リフレクション攻撃
リフレクション攻撃(りふれくしょんこうげき、英: Reflection attack)または反射攻撃(はんしゃこうげき)は、コンピュータセキュリティの分野において、通信や処理を本来の宛先とは異なる方向に跳ね返す(反射させる)論理的な仕組みを用いたサイバー攻撃手法の総称である。主に、双方向で同じ通信プロトコルを使用するチャレンジ・レスポンス認証システムを攻撃する「暗号・認証」の文脈と、DDoSにおける反射サーバを利用した攻撃の文脈で用いられる、2つの異なる意味で使用される。
前者の場合、相手を認証するために各当事者が同じチャレンジレスポンスプロトコルを使用している場合に成立し、標的を騙して自身のチャレンジに対する応答を提供させることを基本的な考え方とする[1]。名称の由来は、自分が解くべき暗号問題や受け取るべき返答データを、鏡や壁のように他のシステムを利用して標的にそのまま跳ね返す仕組みから来ている。
暗号・認証におけるリフレクション攻撃
[編集]暗号や認証の文脈におけるリフレクション攻撃は、チャレンジ・レスポンス認証システムをターゲットとし、不正ログインなどのなりすましを目的とする手法である[2]。自分が解くべき問題を、「鏡」に反射させるように相手にそのまま返すという論理的な動きから名付けられている。
攻撃の概要
[編集]一般的な攻撃の手順は以下の通りである。
- 攻撃者が標的への接続を開始する。
- 標的は攻撃者を認証するため、攻撃者にチャレンジを送信する。
- 攻撃者は標的へ別の接続を開き、先ほどのチャレンジを自分自身のチャレンジとして標的に送信する。
- 標的はそのチャレンジに応答する。
- 攻撃者はその応答を最初の接続で標的へ送り返す。
認証プロトコルが慎重に設計されていない場合、標的はその応答を有効なものとして受け入れるため、攻撃者は完全に認証された1つのチャネル接続を確立することができる(もう1つの接続は単に破棄される)。
解決策
[編集]この攻撃に対する最も一般的な解決策として、応答者が自身の識別子を応答内に含めて送信する手法がある。これにより、自身の識別子が含まれた応答を受信した場合にそれを拒否することができる[3]。具体的な手順は以下の通りである。
- アリスはボブへの接続を開始する。
- ボブはノンス N を送信することで、アリスにチャレンジを行う。B → A: N
- アリスは自身の識別子とノンスを用い、共有鍵 Kab で計算したMACを送り返すことで応答する。A → B: MACKab{A, N}
- ボブはメッセージをチェックしてMACを検証し、それが過去に自分が送信したメッセージではなくアリスからのものであることを確認する。具体的には、BではなくAで検証できること、およびチャレンジで送信したものと同じノンスであるかを確認し、その後にメッセージを受け入れる。
また、その他の有効な解決策として以下が挙げられる。
- 標的側が自身のチャレンジに応答する前に、まず接続を開始した側がチャレンジに応答することを要求する。
- 双方向で異なる鍵やプロトコルを使用することを要求する。
DDoSにおけるリフレクション攻撃
[編集]ネットワークやDDoS攻撃の文脈におけるリフレクション攻撃は、標的のサーバー本体やネットワーク回線をターゲットとし、サービスの可用性を妨害・停止させることを目的とする手法である[4]。DRDoS攻撃(分散型反射サービス妨害攻撃)のベースとなる手法として知られている。攻撃者が送信元IPアドレスを標的のものの向けに偽装し、インターネット上の不特定多数の正常なサーバー(反射サーバー)に対してリクエストを送信することで、その反射サーバーからの大量の「返答データ(レスポンス)」を標的のサーバー本体やネットワーク回線へと一斉に送り付ける。自分が受け取るべき返答データを、第三者のサーバーを「壁」のように使って標的に反射させるという論理的な動きから、同じくリフレクション攻撃と呼ばれる。
例としては、 DNSリフレクション攻撃(DNSアンプ攻撃)、NTPリフレクション攻撃、SSDPリフレクション攻撃、MEMCACHEDリフレクション攻撃などが挙げられる。
関連項目
[編集]- リプレイ攻撃 - 盗聴した暗号化データや認証セッション情報を、そのままサーバーに再送信することで、正規のユーザーになりすます攻撃
- 中間者攻撃 - 通信する二者間に密かに割り込んで通信内容を盗聴・改ざんし、双方が気づかないまま偽の情報をやり取りさせる攻撃
- パス・ザ・ハッシュ攻撃 - 端末のメモリや認証システムに保存されているハッシュ値をそのまま認証サーバーに送信して不正ログインする攻撃
- DoS攻撃
脚注
[編集]- ↑ Tanenbaum, Andrew S. (2002) (英語). Computer Networks (4th ed.). Prentice Hall. pp. 787-790. ISBN 0-13-038488-7
- ↑ “Challenge-response authentication (チャレンジレスポンス認証)”. MDN Web Docs. 2026年6月11日閲覧。
- ↑ Anderson, Ross J. (2001) (英語). Security Engineering: A Guide to Building Dependable Distributed Systems (1st ed.). Wiley. pp. 21. ISBN 0-471-38922-6 2026年6月11日閲覧。
- ↑ “偽装IPのDNS応答が押し寄せる|DNSリフレクション攻撃とは”. LRM株式会社. 2026年6月11日閲覧。