単数のthey

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単数のtheyとは、英語において代名詞である they やその格変化形・派生形である them・their・theirs・themselves/themselfを、共性の(ジェンダーニュートラルの)単数形代名詞として持ちいる用法である。 通常、指し示す人物の性別を特定できないケースで用いる。以下に例を示す。

  • "Somebody left their umbrella in the office. Could you please let them know where they can get it?"[1]
  • "The patient should be told at the outset how much they will be required to pay."[2]
  • "But a journalist should not be forced to reveal their sources."[2]

単数のtheyの出現は遅くとも14世紀であるが[3]、これは複数のtheyの出現からおおよそ100年後の事となる。これ以後、単数のtheyは日常会話において広く使用され、またフォーマルな場面にも普及していった。 18世紀の中葉になると、単数のtheyはこれを誤りであると見做す規範的な注釈者から批判を受けるようになった[4][5][6]。 ジェンダーニュートラルな言語を目指す運動の中で、現代の標準英語では単数のtheyは一般的なものとなり、正式に受け入れられている[5][7][8]。21世紀の初頭には、単数のtheyを口語でありフォーマルライティングにおいては適切とは言い難いとするスタイルガイドもまだ存在したが[9][10][11]、2020年には大部分のスタイルガイドが単数のtheyを人称代名詞と認めるようになっている[12][13][14][15]

21世紀の初頭になると単数のtheyの新たな用法として、ノンバイナリーの人々の為に、特定の個人を指してこれを使うものが現れるようになった。以下に例を示す[16]

  • "This is my friend, Jay. I met them at work. They are a talented artist."

この新しい用法は注目を集め、2015年にはアメリカ方言学会英語版によって、2019年にはメリアム=ウェブスター社によって「ワード・オブ・ザ・イヤー」として選出された[17][18][19][20]。更に、アメリカ方言学会の2010年代「ワード・オブ・ザ・ディケイド」にも選ばれている[21]

格変化形および派生形[編集]

単数のtheyは単数の先行詞を指すことを許容するが、複数のtheyと同じく複数形の動詞を取る[22][23][24]。またその格変化形についても複数のtheyと同型であるが[25]、再帰代名詞についてはthemselvesだけではなくthemselfが使用される事もある[26]

三人称の人称代名詞の格変化
代名詞 主格 目的格(対格) 所有格 所有代名詞 再帰代名詞
He He is my son. When my son cries, I hug him. My son tells me his age. If I lose my phone, my son lends me his. My son dresses himself.
She She is my daughter. When my daughter cries, I hug her. My daughter tells me her age. If I lose my phone, my daughter lends me hers. My daughter dresses herself.
複数のthey They are my children. When my children cry, I hug them. My children tell me their ages. If I lose my phone, my children lend me theirs. My children dress themselves.
単数のthey They are my child. When my child cries, I hug them. My child tells me their age. If I lose my phone, my child lends me theirs. My child dresses themself [あるいは themselves].
総称のhe He is my child. When my child cries, I hug him. My child tells me his age. If I lose my phone, my child lends me his. My child dresses himself.

themselfは14世紀から16世紀にかけて使用されていた事が分かっている。Themselfの使用は1970年代[27][28]あるいは1980年代[29]から増加したとされるが、いまだに「あまり見られない形」とされることもある[30]

2002年の時点では、ペインとハドルストン英語版は『ケンブリッジ版 英語文法』の中で、標準語における Themself の使用について「稀でありこれを受け入れる話者は少数派である」が「単数の代名詞としてのtheyの受容が進むにつれ、増加する可能性が高い」としている[27]。性別が確かでない単数の人物を指す時にはThemselfは有用である。というのも、以下の例のような場合themselvesでは違和感を与えうるためである。

地方ごとの傾向[編集]

カナダ政府は、公文書[訳語疑問点]内での使用に関して、単数のtheyの再帰代名詞としてはthemselvesを推奨し、themselfは使用しないように、としている[33]。しかし、実際にはthemselfの使用も確認されている。

  • "Where a recipient of an allowance under section 4 absents themself from Canada ..." — War Veterans Allowance Act(退役軍人手当法), section 14.[34]
  • "... the following conditions are imposed on a person or group of persons in respect of whom a deposit is required: ... to present themself or themselves at the time and place that an officer or the Immigration Division requires them to appear to comply with any obligation imposed on them under the Act." — Immigration and Refugee Protection Regulations(カナダ移民法施行規則), section 48.[35]

使用法[編集]

古い使用法[編集]

ジェネリック彼の処方箋[編集]

一般的または不定の先行詞を指すための彼の現代的な使用[編集]

ジェンダーに中立な言語の台頭[編集]

現代的な使用法[編集]

代名詞の先行詞と一緒に使用する[編集]

概念的な複数またはペアワイズ関係[編集]

先行詞として一般名詞とともに使用する[編集]

非バイナリの人々を含む特定の既知の人々のための使用[編集]

シカゴマニュアルオブスタイル[編集]

American Heritage Book of English Usage(1996)[編集]

アメリカ心理学会の出版マニュアル[編集]

Strunk&Whiteのスタイルの要素[編集]

ジョセフ・M・ウィリアムズの「明晰さと恵みの基礎」 (2009年)[編集]

リトルブラウンハンドブック(1992)[編集]

パデューオンラインライティングラボ[編集]

ワシントンポスト[編集]

AP通信スタイルブック[編集]

非性的執筆のハンドブック[編集]

英国スタイルガイドの使用ガイダンス[編集]

オーストラリアの使用ガイダンス[編集]

英語の文法での使用ガイダンス[編集]

文法的および論理的分析[編集]

概念上の合意[編集]

分布[編集]

参照および非参照照応[編集]

認知効率[編集]

他の代名詞との比較[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Swan 2009, §528.
  2. ^ a b Huddleston & Pullum 2002, p. 493.
  3. ^ "they". Oxford English Dictionary (3rd ed.). Oxford University Press. September 2005. (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入。)
  4. ^ Gerner 2000, p. 93.
  5. ^ a b Column: He, she, they? Why it's time to leave this grammar rule behind”. PBS NewsHour (2016年8月24日). 2019年9月17日閲覧。
  6. ^ Wales 1996, p. 125.
  7. ^ Kamm, Oliver (2015年12月12日). “The Pedant: The sheer usefulness of singular 'they' is obvious”. The Times. 2019年6月19日閲覧。
  8. ^ Singular "They"”. APA Style. 2020年10月19日閲覧。
  9. ^ Pinker 2014, p. 260.
  10. ^ Ross & West 2002, p. 180.
  11. ^ Nicaise, Alexander (2020年3月30日). “The Tragedy of the Singular ‘They’ | Free Inquiry”. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  12. ^ Singular "They": Teaching a Changing Language”. World of Better Learning | Cambridge University Press (2020年11月16日). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  13. ^ Singular They Continues to be the Focus of Language Change”. ACES: The Society for Editing. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  14. ^ How do I use singular they?” (2020年3月4日). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  15. ^ Resources for using "they" as a singular pronoun (PDF)”. www1.ucdenver.edu. 2020年12月27日閲覧。
  16. ^ Words We're Watching: Singular 'They'”. Merriam-Webster dictionary (2019年). 2019年3月26日閲覧。
  17. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「ads-woty」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  18. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「bbc-woty」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  19. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「ap-woty」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  20. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「mw-woty」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  21. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「dw-wotd」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  22. ^ Chicago Style for the Singular They”. cmosshoptalk.com (2017年4月3日). 2020年2月14日閲覧。 “Like singular you, singular they is treated as a grammatical plural and* takes a plural verb.”
  23. ^ TWTS: Singular "they" and verb agreement”. Michigan Radio. 2020年2月13日閲覧。
  24. ^ Welcome, singular "they"”. American Psychological Association. 2020年3月1日閲覧。
  25. ^ Pullum 2012.
  26. ^ Themself”. www.merriam-webster.com. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  27. ^ a b Huddleston & Pullum 2002, p. 494.
  28. ^ Merriam-Webster 2002, p. 731.
  29. ^ Fowler & Burchfield 1996, p. 777.
  30. ^ Fowler 2015, pp. 811–812.
  31. ^ Hislop 1984, p. 23.
  32. ^ Fowler & Burchfield 1996, p. 776, themself.
  33. ^ Canadian government 2015.
  34. ^ Canadian government 2013, p. 18.
  35. ^ Canadian government 2014, p. 48.

参考文献[編集]

 

外部リンク[編集]