党の唯一思想体系確立の10大原則
党の唯一思想体系確立の10大原則(とうのゆいいつしそうたいけいかくりつの10だいげんそく、朝:당의 유일사상체계확립의 10대 원칙)とは、北朝鮮の朝鮮労働党が1974年に定めた、全国民、全組織の行動規範[1]であり、事実上の最高規範である。
2013年、金正恩第一書記によって39年ぶりに改定され、党の唯一領導体系確立の10大原則(とうのゆいいつりょうどうたいけいかくりつの10だいげんそく、당의 유일영도체계확립의 10대 원칙)に名称が改められた[2]。単に10大原則(10대 원칙)とも呼ばれる。
概要[編集]
北朝鮮は、金日成主席と金正日総書記に絶対服従する「唯一思想体系」および「唯一指導体系」により、社会主義一党独裁と、首領による絶対統治を組み合わせた、特異な独裁体制を敷いている[3]。この独裁体制(首領絶対制)を規律として明文化したものが、「10大原則」である[4]。
1974年に制定された際、金正日書記(当時)によって憲法や党規約を超える「最高規範」に位置づけられた[5]。
金日成主席への絶対的忠誠を要求するもので、10か条と65の細目から成り立っていたが、金正恩第一書記により改定・改題された際に、10か条と60の細目という構成に変更された[6]。
北朝鮮の中学生以上[7]の全国民に暗記、暗唱が義務づけられており[8]、法律ではないにも関わらず、この「10大原則」に違反することは犯罪とされ、処罰の対象となる[9]。この「10大原則」は、金一族による世襲政治を正当化するものとして、北朝鮮と比較的良好な関係にあるとされる中華人民共和国においてもインターネット上で痛烈に批判されている[10]。
2013年に発表された「10大原則」は、56ページで縦10.5センチ、横7.5センチ、赤い表紙をもつ冊子[11]として配布されている[12]。
旧条文[編集]
1974年制定の条文は以下の通りである[13]。序文と細目は省略する。
- 第1条 偉大な首領金日成同志の革命思想によって全社会を一色化するために身を捧げて闘うべきである。
- 第2条 偉大な首領金日成同志を忠誠をもって仰ぎ奉じるべきである。
- 第3条 偉大な首領金日成同志の権威を絶対化するべきである。
- 第4条 偉大な首領金日成同志の革命思想を信念とし、首領の教示を信条化するべきである。
- 第5条 偉大な首領金日成同志の教示を執行するにおいて、無条件性の原則を徹底して守るべきである。
- 第6条 偉大な首領金日成同志を中心とする全党の思想意志的統一と革命的団結を強化するべきである。
- 第7条 偉大な首領金日成同志に学び、共産主義的風貌と革命的活動方法、人民的活動作風を持つべきである。
- 第8条 偉大な首領金日成同志から授かった政治的生命を大切に守り、首領の大きな政治的信任と配慮に対して高い政治的自覚と技術による忠誠をもって報いるべきである。
- 第9条 偉大な首領金日成同志の唯一的領導のもとに、全党、全国家、全軍が一つとなって動く、強い組織規律を打ち立てるべきである。
- 第10条 偉大な首領金日成同志が開拓された革命偉業を、代を継いで最後まで継承し完成するべきである。
現行条文[編集]
2013年に制定された現行の条文は以下の通りである[14]。序文と細目は省略する。
- 第1条 全社会を金日成・金正日主義化するために命をささげて闘争するべきである。
- 第2条 偉大な金日成同志と金正日同志を我が党と人民の永遠の首領、主体の太陽として高く奉じるべきである。
- 第3条 偉大な金日成同志と金正日同志の権威、党の権威を絶対化し、決死擁護すべきである。
- 第4条 偉大な金日成同志と金正日同志の革命思想とその具現である党の路線と政策で徹底的に武装すべきである。
- 第5条 偉大な金日成同志と金正日同志の遺訓、党の路線と方針貫徹で無条件性の原則を徹底的に守るべきである。
- 第6条 領導者(金正恩)を中心とする全党の思想意志的統一と革命的団結をあらゆる面から強化すべきである。
- 第7条 偉大な金日成同志と金正日同志に倣い、高尚な精神道徳的風貌と革命的事業方法、人民的事業作風を備えるべきである。
- 第8条 党と首領が抱かせてくれた政治的生命を大切に刻み、党の信任と配慮に高い政治的自覚と事業実績で応えるべきである。
- 第9条 党の唯一的領導の下に全党、全国、全軍が一つとなって動く強い組織規律を打ち立てるべきである。
- 第10条 偉大な金日成同志が開拓し、金日成同志と金正日同志が導いて来た主体革命偉業、先軍革命偉業を代を継いで最後まで継承・完成すべきである。
変更点[編集]
1974年制定の10大原則が2013年に改定された際、金日成の抗日武装闘争に関する記述が序文から削除され、唯一思想体系を「金日成・金正日主義」として金正日を金日成と同列に高めて神格化し、金正恩は「党」「領導者」という表現で領導の中心に位置づけることで絶対化された[15]。また、「共産主義」という単語が消え、第1条で定められた「全社会の金日成・金正日主義化」が、共産主義に代わる朝鮮労働党の最高綱領となった[16]。
出典[編集]
- 『平成25年の国外情勢』(法務省、2014年)
- 『リムジンガン』第7号(責任編集:石丸次郎、アジアプレス・ネットワーク、2015年4月)
- 『北朝鮮労働党の「唯一領導体系確立の10大原則」について』(朴斗鎮、コリア国際研究所、2013年9月)
脚注[編集]
- ^ 『リムジンガン』第7号、8ページ。
- ^ 『平成25年の国外情勢』、11ページ。
- ^ 『リムジンガン』第7号、8ページ。
- ^ 同上。
- ^ 『平成25年の国外情勢』、11ページ。
- ^ 同上。
- ^ 『リムジンガン』第7号、9ページ
- ^ 『平成25年の国外情勢』、11ページ。
- ^ 『リムジンガン』第7号、8ページ。
- ^ 北朝鮮・金ファミリーの世襲正当化に中国のネットで猛烈批判
- ^ これが北朝鮮の最高規約文書の現物だ - アジアプレス・ネットワーク
- ^ 『リムジンガン』第7号、9ページ。
- ^ 北朝鮮労働党の「唯一領導体系確立の10大原則」について
- ^ 『平成25年の国外情勢』、11ページ。
- ^ 北朝鮮労働党の「唯一領導体系確立の10大原則」について
- ^ 同上。