半潜水艇

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「マイティ・サーバント2」(Mighty Servant 2)がサミュエル・B・ロバーツドバイからニューポートへ輸送している様子、1988年

半潜水艇(はんせんすいてい)は船体をある程度まで水没させて航行することができる特殊な船舶のことである。軍事作戦に使うものが多いが、他に水中を観察できる観光目的のものなどがある。この項目ではこうした部分的な潜水能力がある船を全般に説明する。

水面上にある部分がかなり小さいため、半潜水艇は通常の船より波の影響を受けにくいが、常にトリムを取る必要がある。潜水艦と異なり完全に水面下に沈むことはない。

概要[編集]

半潜水艇は、軍事目的においては完全な潜水艦潜水艇の代用として使用されることが多い。一般に「潜水」の方式は、完全な潜水艦の場合と同様に、船内に設けられたタンクに注排水して浮力を調整することで行われる。ただし、浮力の調整能力がなく、最初から極端に低乾舷の設計となっている場合もある。

軍用船としては、完全な潜水艦と同等とは言えないまでも、発見可能性や被弾可能性の低減をある程度実現できる利点がある。また、完全な潜水艦を建造するのに比べれば、高水圧への対応や吸排水機構など技術的に高度な部分がないため容易かつ安価に建造できる。実例としては、後述する北朝鮮の現用艇のほか、アメリカ南北戦争の南部連合の港で北軍の封鎖艦隊攻撃に使われたデイヴィッド型半潜水艇や太平洋戦争末期に日本陸軍が建造した五式半潜攻撃艇などが挙げられる。

民間目的では、水面上にある部分が小さいことによる安定性を利用することを目的としたものが多い。また、船底に窓が設けられて海中を覗けるというだけの観光船の場合、通常の船舶と基本設計は何ら変わらず、もちろん前述のような浮力調整機構は設けられていない。

軍用[編集]

歴史[編集]

アメリカ合衆国南北戦争において用いられた装甲艦モニターは、もっとも初期の半潜水艇であると考えられており、乾舷が非常に低く推進機関と燃料と乗員設備の全てを水面下に備えていた。小さな操舵席と円筒形の砲塔と煙突だけが甲板上に突き出していた。しかし、バラスト水を注排水することによって深さを調節することはできなかったため、モニターは真の半潜水艇とはいえない。

スピュイテン・デュイヴィル(USS Spuyten Duyvil)は、タンクに注水して潜水することで低い外形をもつ外から見えづらい攻撃艦となり、モニターと同じように指向・伸展可能で再装填できる外装水雷を装備するなど多くの革新的な特徴を持った兵器システムとして、真の半潜水艇であった。

ウェルフレイターの模型

第二次世界大戦において、イギリスフロッグマンを輸送するための半潜水艇としてウェルフレイター(Welfreighter)を開発・設計した[1]

水面上に露出する断面積が小さいことは、艦の安定性向上に有効である。また、潜水艦は艦首で波を作らないので、水面下で活動するためには潜水艦が非常に効率的であると考えられた。この考えに基づき、2つの潜水艦のような水面下の構造物と、上部構造物を支える流線型のパイロンで構成された船が提案され、試作が行われた。半没水型双胴船と呼ばれるこの船は、荒れた海で船のサイズで規定される限界までの高い効率と安定した運用を可能にする。英語ではSmall Waterplane Area Twin Hullの略でSWATHと呼ばれる。

ロッキードシー・シャドウという多くの点で上述のSWATHに似た船を設計し建造した。ただし、パイロンの上に上部構造物を載せるのではなく、船体と上部構造物は連続的な構成になっており、側面を傾斜させることでレーダーに映りにくいステルス構造となっている。

北朝鮮の半潜水艇[編集]

北朝鮮の特殊機関は多数の半潜水艇を保有しているといわれる。この艇はイランなどへも輸出されている。

開発の経緯[編集]

1983年12月3日に多大浦への浸透に使用された半潜水艇

北朝鮮は朝鮮戦争停戦後から「対南工作」「祖国統一事業」と称して韓国に多数の工作員を秘密裏に侵入させてきたが、年を追うごとに韓国もスパイ侵入を阻止する方策を次々に実行した。軍事境界線はもちろんのこと、韓国全土の沿岸部にある侵入の蓋然性が高い海岸には陸海軍の警備所を設置し、通報者への懸賞金制度(工作船の第一発見者には韓国政府から5000万ウォンが贈られる)の創設により、沿岸の監視を強化した。発見されたスパイ容疑の不審船に対しては、対艦ミサイルまで使用した徹底的な取り締まりを行い、漁船に偽装した北朝鮮の侵入用小型船舶を次々と捕捉、撃破していった。そのため、1980年代頃から北朝鮮は沿岸警備の目をかいくぐる半潜水艇を開発、投入していった。

特徴[編集]

北朝鮮の半潜水艇には複数のタイプがあり、現在も生産と改良が進められていることがわかっているが、1998年韓国軍に韓国南部海上で撃沈され、後日引き揚げられて韓国国家情報院、米韓技術情報チームによって検証されたSP-10H型というタイプの半潜水艇(朝鮮労働党作戦部所属)では、魚網切断装置や日本製のGPSレーダー、HF無線機の装備が初めて確認された。

このSP-10H型半潜水艇は全長約12m、全幅約3m、高さ約1.5m、排水量11tの大きさであり、喫水は約70cm。アメリカのマーキュリー社製とみられる375馬力エンジン3基を搭載して最高速力は半潜水時は6ノット、浮上時は45ノットである。定員は8名で、居住性は皆無。また、ごく短時間ではあるが、停止して水中に完全に船体を沈めて隠れられることも確認された。船体にはレーダーに映りにくくなる黒い特殊塗料が塗りつけられている。

標準武装は、各乗員の個人火器、二門のRPG‐7発射機および17~30kgの自爆用高性能爆薬である。爆薬の信管には、敵艦への体当たりの衝撃で起爆するものと自爆ボタンの操作で起爆するものが装備される。

半潜水艇の任務・侵入方法[編集]

この半潜水艇は、工作員を韓国に隠密裏に侵入させる任務、あるいは北朝鮮に帰還させる任務に使用される。侵入する目的地の海岸まで30海里の位置までは浮上して高速で接近する。それ以降は艇内のタンクへの注水で少し姿勢を下げ、12ノットで航行する。残りの距離が12海里を切った時点で半潜水状態に移行し、窓(水面上50cm)とシュノーケルのみを水上に出す低姿勢によって韓国側のレーダー探知を避けながら6ノットで侵入する。エンジンの騒音で韓国側に気づかれないよう、目的の海岸まで500mの位置まで到着するとエンジンを止めて停泊し、工作員と案内員を降ろす。彼らは泳いで海岸から密上陸していく。工作員の上陸後、戻ってきた案内員を回収して帰還する。案内員とは、上陸直後まで同行し工作員を護衛する役目の工作員。射撃のプロであり、撃術(キョクスル)と呼ばれるテコンドーをベースにした軍隊格闘術(CQC)に秀でた戦闘員である。

半潜水艇の航続距離は最大720kmとされ、単純に考えれば北朝鮮から韓国南部まで単独で往復できる計算であるが、韓国側の警備の目を盗むためには大きく遠回りする航海をしなくてはならない。また、長い航海に耐えうる居住性もない。そのため、北朝鮮から遠い韓国南部以遠への侵入の際には、母船を務める工作船に格納されて目的地の近海(おおむね40海里)まで運ばれる必要がある。距離の短い韓国北部への侵入には母船を使わず、北朝鮮のヘジュ港などの前線基地から単独、最短距離で任務に向かう。

麻薬密輸[編集]

南アメリカ民兵組織などがコカイン密輸用に建造しており、レーダー反射が小さいことから取り締まりが困難になっている。

民生用[編集]

水中観光[編集]

半潜水式の水中観光船では、乗客は乗船すると水面下に設置されている席まで下り、水面下に設置された窓から水中を眺めることができる。これにより潜水した船に乗っているかのような雰囲気を与えることができる。こうした船は世界中の景勝地などで運航されている。

日本では沖縄県で多く運用され、マリンスター、オルカ号、なは、トミー(宮古島)、神奈川県のにじいろさかな号などがある。また、北海道の支笏湖では透明度の高さを生かし、淡水湖の水中観光が行われている。

海洋調査[編集]

海洋調査用のFLIP、船首部を水面下に沈めた状態

FLIP(FLoating Instrument Platform w:RP FLIP)は荒れた海で安定したプラットフォームを形成するために設計されている。従来型の船首船尾を持ち、その間はチューブ構造で接続されている。移動時は通常の船のような構造であるが、調査プラットフォームとして使用するときは船首部を水面下に沈め海底に向けて垂直になり、船尾部を水上に残した状態となる。船尾部の甲板はしご、装備品などは、この状態でも使えるように縦横両方の設備を備えたり両用できるような工夫が施されている。水面に接するのは細いチューブ状の部分だけであり、海のうねりや波が通り過ぎても非常に小さい力しか伝わらないため、通常の船に比べて非常に安定したプラットフォームを形成することができる。

重量物運搬船[編集]

ミサイル駆逐艦コールを輸送中の「ブルー・マーリン」(Blue Marlin)
マルタバレッタ港にいる半潜水式重量物運搬船、空の状態

半潜水式重量物運搬船は前部の操舵室と後部の機械室の間に長く低い凹甲板を持っている。表面的には、ばら積み貨物船石油タンカーにいくらか似ている。バラストタンクに注水して凹甲板を水面下に下げ、他の船舶や石油プラットフォーム、その他の水に浮かぶ貨物を搭載位置に移動させる。その後バラストタンクから排水することで凹甲板を浮上させ、貨物を持ち上げる。貨物のバランスを取るため、バラストタンクは不均等に排水できるようになっている。

半潜水式重量物運搬船の最大の顧客は石油産業である。半潜水式重量物運搬船により多くの石油プラットフォームが輸送されている。建造場所から掘削場所まで、自力で移動する場合に比べておよそ3倍から4倍の速さで移動できる。掘削場所まで石油プラットフォームを迅速に展開することにより、石油産業は多額の経費を節約できる。その他の大型の積み荷やヨットなどの輸送にも用いられる。

アメリカ海軍は過去に2回こうした船を損傷した戦闘艦艇を自国に回航修理するために使用したことがある。最初の例は1988年4月14日にペルシャ湾中央で機雷によって沈没寸前となったフリゲートサミュエル・B・ロバーツであった。この艦はドバイまで曳航され、そこでマイティ・サーバント2(Mighty Servant 2)に載せられてロードアイランド州ニューポートへ運ばれた[2]

その12年後、ミサイル駆逐艦コールは2000年10月12日の爆破テロにより被害を受け、イエメンアデンからミシシッピ州パスカグーラまでブルー・マーリン(MV Blue Marlin)によって輸送された。

アメリカ海軍はより小さな船、対機雷戦艦艇や警備艇などを輸送するために他にも重量物運搬船を借り受けたことがある。アメリカ船籍の重量物運搬船はないため、アメリカ海軍は世界の商業輸送市場からの借受に依存している。

2004年には、ブルー・マーリンは世界最大の半潜水式プラットフォームであるBPのサンダー・ホース(Thunder Horse)を大韓民国造船所からテキサス州コーパスクリスティの造船所まで輸送した[3]

この種の船のうち、大型のものの多くは、マイティ・サーバント1やブルー・マーリン、ブラック・マーリンなどを含めドックワイズ社(Dockwise)が所有している。2004年にはドックワイズ社はブルー・マーリンの甲板幅を広げて世界最大の重量物運搬船にした。同社の船には喪失船もあり、マイティ・サーバント2は1999年11月にインドネシア沖で海図に載っていない水中障害物に衝突して転覆した。マイティ・サーバント3(Mighty Servant 3)は2006年12月にアンゴラ沖で掘削ユニット アリューシャン・キー(Aleutian Key)を降ろす際に設計限界以上に沈降させたため沈没した(こちらは2007年5月に浮揚され再就役している)。

石油プラットフォーム[編集]

ブルーウォーター1(Bluewater 1)

石油プラットフォームではまた異なった形式の半潜水船が用いられる。これはロイヤル・ダッチ・シェルのブルース・コリップ(Bruce Collip)が発明者であるとみなされている[4]。海底油田の掘削深度が100フィート程度になるまでは固定式プラットフォームが建造されていたが、次第に深海へ移動してメキシコ湾で100から400フィートの深さでの掘削設備が必要とされるようになると、ENSCOインターナショナル(Ensco International)のような専門海底掘削契約業者が甲板昇降式プラットフォームを投入するようになった。最初の半潜水式プラットフォームは1961年に偶然見いだされた。ブルー・ウォーター・ドリリング社(Blue Water Drilling Company)がメキシコ湾でロイヤル・ダッチ・シェルのために保有・運用していた潜水式のブルー・ウォーター・リグNo.1は、ポンツーン浮力がリグとその消耗品の重量を支えるためには不十分であったため、ポンツーンの上部から甲板の下側の中間くらいまで沈んだ状態で曳航された。その際、この喫水では動揺が非常に小さいことが観察されたため、両社はこのリグを浮いた状態で運営することを決定した。それ以来、石油産業向けに専用に設計された半潜水式プラットフォームが用いられるようになった。

半潜水式プラットフォームは、海底油田の石油や天然ガスを探索し掘削するための安定したプラットフォームを形成する。タグボートによって所定の位置まで牽引・固定され、また独自のアジポッドという推進装置により動的な位置保持を行う。

これに関連して、潜水作業支援船(「アンクル・ジョン」(SSSV Uncle John)など)も建造されている。

クレーン船[編集]

石油産業に続き、沖合いでの建設工事での利点がすぐに認識された。1978年にHeerema社によりバルダー(Balder)とハーモッド(Hermod)が導入された。これらの半潜水式クレーン船は、2つの低い位置の船体(ポンツーン)と、それぞれのポンツーンに3つの柱と、上部の船体で構成されている。その後J.レイ・マクダーモット(J.Ray McDermott)とサイペム(Saipem)もまた半潜水式クレーン船を導入し、それぞれ14,200トンと14,000トンの吊り上げ能力を持つDB-102(後のSSCV Thialf)やサイペム7000(Saipem 7000)で頂点に達した。

移動中は半潜水式クレーン船はバラスト水を排水して、下部船体の一部のみが水中にある。吊り上げ作業を行う時は、船はバラスト水を注水して沈み込み、下部船体を深く潜水させる。これにより波やうねりの影響を軽減する。また、柱を遠く離して配置することにより高い安定性が得られる。この安定性により、非常に重い貨物を吊り上げることができる。

フローティングドック[編集]

船の修理や保守に用いられる乾ドックには、半潜水式として入出渠を容易にしたものがある。これを発展させ、ドック自体に航海能力を持たせたものをフローティングドックと呼ぶ。 船体(船底)と両舷の壁面から構成された凹字型をしていて、船橋は壁面上に備えられている。航行困難に陥った船に半潜水状態で接近し、入渠させてから浮上することで修理や保守を行える。ただし、船体は比較的短いため、小型船以外は船首と船尾がはみ出す事が多く、港へ曳航するための応急修理目的が多い。

日本では主に、大規模な防波堤の築造に用いるケーソン製作等に使われることが多いため、ケーソンドックの別名が定着している。港に停泊して船台に型枠を組み、ミキサー車でレミコンセメントを運び込み、ビルを建てるようにケーソンを建造することができる。 完成・養生後に波が穏やかな日を選んで出航し、目的地で潜行してケーソンを海に浮かせ、自らは離脱して浮上する。後はケーソンの空気抜き管を慎重に開閉して沈着させる。これを繰り返すことで、巨大な堤防を比較的安全に築造することができる。設置する港は、建造する港から近い事が望ましいが、離れている場合でも現地施工よりも遙かに容易・安価で済むことから、広く普及した。

発射プラットフォーム[編集]

シーローンチ社は半潜水式石油プラットフォームを改造したオーシャン・オデッセイを使ってゼニットロケットの打ち上げを行っている。

脚注[編集]

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外部リンク[編集]