォンでカイティンに連絡を取ろうとするも繋がらない。さらに、街中のサイレンから異常な放送内容を叫ぶ狂気的な声まで鳴り響いてきた。ジュンジョーは引き続きスマートフォンでこの事態と安否確認のメッセージをカイティンに送るが、背後から侵入してきた隣人男性で同じくアルヴィンウイルスにより凶暴化したリンに植木ばさみで襲われる。結果、指2本を切り落とされてしまったジュンジョーだったがとっさに反撃してリンを気絶させると再び外へと逃げ出す。そして負傷した右手に応急処置を施し、街中に溢れる多くの感染者らに追われながらも命からがらオートバイで逃走する。
その頃、台北地下鉄に乗っていたカイティンは、隣の座席に座った中年の男性サラリーマンにしつこく話しかけられるも拒絶し、乗り合わせていた小太りの女性のシェンに席を譲っていた。その直後、乗り込んできたアルヴィンウイルス感染者がナイフで他の乗客を無差別に殺傷し始め、それに触発されまだ発症していなかった別の感染者の乗客らも凶暴化し、周囲の人間を襲って強姦まで行い始め、車内は血にまみれた地獄絵図と化す。そしてカイティンに話しかけてきた中年サラリーマンも実は感染していたため豹変し、持っていた傘の先でシェンの左目を突き刺した。カイティンは目を刺されたシェンを介抱しながら生き延びた乗客に続き地下鉄を降りるも、中年サラリーマンは執拗に追ってきた。地下道を逃げるカイティンとシェンは途中で出会った屈強な男性に助けを求めるも、追ってきたサラリーマンはその男性をも返り討ちにし、傘から持ち替えた消防斧で惨殺する。その間に逃げ続けるカイティンとシェンは閉じられようとしているシャッターを潜り抜け、辛うじて駅から脱出する。そして感染者を外に出さないためシャッターを下ろそうとしたと弁明する警備員に憤慨して顔を殴る。
カイティンとシェン、そして警備員は台湾大学病院に逃げ込み、待合室にいる患者たちと一緒にテレビで非常事態宣言を発した総統の演説を視聴する。しかし、同席する陸軍司令官もまた感染者で、総統を手榴弾で爆殺してしまう。カイティンはジュンジョーに助けを求めるため連絡しようとするが、途中でスマートフォンを落としたのに気付き、一緒に来た警備員のスマートフォンを取り上げて使用する。そこへ追い付いてきたあの中年サラリーマンが、持っていた消防斧で病院のガラス扉を破壊しながら中で警戒に当たっていた警察官を殺害し、他の感染者らも乱入させて居合わせた患者たちを襲わせる。そうして瞬く間に院内にも感染が広がり、豹変した人々は血みどろの殺し合いと乱交を始める。とっさに救急担架の下に隠れた警備員は、サラリーマンがシェンを強姦し感染させる様子を垣間見る。やがて隙を見てその場から逃げ出そうとするも、凶暴化したシェンと鉢合わせになった上に追ってきた感染者たちに捕らえられてしまい、シェンに医療用カッターで下腹部を切り刻まれて敢え無く命を落とす。
同じ頃、ジュンジョーは郊外に逃げ込み、通りかかったバスケットボールコートで感染者の男子生徒達にリンチされている同級生を発見し救出しようとするが、その被害者の生徒も既に感染者となっていた。執拗に攻撃してくる生徒たちからどうにか逃げ切ると、ジュンジョーはようやくカイティンと連絡を取ることができたが、会話の最中に幻覚を見て、感染の兆候を感じる。
一方のカイティンは、病院内部で執念深い中年サラリーマンに追い詰められるも、消火器を使った反撃で彼の顔面を叩き潰して息の根を止める。その直後、近くにあった産婦人科の病室の扉が開き、中にいたウイルス学者のウォン博士に救出される。厳重な防護服に身を包んだウォン博士は、銃を構えながら防疫のため手錠による身柄拘束と消毒シャワーを浴びるよう、感染者の返り血に染まっているカイティンに要求する。それに渋々従った彼女に対しウォン博士は、感染者が涙を流す理由について、人を傷つけたい欲望を制御できないことへの強い罪悪感によるものだと説明する。消毒シャワーを浴び終えて手術着に着替えたカイティンは、汚染された服を捨てようとした医療廃棄物用の箱の中に、アルヴィンウイルスに感染し泣き声を上げる乳児を発見する。その直後、ウォン博士は抗体の有無を確認するためにカイティンにアルヴィンウイルスの混じった血液を注射してから泣き続ける感染乳児を窒息死させ、この産婦人科に取り残されていて死を待つだけの乳児達の中に抗体を持った者がいる可能性を考えて同様のテストをしたこと、乳児達に抗体を持つ者は1人もいなかったが感染者の餌食になるよりはマシだったと語気を荒げながら釈明する。
その間、カイティンは密かにスマートフォンで病院に駆けつけたジュンジョーに自分の居場所を知らせる。カイティンにアルヴィンウイルスの抗体があることを確認したウォン博士は、ワクチンを精製するため軍に救助を要請し、自分が同行しなければ正当防衛で兵士に射殺されるだろうとカイティンへ警告する。救援のヘリコプターと合流するためウォン博士は武装して病室を出るが、外にいた感染者らに不意打ちされて片足に深手を負い、何とか感染者を射殺したものの片足の傷から感染が時間の問題となってしまう。そこにカイティンからの連絡を受けたジュンジョーが現れるが、彼も既に凶暴化した感染者となっていた。ウォン博士はジュンジョーの首を撃つも反撃を食らい、赤ちゃんを殺すのは気分が良かったと言い残して絶命する。
壮絶な2人の殺し合いの隙にカイティンはヘリポートがある屋上へ通じる階段に逃げ込み、設置された鉄格子の扉に鍵をかけて閉鎖する。致命傷を負いながらも追ってきたジュンジョーは、鉄格子を隔てて感染の素晴らしさを告げ、カイティンを愛するが故になぶり殺したいと伝える。絶望のあまりとうとう泣き笑いするカイティンは階段を上り、扉を開けてヘリポートのある外の屋上へと出るが、側にウォン博士がいない彼女が生還する可能性は絶望的でしかなく、直後に屋上から数発の銃声が鳴り響く。そして鉄格子の向こうに残されたジュンジョーが邪悪な笑みを浮かべながら事切れ、物語は幕を下ろす。
キャスト
[編集]- カイティン(曾凱婷) - レジーナ・レイ(雷嘉納)
- ジュンジョー(廖俊喆) - ベラント・チュウ(朱軒洋)
- 中年サラリーマン(陳嘉明) - ジョニー・ワン(王自強)
- ウォン・ジャンリアン博士(翁彰良博士) - ラン・ウエイホア(藍葦華)
- リン(林桑) - ラルフ・チウ(邱彥翔)
- シェン・リーシン(沈莉欣) - アップル・チェン(陳映如)
- 老婦人 - 周之民
- シエ・グオロン総統(謝国栄總統) - 蔡岸龍
- 将軍(將軍) - 劉昌翰
脚注
[編集]- ^ “Taiwan-made zombie movie creeps into theaters Friday”. Taiwan News (2021年1月18日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ a b “凶悪なR18+ホラー「哭悲」を生み出した理由とは? ロブ・ジャバズ監督が語る初の実写映画挑戦”. 映画.com (2022年6月30日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ “RAVEN BANNER ENTERTAINMENT UNLEASHES REDBAND TRAILER FOR “THE SADNESS””. Rue Morgue (2021年8月14日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ “Fantasia 2021 Announces Final Wave Of Titles And Events”. Fangoria (2021年7月21日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ “‘Voice of Silence',‘All the Moons' Top 2021 Fantasia Film Festival Awards”. Variety (2021年8月26日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ “台灣影評人協會 Taiwan Film Critics Society”. Facebook (2022年3月31日). 2022年8月26日閲覧。