公民権

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公民権(こうみんけん)とは、公民としての権利のこと。公民としての権利とは、公職に関する選挙権被選挙権を通じて政治に参加する地位・資格、公務員として任用される権利(公務就任権)などの総称で、参政権市民権とほぼ同じ意味である。

概要[編集]

公民権は一般に、選挙権・被選挙権の行使のことを指す。

公民権制限が課されることを指す「公民権停止」という形で用いられることが多い。

公職選挙法第11条・第252条、政治資金規正法第28条、電磁記録投票法第17条、沖縄復帰特別措置法第153条は公民権停止規定とも呼ばれる。

  • 成年被後見人
  • 実刑に処せられて刑期満了になっていない者
  • 公職[1]にある間に犯した収賄罪又は斡旋利得罪の刑期終了から10年[2]経過しない者[3]
  • 公職[1]にある間に犯した収賄罪又は斡旋利得罪で刑の執行猶予中の者[4]
  • 選挙違反[5]により禁錮以上の刑で執行猶予中の者
  • 選挙違反[5]により罰金又は禁錮以上の刑に処せられて刑期満了から5年経過しない者
  • 公職選挙において買収及び利害誘導罪の選挙違反により罰金又は禁錮以上の刑に処せられて刑期満了から10年経過しない者
  • 政治資金規正法違反[6]により罰金又は禁錮以上の刑に処せられて刑期満了から5年経過しない者[7]
  • 政治資金規正法違反[6]により罰金又は禁錮以上の刑で執行猶予中の者[7]

なお、選挙違反[5]、政治資金規正法違反[6]については裁判所は有罪でも情状によって公民権停止規定を適用しなかったり短縮したりすることを可能であることが規定されている。

公民権停止となると以下のようなケースで権利が制限される。

1992年12月15日以前は公職政治家が選挙違反[5]以外で有罪が確定しても実刑が確定しないと公職を失職することはなかった[27]。しかし、法改正により「公職[1]在任中の収賄罪」(1992年12月16日以降)や「政治資金規正法違反[6]」(1995年1月1日以降)では執行猶予付きの有罪確定でも公職を失職することになった。

ただし、この規定ができる前に「公職[1]在任中の収賄罪」や「政治資金規正法違反[6]」で執行猶予付きの有罪になっても、憲法遡及処罰禁止規定(39条前段)により適用されない。

  • 藤波孝生は国会議員在職中に犯したリクルート事件に絡む受託収賄罪の執行猶予付きの懲役刑が衆議院議員在職中の1999年10月に確定したが、規定前の1985年の事件だったため衆議院議員を失職することはなく、2000年6月の衆議院解散まで在職し続け、2000年衆院選に再選し、2003年10月まで在職し続けた。
  • 中村喜四郎は国会議員在職中に犯したゼネコン汚職事件に絡むあっせん収賄罪の実刑が衆議院議員在職中の2003年1月に確定したが、規定前の1992年1月の事件だったため衆議院議員の失職のみで刑期満了から一定期間の公民権停止はなく、刑期満了後の2005年衆院選に立候補をして当選している。

「公職[1]在任中の収賄罪・斡旋利得罪」や「選挙違反[5]」や「政治資金規正法違反[6]」以外の罪であれば、有罪になっても執行猶予付きの有罪であれば公民権停止や公職の失職にはならず、実刑が確定しても刑期終了から一定期間公民権が停止されることはない。

  • 辻元清美は衆議院議員在職中に犯した秘書給与流用事件で2004年2月に地裁で詐欺罪について執行猶予付きの懲役刑が確定した後で執行猶予中に2004年参院選の立候補(落選)や2005年衆院選に立候補(当選)をしている。
  • 西村眞悟は衆議院議員在職中に犯した弁護士法違反事件で2007年9月に地裁で執行猶予付きの禁錮刑が確定したが実刑ではなかったため衆議院議員を失職することはなく2009年7月の衆議院解散まで在職し続けた。

政党助成法及び政党法人格付与法の政党要件を満たせば、公民権がない者が党首の政党でも政党交付金を受け取ることができる[28]

  • 鈴木宗男は国会議員在職中に犯した鈴木宗男事件で2010年9月に実刑が確定して2017年4月まで公民権停止となったが、2010年12月に国会議員5人で結党した新党大地・真民主(後の新党大地)の代表に就任し、2012年4月から同年12月まで新党大地・真民主は政党交付金を受け取っていた。

公民権が停止された者でも国会議員公設秘書になることができる。

  • 鳩山由紀夫衆議院議員の私設秘書だった人物は偽装献金事件で2009年12月に政治資金規正法違反で罰金刑が確定して2012年12月まで公民権停止となったが、2010年6月に鳩山由紀夫衆議院議員の公設秘書に起用された。

その他[編集]

公民権とは「公民としての権利」のことであり、法令では「公民権」という語の用例は、労働基準法第7条に「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる」のみ見られる。

「公民としての権利」という文言では、自衛隊法施行規則等いくつかの府省令、人事院規則などに見られる。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 過去には公職ではない人物が収賄罪の執行猶予付き有罪確定になった際に、誤って執行猶予中に公民権が停止された例が存在する。例として公職でない元輪之内町農業委員、元鹿町町建設課長、元瑞穂郵便局保険課長、元建設省酒田工事事務所副所長が収賄罪で執行猶予付き有罪確定になった際に誤って執行猶予中に公民権が停止されたことがある。
  2. ^ 選挙権は5年のみ
  3. ^ 1992年12月16日から1999年9月1日までは刑期終了から5年選挙権&5年被選挙権停止・1999年9月2日からは刑期満了から5年選挙権&10年被選挙権停止
  4. ^ 1992年12月16日から
  5. ^ a b c d e f 選挙人名簿の抄本等の閲覧に係る報告義務違反・選挙事務所、休憩所等の制限違反・選挙事務所の設置届出及び表示違反・選挙気勢を張る行為の禁止違反・自動車、船舶及び拡声機の使用表示違反・ポスター掲示違反・文書図画の撤去処分拒否・街頭演説の標旗提示拒否・夜間街頭演説禁止違反・選挙運動のための通常葉書等の返還拒否及び譲渡禁止違反人名簿の抄本等の閲覧に係る報告義務違反・選挙事務所、休憩所等の制限違反・選挙事務所の設置届出及び表示違反・選挙期日後のあいさつ行為の制限違反・推薦団体の選挙運動の規制違反・政党その他の政治活動を行う団体の政治活動の規制の違反・選挙人等の偽証罪を除く。
  6. ^ a b c d e f g 政治資金監査報告書の虚偽記載・政治資金監査の業務等で知りえた秘密保持義務違反を除く。
  7. ^ a b 1995年1月1日から
  8. ^ 公職選挙法第99条・国会法第109条・地方自治法第127条・地方自治法第143条
  9. ^ 公職選挙法第11条・第252条、政治資金規正法第28条、電磁記録投票法第17条
  10. ^ 公職選挙法第137条の3・第239条・政治資金規正法第28条
  11. ^ 地方自治法第164条
  12. ^ 地方自治法第164条及び第201条
  13. ^ 農業委員会法第11条及び第13条
  14. ^ 漁業法第87条第1項及び第2項
  15. ^ 大規模な公有水面の埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等の特例に関する法律第4条第1項及び第6項
  16. ^ 公職選挙法第5条の2第2項及び第4項
  17. ^ 警察法第39条第1項及び第41条第1項
  18. ^ 地方教育行政法第4条第1項及び第9条
  19. ^ 地方自治法第184条
  20. ^ 公職選挙法第37条第6項
  21. ^ a b 国民投票における投票管理者や開票管理者は公民権停止の失職における対象外である。
  22. ^ 公職選挙法第61条第6項
  23. ^ a b 公職選挙法第75条
  24. ^ a b 最高裁判所裁判官国民審査法第50条
  25. ^ 地方自治法第152条及び第252条の17の8
  26. ^ 水防法第3条の4第1項
  27. ^ 公職選挙法第99条・国会法第109条・地方自治法第127条・地方自治法第143条で公職の被選挙権を失った者は公職を退職することが規定されているが、当初の法規定では被選挙権を有しない者は有罪確定者は選挙違反を除いて実刑確定者のみで執行猶予付きの有罪確定者は対象外であったため、裁判所で選挙違反以外の有罪確定しても執行猶予付きであれば失職されることはなかった。
  28. ^ 政党助成法では交付対象の政党について政党の党員に最低1人は国会議員がいることが必要条件であり公民権が有する者の存在が前提となっているが、政党助成法及び政党法人格付与法における「代表者」(又は「代表権を有する者」)の資格を制限する規定がないため。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]