全国戦没者追悼式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
第48回全国戦没者追悼式
2008年8月15日日本武道館

全国戦没者追悼式(ぜんこくせんぼつしゃついとうしき、: Memorial Ceremony for the War Dead)は、日本国政府の主催で、第二次世界大戦の日本人戦没者に対して宗教的に中立な形で行われる追悼1965年(昭和40年)以降は東京都千代田区日本武道館で毎年8月15日に行われている。

第1回の追悼式は、1952年昭和27年)5月2日新宿御苑で実施された[1]

概説[編集]

全国戦没者追悼式は1952年(昭和27年)4月8日の閣議決定(第3次吉田第3次改造内閣)により、同年5月2日[2]新宿御苑昭和天皇香淳皇后の出御のもとで行われたのが最初である[3]

第2回は1959年(昭和34年)3月28日にやや変則的に実施され、その後1963年(昭和38年)に日比谷公会堂8月15日に、1964年(昭和39年)には靖国神社で8月15日に開催。翌1965年(昭和40年)から東京都千代田区日本武道館で8月15日に行われるようになり、現在に至っている。

追悼の対象は「第二次世界大戦で戦死した旧日本軍軍人軍属約230万人」と、「空襲原子爆弾投下等で死亡した一般市民約80万人」の、「日本人戦没者計約310万人」である。

式典は政府主催で、事務は厚生労働省(旧・厚生省社会・援護局が行う。

式典には天皇皇后が出御し、三権の長である内閣総理大臣衆議院議長参議院議長最高裁判所長官、各政党代表[4][5]、及び地方公共団体代表(都道府県知事都道府県議会議長など)が参列する。

また、日本遺族会等関係団体の代表者(日本遺族会会長、各都道府県遺族代表)、経済団体(日本商工会議所会頭)、労働団体(日本労働組合総連合会会長)、報道機関の代表者(日本新聞協会会長)、日本学術会議会長、日本宗教連盟理事長、日本戦没者遺骨収集推進協会会長などを招くほか、一般戦災死没者遺族、原爆死没者遺族らを国費で参列させている。

式典開始は午前11時51分(以下日本時間)、所要時間は約1時間である。式場正面には「全国戦没者之霊」と書かれた白木檜柱が置かれる。正午前に参列者全員が起立し、時報を合図に1分間の黙祷をささげる。

2007年平成19年)の参列者数は、約5,200名の遺族参列者(付添を含む)と遺族以外の者を合わせて約6,000名。

2019年令和元年)、今上天皇皇后雅子が初めて出御した。

式次第[編集]

上皇明仁(奥左、当時:天皇)、上皇后美智子(奥右、当時:皇后)の臨席の下、式辞を読む内閣総理大臣福田康夫(手前左)
2008年(平成20年)8月15日
  1. 開式
  2. 天皇皇后両陛下御臨場
  3. 国歌斉唱
  4. 式辞 内閣総理大臣
  5. 黙祷(1分間)
  6. 天皇陛下のおことば
  7. 追悼の辞 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、戦没者遺族代表(1名)
  8. 天皇皇后両陛下御退場
  9. 献花(この間奏楽)
  10. 閉式

根拠規定[編集]

1952年(昭和27年)4月8日閣議決定された(第3次吉田第3次改造内閣)「全国戦没者追悼式の実施に関する件」によれば、「(同年4月28日の)平和条約の発効による独立(主権回復)に際し、国をあげて戦没者を追悼するため」に実施するとされた。

1982年(昭和57年)4月13日に閣議決定(鈴木善幸改造内閣)された「『戦没者を追悼し平和を祈念する日』について」によれば「先の大戦において亡くなられた方々を追悼し平和を祈念するため、『戦没者を追悼し平和を祈念する日』を設け」てその期日を8月15日とし、この日に政府は「昭和38年(1963年)以降毎年実施している全国戦没者追悼式を別紙のとおり引き続き実施する」ものとしている。

別紙「全国戦没者追悼式の実施について」の内容は、以下の通り。

  1. 全国戦没者追悼式は天皇皇后両陛下の御臨席を仰いで毎年8月15日、日本武道館において実施する。
  2. 本式典における戦没者の範囲及び式典の形式は、1981年(昭和56年)の式典と同様とする。
  3. 本式典には、全国から遺族代表を国費により参列させる。
  4. 式典当日は官衙(が)等国立の施設には半旗を掲げることとし、地方公共団体等に対しても同様の措置をとるよう勧奨するとともに本式典中の一定時刻において全国民が一斉に黙祷するよう勧奨する。

歴史[編集]

1952年(昭和27年)5月2日
第1回全国戦没者追悼式(新宿御苑

中継[編集]

NHKは、総合テレビ(1963年以降[16])、ラジオ第1、国際放送のNHKワールドTVNHKワールド・ラジオ日本で当日の11:50から「天皇陛下のお言葉」まで中継、12:05に終了[17]BS1は、2014年以降、「天皇皇后両陛下御退場」の12:25迄放送する[18]

NHKは式典に「NHK時計」で技術協力を行っており、会場で流される正午の時報(黙祷の合図)を提供している。時報は2012年(平成24年)3月11日東日本大震災一周年追悼式でも使用され、発生時刻の14時46分に時報を流し、黙祷の合図を行った。

民放では、全てのニュース系列で、式典の中継はせず、定時ニュースでの録画放送や会場前からの生中継のみに留まっている。各ニュース系列(NNNJNNFNNANN)のニュース専門チャンネル(日テレNEWS24TBS NEWS)のニュース内での放送や、インターネット動画配信プラットフォーム(TBS NEWS Youtubeチャンネル YouTubeLive、FNNオンライン(Periscope、Youtubeチャンネル YouTubeLive)、AbemaNewsAbemaTV))で動画生配信を行っている。

2010年代からはニコニコ生放送公式による生配信とTHE PAGEのYouTube生配信が行われている。2020年からは前述のとおり、厚生労働省の公式YouTubeチャンネルが生配信を実施している。

その他[編集]

戦争犯罪人
政府は「連合国による極東国際軍事裁判(東京裁判)によって戦争犯罪人として裁かれ、死刑判決を受けたいわゆるA級戦犯B・C級戦犯が全国戦没者追悼式の戦没者の対象となるかどうか」について明確にしていない。戦犯遺族にも招待状が出されているが、これは各47都道府県に参列遺族の選定を委ねた結果としている。小泉純一郎が首相在任当時、靖国神社に参拝し続けたことに対して批判的な菅直人坂口力厚生労働大臣(旧・厚生大臣)の時も戦犯を対象外とする決議や声明は出されていない。これに関しては靖国神社が戦犯を顕彰の対象としていることを問題視しているのであり、戦犯を追悼することは問題視していないためとされる。
衆議院議長の欠席
2005年(平成17年)には8月8日衆議院解散郵政解散)し、衆議院議長が空席となったため、三権の長の1人である衆議院議長が全国戦没者追悼式を欠席する異例の事態となった。同様の事態は2009年(平成21年)にも起きた(7月21日衆議院解散、8月30日総選挙のため(政権選択解散・追い込まれ解散))。
式次第の変更
1998年(平成10年)までは天皇・皇后が厚生大臣の先導により臨場する際に、国歌「君が代」が演奏された。1999年(平成11年)の国旗及び国歌に関する法律(国旗国歌法)施行後は天皇・皇后の臨場後、君が代を斉唱することになった。
いわゆる戦争責任論への言及
2006年(平成18年)には河野洋平衆議院議長が追悼の辞で「戦争を主導した当時の指導者たちの責任をあいまいにしてはならない」と異例の戦争責任論に言及した。

脚注[編集]

  1. ^ 戦後75年に考える シベリア抑留の悲劇はなぜ起きたのか”. 読売新聞 (2020年8月19日). 2022年8月16日閲覧。
  2. ^ 4月28日に日本国との平和条約が発効し、主権が回復した4日後。
  3. ^ 全国戦没者追悼式の実施に関する件 1952年(昭和27年)4月8日 閣議決定(第3次吉田第3次改造内閣)
  4. ^ 政治資金規正法第3条2項に規定する政党で国会に議席を有するものの代表。
  5. ^ 但し、日本共産党の委員長は天皇が追悼のお言葉を述べることに対し、「追悼式の在り方が天皇中心の追悼式であって国民主権、民主主義の基本に反する」と、党綱領に則り欠席し続けている。
  6. ^ (千鳥ヶ淵墓苑の竣工式及び戦没者追悼式の開催について) 1959年(昭和34年)3月13日 第2次岸内閣閣議報告
  7. ^ Emperor of Japan Receives Surprise “BANZAI” Salute PanOrientNews TV
  8. ^ 73回目の終戦の日 平成最後の「全国戦没者追悼式」(2018年8月15日)THE PAGE公式YouTubeチャンネル
  9. ^ “全国戦没者追悼式、6000人→1400人へ大幅縮小”. 産経新聞東京本社版朝刊. 産経新聞. (2020年6月12日). オリジナルの2020年6月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200628095128/https://www.sankei.com/politics/news/200228/plt2002280065-n1.html 2020年6月28日閲覧。 
  10. ^ a b c “武道館の戦没者追悼式、参列200人 コロナで最少に”. 朝日新聞東京本社版朝刊. 朝日新聞東京本社. (2021年8月6日). オリジナルの2020年8月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210806172244/https://www.asahi.com/articles/ASP866DBDP86UTFL006.html 2021年8月6日閲覧。 
  11. ^ “全国戦没者追悼式をネット中継 厚労省、コロナ感染を防止”. 産経新聞東京本社版朝刊. 産経新聞. (2020年8月4日). オリジナルの2020年6月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200628095128/https://www.sankei.com/politics/news/200228/plt2002280065-n1.html 2020年8月4日閲覧。 
  12. ^ “戦没者追悼式を動画中継 厚労省、コロナ防止策”. 日本経済新聞東京本社版朝刊. 日本経済新聞. (2020年8月5日). オリジナルの2020年6月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200628095128/https://www.sankei.com/politics/news/200228/plt2002280065-n1.html 2020年8月5日閲覧。 
  13. ^ “戦没者遺族、各道府県で1人ずつ 全国追悼式で参列制限”. 共同通信社. (2021年8月5日). https://nordot.app/795965746438209536?c=39546741839462401 2021年8月5日閲覧。 
  14. ^ a b “戦後76年 戦没者追悼式 コロナ禍、参列者過去最少の200人”. 産経新聞東京本社版朝刊. 産経新聞. (2020年6月12日). オリジナルの2021年8月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210814111017/https://www.sankei.com/article/20210814-YIS5NFXREVLD7L7ZZ53YNXPOPI/ 2021年8月14日閲覧。 
  15. ^ “宣言下の戦没者追悼式、参列者は過去最少200人に…22府県は参列を辞退”. 読売新聞東京本社版朝刊. 読売新聞東京本社. (2021年8月14日). オリジナルの2021年8月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210814121623/https://www.yomiuri.co.jp/national/20210814-OYT1T50171/ 2021年8月15日閲覧。 
  16. ^ 全国戦没者追悼式実況 - NHKクロニクル
  17. ^ 「天皇陛下のお言葉」が12:05を過ぎた場合、その終了まで中継を延長。
  18. ^ NHKオンライン番組表 2016年8月15日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]