円口類
| 円口類 Cyclostomata | |||||||||||||||
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ヤツメウナギ | |||||||||||||||
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円口類(えんこうるい Cyclostomata)は、脊椎動物亜門のうち、ヤツメウナギ類とヌタウナギ類を含む系統。無顎類のうち、現在生存しているのは全て円口類である[1]。
概要
[編集]円口類は、アンドレ・マリー・コンスタン・デュメリルにより1806年に初めて提唱されたグループである[2]。顎を持たない現生脊椎動物であるヌタウナギとヤツメウナギを分類群としてまとめるため、その口器の形状から「円口類」(Cyclostomata) と名付けられた。
ところが、後年になると多くの研究者がこれをクレードとしては支持しなくなってきた。すなわちヌタウナギとヤツメウナギがそれぞれ別のグループとされるようになったために、一時円口類という分類群は消滅したのである。ヌタウナギは脊椎骨を持たないことや神経堤細胞の発生が独特であるなど、あまりに顎口類とかけ離れた特徴から穿口蓋類 (Hyperotreti) としてまとめられ、その他の全ての脊椎動物全体の姉妹群と見なされた。このため脊椎動物にその外群であるヌタウナギを加えた分類群として、有頭動物 (Craniata) が置かれた。(Janvier, 1996) つまり、一時ヌタウナギは厳密な意味での脊椎動物ではなくなったのである。
しかし現在では、分子系統[3]や詳細な形態・発生の比較などにより、再び単系統性が支持されるようになっている[4]。上述のヌタウナギの独特な神経堤細胞の発生も、観察を誤ったものであったことが現在では証明されている。
特徴
[編集]比較的寒冷な地域の河川、湖沼、海中と、暖かい地域の深い海に分布する。顎を持たず、口は、頭部末端に開いた単純な孔のようになっている。また、対鰭(胸鰭や腹鰭のように対になった鰭)を持たない。体表は粘膜で覆われている。鰓は互いに未分化な状態で咽頭に連続しており、口から取り入れた水を、体側に並んだ鰓孔から排出して呼吸する。顎や真の歯は無いが、鋭い角質の歯状突起を持っていて、生きた魚、死にかけた魚などを捕食する。
ヌタウナギ類
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ヌタウナギ綱(旧和名:メクラウナギ綱)Myxini は、大陸棚から深海にかけての冷たい海中に生息している。化石記録に乏しく、形態進化の過程は不明である。体型はウナギ状で、皮膚は粘膜に覆われている。目は皮膚に埋没して外見からは確認できない種が多いが、目を覆う皮膚は色素に乏しく白みがかって見える。4-6対のひげをもつ。口の周りに歯を持たないが、舌の上に歯状突起があり、死にかけた魚や死体、生きた獲物ではゴカイのような多毛類を食べている。
底曳き網漁業で大量に網に入ってくることがあり、網の中の魚を食害して商品価値を落とすうえに、海水を吸って著しく膨潤しゼラチン状に固まる大量の粘液を分泌して漁具や甲板をそこなうので嫌われている。
地域によっては食用にするが、漁獲されても食用にしない地域も多い。新潟県においては「浜焼き穴子」という名前でヌタウナギの加工品が作られ、燻製や干物も生産されている。しかし、一大消費地は韓国であり、古くから庶民の滋養食として用いられてきた。具体的には藁を燃やして丸焼きにしたり、匂い付けに松葉を敷いて網焼きにする。また、ぶつ切りにして葱やコチュジャンで炒めたり、焼肉風に焼いて食べることもある。釜山などでは専門の料理店も存在する。また、ヌタウナギの革は加工して財布などの皮革工芸品にされる。
日本で漁獲されるヌタウナギは、その大半が韓国に輸出されている。
繁殖力はそれほど強くないようで、食用や皮革用に集中的に漁獲すると資源が急速に枯渇してしまった事例が多く知られている。
ヤツメウナギ類
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ヤツメウナギ類 (Petromyzontiformes) は、両半球の比較的冷たい海と陸水に生息していて、目は大きく、目の後ろに7対の鰓孔が目立つ。口の周囲に鋭い歯(角質であり、顎口類の持つ歯と相同ではない)が並び、他の魚に口を押し付けて吸盤状の口の周りの肉で密着し、歯を皮膚に食い込ませ、体液を吸う。
海に生息し産卵のために川に遡上する種と、一生を河川ですごす種とがある。親は産卵後死ぬ。卵から孵った幼生は親と全く異なる姿をしており、アンモシーテス幼生と呼ばれる。アンモシーテスは、緩やかな流れできれいな砂が堆積した川床に穴を掘り、ほとんどそこから出ない。目は皮膚に埋没し、口に吸盤や歯は無く、流れてくるデトリタスを濾しとって食べている。数年間にわたって幼生期をおくった後、変態して成体と同じ形の幼体、あるいは成体となる。このため、河川環境の悪化に非常に脆弱である(特にスナヤツメの生存状況は水質基準のバロメータになる事がある)。変態後、何も食べずにすぐに成体となって繁殖に入る河川残留型の種と、海や湖に下って魚類を襲って大きく成長してから河川に遡上し繁殖に入る降海型の種があり、日本では前者の代表種としてスナヤツメ、後者の代表種としてカワヤツメがよく知られる。
降海型の種は日本やフランスなどでは食用とされる。海でサケマス類やカレイ類を襲い、漁業に被害を与えることもある。アメリカの五大湖では、非意図的に移入されたウミヤツメが海に下らずに湖内でマスに大きな食害を与えていることが大きな問題となった。
分類
[編集]円口類を円口綱Cyclostomiとしてヌタウナギ亜綱Myxinii・ヤツメウナギ亜綱Petromyzontidaを置く説もある[5]。またヤツメウナギ目を頭甲綱に含めることもある[6]。
綱から科までの分類はおもに木村 (2025) に従う[7]。ヤツメウナギ目の科はバニスター (1987)[1]、ヌタウナギ科の亜科は中坊 (2018) による[6]。日本産の種の和名及び学名は本村 (2025) に従う[8]。
- ヌタウナギ綱(旧和名:メクラウナギ綱) Myxini
- ヌタウナギ目(旧和名:メクラウナギ目) Myxiniformes
- ヌタウナギ科(旧和名:メクラウナギ科) Myxinidae
- Rubicundinae
- ヌタウナギ亜科 Eptatretinae
- クロヌタウナギ(旧和名:クロメクラウナギ) Eptatretus atami (Dean, 1904)
- ヌタウナギ Eptatretus burgeri (Girard, 1855)
- Eptatretus moki (McMillan & Wisner, 2004)
- ムラサキヌタウナギ Eptatretus okinoseanus (Dean, 1904)
- キタクロヌタウナギ Eptatretus walkeri (McMillan & Wisner, 2004)
- Paramyxine fernholmi (Kuo, Huang & Mok, 1994)
- ホソヌタウナギ亜科 Myxininae
- ホソヌタウナギ(旧和名:メクラウナギ) Myxine garmani Jordan & Snyder, 1901
- オキナホソヌタウナギ Myxine paucidens Regan, 1913
- ヌタウナギ科(旧和名:メクラウナギ科) Myxinidae
- ヌタウナギ目(旧和名:メクラウナギ目) Myxiniformes
- ヤツメウナギ綱 Petromyzonti
- ヤツメウナギ目 Petromyzontiformes
- ヤツメウナギ科 Petromyzontidae
- ミツバヤツメ Entosphenus tridentatus (Richardson, 1836)
- カワヤツメ Lethenteron camtschaticum (Tilesius, 1811)
- ミナミスナヤツメ Lethenteron hattai Iwata, Sakai & Goto, 2024
- キタスナヤツメ Lethenteron mitsukurii (Hatta, 1901)
- シベリアヤツメ Lethenteron reissneri (Dybowski, 1869)
- ウチワスナヤツメ Lethenteron satoi Sakai, Iwata & Watanabe, 2024
- フクロヤツメ科 Geotriidae
- ミナミヤツメ科 Mordaciidae
- ヤツメウナギ科 Petromyzontidae
- ヤツメウナギ目 Petromyzontiformes
系統関係
[編集]以下に脊索動物の系統関係の概略を示す。太字の系統が円口類である。
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感受性
[編集]EU指令「科学的目的で使用される動物の保護 (on the protection of animals used for scientific purposes)」は、円口類を対象としており、本指令の前文 (8) には次のように記載されている。「円口類を含む脊椎動物に加えて、頭足類もこの指令の範囲に含める必要があります。これは、痛み、苦痛、および永続的な危害を経験する能力があるという科学的証拠があるためです。」
参考文献
[編集]引用・脚注
[編集]- 1 2 K.E.バニスター「ヤツメウナギ類,メクラウナギ類」(岩田明久 訳)、K.E.バニスター 編『動物大百科 13 魚類 サメ・ウナギ・タラ・アユ・スズキ・タイほか』岩井保 監修、平凡社、1987年、20-25頁。
- ↑ Duméril, A.M. Constant (1806). Zoologie analytique, ou me´thode naturelle de classification des animaux, Rendue plus facile a l'Aide de Tableaux Synoptiques. Paris: Allais
- ↑ Kuraku, Shigehiro, Ota, Kinya G., & Kuratani, Shigeru, S. Blair (2009b). “Jawless fishes (Cyclostomata)”. In S.B. Hedges & S. Kumar. Timetree of Life. oxford University Press. pp. 317–319. ISBN 978-0-19-953503-3
- ↑ Kuratani, Shigeru, & Ota, Kinya G. (2008.). “Hagfish (Cyclostomata, Vertebrata): searching for the ancestral developmental plan of vertebrates”. BioEssays 30 (2): 167–172. doi:10.1002/bies.20701. PMID 18197595.
- ↑ 中坊徹次「カンブリア紀から現世までの魚類相の変遷」『地学雑誌』第134 巻 3号、東京地学協会、2025年、239-260頁。
- 1 2 中坊徹次「無顎口上綱」、中坊徹次 編・監修『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2018年、1-9頁。
- ↑ 木村清志 著「ヌタウナギ綱、ヤツメウナギ綱」、木村清志、笹木大地 編『美し国の魚たち 三重県の魚類図鑑』木村清志、2025年、17-18頁。doi:10.69223/0002001485。
- ↑ 本村浩之「日本産魚類全種目録.これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名」. Online ver. 30、2025年4月1日.