利益団体

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利益団体(りえきだんたい、: interest group)とは、目標の実現や利益の確保のために、社会政治に影響を与えようとする、政党以外の団体である。圧力団体(あつりょくだんたい)、利益集団(りえきしゅうだん)、プレッシャー・グループともいう。会員同士の親睦互助を行なったり、会員の団結による社会的提言社会貢献研究も行う。しばしば議会への影響力拡大のために組織内議員を擁し、それが一政党の過半数を占めることもある[1]

概要[編集]

利益団体の具体的な活動形態として政治家や政党への献金(政治献金)、請願、票集め、パブリック・コメントにおける政策提言や情報提供、各種メディアを通じた広告キャンペーンの展開、街頭行動、専門的な研究、会員同士の交流や互助活動などがある。

ロビー活動と呼ばれる政治の院外活動に関して、日本では、利益団体が議員を通して行政・官僚へ働きかけることが多い。利益団体などの社会的共同体の動きを重視する思想をコーポラティズムという。

利害関係者として、立法府の公聴会、中央政府や地方政府の懇談会審議会などに公述人や専門委員を輩出するなどの役目もある。

国際機関においても利益団体が諮問機関に加わって活動している。例えば国際連合国際連合経済社会理事会欧州連合経済社会評議会 (EU)のケースがある。

日本の例としては厚生労働省内に設置された労働政策審議会では、労働者代表として日本労働組合総連合会(連合)系の労組の役員が、使用者代表として日本経済団体連合会(経団連)が参加している。

利益団体は時に対立しあう。一例を挙げる。

アメリカで発達し、利益団体が政治に与える影響の強さを示すエピソードとしてしばしば挙げられるものに、の所持の問題がある。銃による犯罪や事故が相次ぐアメリカでは、犯罪銃規制を強化しようとする動きがあるが、全米ライフル協会は政治献金や広告キャンペーンを通じてこれに反対し、一般人による銃の所持を規制しないように働きかけている。

選挙との関係[編集]

政党は有権者全ての利益を集約する機能(利益集約機能)が主なため、利益を表出する機能がほとんど失われているとされる。そこで、利益団体によって、その団体に属する者の利益を表出する(利益表出機能)ことにより政党の機能を補完しているという特徴がある。

反例として、比例代表制で選ばれる政党がある。比例代表制に於いては、一定以上の割合の有権者から支持を受ければ、他の大多数の有権者から非難を受けても議席を獲得することが出来る。このため、利益集約機能を一部の有権者に特化させ、集約機能が有権者全てに汎用化されている政党から議席を奪う戦略が有効となる。

よって、比例代表制を勝ち抜いた政党の多くは、有権者全体の利益を集約する機能を失っており、代わりに、特化先に選んだ有権者層の利益集約機能を得る。結果として、比例代表制に於ける政党と利益団体との違いは、利益を表出される有権者の、団体への加入タイミングのみである。前者では、団体側が表出利益を先に提示し、個々の有権者は自分の利益を正しく表出した団体への投票という形で加入する。後者では、有権者が先に特定の団体に加入し、団体は加入者の利益を集約する。

職能団体業界団体労働団体・各種の当事者団体等の利益団体が直接的に議会に団体の代表を送り出す方式もある。これを職能代表制や職能議会という。

主な利益団体の種類[編集]

参考文献[編集]

関連図書[編集]

  • Dahl, R. A. 1981. Dilemmas of Pluralist Democracy. New Haven: Yale Univ. Press.
  • Katzenstein, P. 1984. Corporatism and Change: Austria, Switzerland and the politics of industry. Ithaca: Cornell Univ. Press.
  • Katzenstein, P. Small States in World Markets. Ithaca, New York: Cornell Univ. Press.
  • Keeler, J. 1987. The Politics of Neocorporatism in France. New York: Oxford Univ. Press.
  • Moe, T. 1980. The Organization of Interests. Chicago: Univ. of Chicago Press.
  • Olson, M. 1965. The Logic of Collective Action: Public Goods and the Theory of Groups. Cambridge, Mass.: Harvard Univ. Press.
    • オルソン著、依田博、森脇俊雅訳『集合行為論 公共財と集団理論』ミネルヴァ書房、1983年、新装版1996年
  • Olson, M. 1982. The Rise and Decline of Nations. New Haven: Yale Univ. Press.
    • オルソン著、加藤寛監訳『国家興亡論 「集合行為論」からみた盛衰の科学』PHP研究所、1991年
  • Richardson, J. J. and Jordan, A. G. 1985. Government under Pressure: The Policy Process in a Post Parliamentary Democracy. Oxford: Basil Blackwell.
  • Schlozman, K. and Tierney, J. E. 1986. Organized Interests and American Democracy. New York: Harper & Row.
  • Wilson, G. 1985. Business and Politics. Chatham, N.J.: Chatham House.
  • Zeigler, H. 1988. Pluralism, Corporatism, and Confucianism, Philadelphia: Temple Univ. Press.

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 三訂版,世界大百科事典内言及, デジタル大辞泉,精選版 日本国語大辞典,世界大百科事典 第2版,百科事典マイペディア,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,日本大百科全書(ニッポニカ),旺文社日本史事典. “総評とは”. コトバンク. 2021年10月20日閲覧。 “さらに進んで圧力団体がその幹部を議員候補者として政党に提供することも,まれではない。この点で際だっているのが日本の総評で,社会党の衆参両院議員の過半数は,現在総評出身者によって占められている。圧力団体活動の第2の側面は,議会に対する〈圧力活動〉である。”
  2. ^ 「個人化が進む今だからこそ、中間集団の持つ可能性に期待」新雅史著。月刊誌『第三文明』2013年10月号