双葉学園みのり

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双葉学園みのり
児童養護施設「双葉学園みのり」の外観
児童養護施設「双葉学園みのり」の外観
創立者 西田 好之助
団体種類 社会福祉法人
設立 2018年4月
所在地 福岡県北九州市八幡西区
西川頭町3番5号
北緯33度51分34.5秒 東経130度46分46.8秒 / 北緯33.859583度 東経130.779667度 / 33.859583; 130.779667座標: 北緯33度51分34.5秒 東経130度46分46.8秒 / 北緯33.859583度 東経130.779667度 / 33.859583; 130.779667
法人番号 1290805000512
起源 双葉学園
主要人物

施設長 三舩󠄁 里佳

指導員 鈴木貴美子
(元双葉学園の施設長)
活動地域 福岡県北九州市
活動内容 児童養護施設の運営
従業員数 32名(2020年7月現在)
親団体 双葉会
ウェブサイト https://futaba-minori.com/
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双葉学園みのり(ふたばがくえんみのり)とは、福岡県北九州市小倉南区にある双葉学園から2018年4月に分離し、同市八幡西区に設立された児童養護施設で、福岡県北九州市において最初に「ユニットケア方式[注釈 1]」を採用した施設である。

概要[編集]

入所資格[編集]

当該施設は 児童福祉法に定める児童福祉施設の一つであることから、入所できる児童は福岡県北九州市内に住む2歳から概ね18歳の児童(延長措置あり)で、保護者のいない児童、又は虐待されている児童、もしくはその他環境上養護を要する児童に限られる(児童福祉法41条)[1]

定員・職員数[編集]

入所できる児童の定員は45名で、職員数は32名(常勤30名、非常勤2名)となっている。そのうち資格を有する職員は、保育士16名、栄養士1名、看護師1名、心理士1名である(2020年7月現在)[1][2]。ただし、当該施設の入所児童の半数が発達障害児であるにも係わらず、経験の浅い若手の保育士・児童指導員が多いため、第三者評価機関から経験豊富な職員の採用が必要と指摘されている[2]

施設・設備[編集]

施設をいくつかのユニット[注釈 1]に分けて、各ユニット毎に、玄関、バルコニー、リビング、キッチンなどを設置し、家庭に近い環境整備に取り組んでいる。入所児童用の居室は46室、親子生活訓練室1室、幼児室2室、ディルーム1室がある。主な設備としては、厨房1室、食堂1室、倉庫6室、リビングダイニング6室、浴室7室、トイレ22か所、宿直室2室及び洗濯室2室がある。このほかに心理療法室、医務室、相談室静養室、会議室、事務室、保育士室、学習室及び施設長室などを備えている[1][2]

また、当該施設は、地域の行事や活動に積極的に参加し、施設の食堂を地域の会合に提供し、災害時の避難場所に指定され、地域と協力関係を築いている[1][2]

施設独自の取組[編集]

メーキャップアーティスト永島吏枝子を施設に招いて、小学6年生から大学生までの女子児童及び女性入所者を対象に、「メーク講座」を2021年11月に開催している[3]

理念[編集]

理念として「児童の基本的人権の尊重を大前提とし、児童が社会生活を豊かに送れる様に生活習慣や社会規範習得の指導、援助を行う」、基本方針として「家庭的雰囲気での生活を通じ情緒の安定を図る」「自主性、善悪判断力、他者への配慮といった社会生活で必要な精神を育む」といった内容を定めている[1]

施設長[編集]

2018年に4月に双葉学園から分離した「双葉学園みのり」の歴代施設長は次のとおりである[1]

  • 初代施設長:西田 孝子(2018年就任)
  • 2代目施設長:奥村長作(2020年就任)
  • 3代目施設長:三舩󠄁里佳(2020年就任)

※西田孝子は2020年1月に解任され[4]、後任の奥村長作は約半年で退任した[1]

運営[編集]

双葉学園みのりの運営法人である双葉会は、福岡県北九州市小倉南区長行東に本部を置き、おおよそ70年の歴史がある社会福祉法人である。主な事業としては、双葉学園など計5ヶ所での「児童福祉事業」及び双葉苑や第二双葉苑(施設長は、いずれも西田二郎[5][6]など10ヶ所での「高齢者福祉事業」がある(2019年2月現在)[4]

歴史[編集]

  • 1945年 - 西田好之助が戦災孤児収容所を、福岡県北九州市小倉南区で創立した[1][7]
  • 1947年 - 西田好之助施設長が退任し、その後任に西田サンが就任した[1]
  • 1948年 - 児童福祉法により養護施設として認定され、児童入所定員は30名であった[1]
  • 1951年 - 施設の増築工事により入所定員は50名となった[1]
  • 1953年 - 前年の増築工事により入所定員は75名となった[1]
  • 1954年 - 運営法人の双葉会が社会福祉法人となった[1][7]
  • 1955年 - 増築工事により入所定員は100名となった[1]
  • 1957年 - 西田サン施設長が退任し、その後任に西田稔夫が就任した[1]
  • 1965年 - 前施設の新築工事が完了[1]
  • 1992年 - 分園型自活訓練事業開始[1]
  • 1995年 - 施設の新築工事が完了した(現在地に移転)[1]
  • 1996年 - 双葉会の西田稔夫理事長が藍綬褒章を受章した[8]
  • 1996年 - 男子野球部が福岡県児童福祉施設球技大会で優勝した[9]
  • 1998年 - 女子バレー部が九州地区児童福祉施設球技大会優勝した[10]
  • 1999年 - 女子バレー部が福岡県児童福祉施設球技大会で優勝した[11]
  • 2000年 - 女子バレー部が福岡県児童福祉施設球技大会で優勝した[12]
  • 2000年 - 20歳代の男性職員が男子児童1名に対し身体的虐待をし、その男子児童は1週間の入院を要したことが発覚した[13][14]
  • 2000年 - 女子バレー部が九州地区児童福祉施設球技大会で2年ぶり2度目の優勝をした[15]
  • 2001年 - 男子野球部及びバレーボール部が福岡県児童福祉施設球技大会で共に優勝した[16]
  • 2004年 - 入所定員は110名となった[1]。小規模グループケアを実施した[1]
  • 2014年 - 男子野球部が九州地区児童福祉施設球技大会で優勝し、北橋健治北九州市長を表敬訪問した[17]
  • 2017年 - 児童指導員の男性による女子児童への性的虐待が発覚した[4][18][19]
  • 2017年- 西田稔夫施設長が退任し、その後任に西田孝子が就任した[1]
  • 2017年 - この施設を運営する双葉会において、児童養護施設への市の補助金約6000万円の不正受給、約600万円の使途不明金が発生するなど、計25件の不適切な業務運営が発覚した[20][21]
  • 2018年4月 - 双葉学園より分離し、福岡県北九州市八幡西区に「双葉学園みのり」が新設された。初代施設長は西田孝子が就任した[1]
  • 2018年8月 - 児童養護施設「双葉学園みのり」開設のために使用した約1400万円について、見積書・発注書・契約書・請書などが保管されていないことが発覚した[22]
  • 2018年9月 - 西田孝子は、月額44万円であった自身の給料を段階的に74万円まで引き上げたことが原因で、市役所から「改善勧告」を受けた[23]
  • 2018年~2019年 - 西田孝子施設長は定められた勤務時間に就業せず、勤務先とは別の双葉学園の給食を「検食」と称して自宅に持ち帰っていた[24]
  • 2019年6月 - 補助金など約6000万円の不正受給、約600万円の使途不明金が発生させたことで退任していた理事が、再び理事に再任した[25]
  • 2019年11月 - 前述の不祥事により退任した者について、市役所は「理事に復職するのは、健全化を目指す組織の対応として考えられない」と指摘。親族関係を重視した理事会体制を改め、理事の資質を確保することなどを求める「改善勧告」を発出した[4][24]
  • 2019年11月 - 複数の男性職員による男子児童4名に対する性的虐待及び男子児童3名に対する身体的虐待などに係る、社会福祉審議会の「提言[26]」及び市役所の「改善勧告[24]」を受けた[4][27][28][29][30]
  • 2019年12月 - 双葉学園(本園)の鈴木貴美子施設長(旧姓:西田)の長男は、児童養護施設で使用する携帯電話を2016年からアメリカで使用し、約49万円もの海外パケット料金を発生させていたことが発覚した[31]
  • 2020年2月 - 西田孝子は施設長を解任され、その後任に奥村長作が就任し[1][4]双葉学園(本園)では、鈴木貴美子(旧姓:西田)が施設長を解任され[4]、その後、指導員として双葉学園みのりに入職した。
  • 2020年8月 - 奥村長作は施設長を退任し、その後任に三舩󠄁里佳が就任した[1]
  • 2021年2月 - 双葉学園(本園)の施設長を解任され、その後、双葉学園みのりに入職していた鈴木貴美子(旧姓:西田)は、 双葉学園(本園)勤務時に、アメリカの高校に在学していた長男に双葉会の携帯電話を使用させ、約49万円を双葉会に支払わせていた[31]。この不正使用の返金に応じないため、双葉会は鈴木貴美子を相手に民事訴訟を提訴した[32]
  • 2021年12月 - 福岡県弁護士会が入所児童に対する人権侵害があるとして、施設と双葉会に対し「人権救済勧告」を執行した[4][33][34]

監査結果[編集]

2018年度[編集]

この施設の運営法人である双葉会は、児童養護施設への市の補助金など約6000万円の不正受給、約600万円の使途不明金が発生するなど、計25件の不適切な業務運営が2017年に発覚していた[35][36]。この事件について北九州市役所は2018年6月から同年8月の2ヶ月間にわたり特別指導監査を行い、同年年8月に双葉学園及び双葉会に対して次のとおり改善勧告をした[37]

  • 児童指導の業務に従事していない事務員を、児童指導員保育士として位置づけ、北九州市役所から多額の「措置費」を不当に受給していた[20][21]
  • 双葉学園みのりの開設に必要な物品等の経費1400万円について、これに係る見積書、発注書、契約書、請求書などが、ほとんど保存されていなかった[22]

2019年度[編集]

児童指導員の男性44歳が少なくとも3年にわたり、入所している男子小学生2名及び男子中学生2名に対し、強制性交や児童買春などをして、法令及び条例に違反していた。この事件について、北九州市役所は2019年6月から同年11月の5ヶ月間にわたり特別指導監査を行い、2019年11月に双葉学園みのりに対して次のとおり改善勧告をした[24][27][28][29][30][38]。。

  • 施設長には適格性の要件を満たす人材を配置し、施設の管理運営体制の再構築すること。
  • 施設の管理運営や再発防止が適正に実施ために、内部統制に係る体制・システムを構築すること。
  • 虐待防止やケアの質を高める研修などを定期的、計画的に行い、職員の処遇スキルと倫理意識の向上を図ること。

2020年度[編集]

北九州市役所が一般指導監査において指摘した事項は次のとおりであった[39][40]

  • 毎月最低1回は避難訓練及び消火訓練を実施しなければならないが、実施していない月が複数あった。
  • 検食簿の記録に、検食者名、検食時間などの記載がない日が多数あった。
  • 双葉学園みのりの西田孝子施設長が、双葉学園の給食を検食と称して自宅に持ち帰っていた。
  • 前年に続き双葉会の監査においては、双葉学園の鈴木貴美子施設長の長男(当時高校生)が、児童養護施設で使用する携帯電話を2016年からアメリカのニューヨーク州で使用し、約49万円もの海外パケット料金を発生させていたことの指摘があった。しかし、鈴木貴美子は支払いに応じなかったことから、双葉会は民事訴訟を提起した[32]

2021年度[編集]

北九州市役所が一般指導監査において指摘した事項はなかった[41]

2022年度[編集]

北九州市役所が一般指導監査で新たに指摘した事項はなかった[42]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b ユニットケア・グループホーム等の別は、児童養護施設#分類を参照のこと。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 児童養護施設「双葉学園みのり」公式webサイト”. futaba-minori.com. 2022年8月26日閲覧。
  2. ^ a b c d 社会的養護施設第三者評価結果 双葉学園みのり”. 社会福祉法人全国社会福祉協議会. 2022年8月26日閲覧。
  3. ^ 「メークで「自信」後押し 八幡西区の永島さん 養護施設の子に講座 実演を交えアドバイス」『西日本新聞』、2021年11月7日。
  4. ^ a b c d e f g h 『勧告書』福岡県弁護士会、2021年12月2日、1、4-6、12-13頁。 
  5. ^ 介護老人福祉施設 双葉苑”. 福岡県. 2022年12月4日閲覧。
  6. ^ 地域密着型介護老人福祉施設 第二双葉苑”. 福岡県. 2022年12月4日閲覧。
  7. ^ a b 社会福祉法人双葉会のホームページ”. 社会福祉法人双葉会. 2022年8月15日閲覧。
  8. ^ 「春の褒章、藍授褒章・西田稔夫さん 北九州」『西日本新聞』、1996年4月28日。
  9. ^ 「県児童施設球技大会、野球は双葉学園がV」『西日本新聞』、1996年7月26日。
  10. ^ 「軟式野球は藤崎台童園、バレーボールは双葉学園が優勝」『西日本新聞』、1998年8月22日。
  11. ^ 「バレーは双葉学園 野球は白梅学園がV 県児童福祉施設球技大会」『西日本新聞』、1999年7月29日。
  12. ^ 「バレーは双葉学園野球は白梅学園V 県児童福祉施設球技大会」『西日本新聞』、2000-07ー28。
  13. ^ 「養護施設指導員が平手打ち、園児が入院ー北九州市、施設に行政指導」『毎日新聞』、2000年8月31日。
  14. ^ 「児童体罰で北九州市 双葉学園を行政指導」『西日本新聞』、2000年8月31日。
  15. ^ 「双葉学園女子バレー部 2年ぶり2度目のV 九州児童福祉施設球技大会 昨年の雪辱果たす」『西日本新聞』、2000年9月6日。
  16. ^ 「双葉学園が2種目制す 県児童施設球技大会」『西日本新聞』、2001年7月27日。
  17. ^ 「小倉南 野球の部で優勝 双葉学園が報告 児童福祉施設球技大会」『西日本新聞』、2014年9月17日。
  18. ^ 『平成30年度決算特別委員会 第2分科会不議事件 9月20日第1委員会室議事録』北九州市議会事務局、2019年9月。 
  19. ^ 「養護施設 別の職員も不祥事 北九州わいせつ 2年前 生徒と交際」『西日本新聞』、2019年6月19日。
  20. ^ a b 北九州市議、個人口座に法人収入 13年で1600万円 資産報告不記載”. 西日本新聞me. 2022年11月28日閲覧。
  21. ^ a b 補助金3千万円を不正受給 市議が元理事の社会福祉法人”. 朝日新聞. 2022年11月28日閲覧。
  22. ^ a b 『社会福祉法人特別指導監査指摘事項』北九州市役所、2018年8月24日。 
  23. ^ “施設長給与増に勧告 北九州市、「双葉会」への監査 市議登庁の車使用にも”. 2018年9月12日. (朝日新聞) 
  24. ^ a b c d 『令和元年度 児童養護施設に係る社会福祉法人に対する特別指導監査の結果』北九州市役所子ども家庭局、2019年11月27日、1-6頁。 
  25. ^ 令和2年度 現況報告書(令和2年4月1日現在)”. 独立行政法人福祉医療機構. 2023年1月3日閲覧。
  26. ^ 『提言書(被措置児童虐待に関する調査審議)』北九州市社会福祉審議会 児童福祉専門分科会審査部会、2019年11月26日、1-4頁。 
  27. ^ a b “児童虐待など判明の双葉会 親族を重視の理事会 北九州市が改善勧告”. 朝日新聞. (2019年11月28日) 
  28. ^ a b “北九州市 双葉会に改善勧告 児童養護施設運営 理事会正常化など”. 毎日新聞. (2019年11月28日) 
  29. ^ a b “養護施設わいせつ 他職員の虐待も確認 北九州市 管理体制の改善勧告”. 西日本新聞. (2019年11月28日) 
  30. ^ a b 北九州市、児童養護施設運営の双葉会に改善勧告 理事会正常化など /福岡”. 毎日新聞. 2022年9月4日閲覧。
  31. ^ a b 「福祉法人双葉会が親族に「利益供与」 北九州市が指摘」『西日本新聞』、2019年12月3日。
  32. ^ a b 令和3年度 現況報告書”. 社会福祉法人双葉会. 2022年12月17日閲覧。
  33. ^ 北九州の児童施設に虐待防止勧告 相次ぐ性犯罪…背景は?対策は?”. 西日本新聞me. 2022年11月28日閲覧。
  34. ^ 県弁護士会が人権救済勧告 北九州市内の児童養護施設 元職員の性的虐待で/福岡”. 毎日新聞. 2022年11月28日閲覧。
  35. ^ 北九州市議、個人口座に法人収入 13年で1600万円 資産報告不記載”. 西日本新聞me. 2022年12月28日閲覧。
  36. ^ 補助金3千万円を不正受給 市議が元理事の社会福祉法人”. 朝日新聞. 2022年12月28日閲覧。
  37. ^ 『児童養護施設特別指導監査指摘事項』北九州市役所、2018年8月24日。 
  38. ^ 特別指導監査結果”. 北九州市役所子ども家庭局. 2022年12月1日閲覧。
  39. ^ 児童養護施設等監査結果(令和2年度)”. 北九州市役所. 2022年12月4日閲覧。
  40. ^ 『令和2年度社会福祉法人一般指導監査指摘事項』北九州市役所子ども家庭局、2020年10月14日。 
  41. ^ 児童養護施設等監査結果(令和3年度)”. 北九州市役所. 2022年12月24日閲覧。
  42. ^ 児童養護施設等監査結果(令和4年度)”. 北九州市役所. 2023年3月27日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]