動物看護師

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動物看護師(どうぶつかんごし)、動物衛生看護師(どうぶつえいせいかんごし)とは、動物病院で働く獣医療補助者を指す呼称である。AHT (animal health technician;アハト) 、VT (veterinary technician) などともいうが、どれも職務内容は同じであり、獣医師の指示の元に動物を抑えたり、受付、掃除なども行うが、獣医師のパートナーとして手術の準備、入院患者の世話、健康管理など、非常に重要な仕事である。医療における看護師とは異なり、動物看護師は国家資格でも公的資格でもなく、さまざまな団体が独自の基準で資格を与えている。確かな統計は存在しないが、動物病院の8割以上で、計2万人程度が従事していると推定されている。動物看護士という表記がされていたこともある。

養成機関[編集]

主に専門学校等で1~3年程度の課程を修了し、様々な認定団体の試験を受けることになる。動物看護師に相当する資格の主な認定団体を下に示し、実際の認定資格の名称を括弧内に記した。

平成13年に帝京科学大学にアニマルサイエンス学科が設置され、初めて大学における動物看護師の養成が開始された(日本動物看護学会の資格試験を受験可能)。平成16年にヤマザキ動物看護短期大学が開学、動物看護学科が設置された(日本動物衛生看護師協会の資格試験を受験可能)。同短期大学は、平成21年度をもって募集停止となり、平成22年4月、ヤマザキ学園大学が開学した。同大学は日本初の動物看護学部を有する。平成17年には日本獣医生命科学大学にも獣医学部獣医保健看護学科が設置された(日本小動物獣医師会および日本動物看護学会の資格試験を受験可能)。平成18年には倉敷芸術科学大学に生命動物科学科が設置された(日本動物看護学会を含む各資格試験を受験可能)。

養成・資格[編集]

動物看護師は公的資格ではなく、さまざまな団体がそれぞれの課程で養成し独自の基準で資格を与えている。したがって動物看護師やそれに相当する資格を持っていると言っても、受けてきた教育の内容や質はまちまちであり、実際には教育を受けていなくとも、動物看護師として動物病院などで勤務する(させる)ことは可能であるため体系的な養成制度の整備が不可欠と考えられている。

現状では共通カリキュラムや統一的な認定機構の整備による公的資格化を視野にいれた議論が始まったばかりである。関連して動物看護師の国家資格化が議論されているが、規制緩和を基調とする現在の行政方針の下では困難だとみられている。そのような中、2009年4月一般社団法人日本動物看護職協会が設立された。『動物看護に関する専門的教育及び学術の研究に努め、国民の健康と福祉を図ると共に動物の福祉の増進に寄与することを目的とする。』が運営理念である。

2010年8月、獣医療法に基づき策定された「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」に動物看護職の地位や身分を確立する必要性が明記された。これを実現するため、2011年9月には動物看護師統一認定機構が設立され、公的資格化のために資格試験の統一が図られることになった。それまで独自に資格を付与してきた団体が動物看護職統一試験協議会を設置し、2012年2月に初めての統一試験が実施されたが、合格者には動物看護師統一認定機構が資格を認定することになった。2013年以降は動物看護師統一認定機構が統一試験を実施、資格を認定することになっている。

2015年度に動物看護職の公的資格化を目指すことを目標として、2012年4月、動物看護師統一認定機構がこれまでの制度からの移行措置について詳細を発表した。これによれば、動物看護師統一認定機構が実施する試験に合格した者のほか、既存の資格や活動・実績に基づいて審査を行う「書類審査受験」の合格者が新制度の資格を認定される。動物看護師統一認定機構は、現職の動物看護師に対して、2015年3月までの移行期間中に新制度の資格認定を受けるように呼びかけている。

諸問題[編集]

そもそも現行の法制度では、獣医師以外の者が獣医療の現場に加わることはほとんど想定されていない。しかし小動物に対する高度な獣医療の需要が高まっている現状では、獣医師のみで動物病院を運営することは困難になっている。一方で、動物看護師をめぐっては以下に述べるような問題点があり、これらを早急に解決することが求められている。

診療行為[編集]

動物看護師の職務には法的な根拠がないため、動物病院などの診療施設において問題が生じている。飼育動物の診療は獣医師の独占業務であり、獣医師の監視下であろうがなかろうが、獣医師でない者は診療を業務としてはならない(獣医師法第17条)。しかし実のところ、何が診療で何がそうでないのかの明確な規定は存在しない。医療における看護師の場合には、少なくとも医師の指示の元に可能な行為が示されている(保健師助産師看護師法第37条)が、獣医療の場合にはそのような規定も存在していない。

これまでの前例としては、検体検査や体温・脈拍の測定は結果の判定のみであれば診療行為に属さず、その他、動物の世話・保定・毛刈り、手術の際の器具渡し、衛生・食事・飼育に関する指導などは診療行為に属さないと解釈されてきた。現状では、動物看護師に何をさせても大丈夫なのかは極めてあいまいである。

また現実には、動物看護師による診療行為(採血、投薬、診断麻酔レントゲン撮影など)が日常的に行われているところが多いとされる。

前述の通り、現状では動物看護師といってもどれだけの訓練を受けているのかはバラバラであり、こうした行為により患畜を危険な状況にする可能性が危惧される。「看護師」という名前がつくために勘違いして診療行為をしてしまうという面もある。

名称の法的整備[編集]

人間の医療における看護師には、保健師助産師看護師法に基づく名称独占規定があるため、看護師でない者が、看護師又はこれに類似する名称を用いることができない。そのため、動物'看護師'を名乗り業務を行うことは、法令に違反してしまう。

動物病院で働く獣医療の補助を行う者を指す呼称について、法律上の整備が必要である。

労働環境[編集]

上記のように資格が曖昧であること。特に資格が無くとも業務に従事できること。動物看護師の就業希望者数が需要を上回っていること等から一般の動物病院での労働待遇が劣悪であることが多く(いわゆる使い捨て)、勤務時間、給与待遇、福利厚生面等で一般社員として採用雇用されていても、アルバイトなどの一時雇用と同等かそれ以下の待遇しか与えられていない場合が多く、獣医師と比較しても非常に劣悪な待遇であることが多い。 上記理由からも早期の法整備と待遇改善が望まれる。

国外の状況[編集]

アメリカ合衆国[編集]

Certified/Registered/Licensed Veterinary Technician(州によって異なる)と呼ばれており、アメリカ獣医師会 (American Veterinary Medical Association, AVMA) が認定する短期大学(または大学)の課程を修了し、国家試験に合格することで資格が得られる。州によって若干名称が異なっており、また国家試験以外に州独自の試験が課されている場合もあるが、得た資格はアメリカ合衆国のどの州でも通用する。レントゲン撮影、カテーテル挿管や麻酔といった高度な医療技術を習得しており、獣医師に準じた獣医療提供者と見なされている。

ただし上記の資格を持っていない者もVeterinary Technicianと呼ばれていることがある。これはVeterinary Assistantとも呼ばれており、獣医療に携わることは許されていない。

イギリス[編集]

Veterinary Nurseと呼ばれており、王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が認定する専門学校で養成課程を修了し、国家試験に合格することで国家資格が得られる。また、4年制大学でVeterinary Nursing(獣医看護師)の学士号も取得可能である。他に王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が規定した、莫大な量に及ぶ獣医看護師養成タスクをRCVSが指定した動物病院で患者やスタッフと直に接し生徒個人でポートフォリオとして作成する。作成されたポートフォリオは王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が認めた Internal Verifier にマーキングをされポートフォリオが規定に満たしていると認められ、そこで初めて獣医看護師になる。英国では獣医看護師の需要は幅広く獣医師の指示なく注射、投薬といった業務が認められている。英国獣医看護師の国家資格は英語圏の国では何処でも適用される。

外部リンク[編集]