友情 (小説)

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友情』(ゆうじょう)は、武者小路実篤による初期の小説1919年大阪毎日新聞に掲載されたのが初出で、1920年には以文社より単行本が刊行された。

背景[編集]

本作執筆当時作者は、すでにいくつかの小説および戯曲によって文壇に確固たる地位を得ており、その一方で建設が進んでいた新しき村に移り住み、そこで執筆を行っていた。1920年に単行本が重版されたのに伴って作者は「この小説は実は新しき村の若い人たちが今後、結婚したり失恋したりすると思うので両方を祝したく、また力を与えたく思ってかき出した」と述べている。

あらすじ[編集]

脚本家の野島は、作家の大宮と尊敬しあい、仕事に磨きをかけている。成果は、大宮のほうがやや上。だが、大宮はいつも野島を尊敬し、勇気づけていてくれる。

ある日、野島は友人の仲田の妹・杉子に恋をする。かたい友情で結ばれた大宮に包み隠さず打ち明けると、やはり大宮は親身になってくれた。杉子会いたさに仲田の家へ大宮と連れだって行くと、杉子はいつでも自分たちに無邪気な笑顔を向けてくる。野島は、杉子に大切にされている感覚を覚えた。しかし、大宮は杉子にはいつも冷淡だった。

突然、大宮が「ヨーロッパに旅立つ」と野島に告げる。野島は友人と別れる寂しさと杉子を一人占めできる安心感とに悩む。それ以来、杉子とはあまり遊ばなくなる。

大宮が西洋へ旅立って約1年後、思い切ってプロポーズをしたが、断られた。さらに1年程後、杉子は突如ヨーロッパへ旅立ち、その後、大宮からは一通のへんな手紙が届く。そこには「自分の書いた小説を見てくれればわかる」とあった。その小説は、大宮と杉子が抱き続けていた恋心と野島への思いを明かす内容だった。

それを読んだ野島はひどく驚き、また、ひどく悲しむ。そして、大切にしていたベートーヴェンのデスマスクを叩き割った。

大宮は友情と引き換えに愛する人を得たが、野島は愛する人と友人を一度に失ってしまう。

登場人物[編集]

野島・・・『友情』の主人公であり、23歳の脚本家。仲田の妹・杉子に恋している。親友の大宮に大変深い友情を感じている。

大宮・・・野島の友人であり、一番の親友。26歳の脚本家で、世間に認められている。密かに杉子に心を寄せるが、野島との友情を思い葛藤する。

杉子・・・仲田の妹であり、学校に通う16歳。野島を生理的に嫌っており、大宮に思いを寄せる。

仲田・・・杉子の兄であり、法科生。野島の友達で、無遠慮にものが言える相手。社会情勢のことや恋愛観について野島と話すが、恋愛観においては意見が異なる。まだ若い妹の結婚に反対しており、妹への結婚の申し込みに辟易している。

村岡・・・早川の親友。帝劇で公演されるような脚本を書ける力をもつ脚本家。27、8歳。大宮の作品に感心する。

一高の生徒・・・仲田の家で開催されたピンポン大会でずぬけた才能をみせる。村岡を崇拝している。

早川・・・仲田の友人であり、運動家。野島とは、仲田の家で2、3度会っている。野島と「神があるなしの議論」で激論を交わす。

武子・・・大宮の従妹。大宮を崇拝し、兄と呼ぶ。杉子と友人である。感情家で思ったことはなんでも言う、我儘で勝気な性格。下篇において、杉子に大宮の居場所を教える。