動物看護師

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動物看護師(士)(どうぶつかんごし)とは、動物病院等で働く獣医療補助者を指す呼称である。VT (veterinary technician) 、VN (veterinary nurse)、 AHT (animal health technician:アハト) などともいう。

業務は、獣医師の指示の下に行う診療補助、カルテ作成、入院患畜の食事健康管理・しつけ・世話、血液や糞便の検体検査(細胞培養等)、調剤、清掃、受付、飼い主に対する説明・指導など多岐に渡る。

極めて重要な職務を担っており、専門的で高度な獣医学動物科学等の知識を有していることが望まれる。動物病院以外に、ペットショップトリミングサロン、ペット保険会社、その他動物系施設・企業などを従事の場とすることもある。

養成機関[編集]

動物看護師は人間医療における看護師とは異なり、国家資格でも公的資格でもない。そのため、以前は大学専門学校等の課程を修了後、様々な民間団体の試験に合格することで、動物看護師(士)、動物衛生看護師などと呼称されていた。つまり、動物看護師やそれに相当する資格を持っているとしても、その質はまちまちであり、実際に教育を受けていなくとも、動物看護師として動物病院で勤務することも可能であるため、体系的な養成制度の整備と法整備が不可欠と考えられている。現在では公的資格化を目指し、コアカリキュラムが導入された動物看護師を養成する専修学校や大学を修了後、一般財団法人動物看護師統一認定機構が行う試験に合格した者を「認定動物看護師」と呼称する。

養成機関は2016年2月時点で専修学校68校、大学6校(以下に挙げる私立大学)となっている。

平成13年、帝京科学大学にアニマルサイエンス学科が設置され、初めて大学における動物看護師の養成が開始された。平成16年にヤマザキ動物看護短期大学が開学、動物看護学科が設置された。同短期大学は、平成21年度をもって募集停止となり、平成22年4月、ヤマザキ学園大学が開学した。同大学は日本初の動物看護学部を有する。平成17年には日本獣医生命科学大学に獣医学部獣医保健看護学科が、平成18年には倉敷芸術科学大学に生命動物科学科が設置された。平成20年には九州保健福祉大学の動物生命薬科学科、平成23年には酪農学園大学の獣医保健看護学類(学部から学類体制への改編)が設置されている。

動物看護師の養成・資格の変遷[編集]

近年の小動物診療部門において、動物看護師は獣医療の向上のみならず、飼育者に対する動物の保健衛生指導や適正飼育管理の普及推進を図る上で必要不可欠なものとなっている。一方で、産業動物診療部門、公務部門(家畜衛生、公衆衛生等の行政・試験研究分野)においては獣医師が不足しているため、獣医師の業務を補助する獣医療専門職の必要性が指摘されている。

しかし、動物医療における現状は、獣医師のみが国家資格であるため、人間医療のようなドクターとその他の専門職によるチーム医療提供体制は整備されていない。その状況下で、各診療施設では必要に迫られて動物看護師を雇用し、獣医師法に抵触しない範囲で、診療の補助業務の他、入院動物の飼育管理、診療施設の窓口業務及び維持管理業務等に従事させており、動物看護師の技術・知識の高位平準化、その資格制度の見直しならびに就業環境の整備が、獣医師界における喫緊課題となっている。[1]

2010年8月、農林水産省が公表した「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」に、小動物分野、産業動物分野等の獣医療現場において動物看護職の地位や身分の確立、必要な知識・技術の高位平準化の必要性が明示された。さらに、家畜伝染病予防法の付帯決議で「獣医師以外の獣医療に従事する者の資格(動物看護師など)の制度の検討が盛り込まれた。これを実現するため、2011年9月に動物看護師統一認定機構が設立された。2012年2月、それまで独自に資格を付与してきた各団体により動物看護職統一試験協議会が設置され、初めて統一試験を実施。その合格者には動物看護師統一認定機構が資格を認定していた。2013年以降は動物看護師統一認定機構が試験実施および資格認定を行っている。2012年4月~2015年3月(2014年度試験)までは、これまでの制度からの移行措置がとられ、統一試験に合格した者のほか、既存の資格や活動・実績に基づいて審査を行う書類審査受験の合格者も「認定動物看護師」となった。移行期間終了後に書類審査受験は廃止され、「認定動物看護師」となるには、指定の養成学校でコアカリキュラム課程を修了後、3月上旬に以下の試験を受ける必要がある。なお、2016年2月に動物看護師統一認定機構は一般財団法人となった。

・一般問題 90問 100分 五肢択一(マークシート方式)

・実地問題 30問  40分 五肢択一(マークシート方式)

諸問題[編集]

そもそも現行の法制度では、獣医師以外の者が獣医療の現場に加わることは想定されていない。しかし、小動物に対する高度な獣医療の需要が高まっている現状では、獣医師のみで動物病院を運営することは困難になっている。一方で、動物看護師をめぐっては以下に述べるような問題点があり、早急に解決することが求められている。

診療行為[編集]

動物看護師の職務には法的な根拠がないため、動物病院などの診療施設において問題が生じている。飼育動物の診療は獣医師(ここでは獣医師免許を所持している者をさす)の独占業務であり、獣医師の監視下であるかないかにかかわらず、獣医師でない者は診療を業務としてはならない(獣医師法第17条)。しかし実際、何が診療で何がそうでないのかの明確な規定は存在しない。人の医療における看護師の場合には、少なくとも医師の指示の元に可能な行為が示されている(保健師助産師看護師法第37条)が、獣医療の場合にはそのような規定も存在していない。

したがって、動物看護師の業務範囲は極めて曖昧で、中には診療に該当する行為(採血、調剤、投薬、診断麻酔レントゲン撮影など)をさせている動物病院もあり、獣医師法や薬剤師法に抵触している可能性が十分にある。

前述のとおり、動物看護師の公的資格化への動きは始まったばかりで、法整備が追いつかない限りは、動物看護師の行為によって患畜が危険な状況になった場合、診療行為の範囲、獣医師の指示責任問題等が争点となることが危惧される。

名称の法的整備[編集]

人間の医療における看護師には、保健師助産師看護師法に基づく名称独占規定があるため、看護師でない者が、看護師又はこれに類似する名称を用いることができない。そのため、動物病院で働く獣医療の補助を行う者を指す呼称についても、法律上の整備が必要である。

労働環境[編集]

上記のように資格名称が曖昧であること、資格が無くとも業務に従事できること、動物看護師の就業希望者数が需要を上回っていること等から、一般の動物病院での労働待遇(勤務時間、給与、福利厚生等)が劣悪であることが多い。その点においても早急な法整備と待遇改善が望まれる。

近年増加している「24時間診療」を掲げた動物病院での勤務は、動物看護師の労働環境をさらに悪化させ、動物病院の「ブラック企業」化を助長している傾向にある。

国外の状況[編集]

アメリカ合衆国[編集]

Certified/Registered/Licensed Veterinary Technician(州によって異なる)と呼ばれており、アメリカ獣医師会 (American Veterinary Medical Association, AVMA) が認定する短期大学(または大学)の課程を修了し、国家試験に合格することで資格が得られる。州によって若干名称が異なっており、また国家試験以外に州独自の試験が課されている場合もあるが、得た資格はアメリカ合衆国のどの州でも通用する。レントゲン撮影カテーテル挿管や麻酔といった高度な医療技術を習得しており、獣医師に準じた獣医療提供者と見なされている。

ただし上記の資格を持っていない者もVeterinary Technicianと呼ばれていることがある。これはVeterinary Assistantとも呼ばれており、獣医療に携わることは許されていない。

イギリス[編集]

Veterinary Nurseと呼ばれており、王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が認定する専門学校で養成課程を修了し、国家試験に合格することで国家資格が得られる。また、4年制大学でVeterinary Nursing(獣医看護師)の学士号も取得可能である。他に王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が規定した、莫大な量に及ぶ獣医看護師養成タスクをRCVSが指定した動物病院で患者やスタッフと直に接し生徒個人でポートフォリオとして作成する。作成されたポートフォリオは王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が認めた Internal Verifier にマーキングをされポートフォリオが規定に満たしていると認められ、そこで初めて獣医看護師になる。英国では獣医看護師の需要は幅広く獣医師の指示なく注射、投薬といった業務が認められている。英国獣医看護師の国家資格は英語圏の国では何処でも適用される。

脚注[編集]

  1. http://www.ccrvn.jp/filename4.html 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • ^ [1]