別役実
別役 実 | |
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誕生 |
1937年4月6日(82歳) 満州国新京特別市 (現中華人民共和国長春市) |
職業 | 劇作家、童話作家 |
主な受賞歴 | 第13回岸田國士戯曲賞 |
配偶者 | 楠侑子 |
子供 | 長女:べつやくれい |
親族 | 寺田寅彦 |
影響を受けたもの
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別役 実(べっちゃく みのる、べつやく みのる 1937年4月6日 - )は、劇作家、童話作家、評論家、随筆家である。名の正式な表記は實。サミュエル・ベケットの影響を受け、日本の不条理演劇を確立した第一人者である。日本藝術院会員。
理学博士・随筆家の寺田寅彦の姉、駒の曾孫にあたる[1]。妻は女優の楠侑子。一人娘の怜は、イラストレーターのべつやくれいとして活動している。安岡章太郎は遠戚である。
目次
来歴・人物[編集]
1937年、満州国新京特別市(現中華人民共和国長春市)生まれ。幼くして父を亡くす。終戦と同時に日本に引き揚げてくるが、母子家庭のため清水市や長野市など親戚の家を転々とする。長野北高校(現長野県長野高等学校)時代は画家を目指しつつ、聖書研究会に通うなどしていた。
高校卒業後、喫茶店のウェイターなどをしながら浪人生活を送り、早稲田大学政治経済学部政治学科に入学。鈴木忠志らと出会い、劇団「自由舞台」で演劇と学生運動にのめり込む。その結果、経済的事情により同大学を中退。処女作は『AとBと一人の女』とされているが、正確にはその前の習作として『貸間あり』『ホクロソーセージ』などがあった。
大学中退後は、土建一般労働組合の書記としてサラリーマン生活を送りつつ、喫茶店で作品を書き続ける日々を送る。1968年、『マッチ売りの少女』『赤い鳥の居る風景』で第13回岸田國士戯曲賞を受賞。この時期には「雨が空から降れば」(作曲:小室等)などの詩作もある。
三津田健、中村伸郎、高木均といった俳優がよく別役作品に出演した。1990年代に入ってからは、日本劇作家協会の創立に関わる。平田オリザとの親交も深い[要出典]。
2003年から2009年3月までは兵庫県にあるピッコロシアターに併設された兵庫県立ピッコロ劇団の代表を務めていた。2013年芸術院会員に選ばれる。
エッセイ集も多数発表しており、「○○づくし」と題された事典類のパロディ的なシリーズがある。
2014年12月、青山円形劇場で新作脚本の『雨の降る日は天気が悪い』が上演予定だったが、病気療養のために演目が『夕空はれて〜よくかきくうきゃく〜』(1985年作)に変更となった[2]。
作風[編集]
幻想的で独創的な作風が特徴で、登場人物が「男 1」「男 2」など、固有の名前を持たないことが多い。舞台には必ずと言っていいほど一本の電信柱、あるいはそれに相当するような柱のようなものが立っている。電信柱は、別役が宮沢賢治のファンであることに由来する(これがきっかけでアニメ『銀河鉄道の夜』の脚本担当)。
社会的活動[編集]
近年は、劇作家協会の会長として著作権の問題などに積極的に意見を述べている。特に注目されるのは、著作権の保護期間を延長しようという風潮が強まっている中、自ら作家でありながらその風潮にあえて反対の立場を取っていることである。別役自身は「これが議論の叩き台になってくれればよい」としており、必ずしも自分の意見に固執してはいないが、別役が著作権の保護期間の延長に反対の立場を取っている背景には、かつて宮沢賢治の作品をモチーフにしようとした際、宮沢の著作権を承継した者のガードが大変固く、作品の発表が大幅に遅れたという経験が大きい。
2006年度の大学入試センター試験において別役の文章が出題されたが、こういった立場から過去問題集に本文の掲載を認めていない。
受賞歴[編集]
- 1968年、『マッチ売りの少女』『赤い鳥の居る風景』で岸田國士戯曲賞。
- 1988年、芸術選奨文部大臣賞。
- 2007年、紀伊国屋演劇賞。
- 2008年、『やってきたゴドー』で鶴屋南北戯曲賞・2008年度朝日賞。
作品[編集]
戯曲[編集]
- 象
- 赤い鳥の居る風景
- マッチ売りの少女
- カンガルー
- ポンコツ車と五人の紳士
- 不思議の国のアリス
- 椅子と伝説
- 死体のある風景
- あーぶくたった、にぃたった
- にしむくさむらい
- 一軒の家・一本の樹・一人の息子
- 天才バカボンのパパなのだ
- 舞え舞えかたつむり
- マザー・マザー・マザー
- 雰囲気のある死体
- 病気
- 会議
- うしろの正面だあれ
- メリーさんの羊
- 白瀬中尉の南極探検
- トイレはこちら
- さらだ殺人事件
- ジョバンニの父への旅
- 諸国を遍歴する二人の騎士の物語
- そのひとではありません
- 死のような死
- 受付
- 空中ブランコ乗りのキキ
- 天神さまのほそみち
- 雨の降る日は天気が悪い - 2014年12月初演予定だった
- ああ、それなのに、それなのに - 2018年初演、144本目の戯曲[3]
著書[編集]
童話・小説[編集]
- 淋しいおさかな 三一書房 1973 のちPHP文庫
- 黒い郵便船 三一書房 1975
- さばくの町のXたんてい 講談社 1976
- 星の街のものがたり 三一書房 1977
- 探偵物語 大和書房 1977
- あまんちゅうのまち 旺文社 1978
- 山猫理髪店 三一書房 1979
- コン・セブリ島の魔法使い 旺文社 1981
- 丘の上の人殺しの家 リブロポート 1981
- そよそよ族伝説 1-3 三一書房 1982-1985
- ゼレファンタンケルダンス スズキコージ絵 リブロポート 1983
- おさかなの手紙 三一書房 1984
- ねこのおんせん 佐野洋子絵 教育画劇 1986
- 探偵X氏の事件 王国社 1986
- 風の研究 童話集 三一書房 1988
- モーの入院 朝倉摂絵 リブロポート 1990
- 眠り島 白水社 1992
- 別役実の「贋作天地創造」 その日、神さまは… 朝日新聞社 1998
- 愛のサーカス
- 空中ブランコ乗りのキキ
エッセイ[編集]
- 電信柱のある宇宙 白水社 1980 のち白水Uブックス
- わんだぁらんど安曇野 桐原書店 1981
- 虫づくし 鳥書房 1981 のちハヤカワ文庫
- けものづくし 真説・動物学大系 平凡社 1982 のちライブラリー
- 鳥づくし 続真説・動物学大系 平凡社 1985 のちライブラリー
- 別役実の名画劇場 パロディ・シアター 王国社 1985
- 馬に乗った丹下左膳 エッセイ集 リブロポート 1986
- 恐竜の飼いかた教えます ロバート・マッシュ(訳)平凡社 1986
- 道具づくし 大和書房 1986 のちハヤカワ文庫
- 当世・商売往来 岩波新書、1988 のち朝日文庫
- 魚づくし 続々真説・動物学大系 平凡社 1989
- 別役実の当世病気道楽 三省堂 1990 のちちくま文庫
- 日々の暮し方 白水社 1990 のち白水Uブックス
- イーハトーボゆき軽便鉄道 リブロポート 1990 のち白水Uブックス
- 当世悪魔の辞典 王国社 1991 のち朝日文芸文庫
- 現代犯罪図鑑 玖保キリコ 岩波書店 1992(シリーズ<物語の誕生>)
- 当世もののけ生態学 早川書房 1993 「もののけづくし」ハヤカワ文庫
- 別役実の人体カタログ 平凡社 1993
- 思いちがい辞典 リブロポート 1993 のちちくま文庫
- 教訓 汝、忘れる勿れ 王国社 1993
- カナダのさけの笑い 弥生書房 1994
- 都市の鑑賞法 大和書房 1995
- ことわざ悪魔の辞典 王国社 1997 のちちくま文庫
- 満ち足りた人生 白水社 1997 のちUブックス
- さんずいづくし 白水社 2001
- 左見右見四字熟語 大修館書店 2005
- さんずいあそび 白水社 2006
評論[編集]
- 『言葉への戦術』烏書房 1972
- 『戒厳令 伝説・北一輝』角川書店 1973
- 『別役実の犯罪症候群』三省堂 1981 のちちくま学芸文庫
- 『台詞の風景』白水社 1984 のちUブックス
- 『ベケットと「いじめ」 ドラマツルギーの現在』岩波書店 1987 のち白水Uブックス
- 『犯罪季評』朝倉喬司 朝日文庫 1991
- 『宇宙遊泳する現代』弥生書房 1991
- 『犯罪の見取図』王国社 1994
- 『17歳のバタフライナイフ 突破者犯罪を語る』宮崎学 三一書房労働組合 2000
- 『別役実の犯罪のことば解読事典』三省堂 2001
- 『「母性」の叛乱 平成犯罪事件簿』中央公論新社 2002
- 『別役実の演劇教室 舞台を遊ぶ』白水社 2002
- 『うらよみ演劇用語辞典』小学館 2003
- 『別役実のコント教室 不条理な笑いへのレッスン』白水社 2003
- 『別役実のコント検定! 不条理な笑いのライセンスをあなたに』白水社 2008
- 『ことばの創りかた 現代演劇ひろい文』論創社 2012
- 『東京放浪記』平凡社 2013
戯曲集[編集]
- 『マッチ売りの少女・象 戯曲集』三一書房 1969
- 『不思議の国のアリス 第二戯曲集』三一書房 1970
- 『移動』新潮社(書下ろし新潮劇場)1971
- 『そよそよ族の叛乱 第三戯曲集』三一書房 1971
- 『象は死刑』大和書房 1973
- 『椅子と伝説』新潮社(書下ろし新潮劇場)1974
- 『数字で書かれた物語 第四戯曲集』三一書房 1974
- 『赤い鳥の居る風景』角川文庫 1974
- 『あーぶくたった、にぃたった 戯曲集』三一書房 1976
- 『にしむくさむらい 戯曲集』三一書房 1978
- 『天才バカボンのパパなのだ 戯曲集』三一書房 1979
- 『マザー・マザー・マザー 戯曲集』三一書房 1980
- 『木に花咲く 戯曲集』三一書房 1981
- 『足のある死体・会議 戯曲集』三一書房 1982
- 『太郎の屋根に雪降りつむ 戯曲集』三一書房 1983
- 『メリーさんの羊 戯曲集』三一書房 1984
- 『ハイキング 戯曲集』三一書房 1985
- 『白瀬中尉の南極探検 戯曲集』三一書房 1986
- 『ジョバンニの父への旅 戯曲集』三一書房 1988
- 『諸国を遍歴する二人の騎士の物語 戯曲集』三一書房 1988
- 『ドラキュラ伯爵の秋 戯曲集』三一書房 1990
- 『山猫からの手紙 戯曲集』三一書房 1991
- 『はるなつあきふゆ 戯曲集』三一書房 1993
- 『猫ふんぢゃった 戯曲集』三一書房 1993
- 『赤ずきんちゃんの森の狼たちのクリスマス 音楽劇』新水社 1993
- 『風に吹かれてドンキホーテ 戯曲集』三一書房 1994
- 『カラカラ天気と五人の紳士 戯曲集』三一書房 1994
- 『森から来たカーニバル 戯曲集』三一書房 1996
- 『遊園地の思想 戯曲集』三一書房 1997
- 『金襴緞子の帯しめながら 戯曲集』三一書房 1998
- 『別役実 1(壊れた風景/象)』ハヤカワ演劇文庫 2007
- 『さらっていってよピーターパン』論創社 2011
- 『別役実の混沌コント』三一書房2017
未発表戯曲「ホクロソーセージ」について[編集]
ナンセンス喜劇だったと言われている。肉屋の主人が妻を殺してしまい、それが露見しないように妻をソーセージにして売ってしまう。ところが、ソーセージの中にホクロが入っており、肉屋の主人の妻が大きなホクロを持っていたことから、ひょっとして主人が妻を殺したのではないかという噂が立つというあらすじである。
別役実フェスティバル[編集]
18団体が参加し、別役作品19演目を、2015年3月~2016年7月の約1年半に渡って上演[4]。
- 北九州芸術劇場 - 『≪不思議の国のアリスの≫帽子屋さんのお茶の会』(あうるすぽっと、2015年3月21日・22日)
- 『会議』(北九州芸術劇場 小劇場、2016年3月5日〜7日)
- 新宿サニーサイドシアター - 『ポンコツ車と五人の紳士』『寝られます』(新宿サニーサイドシアター、2015年5月13日〜17日)[5]
- LAVINIA - 『≪不思議の国のアリスの≫帽子屋さんのお茶の会』(ウッディシアター中目黒、2015年5月20日〜24日)
- 番外公演として同会場にて2016年5月25日〜29日に再演[6]
- 劇団青年座 - 『山猫からの手紙 ―イーハトーボ伝説―』(青年座劇場、2015年5月29日〜6月7日)[7]
- 劇団俳協 - 『≪不思議の国のアリスの≫帽子屋さんのお茶の会』(TACCS1179(俳協ホール)、2015年6月4日〜7日)[10]
- Pカンパニー - 『ジョバンニの父への旅』(シアターグリーン Box in Box THEATER、2015年6月10日〜14日)[11]
- 『雨が空から降れば』(同会場、2016年4月27日〜5月2日)
- 劇団俳優座 - 『象』(劇団俳優座5階稽古場、2015年6月14日〜21日)[12]
- 劇団民藝 - 『卵の中の白雪姫』(スタジオM、2015年7月24日〜29日)[13]
- 劇団キンダースペース - 『赤い鳥の居る風景』(北とぴあペガサスホール、2015年7月24日〜26日)[14]
- 名取事務所 - 『壊れた風景』(下北沢小劇場B1、2015年7月29日〜8月2日)[15]
- 兵庫県立ピッコロ劇団 - 『さらっていってよ ピーターパン』(ピッコロシアター大ホール、2015年8月8日・9日)
- 劇団銅鑼 - 『はるなつあきふゆ』(銅鑼アトリエ、2015年9月7日〜13日)
- 文学座 - 『あのこはだあれ、だれでしょね~尼崎連続変死事件より~』(文学座アトリエ、2015年9月16日〜30日)
- テアトル・エコー - 『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』(恵比寿・エコー劇場、2015年10月16日〜28日)
- 山の羊舎 - 『うしろの正面だあれ』(下北沢小劇場B1、2015年11月4日〜8日)[16]
- 番外公演『窓から外を見ている』(同会場、2016年7月7日〜10日)
- 演劇集団円 - 『≪不思議の国のアリスの≫帽子屋さんのお茶の会』(シアターX、2015年12月19日〜27日)
- 劇団昴 ザ・サード・ステージ -『街と飛行船』(東京芸術劇場 シアターウエスト、2016年1月9日〜13日)[17]
- 新国立劇場 - 『「かぐや姫伝説」より 月・こうこう, 風・そうそう』(新国立劇場 小劇場 THE PIT、2016年7月13日〜31日)[18]
フェスティバルの概要は別役実フェスティバル実行委員会 - Facebook参照
関連人物[編集]
- 鈴木忠志(演出家)
- 高橋昌也(演出家・演劇集団 円)
- 中村伸郎(出演者・演劇集団 円)
- 岸田今日子(出演者・演劇集団 円)
- 三谷昇(出演者・演劇集団 円)
- 高木均(出演者・元演劇集団円)
- 角野卓造(出演者・文学座)
- 藤原新平(演出家・文学座)
- 村井志摩子(劇作家・演出家・かたつむりの会)
- 楠侑子(女優・妻)
- べつやくれい(イラストレーター・娘)
脚注・出典[編集]
- ^ 山田一郎『寺田寅彦覚書』p.33(岩波書店、1981年)
- ^ “別役実が病気療養のため12月上演の演目が変更に”. シアターガイド. (2014年10月31日) 2014年11月1日閲覧。
- ^ 野中広樹 (2018年10月15日). “別役実144本目の新作『ああ、それなのに、それなのに』を名取事務所が上演──演出家・眞鍋卓嗣に聞く”. SPICE. 2019年8月30日閲覧。
- ^ “不条理劇とは・・・。 別役実 本人が語った「演劇」をつくる意味”. エントレ (2015年3月19日). 2019年8月30日閲覧。
- ^ 別役作品二本立て公演『ポンコツ車と五人の紳士』&『寝られます』 こりっち舞台芸術
- ^ 再演『帽子屋さんのお茶の会』 LAVINIA
- ^ “青年座が「別役実フェスティバル」第4弾として登場!『山猫からの手紙 ―イーハトーボ伝説―』”. エンタステージ (2015年4月23日). 2019年8月30日閲覧。
- ^ 別役実フェスティバル 交流プロジェクトvol.1(2015年8月13日 劇団青年座 HotNews
- ^ 別役実フェスティバル 交流プロジェクトvol.2(2015年12月28日 劇団青年座 HotNews
- ^ ≪不思議の国のアリスの≫帽子屋さんのお茶の会 こりっち舞台芸術
- ^ Pカンパニー公演『ジョバンニの父への旅』 カンフェティ
- ^ LABO『象』 劇団俳優座
- ^ 卵の中の白雪姫|2015年上演作品 劇団民藝公式サイト
- ^ 別役実フェスティバル参加作品「赤い鳥の居る風景」 劇団キンダースペース
- ^ 壊れた風景_名取事務所公演
- ^ 第4回公演 うしろの正面だあれ 山の羊舎
- ^ 劇団昴 2016年公演情報 劇団昴公式ホームページ
- ^ 月・こうこう, 風・そうそう 新国立劇場 演劇
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