光免疫療法

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光免疫療法(ひかりめんえきりょうほう)は、光線力学療法免疫療法を組み合わせた、開発中の新たながん治療法の候補のひとつである。2015年4月アメリカ食品医薬品局(FDA)から臨床試験開始許可を受け、現在は臨床第3相試験を実施中。略してPITまたは、近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)[1]

概要[編集]

2011年11月6日アメリカ国立がん研究所(NCI)と米国国立衛生研究所(NIH)の主任研究員である小林久隆らの研究グループが、ネイチャー メディシン誌上にて、その開発を発表した。

この療法は、特殊な薬剤と近赤外線を使いがん細胞を破壊するものである。近赤外線は、損傷を与えることなく生体組織内部に到達することが可能である。特定の細胞に抗体薬剤を結合させ、近赤外線を照射することで、その細胞膜を破壊し、破壊後のすべての抗体が免疫系に露出することで生体内で超選択的(非特異的)ながん細胞の死滅だけにとどまらず、破壊されたがん細胞の残骸に含有されるがんの特異的抗原に免疫反応を惹起するため、照射した箇所以外のがん細胞や転移したがん細胞にさえ効果を及ぼす可能性がある。

小林らはNIR-PIT が、臨床的にがん治療のアプローチを根本的に変える可能性があると考えている[2]バラク・オバマ大統領2012年一般教書演説この治療法の発見について[要出典]言及した[3]。また、例えばiPS細胞による臓器網膜用の細胞シート(患者の自己細胞を培養してシート状にしたもの)の作成時に悪性の細胞が混入することで発がん性を示す心配が懸念されるが、そこにこの抗体を結合させて光を照射すれば、悪性の細胞を一瞬ですべて破壊して除去する事が可能となり、他の正常な細胞にはダメージを与えずに安全なiPS細胞シートや人工臓器の作成が可能になる事で再生医療にも役立つ事が期待される[3]

機序[編集]

抗体-IR700の複合体はがん細胞に結合するが、ここに近赤外線を照射すると複合体が発熱・変形し、がん細胞に微細な傷が付く。ここに水が流入することで、がん細胞が破裂する。

がん細胞の表面にある特有の抗原のみに特異的に結合する抗体(免疫グロブリン)というタンパク質と、その抗体と対になっているフタロシアニンとも呼ばれるIR700という色素がポイントとなる[3]

IR700は、波長700nmの近赤外線を受けると吸収し化学変化を起し、光エネルギーを吸収して発熱することでがんにダメージを与えうる。この抗体‐光吸収体(IR700)接合体は、標的分子に結合しているときのみ近赤外線によって活性化されるよう設計されている[3]。この抗体‐光吸収体接合体は、ヒトマウスに注入後、抗体の標的を過剰発現するがん細胞と結合、そこに近赤外線を照射するとがん細胞は急速に膨張、破壊、壊死のステップを踏み免疫原性細胞死に至らしめる[1]

小林らは、がんの増殖アクセル役を果たしている、遺伝子変異を起こした上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害する抗体[要出典]とIR700を結合させた薬を作り、シャーレ内でヒトのがん細胞でEGFRを発しているA431細胞に作製した薬を培養液に加え、それに近赤外線を照射すると、即座にがん細胞が死滅することを確認。さらに、動物実験としてA431細胞をマウスに移植、同様に薬を投与後、近赤外線を照射しがんを縮小させる実験に成功、薬ががん細胞の内側よりもがんの表面で効果をあらわしていることを発見した。

キラーT細胞の活性化[編集]

NIR-PITに反応して破裂、壊死したがん細胞からは、細胞内の物質が細胞外へ放出されるが、近接する免疫系はこれらを異物として感知し、がん細胞を破壊する免疫細胞である細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)が、制御性T細胞(Treg)という他の免疫細胞によって抑制されていたものが、マウスでの実験では急速かつ選択的に制御性T細胞が除去され[要出典]、1時間以内に「がん細胞傷害性T細胞」を活性化し[要出典]、マウスの延命効果が確認された[要出典]。すなわち、活性化したキラーT細胞が、治療済みの腫瘍から他の部位の腫瘍に到達し、顕著な免疫反応を著した[要出典]

この制御性T細胞除去法では、腫瘍の種類毎に特異的に発現する分子を狙い撃つための多種多様な抗体を、その都度人工的に作成する必要がないというメリットがある[要出典]

臨床試験[編集]

米国では2015年より、頭頸部がんの24名(予定)を対象に、近赤外線を当てずに安全性を確認する第1相と近赤外線を照射し効果を検証する第2相を組み合わせた第1/2相試験を実施した。この試験では、抗体にセツキシマブを用いた複合体RM-1929が用いられた。

日本では2018年より、国立がん研究センター第1相試験を実施。

楽天アスピリアン社は2018年8月に1億5000万ドルを調達[4]、同年12月には1億3400万ドルを調達し[5]、再発頭頚部がんを対象とした第3相試験を日本を含む米国、欧州連合、アジアで実施することを発表した(国際共同治験)。対象者は275名としている[6]

副作用[編集]

第2a相試験の結果によると、治療部位の周辺に出血や痛みが見られたものの、用量制限毒性、光線過敏症は観察されず、安全な治療法であるとしている[7]

応用[編集]

共同研究者である医師のPeter Choykeによると、手術が困難な中皮腫に対し、術後にNIR-PITを施すことで切除しきれなかった残存がんの掃討が可能と推測される[要出典]

2019年1月25日、米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員らのチームは、がんの治療薬「免疫チェックポイント阻害剤」に、近赤外光を使う「光免疫療法」を組み合わせると、治療効果を大幅に上げられることを動物実験で確認したことを、米医学誌「キャンサー・イムノロジー・リサーチ」電子版に発表した。結腸がんを発症させたマウスに免疫チェックポイント阻害剤を投与すると、がんが治ったのは1割だったが、近赤外光を当ててがん細胞を破壊する「光免疫療法」を実施後、免疫チェックポイント阻害剤を投与すると、8割以上のマウスでがんが完治し、治ったマウスには同じがんの再発がなくなったことを確認した[8]

脚注[編集]

[1]  2018年11月15日 楽天アスピリアン社、CEOに三木谷浩史を任命

文献[編集]

外部リンク[編集]