催涙剤

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催涙ガスを使用するフランス国家憲兵隊

催涙剤(さいるいざい、英:Tear agent / Riot control agent)は、非致死性ガス化学兵器である[1]。一般には催涙ガスとも呼ばれる。催涙剤を詰めた弾丸催涙弾と呼ぶ。

概要[編集]

皮膚粘膜に付着した場合、不快な刺激や痛みを与え、クシャミ・落涙・嘔吐などの症状を発現させる[2]。効果時間は数分から数十分とされ、時間経過による拡散や自然分解、あるいは洗眼、中和剤の使用などで除去すれば一般的には傷跡、後遺症を残すことがないとされる[3]。また、即効性があり、比較的低濃度でも効果を発揮するが、致死量が高いため、主に暴動規制・鎮圧や化学兵器防護の訓練に使われている[3]

ジュネーヴ議定書(窒息性ガス、毒性ガスまたはこれらに類するガスおよび細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書)においては、戦争における毒ガス使用の禁止が宣言された。1997年に発効した化学兵器禁止条約では、1条において暴動鎮圧剤を戦争における戦闘行為で用いることが禁止されているが、2条9項において「国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的」の使用は、明示的に条約の対象から除外されており[4]、直近では2014年香港反政府デモデモ活動を鎮圧するために使用された。

歴史的には第一次世界大戦中の1914年にフランス軍が使用を開始している[5](一説には臭化キシリル(Xylyl bromide))[6]。次いでドイツ軍でも開発の上、使用されることになった[6]

ベトナム戦争ではアメリカ軍クロロベンジリデンマロノニトリルを壕内に投入して、内部にひそむ戦闘員を外部に出させた。非致死剤とはいえ1m²に10g以上あれば致死効果があり、遅延型アレルギーなどの後遺症も残す可能性が指摘されている。

なお催涙剤は軍隊警察用以外に護身・防犯用途として市販されており、日本でも催涙スプレーとして個人で購入することができる。

主な催涙ガス[編集]

カッコ内のアルファベットはアメリカ軍の略号

脚注[編集]

  1. ^ a b 遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて 日本学術会議 平成13年7月23日
  2. ^ 国立医薬品食品衛生研究所 催涙剤
  3. ^ a b 緊急災害医療支援学/無傷害化学剤,自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之
  4. ^ 化学兵器禁止条約
  5. ^ Gerard J. Fitzgerald (2008年). “Chemical Warfare and Medical Response During World War I”. Am J Public Health. 2008 April; 98(4): 611–625.. 2016年2月28日閲覧。
  6. ^ a b Michael Duffy (2009年8月22日). “Weapons of War - Poison Gas”. firstworldwar.com. 2010年8月26日閲覧。
  7. ^ a b c アンソニー・トゥ (1997年). “化学兵器の毒作用 と治療”. 日本救急医学会雑誌 Vol. 8 (1997) No. 3 P 91-102. 2016年2月28日閲覧。

参考文献[編集]

  • アンソニー・トゥ、井上尚英『化学・生物兵器概論』(じほう、2001年)
  • アンソニー・トゥ『中毒学概論』(じほう、1999年)
  • 『改訂版 症例で学ぶ中毒事故とその対策』(じほう)
  • 内藤裕史『中毒百科 改訂第2版』(南江堂、2001年)
  • 『化学』Vol,52 No,11(1997):特集「化学兵器」(化学同人

外部リンク[編集]