合成樹脂添加剤

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合成樹脂添加剤(ごうせいじゅしてんかざい)は、合成樹脂劣化を抑制したり、耐燃性可塑性などの付加価値を持たせることを目的に使用される添加剤の総称。劣化を抑制するものを安定剤、付加価値を持たせるものを改質剤と呼ぶ。

安定剤[編集]

ポリ塩化ビニル樹脂と、その他の合成樹脂とでは劣化機構が異なるため、使用される安定剤も異なる。

塩ビ用安定剤[編集]

ポリ塩化ビニルは、製造・加工時や使用時において熱や紫外線、酸素などにより塩化水素が脱離する分解反応が起き、長鎖ポリエンが生成し着色が起きる。脱離した塩化水素や、副生成物の塩化亜鉛は、さらに塩ビの分解を促進させる。塩化水素の捕捉・中和や、副生金属塩化物の脱塩化水素作用のため、各種金属石鹸有機スズ化合物などが用いられる。

金属石鹸
ステアリン酸亜鉛・ステアリン酸バリウム・ステアリン酸カルシウムが代表的である。熱安定性や着色性、ブルームしやすさなど性質が異なるため、複数の種類を混合して使用される。
有機スズ化合物
有機スズメルカプタイドが代表的であり、耐候性が求められる場合には有機スズマレエートが使われる。これらに、滑剤としての性質を併せ持った有機スズカルボキシレートが併用される。
鉛化合物
鉛白や三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛なども塩化水素捕捉能を持つが、有毒であるためスズ系安定剤に切り替えられつつある。
安定化助剤
主安定剤に併用し、熱安定性・透明性・着色防止効果を持たせるため、ホスファイト類、エポキシ化合物、β-ジケトンなどの有機安定化助剤、および過塩素酸金属塩、ハイドロタルサイトなどの無機安定化助剤が使われる。
ホスファイト類
置換基の構造により、トリアルキルホスファイト、アルキルアリルホスファイト、トリアリルホスファイトに分類される。過酸化物分解能があり、主に着色抑制目的で添加されるが、塩化亜鉛捕捉作用や不安定塩素置換作用も併せ持つ。
エポキシ化合物
エポキシ化大豆油やビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが代表的である。塩化水素捕捉、アリル塩素置換により塩ビの熱安定性を向上させる。
β-ジケトン
強い着色防止作用を持ち、金属石鹸(主に亜鉛塩)と併用される。ジベンゾイルメタンやベンゾイルアセトンが代表的である。
過塩素酸金属塩
金属石鹸と併用して、着色防止・熱安定性を持たせる。作用機構は研究途上であるが、アリル塩素の置換によるものと見られている。過塩素酸バリウム過塩素酸ナトリウムが代表的である。
ハイドロタルサイト
塩化水素捕捉作用で、主に熱安定性を向上させる。

一般合成樹脂用安定剤[編集]

熱による酸化劣化を防止するものを酸化防止剤、光(主に紫外線)による酸化劣化を防止するものを光安定剤と総称する。ポリプロピレンやABS樹脂など、塩ビ以外のほとんどの合成樹脂に使用される。

酸化防止剤
ラジカル捕捉作用を持つフェノール系・芳香族アミン系酸化防止剤、過酸化物分解作用を持つ硫黄系・リン系酸化防止剤が用いられる。芳香族アミン系酸化防止剤は変色性が強いため、プラスチックに用いることは稀である。
フェノール系酸化防止剤
ラジカル捕捉剤として、熱酸化の過程で生じるペルオキシラジカルを捕捉する。熱酸化防止作用に優れ、ほとんどのプラスチックに添加されている。リン系・硫黄系酸化防止剤との相乗効果もある。
硫黄系酸化防止剤
分解生成物であるヒドロペルオキシド(ROOH)を安定なROH基に変換する。日本では住友化学(商品名スミライザー)やADEKA(アデカスタブ)などが製造している。
リン系酸化防止剤
硫黄系と同様、ヒドロぺルオキシドを分解する。
光安定剤
連鎖開始阻害作用を持つ紫外線吸収剤と、ラジカル捕捉作用を持つヒンダードアミン系安定剤、双方の作用を併せ持つベンゾエート系安定剤に大別できる。ベンゾエート系安定剤は着色を生じるが、自動車用バンパーなどに使われている。
紫外線吸収剤
紫外線を吸収し、プラスチックに無害な運動エネルギーや熱エネルギーに変換する。主にベンゾトリアゾール系とベンゾフェノン系が使われる。
ヒンダードアミン系安定剤
紫外線により生成したラジカルを捕捉し、着色防止・光沢保持の効果をもたらす。熱酸化の防止にも有効である。

改質剤[編集]

造核剤
結晶性樹脂製造時の結晶化促進効果があり、透明性・曲げ弾性を向上させる。ポリプロピレン樹脂に使われることがほとんどである。物性向上作用を持つ金属塩タイプと、透明性向上作用のあるソルビトールアセタールタイプとがあるが、両方の効果のある造核剤も上市されている。
帯電防止剤
合成樹脂の帯電を緩和して、汚れの吸着、電子回路の損傷、放電によるショック、合成繊維のまとわりつきを軽減させる効果を持つ。界面活性剤が中心であるが、一部カーボンや金属酸化物も用いられる。界面活性剤のうち、非イオン系は耐熱性が良く、練り込み添加が中心である。カチオン系も練り込み添加が中心であるが、耐熱性・着色性に問題があるものが多く、これらの問題を改善したものが開発されている。アニオン系はプラスチックとの相溶性が劣るため、合成繊維の表面塗布が中心である。
滑剤
難燃剤
可塑剤

参考文献[編集]

  • 皆川源信『プラスチック添加剤活用ノート』工業調査会、1996年。ISBN 4-7693-4103-2