危険度分布

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危険度分布(きけんどぶんぷ)とは、気象庁が発表する防災気象情報の1つ。大雨による土砂災害・浸水害・洪水災害の危険度の高まりを面的に地図上で確認できるシステムである[1]。災害の危険度を5段階で色分けして地図上にリアルタイムに表示する。愛称は、「危機が来る」に由来した「キキクル」である(一般公募により選ばれた)[2][3]。気象庁ホームページのほかにも、テレビの気象情報、スマホアプリなどから届く「危険度通知」にも使用されている[4]

大雨警報 (土砂災害) の危険度分布[編集]

大雨警報(土砂災害)の危険度分布は、大雨による土砂災害発生の危険度の高まりを、地図上で1km四方の領域(メッシュ)ごとに5段階に色分けして示す情報である。常時10分毎に更新しており、大雨警報(土砂災害)や土砂災害警戒情報等が発表されたときには、大雨警報(土砂災害)の危険度分布により、どこで危険度が高まっているかを把握することができる[5]

特に「極めて危険」(濃い紫色)が出現した場合、土砂災害警戒区域等では、過去の重大な土砂災害発生時に匹敵する極めて危険な状況となっており、命に危険が及ぶような土砂災害がすでに発生していてもおかしくない。このため、避難にかかる時間を考慮して、土壌雨量指数等の2時間先までの予測値を用いて「非常に危険」(うす紫色)、「警戒」(赤色)、「注意」(黄色)、「今後の情報等に留意」(無色)の危険度を表示している[5]

土砂災害警戒区域等にお住まいの方々は、可能な限り早めの避難を心がけていただき、高齢者等の方は遅くとも「警戒」(赤色:警報基準に達すると予想)が出現した時点で、一般の方は遅くとも「非常に危険」(うす紫色:土砂災害警戒情報基準に達すると予想)が出現した時点で速やかに避難を開始し、「極めて危険」(濃い紫色)に変わるまでに避難を完了しておく必要がある[5]

内閣府の「避難勧告等に関するガイドライン」では「土砂災害に関するメッシュ情報において危険度が高まっているメッシュと重なった土砂災害警戒区域等に避難勧告等を発令することを基本とする」とされている。市町村から発令される避難勧告等にも留意し、土砂災害警戒区域等の外の少しでも安全な場所への早めの避難を心がける必要がある[5]

危険度の色と避難行動[6]
色が持つ意味 住民等の行動の例 内閣府のガイドラインで発令の目安とされる避難情報 相当する警戒レベル
極めて危険
すでに土砂災害警戒情報の基準に到達
過去の重大な土砂災害発生時に匹敵する極めて危険な状況。 命に危険が及ぶ土砂災害がすでに発生していてもおかしくない。 この状況になる前に土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域の外の少しでも安全な場所への避難を完了しておく必要がある 避難指示(緊急) 4相当
非常に危険
2時間先までに土砂災害警戒情報の基準に到達すると予想
命に危険が及ぶ土砂災害がいつ発生してもおかしくない非常に危険な状況。 速やかに土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域の外の少しでも安全な場所への避難を開始する 避難勧告
警戒(警報級)
2時間先までに警報基準に到達すると予想
避難の準備が整い次第、土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域の外の少しでも安全な場所への 避難を開始高齢者等は速やかに避難を開始する 避難準備・高齢者等避難開始 3相当
注意(注意報級)
2時間先までに注意報基準に到達すると予想
ハザードマップ等により避難行動を確認する。今後の情報や周囲の状況、雨の降り方に注意する。特に、危険度分布をこまめに確認する。 2相当
今後の情報等に留意 今後の情報や周囲の状況、雨の降り方に留意する。

大雨警報 (浸水害) の危険度分布[編集]

平成29年度出水期から、1時間先までの雨量予測を用いた表面雨量指数の予測値が大雨警報(浸水害)等の基準に到達したかどうかを地図上に5段階で色分け表示した「大雨警報(浸水害)の危険度分布」を提供している[7]

これにより、大雨警報(浸水害)等が発表されたときに、実際にどこで浸水害発生の危険度が高まっているのかが一目で確認できる[7]

なお、これまでの「雨量の基準」に代えて、短時間強雨による浸水害発生との相関が雨量よりも高い「表面雨量指数の基準」を用いて大雨警報(浸水害)・大雨注意報の発表判断を行うよう変更している[7]

大雨警報(浸水害)の危険度分布は、表面雨量指数の1時間先までの予測値が「注意報基準未満の場合」、「注意報基準以上となる場合」、「警報基準以上となる場合」、「警報基準を大きく超過した基準以上となる場合」及び、表面雨量指数の実況値が「警報基準を大きく超過した基準以上となった場合」の5段階で色分けして、短時間強雨による浸水害発生の危険度を分布として表示している[7]

危険度の色と避難行動[8]
色が持つ意味 住民等の行動の例 想定される周囲の状況例
極めて危険
すでに警報基準を大きく超過した基準に到達
《表面雨量指数の実況値が過去の重大な浸水害発生時に匹敵する値にすでに到達。重大な浸水害がすでに発生しているおそれが高い極めて危険な状況。 》
非常に危険
1時間先までに警報基準を大きく超過した基準に到達すると予想
周囲の状況を確認し、各自の判断で、屋内の浸水が及ばない階に移動する。 道路が一面冠水し、側溝やマンホールの場所が分からなくなるおそれがある。 道路冠水等のために鉄道やバスなどの交通機関の運行に影響が出るおそれがある。 周囲より低い場所にある多くの家屋が、床上まで水に浸かるおそれがある。
警戒(警報級)
1時間先までに警報基準に到達すると予想
安全確保行動をとる準備が整い次第、早めの行動をとる。 高齢者等は速やかに安全確保行動をとる。 側溝や下水が溢れ、道路がいつ冠水してもおかしくない。 周囲より低い場所にある家屋が、床上まで水に浸かるおそれがある。
注意(注意報級)
1時間先までに注意報基準に到達すると予想
今後の情報や周囲の状況、雨の降り方に注意。 ただし、各自の判断で、住宅の地下室からは地上に移動し、道路のアンダーパスには近づかないようにする。 周囲より低い場所で側溝や下水が溢れ、道路が冠水するおそれがある。 住宅の地下室や道路のアンダーパスに水が流れ込むおそれがある。 周囲より低い場所にある家屋が、床下まで水に浸かるおそれがある。
今後の情報に留意 今後の情報や周囲の状況、雨の降り方に留意。 普段と同じ状況。雨のときは、雨水が周囲より低い場所に集まる。

洪水警報の危険度分布[編集]

洪水警報の危険度分布は、大雨による中小河川(水位周知河川及びその他河川)の洪水災害発生の危険度の高まりを5段階に色分けして地図上に示したものである。危険度の判定には3時間先までの流域雨量指数の予測値を用いており、中小河川の特徴である急激な増水による危険度の高まりを事前に確認することができる。また、大河川で洪水のおそれがあるときに発表される指定河川洪水予報についても表示しており、中小河川の洪水危険度とあわせて確認することができる[9]

洪水警報の危険度分布では、流域雨量指数等の3時間先までの予測値が「注意報基準未満の場合」、「注意報基準以上となる場合」、「警報基準以上となる場合」、「警報基準を大きく超過した基準以上となる場合」及び、実況値が「警報基準を大きく超過した基準以上となった場合」の5段階で色分けして、中小河川の洪水災害発生の危険度を河川の流路に沿って表示している[9]

中小河川において、流域雨量指数基準と複合基準の双方を持つ場合は、両者による判定のうち、より危険度の高いほうに色分けして表示している[9]

また、洪水予報河川においては、湛水型内水氾濫の危険度を河川の流路に沿ってハッチで表示している。このハッチ表示が出現したときには、当該河川の外水氾濫のおそれではなく、当該河川の増水による湛水型の内水氾濫のおそれがある状況を示している。洪水予報河川の外水氾濫の危険度については、あわせて表示している指定河川洪水予報の発表状況を確認する必要がある[9]

なお、現時点では、湛水型の内水氾濫のうち、雨の全く降っていない場合に発生するものまでは考慮されていない。雨がやんで「湛水型内水氾濫の危険度」の表示が消えた場合であっても、氾濫危険情報等が発表されている場合には、周辺の支川や下水道の氾濫にも引き続き警戒する必要がある[9]

危険度の色と避難行動[10]
色が持つ意味 住民等の行動の例 内閣府のガイドラインで発令の目安とされる避難情報 相当する警戒レベル
極めて危険
すでに警報基準を大きく超過した基準に到達
流域雨量指数の実況値が過去の重大な洪水害発生時に匹敵する値にすでに到達。重大な洪水害がすでに発生しているおそれが高い極めて危険な状況。
非常に危険
3時間先までに警報基準を大きく超過した基準に到達すると予想
水位周知河川・その他河川がさらに増水し、今後氾濫し、重大な洪水害が発生するおそれが高い。水位が一定の水位を越えている場合には速やかに避難を開始する 避難勧告 4相当
警戒(警報級)
3時間先までに警報基準に到達すると予想
水位が一定の水位を越えている場合には、避難の準備が整い次第、避難を開始する。高齢者は速やかに避難を開始する。 避難準備・高齢者等避難開始 3相当
注意(注意報級)
3時間先までに注意報基準に到達すると予想
ハザードマップ等により避難行動を確認する。今後の情報や周囲の状況、雨の降り方に注意する。 2相当
今後の情報等に留意 今後の情報や周囲の状況、雨の降り方に留意する。

通知サービス[編集]

危険度分布について、速やかに避難が必要とされる警戒レベル4に相当する「非常に危険(うす紫)」などへの危険度の高まりをプッシュ型で通知するサービスを、気象庁の協力のもとで、5つの事業者が実施している。この通知サービスは住民の主体的な避難の判断を支援することを目的としている[11]

平成30年度に開催された「防災気象情報の伝え方に関する検討会」では、 「大雨・洪水警報の危険度分布」の危険度(色)が変わっても、すぐに気づくことができないので使いづらいという課題が指摘され、 「危険度分布」の危険度の高まりが確実に伝わるよう、希望者向けに通知するサービスを開始すべきであるとされた[11]。また、内閣府の「避難勧告等に関するガイドライン」や中央防災会議の「平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難のあり方について(報告)」においても、住民は「自らの命は自らが守る」意識を持ち、自らの判断で避難行動をとるとの方針が示されるとともに、「住民が自ら行動をとる際の判断に参考となる情報」の発信にあたっては、発信した情報の参考となる警戒レベルが分かるようにすべきとされた[11]

これを受けて、住民の主体的な避難の判断を支援することを目的に、「危険度分布」等が示す5段階の危険度の変化を、警戒レベルを付して分かりやすくプッシュ型で通知することとなった[11]

この通知サービスでは、ユーザーが登録した地域の危険度が上昇したとき等に、メールやスマホアプリでプッシュで連絡される。土砂災害や洪水災害等から避難が必要な状況となっていることにすぐに気付くことができ、自主的な避難の判断に活用することが期待される。また、離れた場所に暮らしている家族に避難を呼びかけることにも活用できる[11]

脚注[編集]

  1. ^ 気象庁|警報の危険度分布”. www.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月2日閲覧。
  2. ^ 株式会社インプレス (2021年3月19日). “大雨危険度分布の愛称は「キキクル」。気象庁” (日本語). Impress Watch. 2021年4月2日閲覧。
  3. ^ 大雨で危機来る!危険度分布の新名称「キキクル」に(2021年3月17日)”. 2021年4月2日閲覧。
  4. ^ 気象庁|「危険度分布」の通知サービスについて”. www.jma.go.jp. 2021年4月2日閲覧。
  5. ^ a b c d 気象庁|土砂災害警戒情報・大雨警報(土砂災害)の危険度分布”. www.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月2日閲覧。
  6. ^ 気象庁|大雨警報(土砂災害)の危険度分布”. www.data.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月2日閲覧。
  7. ^ a b c d 気象庁|大雨警報(浸水害)の危険度分布”. www.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月2日閲覧。
  8. ^ 気象庁|大雨警報(浸水害)の危険度分布”. www.data.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月2日閲覧。
  9. ^ a b c d e 気象庁|洪水警報の危険度分布”. www.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月2日閲覧。
  10. ^ 気象庁|洪水警報の危険度分布”. www.data.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月2日閲覧。
  11. ^ a b c d e 気象庁|「危険度分布」の通知サービスについて”. www.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月2日閲覧。

外部リンク[編集]