前園泰徳

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前園 泰徳
生誕 (1972-05-07) 1972年5月7日(45歳)
居住 日本の旗 日本
研究分野 環境学
研究機関 日本学術振興会
京都大学
龍郷町教育委員会
勝山市役所
出身校 東京大学大学院
農学生命科学研究科
博士課程修了
博士課程
指導教員
宮下直
他の指導教員 樋口広芳
高槻成紀
主な業績 DEEP AMAMIを創設
夏季における赤蜻蛉
平地から山地への移動を実証
影響を
与えた人物
前田信二
主な受賞歴 勝山市特別功労賞2014年
プロジェクト:人物伝

前園 泰徳(まえぞの やすのり、1972年昭和47年)5月7日[要出典] - )は、日本教育者環境学者生態学環境教育)。学位博士(農学)東京大学2003年[1]。元・福井県勝山市環境保全推進コーディネーター。

日本学術振興会特別研究員京都大学大学院農学研究科COE研究員鹿児島県大島郡龍郷町教育委員会環境教育推進指導員などを歴任した。ニックネームは「赤とんぼ先生」。

概要[編集]

もともとの専門は生態学で、のちに環境教育が加わった[2][3]鹿児島県大島郡龍郷町の職員となり、環境教育を専門とする教員として勤務した[2][註釈 1]。また、日本の夏季における赤蜻蛉平地から山地への移動を、史上初めて実証した[4]

来歴[編集]

学生時代[編集]

千葉大学理学部[要出典]卒業後東京大学大学院に進学し[5]農学生命科学研究科の応用動物科学専攻にて学んだ[1]。応用動物科学専攻においては、樋口広芳宮下直高槻成紀らが主宰する野生動物システム学研究室に所属した[6][7]。この研究室では、樋口が鳥綱生態行動を専門に研究するのに対し[6]、宮下は蜘蛛綱をはじめとする生物を群集生態学個体群生態学的な視点で研究するなど[6]、教官ごとにアプローチが大きく異なるバラエティに富んだ研究が行われていた。研究室に所属すると、前園は主に宮下から博士課程の指導を受けることになり[1]食物網構造に関する研究に取り組んだ[7]2003年3月に博士課程を修了し、博士(農学)学位を取得した[1]

研究者として[編集]

大学院修了後、九州大学京都大学の大学院にて勤務した[2][5]。京都大学の大学院では、農学研究科COE研究員として勤務し[8]、昆虫生態学研究室に所属した[9]日本学術振興会特別研究員として研究のため奄美大島を訪れ[10]自然が失われていく様子を目にしたことから、奄美大島の地方公共団体に奉職することを志した[2]鹿児島県大島郡龍郷町の職員として採用され、環境教育を担当する教員として勤務した[2]。その後、福井県勝山市に奉職し、環境保全推進コーディネーターとなり[2][3][5]、産官学民連携なども担当した[2][11]。また、東邦大学理学部においては、講師非常勤で兼任した[2][11]。その後、福井大学においても、大学院の教育学研究科にて特命准教授を兼任した[2][3]。教育学研究科においては、主として教職開発専攻(いわゆる教職大学院)の講義を担当した[3]

教え子殺害事件[編集]

2015年3月12日、福井県勝山市内で教え子を殺害した容疑により[12]、3月14日に逮捕され、4月3日に起訴された[13]。身柄拘束中の2015年3月31日に特命准教授としての任期が満了し[14]、更新されないまま同日をもって退任した。

2016年に福井地裁で裁判が開かれたが、9月29日に弁護側の主張が認められた上で懲役3年6ヶ月の有罪判決が下され、10月14日に判決が確定した[15]

教育・研究[編集]

他人と関わることを好まず、当初は自然を相手にしたいと考え、生態学の研究者となった[3]が、研究のため訪れた奄美大島にて自然が失われていく様子を目にしたことで、住民に自分の思いを伝えたいと考え[3]。「何かを変えたり、守ったりするには、人との関わりが不可欠」[3]であるとして、教育者を志すようになった[3]

鹿児島県大島郡龍郷町では、環境教育を専門とする教員として環境教育プロジェクト「DEEP AMAMI」を担当した[2][註釈 1]。「DEEP AMAMI」の代表に就任し、龍郷町出身である実業家渡伸一郎コーンズ社長などを歴任)が創設した「龍郷町環境教育基金」を原資に[16]小説家鳥飼否宇生物学者の藤崎憲治らとともに活動を展開した[17]。それにともない、月刊誌婦人之友』に前園を取り上げた特集記事が掲載されるなど[18]前園自身とその活動はマスコミなどからも多く取り上げられた[要出典]。また、奄美大島においては、アサギマダラの渡りの調査にも協力していた[19][註釈 2]

また、福井県勝山市においては、環境保全推進コーディネーターと同時に産官学民連携も担当し[2][3]持続可能な発展を目指す教育を推進するなど、自然環境の保全と地域の持続的発展の両立、調和を図った[2]。具体的には、赤蜻蛉の調査など勝山市の小学校中学校の全校の環境教育を手掛けており、これらを通じた生徒の学力向上や、地元に住み続けたいと考える生徒の増加といった波及効果が表れ始めている[3]。赤蜻蛉の研究においては、アキアカネが夏になると平地から山間部に移動して過ごしていることを初めて実証した[註釈 3]。なお、これらの業績が評価され、2014年9月には勝山市特別功労賞が授与されている。

さらに身近な生物を取り上げた図鑑を上梓するなど、環境教育にかかわりの深い児童向けの著作も多数著している(著書の節を参照)。編集者前田信二メイツ出版社長などを歴任)は、前園の著書『日本のいきもの図鑑』シリーズの編集を担当したことから、前園の思想に傾倒したと述べている[20]。前園に感化された前田は、前園がかつて著した『千葉いきもの図鑑』と類似の図鑑を上梓するとともに[20]、さらに類似の書籍を多数上梓するようになった[21]。また、蔵満逸司による奄美大島を取り上げたクイズの本において、自然環境に関する設問の作成に対して助言を行っている[22]

学術団体としては、地域環境学ネットワークなどに所属している[11]

人物[編集]

趣味・特技[編集]

写真が趣味で、勝山左義長を撮影した作品「雪と炎」にて、勝山左義長まつりフォトコンテストの最優秀賞を受賞している[23][24]。また、自らが執筆した図鑑には、自身が撮影した生物の写真を掲載している。さらに、生物学者の樋口広芳による一般向け書籍には、前園が撮影した奄美大島や加計呂麻島などの近海の珊瑚礁の写真が掲載されている[25][26]

思想・信条[編集]

近年の治安犯罪について「いともたやすく人や動物を傷つけ、命を奪い去るような、凶悪犯罪少年犯罪ニュースが、毎日のように流れるようになった。すでに人の心の荒廃が問題視されるようになって久しい」[27]として、「指摘されている要因は様々であるが、今のところこれらに対し、目立った効果のある対策はなく、改善の兆しはほとんどない」[27]分析している。そのうえで「人の心の荒廃と地球環境の荒廃は、無関係ではないと考えられる」[27]として、対策として「子、供(ママ)たちへの『環境教育』を最優先に行うべきである」[28]と述べている。

賞歴[編集]

著作[編集]

学位論文[編集]

著書(単著)[編集]

著書(分担執筆)[編集]

論文[編集]

解説[編集]

講演録[編集]

  • 前園泰徳「環境教育が人の心と地球を救う――奄美大島龍郷町からの挑戦」、『バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集』第22号、バイオメディカル・ファジィ・システム学会、2009年10月10日、 155-158頁。

脚注[編集]

註釈[編集]

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  1. ^ a b 環境教育を専門とする教員は、日本国内では前園が最初の人物である[2]
  2. ^ アサギマダラの渡りの調査は長年にわたり行われてきたが、種子島以外の南西諸島の島から本州に渡っている例は24年間の調査で一例も見つかっていなかった。2004年医師栗田昌裕が奄美大島でマーキングした個体が本州で史上初めて発見し、さらに続いて同じく栗田のマーキングした個体と前園がマーキングした個体がそれぞれ1例ずつ見つかったことから、アサギマダラが奄美大島から本州に渡っていたことが実証された[19]
  3. ^ 先行研究によりアキアカネが秋に山間部から平地に移動することは実証されていたものの、羽化したアキアカネが夏に平地から山間部に移動することは確認されておらず、あくまで推測に過ぎなかった。しかし、前園らは史上初めて平地から山間部に移動することを実証し、平地と山間部との双方向の移動の全容が明らかになった[4]

出典[編集]

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  1. ^ a b c d 前園泰徳 2003.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m 「プロフィール」『会員リスト|詳細科学技術振興機構社会技術研究開発センター。(アーカイブ
  3. ^ a b c d e f g h i j 前園泰徳「地域の魅力を見出し美しい故郷を未来へ残す」『教員紹介 - 受験生サイト - 福井大学 University of Fukui福井大学
  4. ^ a b 森上需「赤トンボの避暑地への移動 国内初確認-東邦大学理学部生命圏環境科学科野外実習において」『赤トンボの避暑地への移動 国内初確認~東邦大学理学部生命圏環境科学科 野外実習において~|プレスリリース|学校法人東邦大学東邦大学2011年9月23日
  5. ^ a b c 「自己紹介文」『プロフィールニフティ
  6. ^ a b c 馬場友希「東京大学大学院農学生命科学研究科生物多様性科学研究室(宮下研)」『個体群生態学会会報』65号、個体群生態学会、2007年6月30日、12頁。
  7. ^ a b 馬場友希「東京大学大学院農学生命科学研究科生物多様性科学研究室(宮下研)」『個体群生態学会会報』65号、個体群生態学会、2007年6月30日、13頁。
  8. ^ なぜ“自然を知ること”が大切なのか? ――子ども達への環境教育が拓く奄美の未来』。
  9. ^ 「京都大学昆虫生態学研究室」『最近移動したメンバー - 京大昆虫研HP - 京大昆虫研HP - 新規サイト012京都大学昆虫生態学研究室
  10. ^ 佐藤正典ほか『滅びゆく鹿児島――地域の人々が自ら未来を切り拓く』南方新社1995年、212頁。
  11. ^ a b c 「私たちは地域環境学ネットワークの会員です」『会員リスト | 地域環境学ネットワークとは | 地域環境学ネットワーク科学技術振興機構社会技術研究開発センター2013年1月21日
  12. ^ 元准教授、頼まれたと主張 教え子殺害初公判 日本経済新聞 2016年9月12日
  13. ^ 元准教授教え子殺害、12日初公判 「嘱託」有無が争点、福井地裁 福井新聞 2016年9月11日
  14. ^ 「『社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)読売新聞2015年4月4日
  15. ^ 元准教授、嘱託殺人の判決確定へ 懲役3年6月、福井地検控訴せず 福井新聞 2016年10月13日
  16. ^ 前園泰徳「DEEPが目指すもの」『DEEP AMAMI:代表からのメッセージ』DEEP AMAMI。(アーカイブ
  17. ^ 「メンバー紹介」『DEEP AMAMI:メンバー紹介』DEEP AMAMI。(アーカイブ
  18. ^ 婦人之友 2010.
  19. ^ a b 栗田昌裕『謎の蝶アサギマダラはなぜ海を渡るのか?』PHPエディターズ・グループ、2013年ISBN 978-4569813820
  20. ^ a b 前田信二『千葉いきもの図鑑――A Field Guide to the Plants and Animals of Chiba』メイツ出版2013年ISBN 978-4780413359
  21. ^ 前田信二『埼玉いきもの図鑑――A Field Guide to the Plants and Animals of Saitama』メイツ出版2012年ISBN 978-4780411645
  22. ^ 蔵満逸司『奄美もの知りクイズ350問』南方新社2005年、175頁。ISBN 978-4861240683
  23. ^ 平成24年度勝山左義長まつりフォトコンテスト入賞一覧』。
  24. ^ 「勝山左義長まつりフォトコンテスト入賞作品展」『広報かつやま』703号、福井県勝山市2013年6月、14頁。
  25. ^ 樋口広芳『生命にぎわう青い星――生物の多様性と私たちのくらし』化学同人2010年、口絵(5)。ISBN 978-4759813302
  26. ^ 樋口広芳『生命にぎわう青い星――生物の多様性と私たちのくらし』化学同人2010年、40頁。ISBN 978-4759813302
  27. ^ a b c 前園泰徳「環境教育が人の心と地球を救う――奄美大島龍郷町からの挑戦」『バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集』22号、バイオメディカル・ファジィ・システム学会、2009年10月10日、155頁。
  28. ^ 前園泰徳「環境教育が人の心と地球を救う――奄美大島龍郷町からの挑戦」『バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集』22号、バイオメディカル・ファジィ・システム学会、2009年10月10日、156頁。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]