動物看護師

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動物看護師、獣医看護師、獣看護師(士)とは、動物病院等で働く獣医療補助者を指す呼称である。VT (veterinary technician) 、VN (veterinary nurse)、 AHT (animal health technician:アハト) などともいう。

業務は、獣医師の指示の下に行う診療補助(主に保定)、カルテ作成、入院患畜の食事健康管理・世話、血液や糞便等の検体検査、薬の管理、清掃、受付など多岐に渡る。

獣医療分野では極めて重要な職務を担っており、動物看護学の他、動物行動学、公衆衛生学等の知識を有していることが望まれる。動物病院以外に、ペットショップトリミングサロン、検査研究機関、ペット保険会社、農業共済組合(大動物診療)、その他動物系施設・企業などを従事の場とすることもある。

養成機関[編集]

動物看護師は人間医療における看護師とは異なり、国家資格ではない。そのため、以前は大学専門学校等の課程を修了後、様々な民間団体の試験に合格することで、動物看護師(士)、動物衛生看護師などと呼称されていた。しかし、動物看護師やそれに類似する名称の資格を持っているとしても、その質には差があり、実際に教育を受けていない者が動物看護師として病院で勤務することができるため、体系的な養成制度の整備と法整備が不可欠と考えられている。現在では公的資格化を目指し、コアカリキュラムが導入された専門学校や大学を修了後、一般財団法人 動物看護師統一認定機構が行う試験に合格した者を「認定動物看護師」と呼称する。(2017年8月現在、19,210人が登録されている。)

2017年時点で養成機関は大学8校(以下の私立大学)、専門学校68校である。なお、日本獣医生命科学大学と酪農学園大学は獣医師養成の獣医学科も有する。

帝京科学大学ヤマザキ学園大学日本獣医生命科学大学倉敷芸術科学大学九州保健福祉大学酪農学園大学東亜大学千葉科学大学

獣医療専門職の必要性と資格試験[編集]

近年、動物医療は眼科や皮膚科、エキゾチックアニマル科等の専門科が確立されて高度化しているが、法律上、獣医師以外の者が診療行為を行うことはできない。しかしながら、各診療施設(特に小動物専門病院)では動物看護師の雇用が一般化し、獣医師法に抵触しない範囲で、診療補助業務の他、入院動物の飼育管理、診療施設の窓口業務及び維持管理業務等に従事させているため、動物看護師の技術・知識の高位平準化、その資格制度や就業環境の整備が喫緊課題となっている。小動物診療部門において、動物看護師は獣医療向上のみならず、飼育者に対する動物保健衛生指導や適正飼育管理の普及推進を図る上で必要不可欠な存在であり、また、産業動物診療部門、公務部門(家畜防疫、公衆衛生等の行政)では獣医師が慢性的に不足しているいため、家畜の採血、ワクチン注射、食肉・食鳥検査等、獣医師が通常行う業務を補助する専門職の必要性が指摘されている。

2010年8月、農林水産省が公表した「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」には、小動物、産業動物等の獣医療現場において動物看護職の確立、知識・技術の高位平準化の必要性が明示された。さらに、家畜伝染病予防法の付帯決議では「獣医師以外の獣医療に従事する者の資格(動物看護師など)の制度の検討」が盛り込まれた。これを実現するために、2011年9月、動物看護師統一認定機構が設立され、2012年2月に初めて統一試験が実施された。2012年4月~2015年3月は、移行措置として統一試験に合格した者のほか、既存の資格や活動・実績に基づく書類審査の合格者も「認定動物看護師」としていたが、今後は、指定の養成学校でコアカリキュラムを修了後、3月上旬に実施される試験に合格しなければならない。(2015年度より年1回実施。2012~2014年度の試験不合格者の受験可能措置は2017年度試験まで。)

なお、2016年2月、動物看護師統一認定機構は一般財団法人となった。

<試験内容>

・一般問題 90問 試験時間100分 五肢択一(マークシート方式)

・実地問題 30問 試験時間 40分 五肢択一(マークシート方式)

<試験範囲>(臨床分野で出題される動物種は犬猫のみであり、産業動物に関する知識は直接問われていない)

・基礎動物看護学Ⅰ(解剖学、生理学、病理学、薬理学、動物遺伝学、動物行動学、放射線学、免疫学、微生物学、寄生虫病学、公衆衛生学、毒性学、繁殖学、野生動物学)

・基礎動物看護学Ⅱ(動物看護の基本理念・職業倫理、動物福祉・関係法規、動物看護の展開、共通の基本看護技術、診療に伴う動物看護技術)

・応用動物看護学Ⅰ(受付業務、外来診療看護業務、入院診療看護業務、周術期看護関連業務、環境整備看護業務、動物栄養学、救命救急時の動物看護、終末期動物患者の看護、予防動物看護、対象動物別の看護、パピーの看護、シニアの看護)

・応用動物看護学Ⅱ(内科系疾患、心・脈管疾患、内分泌・栄養・代謝疾患、泌尿器疾患、アレルギー免疫疾患、呼吸器疾患、脳・神経疾患、運動器疾患、歯・口腔疾患、皮膚疾患、生殖器疾患、眼科疾患、耳鼻咽頭疾患)

<合格率>

2016年度 84.4%(合格者数:1961名)

2015年度 85.6%(合格者数:2056名)

諸問題[編集]

そもそも現行の法制度では、獣医師以外の者が獣医療の現場に加わることは想定されていない。しかし、小動物に対する高度医療の需要が高まり、医療訴訟件数が増加している現状では、獣医師のみで動物病院を運営管理することは不可能になっている。一方で、動物看護師をめぐっては以下のような問題点があり、早急に解決することが求められている。

診療行為[編集]

動物看護師の職務には法的な根拠が一切ないため、診療施設において問題が生じている。飼育動物の診療は獣医師(ここでは獣医師免許を所持している者をさす)の独占業務であり、獣医師の監視下であるかないかにかかわらず、獣医師でない者は診療を業務としてはならない(獣医師法第17条)。人の医療における看護師の場合は、医師の指示下で可能な行為が示されている(保健師助産師看護師法第37条)が、獣医療では、どこまでが診療に含まれるのか明確な規定が存在しない。したがって、動物看護師の業務範囲は極めて曖昧で、中には診療行為(採血、調剤、投薬、麻酔レントゲン撮影など)をさせ、獣医師法や薬剤師法に抵触している動物病院がある。

今後、動物看護師の公的資格化や国家資格化を推進するためには、質の高い共通のカリキュラムに基づいた教育と、公平で適切な試験、さらに、職務範囲の明文化を行い、獣医療専門職としての役割や重要性が広く国民に認知されなければならない。そのため、動物看護師統一認定機構では、動物看護師の職務範囲の議論を行うとともに、ほぼ小動物臨床に限られている就業範囲を産業動物の分野まで網羅する必要性があることを活動報告に記載している。ただ、法整備が追いつかない現状では、動物看護師の行為によって患畜が危険な状況になった場合、診療行為の範囲、獣医師の指示・監督責任問題等が医療訴訟で争点となることが危惧される。

名称の法的整備[編集]

人間の医療における看護師には、保健師助産師看護師法に基づく名称独占規定があるため、看護師でない者が、看護師又はこれに類似する名称を用いることができない。そのため、動物病院で獣医療の補助を行う者や家畜防疫及び公衆衛生分野での補助を行う者を指す呼称についても、法律上の整備が必要である。(獣医療技術職、獣医保健衛生師などが提唱されている。)

労働環境[編集]

上記のように資格名称が曖昧であること、無資格でも業務に従事できること、動物看護師の就業希望者数が需要を上回っていること等から、動物病院での労働待遇(勤務時間、給与、福利厚生等)が劣悪であることが多い。 特に近年増加している「24時間診療」を掲げた動物病院での勤務は、動物看護師の労働環境をさらに悪化させ、動物病院の「ブラック企業」化を助長している。

国外の状況[編集]

アメリカ合衆国[編集]

Certified/Registered/Licensed Veterinary Technician(州によって異なる)と呼ばれており、アメリカ獣医師会 (American Veterinary Medical Association, AVMA) が認定する短期大学(または大学)の課程を修了し、州の試験に合格することで資格が得られる。(アメリカは合衆国のため、日本の国家資格に該当する法律は各州によって定められている)

州によって若干名称が異なっており、州独自の試験が課されている場合もあるが、得た資格はアメリカ合衆国のどの州でも通用する。レントゲン撮影カテーテル挿管や麻酔といった高度な医療技術を習得しており、獣医師に準じた獣医療提供者と見なされている。

ただし上記の資格を持っていない者もVeterinary Technicianと呼ばれていることがある。これはVeterinary Assistantとも呼ばれており、獣医療に携わることは許されていない。

イギリス[編集]

Veterinary Nurseと呼ばれており、王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が認定する専門学校で養成課程を修了し、国家試験に合格することで国家資格が得られる。また、4年制大学でVeterinary Nursing(獣医看護師)の学士号も取得可能である。他に王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が規定した、莫大な量に及ぶ獣医看護師養成タスクをRCVSが指定した動物病院で患者やスタッフと直に接し生徒個人でポートフォリオとして作成する。作成されたポートフォリオは王立獣医師会 (Royal College of Veterinary Surgeons, RCVS) が認めた Internal Verifier にマーキングをされポートフォリオが規定に満たしていると認められ、そこで初めて獣医看護師になる。英国では獣医看護師の需要は幅広く獣医師の指示なく注射、投薬といった業務が認められている。英国獣医看護師の国家資格は英語圏の国では何処でも適用される。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]