入札談合
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入札談合(にゅうさつだんごう)、または、単に談合とは、日本における、公共事業などにおける競争入札の際に、複数の入札参加者が前もって相談し入札価格や落札者などを協定しておく不正行為ないし商慣習である。
入札談合は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)の「不当な取引制限」(2条4項)に該当し、独占禁止法による規制や談合罪(刑法96条の6第2項)による処罰対象となる。
なお、俗に甲州選挙のような事前申し合わせのある選挙戦や55年体制の国対政治等も、比喩的にカルテルあるいは談合(政治的談合、談合政治)と呼ぶ[注釈 1]。
類型
[編集]入札は官公庁の発注工事などで見積最低価格の業者に発注するべく行われるものであるが、指名された業者が示し合わせ、特定の業者を受注させるべく談合し、それ以外の業者が特定の業者の価格を上回る札を入れる行為が入札妨害の談合といわれる。結果的に発注価格が高止まりするとされる。
官製談合
[編集]公共事業などで競争入札が義務づけられているにもかかわらず発注者が受注者を指名するなど、発注者側(行政などの「官」)が談合を主導する汚職を官製談合という。通常は天下り先の提供や金品など、贈収賄や便宜供与を伴う。官製談合は、独占禁止法や刑法上の談合罪だけでなく、官製談合防止法による規制及び処罰の対象となる。
事例
[編集]談合
[編集]- 1989年から1991年にかけて、旧社会保険庁が発注した、ハガキに貼付するプライバシー保護用の目隠しシールの指名競争入札において、印刷関係会社4社が談合を行った(社会保険庁シール談合事件)[1](40)。
- 1997年10月から2000年9月の間に、東京都の外郭団体が発注した公共下水道工事等の指名競争入札において、ゼネコン33社が談合を行った(多摩談合事件)[1](42)。
- 1998年、防衛庁調達実施本部(現:防衛装備庁)が発注した、自衛隊の基地等で消費する石油製品の指名競争入札において、石油会社12社が談合を行った。(防衛庁石油製品談合事件)[1](58)。
官製談合
[編集]- 新潟市では2001年、下水道工事をめぐる発注で不正と思われる入札があり、その後の調査で過去から幾度にも渡って官製談合があったことが発覚し、2003年9月に大手ゼネコンや地元業者、市役所などが立ち入り検査された。また、2004年には113社の業者に対し排除勧告をし、職員や業者が数名逮捕された。
- 2005年には、日本道路公団と天下りOBによる橋梁談合事件が発覚。談合組織「かずら会」が明るみに出て現役の公団副総裁が逮捕され、計12人・26社が起訴された。2006年には、福島・和歌山・宮崎の3県で相次いで官製談合事件が発覚した。各県とも当時の知事が特定業者に落札させる入札妨害を行い、10月に福島県の佐藤栄佐久、11月に和歌山県の木村良樹、12月に宮崎県の安藤忠恕と、3か月の間に3人の知事が逮捕されるという異例の事態となった[注釈 2]。これを受け、談合に関与した公務員への罰則などを新たに設けた『官製談合防止法改正案』が予定よりも早く2006年12月8日に成立し、公布後3か月である2007年3月14日に施行された[要出典]。
- 2010年3月には、防衛省航空自衛隊第1補給処において4年間にわたり事務用品発注を巡る官製談合が常態化していたことが発覚。制服組トップである航空幕僚長が辞任することとなった(詳細は航空自衛隊事務用品発注官製談合事件を参照)。
- 2019年、京都府宇治市では年に一回催告状を送る事しかしなかった為に、談合の損害賠償金約1億円が時効で回収できない恐れがでてきた。未払いの業者が受注しているケースもみられる[2]。
- 2023年10月に、兵庫県道路公社が発注した、播但連絡道路の耐震補強修繕工事の競争入札で、非公表だった最低制限価格の情報を業者側に漏洩したとして、同公社に派遣されていた30歳代の兵庫県の男性職員と、受注業者の松本組関係者らが、官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の両容疑で兵庫県警察に逮捕された[3][4]。さらにこの職員は、業者からこの件で賄賂を受け取っていた容疑でも再逮捕されている[5]。
海外での受容
[編集]1980年代から1990年代の日本経済が隆盛を誇ったバブル時代に、アメリカを中心とした英語圏ではローマ字で「DANGO」という言葉がそのまま日本の非関税障壁・不公正商習慣を示す英単語として通用したことがあったが、その後はそれほど用いられなくなった。これは「KEIRETSU」、「GYOSEI-SHIDO」等も同様)またスラングとして「ドラフト会議」の語が用いられることがある。
ちなみに、台湾では、日本統治下にあった時代に「談合」が訛って伝えられたため、「団子(をこねる)」という言葉が用いられることもある。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 金井, 貴嗣、泉水, 文雄、武田, 邦宣 編『経済法判例・審決百選』(第2版)有斐閣、2017年10月25日。ISBN 978-4-641-11534-7。OCLC on1008572891。
- ^ https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190621-00010000-kyt-l26
- ^ 兵庫県道路公社の入札情報を漏らした疑い、30代県職員を逮捕…播但連絡道路の耐震工事 読売新聞 2023年9月30日
- ^ 職員逮捕についてのお詫び(令和5年10月2日) 兵庫県道路公社ニュースリリース 2023年10月2日
- ^ 職員の再逮捕についてのお詫び(令和5年10月21日) 兵庫県道路公社ニュースリリース 2023年10月21日