動機づけ面接

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動機づけ面接(どうきづけめんせつ、: motivational interviewing, MI)とは、臨床心理士であるウィリアム・R・ミラーステファン・ロルニックが主になって開発したカウンセリングアプローチである。動機づけ面接は、従来の行動療法および来談者中心療法を科学的に分析することから生まれた。(下記に述べる(Project Match))

また、薬物乱用、健康増進行動、治療アドヒアランス、および精神衛生上の問題など、さまざまな範囲の目標母集団と行動を対象とした、200以上のランダム化比較試験において支持されている。肥満患者へのアプローチの有用性は、医学雑誌ランセット(2017)にも掲載された。

具体的な手法として、来談者中心療法的にクライエント自身が現状をどのように把握しているか、どの方向に向かいたいと感じているのか、感情や価値観を協働探索する中で、対象者自身の矛盾を拡大し、両価性を探り,明らかにし,それを解消する方向にクライエントが向かうようにしていく。それはまるで、鏡に映った自らの姿を直そうとしたくなる感覚に似ていると表現する人もいる。クライエントの内発的な動機を呼び、行動を変容させるクライエント中心として日本で広がっているものより晩年のロジャースのそれに近い。

この技法が有効になる背景として、同時期に発展してきた多理論統合モデル(変容ステージ, TTM)の理解が欠かせない。つまり、日常生活行動についての変化がすぐに必要な場合でも、行動変化に関するクライエントの準備の程度は様々である。動機づけ面接はカウンセリングの場に臨むクライエントの動機レベルは多様であるという現実を認識し、許容している。たとえ、カウンセリングが強制的に行われたとしても、あるクライエントは問題にされている行動を変えようとは全く考えないかもしれない。別のクライエントは行動の変化について考えているだけで、実際の変化につながる一歩を踏み出していないこともある。あるいは、行動の変化に関する長年の積極的な努力にも関わらず、不首尾に終わっているという人もいるだろう。自らカウンセリングを求めてくる人のなかによく見られる。

動機づけ面接は善悪判断や直面化、対抗をしない。クライエントの自律性を引き出し、尊重する。カウンセラーとクライエントの関係は協同的・共感的である。このアプローチの狙いは、問題とされている行動の結果として起こる潜在的な問題や過去の経験、リスクなどに対してクライエント気づきを誘うことである。あるいは、より良い将来をクライエントが自ら想い描き、それを達成しようとする動機が強まっていくようにする。どちらにしても、動機づけ面接の戦略は、クライエントが自らの行動について違った見方をするようになり、最終的には行動を変えることによって何が得られるかを考えるようになることを目指している。

動機づけ面接には、クライエント中心療法的な面とガイド的な面の双方が含まれており、対象者の準備性によって使い分けされているとみなされている。伝統的なロジャース流のクライエント中心療法においても、晩年のロジャースはいわゆる「動機のない」対象者に療法を行っていた(Gendlin) との記述があるが、そのスキルについては記述されたものがなかった。動機づけ面接はその明記されていなかった部分を明らかにする過程で生まれたものであり、クライエントが自らを探ろうとするとき、ただ追従するのではなく、変化の方向にカウンセラーからガイドするように働きかける。

ほとんどの認知行動療法は、変化ステージ(多理論統合モデル, trans theoretical model, TTM)で言う所のAction Stage(行動期)以降に向けてデザインされている中で、動機づけ面接は準備期以前にエビデンスを持つ唯一の技法であるとも言われる。また、面談の自己評価尺度を持ち面談の熟達度を測定することも可能である。カウンセリング技法であり、トレーニングによって身につけることのできるスキルである点などが支持され、現在急速に広まっている。

MIの4つの原理[編集]

動機づけ面接は以下の4つの原理に基づいている。(注:第2版に準拠):

  1. 共感を表現する:カウンセラーはクライエントを正確に理解しようとし、その内容をクライエントと共有する。
  2. 矛盾を拡大する:クライエントがこうありたいと望む生き方と、現実の生き方の間にある矛盾を探ることで、行動を変えることの価値をクライエント自ら気づくようにカウンセラーが援助する。
  3. 抵抗を手玉に取る:変わりたくないという気持ち,逡巡は病的ではなく、誰にでもある自然なこととカウンセラーが受け入れるようにする。
  4. 自己効力感をサポートする: クライエントの自己決定(ときにはクライエントが現状維持を選ぶときでさえ)を尊重することによって、クライエントが自信を持って、うまく変わっていけるように援助する。

動機づけ面接の主たるゴールは、クライエントとラポールを確立し、自己動機づけ発言(チェンジトーク)を引き出し、コミットメント言語を確実なものにすることである。

動機づけ面接の適応[編集]

動機づけ強化療法
4セッションに限定して行う問題飲酒に対する治療と飲酒習慣チェックを組み合わせたものである。国民1人当たりの平均飲酒量データに基づいてクライエントの飲酒量をフィードバックし、クライエントが飲酒習慣を変える動機づけを探るようにするものである。米国の公的研究費によって行われたMATCHプロジェクト[1]の中で用いられた。
動機づけ面接法コーチング
動機づけ面接法の技法はコーチングで応用が検討されており、教育心理学、教育工学、産業組織、ポジティブ心理学などの領域や独自の視点も含めて応用が行われている。例として、本来の教育分野での「学習の動機づけ」、教育工学の「ARCSモデル」、産業組織の「消費者行動モデル」、ポジティブ心理学の「ポジティブ感情」、「感謝」などが応用されている。

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • Amrhein, P.C., Miller, W.R., Yahne, C., Palmer, M., & Fulcher, L. (2003). Client commitment language during motivational interviewing predicts drug use outcomes. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 71, 862-878.
  • Miller, W.R. and Rollnick, S. Motivational Interviewing: Preparing People to Change. NY: Guilford Press, 2002.
  • Miller, W.R., Zweben, A., DiClemente, C.C., Rychtarik, R.G. 'Motivational Enhancement Therapy Manual. Washington, DC:National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism, Project MATCH Monograph Series, Volume 2. [2]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]