叡王戦

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叡王戦(えいおうせん)は、ドワンゴ主催による将棋タイトル戦である。

概要[編集]

一般棋戦時代(第2期まで)[編集]

本棋戦発足以前、プロ棋士対コンピュータ将棋ソフトウェアの棋戦である将棋電王戦が開催されていたが、2015年の電王戦FINALをもって団体戦としての電王戦は一つの区切りとされた。

電王戦に類する棋戦の存続を希望したドワンゴが日本将棋連盟と協議した結果、まずドワンゴ主催で新たな一般棋戦を立ち上げ、優勝者が、電王トーナメントを勝ちあがったコンピュータ将棋ソフトウェアと、装いを新たにした電王戦[注 1]で対局する事で合意した。 新棋戦の名称は一般公募から選出され、公募案から主催者が9つ[注 2]に絞り込んだ上で、公式サイトから一般投票[注 3]を行い、「叡王戦」に決定[注 4][1]。優勝者は「叡王」の称号を得る。対局の模様は、約50〜60局がニコニコ生放送で生中継される。

電王戦FINALまではタイトル保持者は出場しなかったが、本棋戦の第1期には糸谷哲郎竜王郷田真隆王将が出場した[注 5]。なお、本棋戦とその関連イベントでは、タイトル保持者であっても段位で呼称した[注 6]

平成28年度の第2期までは日本将棋連盟のタイトル戦以外の公式棋戦では最上位に位置付けられていた(第2期叡王戦の契約金は1億2500万円[2]。優勝賞金は非公表)

タイトル戦時代(第3期以降)[編集]

電王戦の終了にともない、2017年5月20日に第3期以降は王座戦以来34年ぶりにタイトル戦へ昇格すると発表された。エントリー制から全棋士参加棋戦に変更され、タイトル保持者の段位呼称も廃止された。主催が新聞社・通信社以外のタイトル戦は史上初[3]。契約金の額による序列は竜王名人に次ぐ三位とされている。また、決勝七番勝負においては、過去に例がない変則持ち時間制の導入のほか、タイトル戦としては初の一日制七番勝負・事前振り駒・チェスクロック方式で行われる(叡王戦#決勝七番勝負)。 叡王の永世称号については未定(2017年5月現在)。

第2期までの方式[編集]

段位別予選[編集]

現役プロ棋士のエントリー制[注 7]で、予選はかつての天王戦と同様に段位別に勝ち残り式トーナメントを行い本戦出場者を決める、「段位別予選[注 8]」の方式を採用している。年度途中で引退が確定しエントリー資格のない棋士を除き、第1期は159名中154名[注 9]、第2期は162名中158名が出場した[注 10]

各段位予選からの本戦進出枠は、「九段4名、八〜五段各2名ずつ、四段1名」の基本13枠に、タイトル保持者数を勘案して割り振った追加3枠の、計16枠[4]。したがって年度によって各段位の本戦進出枠は変動する。第1期は「九段6名、八段3名」[1]、第2期からは前期の優勝者(叡王)が本戦シードとなり、予選からの出場枠は「九段5名、八段3名」となった[5]

各段位の出場枠に応じて分けられたブロック[注 11]ごとに行われる、勝ち残り式トーナメントの勝者が本戦への出場権を得る。段位やブロックの順を問わず、ランダムで数日おきに消化する。ニコニコ生放送で中継される時は、1日につき2局または3局が放送される。持ち時間は各1時間(チェスクロック方式)で、切れたら1手1分未満。

本戦トーナメント[編集]

予選勝者(第2期は前期優勝者(叡王)を含む)16枠の配置を再抽選した後、勝ち残り式トーナメントにより決勝進出者2名を決定する。準決勝までの持ち時間は各1時間(チェスクロック方式)で、切れたら1手1分未満。

決勝三番勝負[編集]

決勝進出者2名の三番勝負で優勝者を決定する。持ち時間各5時間(チェスクロック方式)で、切れたら1手1分未満。昼と夕方にそれぞれ1時間ずつの休憩を挟む。

第3期以降の方式[編集]

以下、公式サイト等[3][6]の記載により、2017年5月時点で公表されており、タイトル戦に昇格する第3期から変更される項目をおもに記載する。

段位別予選[編集]

第2期まではエントリー制(出場するか否かは棋士の任意)であったが、他の棋戦同様全ての現役棋士に出場義務が課される。また、四段予選には主催者推薦により女流棋士1名、アマチュア選手1名へ出場権が与えられる。持ち時間は従来通り各1時間(チェスクロック方式、切れたら1手60秒未満)。

本戦トーナメント[編集]

持ち時間は各3時間(チェスクロック方式、切れたら1手60秒未満)に設定された。

決勝七番勝負[編集]

前期叡王と本戦トーナメントの優勝者が七番勝負を行い、先に4勝した方が叡王の称号を得る[注 12]

「第1局・第2局」「第3局・第4局」「第5局・第6局」のいずれかに、「各1時間」「各3時間」「各5時間」が振り分けられ、最終第7局までもつれ込んだ場合は各6時間となる変則持ち時間制で行われる(いずれもチェスクロック方式、切れたら1手60秒未満)。このルールは、当時の日本将棋連盟会長である佐藤康光の考案によるもので、「短距離走・中距離走・長距離走のような形で、戦略性と総合力が求められる」と解説している。

第1局から第6局までの持ち時間は、事前に行われる振り駒の結果を受けて、各対局者が決定する。上位者の振り歩先で、歩が3枚以上なら上位者、とが3枚以上で下位者が第1・3・5局で先手となるが、第1局の先手は「第1・2局」の持ち時間を各1・3・5時間の中から選ぶ権利を持つ。第1局の後手は、選ばれなかった残り2つのうちどちらかを「第3・4局」の持ち時間に選び、残った時間が「第5・6局」に割り当てられる。

参考例

  1. 「第1局・第2局」第1局の先手が「各1時間・3時間・5時間」の中から「1時間」を選択
  2. 「第3局・第4局」第1局の後手が残りの「3時間」「5時間」から「5時間」を選択
  3. 「第5局・第6局」先手・後手ともに選ばなかった「3時間」に決定
  4. 「第7局」が開催される場合、「各6時間」となる

歴代結果[編集]

決勝結果[編集]

○●は優勝者から見た勝敗。段位は各期における最終対局時のもの。

開催年度 優勝者 勝敗 準優勝者 準決勝敗退
1 2015年 山崎隆之八段 ○○ 郷田真隆九段(王将) 行方尚史八段 村山慈明七段
2 2016年 佐藤天彦九段(名人) ○○ 千田翔太五段 羽生善治九段(王位・王座・棋聖) 豊島将之七段

棋士別成績[編集]

棋士 優勝 準優 優勝年度 準優勝年度
山崎隆之 1 0 2015
佐藤天彦 1 0 2016
郷田真隆 0 1   2015
千田翔太 0 1   2016

記録[編集]

  • 最年少 佐藤天彦 28歳 第2期
  • 最年長 山崎隆之 34歳 第1期

エピソード[編集]

「初代叡王」
羽生善治名人、渡辺明棋王ら5名を除き、ほとんどの棋士が参加した第1期叡王戦において山崎隆之八段と郷田真隆王将が勝ち上がり、決勝三番勝負に進出した。初代叡王を決める決勝三番勝負において、2連勝で山崎隆之八段が優勝し、電王戦への出場権を獲得した。
開始時刻勘違いによる不戦敗
第2期叡王戦、2016年10月30日の久保利明九段と豊島将之七段の対局において、開始時刻である午後2時の1時間後までに久保が現れず、久保の不戦敗が決定した。久保は謝罪のため、同日午後6時30分、別の対局の中継冒頭に登場し、「開始時刻の午後2時を午後7時と勘違いし、気付いた時には大阪の自宅にいて既に間に合わない状態であった」などの経緯を説明した[7]。なお、久保と豊島はドワンゴのイベントとしてエキシビションの対局を行い、久保が勝利を収めた。
羽生善治三冠の参戦、名人の優勝で将棋ソフトと初対決へ
第1期への出場を見送った羽生善治三冠が第2期で初参加し、注目を浴びた。電王トーナメント優勝ソフトのPonanza開発者である山本一成は羽生との対局を長年待ち望んでいたが[8][9]、準決勝で佐藤天彦名人に敗れた。一方佐藤はそのまま勝ちあがって優勝し、電王戦で将棋ソフトと現役タイトルホルダー、特にプロの頂点とされる名人が初めての対局を行うこととなった。
電王戦の終了とタイトル戦への昇格
電王戦が終了したことにより、叡王戦は棋士代表決定戦としての役割を終え、第3期からタイトル戦として生まれ変わった。

注釈[編集]

  1. ^ 2015年以前の電王戦は「第n回」(最終回のみ「FINAL」)だったが、2016年からは他の棋戦と同じく「第n期」となる。
  2. ^ 覇王、叡王、賢王、棋帝、抗帝、仁王、天帝、一刀座、棋神。
  3. ^ 投票結果(得票数等)は公表されていない。
  4. ^ 名称の由来は「これに勝ったものは電王と戦うのだから、人間の王の意味にしたい。ならば、人間しか持たない、知恵や叡智を競う将棋の頂点に相応しい称号を考えた。『叡』という字には明らか、聡明、物の道理に通じた、という意味がある(ニコニコ大百科による)。将棋の道理を人間とコンピュータがどちらが理解しているか、という意味もこめて」としている。
  5. ^ 羽生善治名人王位王座棋聖)、渡辺明棋王は欠場。段位は当時のもの。
  6. ^ 仮に名人保持者が出場しても、「〜名人」ではなく「〜九段」となる。この措置は叡王戦のみ。なお、第1期優勝者の山崎隆之は第2期では叡王と呼称された。
  7. ^ プロ棋戦史上初、そして2015年現在唯一。
  8. ^ 年度初め(4月1日現在)の段位を基にトーナメントを決定する。そのため、それ以降に昇段した棋士がいる場合、実際の段位より低段位の予選に出場することになる。
  9. ^ 不参加は羽生善治渡辺明有森浩三堀口弘治堀口一史座の5名
  10. ^ 不参加は渡辺明、橋本崇載、堀口一史座、上村亘の4名
  11. ^ ドワンゴではアルファベット(A、B…)、日本将棋連盟ではアラビア数字(1、2…)で表記する。ただし、お互いのブロックの表示の順番は異なる(Aブロック = 1 ではない)。
  12. ^ 第3期のみ、前期叡王は本戦トーナメントからの出場。

脚注[編集]

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  1. ^ a b ドワンゴ・日本将棋連盟主催 新棋戦名は「叡王戦」に決定、154名のプロ棋士がエントリー”. 日本将棋連盟 (2015年6月18日). 2015年6月19日閲覧。
  2. ^ 予算収支書 公益社団法人日本将棋連盟 2016年11月15日閲覧
  3. ^ a b 将棋の「叡王戦」がタイトル戦に昇格! 王座戦以来34年ぶり - スポーツ報知・2017年5月20日
  4. ^ 「第1期電王戦」2016年春開催へ、新棋戦の優勝者対最強ソフトの2日制2番勝負に - マイナビニュース・2015年6月3日
  5. ^ 開催概要 - 叡王戦公式サイト
  6. ^ 第3期 叡王戦
  7. ^ 久保利明九段、異例の遅刻で不戦敗 相手の豊島将之七段に「良い人すぎる」の声【将棋】 ハフィントンポスト 2016年10月31日
  8. ^ HEROZでponanza開発者の山本一成が「将棋電王トーナメント」にて優勝し”電王”の称号を獲得”. 2016年12月25日閲覧。
  9. ^ 羽生善治名人と戦いたい”. 2016年12月25日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]