傘をもたない蟻たちは

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傘をもたない蟻たちは
著者 加藤シゲアキ
イラスト 竹田嘉文(装画)
鈴木久美(装丁)
発行日 2015年8月1日
発行元 角川書店
ジャンル 短編小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判上製本
ページ数 261
公式サイト http://www.kadokawa.co.jp/
コード ISBN 978-4-04-102833-9
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傘をもたない蟻たちは』(かさをもたないありたちは)は、加藤シゲアキによる日本の小説の短編集。いまを生きる人々の「生」と「性」[1]、「生きづらさ」や「人の痛み」をテーマとした恋愛から心理サスペンスまで様々なジャンル6編の短編小説(原稿用紙400字詰め52〜88枚)が収録されている[2]。なかには過激な性愛描写が含まれる作品もあるが、これについては経験ではなく想像と妄想で書いたと述べている[3]

2015年6月1日に角川書店から発売され[4]、発売2か月後には発行部数8万部を超えた[5]

2016年1月にフジテレビ系でテレビドラマ化された。

収録作品[編集]

  • 染色(初出:角川書店『小説 野性時代』2014年10月号[1]
  • Undress(初出:扶桑社週刊SPA!』2014年9月16日・9月23日合併号 - 10月28日号 連載全5回[1]「アンドレス」改題)
  • 恋愛小説(仮)(初出:角川書店『ダ・ヴィンチ』2014年12月号[1]
  • イガヌの雨(初出:角川書店『シュシュアリス』vol.5[1]
  • インターセプト(初出:角川書店『小説 野性時代』2015年3月号[1]
  • にべもなく、よるべもなく(書き下ろし[1]

単行本化にあたり、連載時より加筆・修正されている[6]

各話あらすじ[編集]

染色[編集]

美大に通う市村は、彼女の橋本杏奈を連れて母校の芸術祭をまわっていた。杏奈は自分と同じ苗字である生徒が描いた作品を絶賛していたが、市村には途中でさじを投げてしまった作品のように思えた。芸術祭の後、1人で何気なく土手を歩き続けた市村は、その張本人・橋本美優が午前2時にも関わらず橋脚にカラースプレーでグラフィティアートを描いているところに遭遇する。聞くと美優も芸術祭の中で市村の作品が最も印象的だったという。美優のアパートを訪れるとそこには描きかけの作品がたくさんあり、互いの作品の意図を理解しあっているとわかった2人は結ばれる。その日から、杏奈との関係も続けながら毎日のように美優のアパートを訪れるようになる市村だったが、美優がいつも自分の腕にカラースプレーを吹き付ける行為の重要性だけは理解できなかった。橋脚に描いたグラフィティはどんどん増え、いつからか「HANDS」と呼ばれて謎の覆面アーティスト集団としてネットやテレビで話題になるが、2月半ばのある日、美優から学校を辞めてロンドンに行くことにしたと告げられ、2人の関係は終わる。卒業式の日、美優を初めて見かけた店の壁に美優の名前を含んだURLが描かれたハガキを見つけた市村はアクセスしてみるが、そこには見覚えのある作品は1つもなかった。美優が住んでいたアパートは当然のように今は空室で、市村はそこで美優のことを思い出しながら自慰をするが絶頂は迎えられず、あの日々の色彩はどこへ行ってしまったのだろうと考えながら、「今から会えないかな」と杏奈に電話をする。

市村 文登(いちむら ふみと)
美大の3年生。仲間内では「優等生」でとおっている。杏奈には「いっちゃん」と呼ばれている。
橋本 杏奈(はしもと あんな)
市村の彼女。人との距離感をつかむのが上手。
橋本 美優(はしもと みゆ)
市村と同じ美大に通っている。一人暮らしで、ボロいアパートの1階に2部屋を借り、1つをベッドルーム、1つをアトリエとして利用している。描いている途中で違うものを描きたくなってしまうため、描きかけの絵ばかりが部屋にある。橋脚に絵を描くようになったのは、短時間で描かなければならないグラフィティなら描きあげられるのではと考えたため。
いつも両腕をカラースプレーで染めており、その色は日によって異なる。精神安定のために必要な行為で、逆に色が付いてないと気分が変になるらしく、一度ちょっとした興味で市村がカラースプレーを隠した時は顔面蒼白になり、最後には泣き出してしまった。

Undress[編集]

今まで一緒に働いてきた仲間たちにオーダーメイドの赤いボディのボールペンをプレゼントし、目をかけていた後輩の小金井にいつものように「会社の犬になんかなるなよ」という言葉を残して大西勝彦は丹頂社を辞め、長年の夢だった脱サラを果たした。今まで培ってきたノウハウとネットワークを生かしてステップアップする明るい未来を感じ、同じ会社の女子社員・若井リサとの関係ももう隠す必要はないのだと意気揚々としていた大西だったが、出張中のリサを追いかけて行った大阪で、彼女から母親の病気を理由に福井に帰ると告げられ、2人の関係は終わりを迎える。しかし翌日、旧友の田中の会社の前で、左遷されたはずの石田とリサが腕を組んでマンションに入っていくのを目撃した大西は驚いて2人を問い詰め、実は前からリサが石田と付き合っていたこと、石田の左遷は仕組まれたものであったことを知る。そして帰りの新幹線の中では、丹頂社が新会社を設立し、その社長に小金井が就任したニュースが流れていた。愕然とする大西に当の小金井から電話が入り、実は自分は大西が嫌いだと言い続けて辞めた丹頂社の社長・筒井の息子であったこと、そして丹頂社で作ったコネは今後一切使えないと告げられ愕然とする。仲間たちに送ったボールペンも池に捨てられており、自分が疎まれていたことを知った大西は涙が出てくるが、筒井社長はそんな大西に声をかけ、新しい就職先の話をもちかける。そして大西は、また毎日スーツを着る日々がやってくるのだと悟る。

大西 勝彦(おおにし かつひこ)
父親が少ない給料であくせく働いた末に地元の零細企業が倒産して退職金ももらえなかったのをそばで見ていたため、会社に振り回されるような人間にだけはなりたくないと、最高の脱サラをすることを長年夢見ていた。奨学金で国立大学を卒業後、広告代理店「丹頂社(たんちょうしゃ)」の営業部で10年以上働き、会社員としてのノウハウとネットワークを構築し、満足いく一大プロジェクトを成し遂げたと感じ、脱サラに踏み切る。
脱サラ直前、日本最大手百貨店のリニューアルオープンに向けたトータルプロデュースのエグゼクティブプロジェクトマネージャーを任されていたが、オープンにあわせて大々的に発表するはずだったアイシクルとのコラボ商品の情報が流出したことでアイシクルとの契約が打ち切りとなり、その責任をコラボ商品の資料をまとめていた石田に押し付けた。
小金井 卓哉(こがねい たくや)
大西が教育担当をしていた後輩。物事を誇張して話す癖がある。
若井 リサ(わかい リサ)
会社の人間には秘密で付き合っている大西の恋人。1年程前、大西が任されたプロジェクトでのスケジュール管理のためにアシスタントとしてついたことがきっかけで付き合い始めた。良く言えば天真爛漫、悪く言えば幼稚。エンジェルナンバーにこだわりを持っている。福井の田舎町に1人暮らしの母親がいる。
石田(いしだ)
営業事務として働いていたが、5か月前に大西が責任を押し付けたために左遷される。白髪交じりでシミが多い。口調はおっとり。奥さんと成人している子供がいる。
筒井(つつい)
大西らが勤めていた「丹頂社」社長。
田中(たなか)
あだ名:アガベ。由来はテキーラが好きなところから。大西の大学時代のサークル仲間で、就職後のコネを作るために上昇志向の強い人間を集めたイベントを一緒に開催していた。卒業後はIT系のベンチャー企業であるワンダフルイマジン・ラボに就職しており、今は大阪支社を任されている。既婚者で、来月には子供が産まれる。

恋愛小説(仮)[編集]

人気女性週刊誌の編集者から「男子の恋愛」をテーマとした執筆依頼をされた僕は、今まで書いてきたジャンルとは全く畑違いだと感じながらも仕事を受ける。タイトルをとりあえず「恋愛小説(仮)」と決めて書き始めるが、冒頭部分で早くも手が止まり、酒を呑んで寝てしまった。しかしその夢の中で美しい女性と出会った僕は、思い通りに2度、3度と同じ夢を見ることができ、彼女に会うたび恋心を募らせていく。やがて「恋愛小説(仮)」と名付けたドキュメント上に200文字以内で書いたことだけが、夢の中で実際に起こることに気付いた僕は、初恋の人・久米島ユキエを夢の中に登場させようとする。願い通りに夢の中でユキエと再会できた僕は、彼女が望む200字のデートを何度も何度も繰り返す。しかしある時、突然夢が途中で止まってしまい、僕は真っ暗闇へと落ちていく。目が醒めると幼なじみが目の前におり、自分がオーバードーズで病院に運ばれたことを知る。夢を連続して見るために睡眠薬とアルコールを同時接種していた僕が、変に痩せていた様子に疑問を感じた幼なじみが連絡がとれないのを不審に思い、家を訪ねて発見してくれたのだった。入院生活を余儀なくされ、小説は間に合わないと編集者に断りの電話を入れた僕は、夢の中でのユキエとの逢瀬も終わりにしようと最後の200字を書く。ユキエと別れた僕は涙を流しながら起き、ファイル「恋愛小説(仮)」をゴミ箱に捨てる。

今まで世界の不条理をテーマにしたSFファンタジー短編くらいしか書いたことがない作家。
東京郊外の小学校に通っていたが、私立中学を卒業すると同時に都心部に移り住んだ。他とはあまり交流がないが、大学で偶然一緒になった幼なじみとは連絡をとりあっている。小学生の時に初めて恋をした久米島ユキエと同窓会で再会することを願っていたが、13年も前に事故死していたと知らされショックを受ける。
幼なじみ
読書家で、僕が困った時になにかと頼りにしている男。小説や夢についての相談も受ける。
久米島 ユキエ(くめじま ユキエ)
僕や幼なじみの小学校の時の同級生。いつも笑顔でクラスの人気者だった。13年前、学校の帰り道で中年の男が運転する車に轢かれて亡くなる。

イガヌの雨[編集]

法規制で来月には食べられなくなるというイガヌを人々はこぞって食べたがるが、美鈴は祖父の言いつけにより、いまだ口にしたことがなかった。しかし恋人の蓮、そして友達の乃亜とその恋人である海斗とのダブルデートでイガヌの店に足を踏み入れてしまった美鈴はそこで初めてイガヌを食べ、恍惚とする。その独特な臭気から、イガヌを食べたことは帰宅後すぐに祖父に知れ、祖父と喧嘩になった美鈴は家を出て乃亜の家に身を寄せる。理由も述べずにただ禁止するだけだった祖父に反発していた美鈴だったが、その後祖父は亡くなり、美鈴に残された手紙で祖父がイガヌを毛嫌いしていた理由…イガヌのせいで、かつて自分たちが愛していた食事の多くが食べにくくなってしまうこと、勝間南瓜など伝統野菜を育てていた農家が続々つぶれてしまったことなどを知る。祖父の想いを知り、イガヌを食べてしまたことを後悔した美鈴は、祖父の葬式の席で両親を含めて皆がイガヌを食べる姿を見て「不謹慎だ」として家を飛び出すが、その日この数年全く降らなくなっていたイガヌが突然降り出す。人々が我先にとイガヌを捕り始める姿を見て、自分はこうはならないと自制する美鈴だったが、1匹のイガヌと目が合うと思わずごくりと喉を鳴らしてしまうのだった。

イガヌ
ちょうど美鈴が産まれた18年前の2017年12月21日に突然空から大量に降ってきた生物。その後12年間、毎年12月に降っていたが、2029年に突然降らなくなった。猿のような頭に眼が3つあり、歯のない小さな口と、2つの下肢が頭から生えている。「いがぬ、いがぬ」と奇声を発する。タンパク質やカルシウム、ビタミン類などの栄養素が豊富に含まれていることがわかったため、今では「完全栄養食品」とまで称されている。また、イガヌから抽出された成分はエネルギー源になることもわかり、2020年には千葉県にイガヌ発電所も建設された。
地球上に現れてからまだ数年しかたっていない生物を子供が食べて人体に影響がないとはいいきれないという理由から14年前に法規制がなされ、18歳からしか食べてはいけない。イガヌを食べた人間は頬が赤らみ、顔の筋肉がだらりと垂れ、焦点が定らなくなる。甘ったるい匂い、心地よい痺れが全身を貫き、恍惚に溺れる。
美鈴(みすず)
17歳。大学の付属高に通っている。何かあると、祖母の形見としてもらったスタインウェイアップライトピアノを弾く。
蓮(れん)
美鈴の恋人。18歳。同じ高校に通っており、美鈴の隣のクラス。美鈴には18歳の誕生日に初めてイガヌを食べたと言っていたが、実際は中学の頃から口にしていた。
祖父
美鈴の祖父。食にうるさい。実は数年前から肺がんを患っていたが、抗がん剤などの治療は一切受けず、家族にも伝えなかった。
乃亜(のあ)
美鈴の友達。髪をベージュに染め、丁寧に巻くなど派手だが、それからは想像できないくらいに成績優秀。美鈴とは中学が同じ。
海斗(かいと)
乃亜の恋人で蓮の友達。タバコを吸うなど素行が悪く、いい加減でがさつ。美鈴は苦手なタイプ。

インターセプト[編集]

同僚の結婚式の二次会で、難攻不落な女として有名な中村安未果をおとしてやろうと挑んだ林。ネイルを褒めたり、飲み物を渡してあげたりと恋愛テクニックを駆使して安未果に近づくが、つれない態度でかわすだけでなく、口説きにかかっていることを真正面から指摘され、あえなく撃沈する。しかし彼女が立ち去った後に落ちていたスマートフォンを返す際、ピッツバーグ・スティーラーズ(アメフトチーム)のロゴが待ち受け画面になっていたことから、お互いファンであることがわかり意気投合。いい雰囲気になり林は徐々に距離をつめるが、グラスを落としてしゃがみこんだ彼女のパーソナルスペースに侵入したところ、安未果は急に悲鳴を上げて逃げ去ってしまう。一瞬茫然とした林だったがめげずに追いかけたところ、安未果から家まで送ってほしいと言われ、タクシーの中で最近ストーカーに悩まされていることを打ち明けられる。そして「奥様に誤解されるといけませんから」という牽制の言葉と表情が一致していないのを見逃さなかった林はまんまと部屋に上がり込み、安未果と一夜を共にする。しかし夜中、トイレに起き上がった林は間違えて開けてしまった部屋で信じられないものを目にする。そこには2008年のスーパーボウルが開催されたスタジアムでの林の姿が写った切り抜きをはじめ、林が捨てた様々な物が置かれていた。恐怖に慄いた林に安未果は「私のことは捨てないでね」と満面の笑みを浮かべて背後から抱きつく。

林(はやし)
名誉欲が強く、トレンドに弱い男。会社と長年取引をしているクライアントの社長令嬢と結婚している身でありながら、部下でもある安未果を落とすと同僚や部下に宣言する。女をおとす時はカタルシス効果吊り橋効果など、行動心理学の知識を駆使する。
中学から大学までアメフトをやっていた。
中村 安未果(なかむら あみか)
林の部下で10歳年下。子供っぽい印象に反して仕事はそつなくこなし、社交的なようでいて実は人と適当な距離を置く。高級マンションに住んでいて、名家のお嬢様という噂もあり、多くの同僚からアプローチを受けてもなびかない孤高のマドンナとなっている。

にべもなく、よるべもなく[編集]

工藤誠也先輩が「妄想ライン」という掌編小説で文学賞をとり、海と山と工場しかない小さなこの街の地元新聞に大きく取り上げられた。幼なじみのケイスケがどうしても読みたいというので、純は猟師の根津爺に頼んで買ってきてもらい自分も読んでみたが、良さが全くわからない。愛車のポルシェ・カイエンの助手席に女を乗せて首都高を走る話だったが、「東京はあんなんじゃない」と思う純は、工藤先輩が本当に東京に行ったことがあるのかどうか、ケイスケと共に直接先輩に聞きに行くことになる。しかしそこで純は工藤先輩がサッカー部の男子生徒とキスをする姿を目撃してしまっただけでなく、「実は工藤先輩が好きだったんだ」と泣きながらケイスケから打ち明けられる。その後、同性愛への生理的な嫌悪感から、自分が長年の親友への見方を変えてしまっていることに気付いた純は、ゲイもののアダルトビデオなどを見てなんとか理解しようと努力する。しかしどうしても受け入れられずケイスケとの距離はどんどん遠くなり、やがて純は同じクラスの女子生徒・赤津舞と付き合うようになる。彼女がボーイズラブ漫画を持っていると知った日、純は強引に彼女と初めてのセックスをするが、ケイスケを理解できない自分、赤津を犯した自分こそ汚い最低の人間のように思え、入水自殺を図ろうとするが、そんな純を水から引き揚げて助けたのは他の誰でもない、ケイスケだった。純はケイスケから逃げていたことを面と向かって謝る。時は過ぎ、13年後。大人になった純は、婚約者の結子を兄のおさがりの三代目スズキ・ワゴンRの助手席に乗せ、「妄想ライン」と同じ場所を走って小説の描写の答え合わせをする。

純(じゅん)
14歳。8歳年上の兄が東京へ行った後に変わってしまったため、東京に対して苦々しい思いを持っている。
中学卒業後は地元の水産高校に進学し、高校卒業後は亡くなった根津爺の後を継いで魚屋兼猟師になった。
ケイスケ
純の親友で同い年。お互いの両親が学生時代からの知り合いのため、物心ついた時から一緒にいる幼なじみでもある。水泳を習っていたため泳ぎには自信があったが、小学2年生の時に海で溺れて以来、水泳は続けているものの、海では泳いでいない。中学3年になってからは水泳部の部長になった。
中学卒業後はスポーツ推薦で東京の進学校へ行った。
工藤 誠也(くどう せいや)
中学3年生。純やケイスケの先輩。掌編小説「妄想ライン」がある文学賞の佳作に選ばれて文芸誌に掲載された。爽やかなルックスで成績はトップクラスであり、陸上部のエース。教師やPTA会員からの人望もあり、生徒会長にも満場一致で抜擢された。
根津爺(ねづじい)
地元漁師。鮮魚店も営んでいる。家族はおらず、友達もいない。「あの爺さんに近づいてはいけない」というのが街の暗黙のルールとしてあったが、純の兄が東京へ行ってすぐの頃、好奇心から鮮魚店に忍び込んだ純に魚をごちそうして以来、純とケイスケとは仲良くしている。
実は昔、2人の漁仲間と船を出した時に船が転覆し、1人の仲間を亡くしたが、それを機に漁師を辞めた1人とは違って漁師を続けたため、人々に「ひとでなし」と言われるようになってしまった過去がある。
亡くなった後は遺書に従い、遺骨は純が海へ散骨した。
純の兄
いつも綺麗な女性とつきあっているおしゃれな兄だったが、高校卒業と同時に美容師を目指して上京。2年間専門学校に通い、1年程新宿の美容院に勤めたものの、ある日突然浮浪者のような格好で「東京はもういい」と実家に戻ってきた。その後ひきこもっていたが、父親が殴った後に自分が勤めている工場へ連れていかれ、なんとか人間らしさを取り戻した。
赤津舞(あかつまい)
中学3年生になって初めて純と同じクラスになった女生徒。派手でも地味でもなく、育ちは良さそう。バスケ部のマネージャー。
純と交際するようになるが、県内の私立高校に進学したため、その関係は自然消滅した。
結子(ゆうこ)
純の来月結婚予定の婚約者。新横浜が地元。

書籍情報[編集]

テレビドラマ[編集]

傘をもたない蟻たちは
ジャンル テレビドラマ
放送時間 土曜 23:40 - 翌0:05(25分)
放送期間 2016年1月9日 - 1月30日(4回)
放送国 日本の旗 日本
制作局 フジテレビ
企画 羽鳥建一
演出 河野圭太
原作 加藤シゲアキ
『傘をもたない蟻たちは』
脚本 小川真
プロデューサー 江森浩子
出演者 桐山漣
加藤シゲアキ
阪田マサノブ
足立梨花
渡辺舞
武田玲奈
南沢奈央
竜雷太
エンディング NEWSヒカリノシズク
外部リンク 公式サイト
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短編集『傘をもたない蟻たちは』に収録されている「恋愛小説(仮)」「インターセプト」「にべもなく、よるべもなく」を取り上げ、連続ドラマ(全4話)としてテレビドラマ化され[7]、2016年1月9日から1月30日までフジテレビ系の「土ドラ」枠で放送された。主演は桐山漣

当初この作品はオムニバスドラマとしての製作が予定されていたが、短編集の6作全てで共通して“若者たちが抱えている苦悩”が描かれており、それらをパッケージできる物語も含まれていたことから、連続ドラマとして製作してみたいという思いが編成企画を担当した羽鳥健一らに湧き上がった[8]。そして脚本担当の小川真と何度も議論を重ね、ただの恋愛や友情でまとめないでほしいという唯一の要望を伝えていた[9]原作者である加藤の後押しもあり[8]、新解釈を加えて再構築された連続ドラマとして完成した[10]。タイトル通り、ドラマでは雨のシーンが多く使われている[11]

メディア評論家の影山貴彦は、特に河野圭太の演出を素晴らしいと讃え、「今作も河野は、演者ひとりひとりにきめ細かな演出をしている。セリフ(脚本・小川真)をとても大切にしている。作品を見つめるまなざしが深く、優しいのだ」と評した[12]

あらすじ(テレビドラマ)[編集]

作家として行き詰っていた橋本純(桐山漣)は、担当編集者の館山(阪田マサノブ)から、ラストチャンスだとして今度創刊する若者向けウェブマガジンに載せる恋愛小説の執筆を促される。しかし専門外のテーマに苦しんで何も書けないまま締切は1週間後に迫っていた。そんな純の元を突然幼馴染の村田啓介(加藤シゲアキ)が訪ねてくる。純の作品は全てチェックしていたという啓介は純を励まし、そして純も啓介との思い出話の中で、昔自分が出したゴミがファンによって集められていた事件があったことを思い出す。そしてそれを題材に『インターセプト』を書き上げるが、館山には「ホラー小説だ」とボツにされてしまう。次こそはと『恋愛小説(仮)』というタイトルで書き始めるものの、やはりすぐに行き詰ってしまう。ところが「理想の人を書いてみたら?」という啓介の助言を元にユキエ(渡辺舞)を登場させたところ、夢の中でも彼女が出現する。しかも小説に書いたことと同様のことを夢の中でユキエがしてくれることに気づいた純は、ユキエを書いては酒を飲んで眠ることを繰り返し、次第に現実と妄想の境目がわからなくなっていく。まともな作品は完成しないまま酒浸りになり、館山にも見放された純は、自分を励ます啓介にもきつく当たってしまう。啓介はそれでも「やめるなよ。絶対、また書けよな」という言葉を残し[13]、純の部屋を出ていく。

夜が明けて酒が抜け、八つ当たりしてしまったことを謝ろうと思った純だったが、啓介の連絡先を聞いていなかったことに気づく。連絡先を辿るために中学の卒業アルバムを引っ張り出した純は、一緒に置いてあった文芸誌『文藝界』を見て、1つ年上の工藤先輩(小松直樹)の書いた小説が載っていたこと、啓介に同性の工藤先輩が好きだと打ち明けられて戸惑い悩んだこと、地元の漁師である根津爺(竜雷太)の家に啓介と2人で入り浸り、架空の生物・イガヌの話を啓介に「才能あるよ」と誉められていたことを思い出す。地元に帰った純は、啓介から元気だと聞かされていた根津爺の店へ行くが、そこに根津爺の姿はなかった。しかし代わりに中学の時に付き合っていた赤津舞(南沢奈央)に偶然再会する。思い出話に花を咲かせるが、赤津は、あの頃純が自分と付き合っていたのは啓介との距離を埋めるためだと気づいており、自己嫌悪に陥った純が橋から飛び降りようとしたのを啓介が止める姿も見ていた。あの頃の2人の関係が羨ましかったと話す赤津に、啓介が最近も自分の部屋に来たことを告げると、「何言ってるの?」と驚かれる。実は啓介は2年前の冬に海に落ちた人を助けようとして亡くなっていた[11]。驚いた純だったが、啓介は読者として自分の前に現れたのだ、読者がいる限りは書かなければと思い、『にべもなく、よるべもなく』を書き上げる。館山は絶賛し、ウェブマガジンではなく本誌で載せてもらえるように掛け合うと意気込む。

キャスト[編集]

橋本 純〈30〉
演 - 桐山漣[14]
主人公。「橋本ジュン」のペンネームで若手小説家としてデビューしたが、現在は落ち目のSF作家[8][15]。デビュー作は、中学2年生の頃に啓介と根津爺と鍋を食べていた時に作り出した架空の生き物の話を元に書いた『イガヌの雨』[16]。しかし単行本はもう2年出しておらず[17]、貯金を切り崩したり、家電の説明書を書くアルバイトなどをして食いつないでいる。
15歳までは那珂湊で過ごした。
村田 啓介〈30〉
演 - 加藤シゲアキ[7][18]
原作には登場しないオリジナルキャラクター[9][15]。純の幼馴染みで茨城県ひたちなか市立那珂湊太田中学校[19]の同級生。
純とは10年以上会っていなかったが[8]、雨の夜、突然純の部屋を訪れる。
館山〈45〉[20]
演 - 阪田マサノブ
「橋本ジュン」担当の編集者。

ゲスト[編集]

第1話[編集]
中村 安未果〈23〉
演 - 足立梨花[7]
ジュンの執筆した『インターセプト』の登場人物。
会社の孤高のマドンナ的存在のOL。上司の林武史[21](演:桐山漣[10])に口説かれてもそっけない態度をとるが、実は4年前、大学生の頃に雑誌で読者モデルとして載っていた林に一目ぼれして以降、林のあらゆる情報やごみを採取し、親のコネも使って林の会社に就職していた。
第2話[編集]
ユキエ〈25前後〉[20]
演 - 渡辺舞
ジュンの執筆した『恋愛小説(仮)』の登場人物。
純の理想で作り上げられた女性。
第3話[編集]
根津爺〈70〉
演 - 竜雷太[7](第4話)
純の地元の漁師。町で厄介者と評判だが、純や啓介には慕われている[22]
橋本 純〈15〉
演 - 小林亮太[20](第4話)
村田 啓介〈15〉
演 - 市川理矩[20](第4話)
純の親友で幼馴染み。スポーツ万能で勉強も得意[14]
工藤先輩への憧れを常日頃から口にしていたが、工藤先輩がバスケ部の男の先輩とキスしているところを目撃してショックを受け、自分も好きだったと純に打ち明ける。
工藤 誠也[8]
演 - 小松直樹
純の1つ年上の先輩。中学3年生の頃、短編小説「妄想ライン」で『文藝界』新人賞佳作[23]を受賞した。
第4話[編集]
赤津 舞〈30〉
演 - 南沢奈央[7](中学生時代:武田玲奈[20]
純や啓介の同級生。同級生を殴って自宅謹慎中の純にプリントを持ってきたことをきっかけに純に勉強を教えるようになり、付き合い始める[8]
娘の里奈と散歩中、地元に戻って来ていた純と偶然再会する。
赤津 里奈〈3〉
演 - 新津ちせ[20]
舞の娘。

スタッフ[編集]

  • 原作 - 加藤シゲアキ『傘をもたない蟻たちは』
  • 脚本 - 小川真
  • 主題歌 - NEWSヒカリノシズク[24]
  • 技術プロデューサー - 長谷川美和
  • 撮影 - 船橋正成
  • 映像 - 小野寺慎一
  • 照明 - 椙浦明規
  • 音声 - 福地弘恭
  • 編集 - 神崎亜耶
  • ライン編集 - 伊藤裕之
  • 選曲 - 志田博英
  • 音響効果 - 松井謙典
  • MA - 大辻愛里
  • 美術プロデューサー - 杉川廣明
  • 美術進行 - 平田貴幸
  • 装飾 - 中島佳克
  • 衣裳 - 佐藤理恵
  • ヘアメイク - 松本美奈
  • 持道具 - 渡部美希
  • 広報 - 瀬田裕幸(フジテレビ)
  • スチール - 米川永
  • 車輌 - ドルフィンズ
  • 演出補 - 小山田雅和、大﨑翔
  • 制作担当 - 岩崎敬道
  • 制作主任 - 小田切悠
  • 記録 - 津嶋由起江
  • プロデューサー補 - 越田香苗
  • 編集企画 - 羽鳥建一(フジテレビ)
  • プロデュース - 江森浩子
  • 演出 - 河野圭太
  • 制作 - フジテレビ共同テレビ

放送日程[編集]

各話 放送日 サブタイトル[25]
第1話 1月09日 再会と妄想
第2話 1月16日 妄想と決別
第3話 1月23日 蘇った記憶
第4話 1月30日 光のシズク

脚注[編集]

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注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g 傘をもたない蟻たちは(角川書店)
  2. ^ “加藤シゲアキ 初の短編小説集「ジャニーズらしからぬ」過激描写も”. Sponichi Annex. (2015年3月25日). http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/03/25/kiji/K20150325010047660.html 2016年7月24日閲覧。 
  3. ^ “NEWS加藤、恋愛小説の内容「僕の場合は想像、いや妄想」”. スポーツ報知. (2015年6月8日). オリジナル2015年6月10日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150610002716/http://www.hochi.co.jp/entertainment/20150608-OHT1T50132.html 2016年7月24日閲覧。 
  4. ^ “NEWS加藤、小説第4弾は初の短編集!激しい性描写にも挑戦”. SANSPO.COM. (2015年3月25日). http://www.sanspo.com/geino/news/20150325/joh15032505030001-n1.html 2016年7月24日閲覧。 
  5. ^ 角川書店『傘をもたない蟻たちは』公式Twitterアカウント2015年8月2日の発言
  6. ^ 『傘をもたない蟻たちは』 KADOKAWA2015年8月1日、巻末頁。ISBN 978-4-04-102833-9 
  7. ^ a b c d e NEWS・加藤の原作ドラマ『傘をもたない蟻たちは』に高まるファンの期待”. ダ・ヴィンチニュース (2015年12月1日). 2016年5月4日閲覧。
  8. ^ a b c d e f STORY”. 「傘をもたない蟻たちは」公式サイト. フジテレビ (2016年). 2017年5月4日閲覧。
  9. ^ a b 加藤シゲアキ (2016年1月8日). 加藤シゲアキ「映像化で“アイドル兼作家”を知ってもらえれば」. (インタビュー). 産経ニュース.. http://www.sankei.com/entertainments/news/160108/ent1601080002-n1.html 2017年5月4日閲覧。 
  10. ^ a b 加藤シゲアキ原作ドラマ『傘をもたない蟻たちは』主演・桐山漣の芝居に注目”. テレビドガッチ (2016年1月9日). 2017年5月4日閲覧。
  11. ^ a b NEWS・加藤シゲアキ『傘をもたない蟻たちは』最終回!「原作も読んでみたい」新たなファンも”. T-SITEニュース エンタメ. TSUTAYA (2016年1月31日). 2017年5月4日閲覧。
  12. ^ “光る「傘をもたない蟻たちは」 セリフ大切に 細やかな演出”. 毎日新聞. (2016年1月25日). https://mainichi.jp/articles/20160125/ddn/018/200/019000c 2017年5月4日閲覧。 
  13. ^ 角川書店『傘をもたない蟻たちは』公式Twitterアカウント2016年1月16日の発言
  14. ^ a b 桐山漣 (2016年1月9日). 桐山漣「崩していくのが気持ち良い」落ちぶれた小説家役で新境地へ. (インタビュー). テレビドガッチ.. http://dogatch.jp/news/cx/37112/2 2017年5月4日閲覧。 
  15. ^ a b NEWS加藤シゲアキ小説を桐山漣主演で初ドラマ化!オリジナル要素に「驚いてもらえる」と自信”. テレビドガッチ (2015年11月17日). 2017年5月4日閲覧。
  16. ^ 第3話。
  17. ^ 傘をもたない蟻たちは”. キャラクター紹介. インターネットTVガイド (2016年). 2017年5月4日閲覧。
  18. ^ NEWS・加藤シゲアキ『傘をもたない蟻たちは』最終回!「原作も読んでみたい」新たなファンも”. T-SITE NEWS (2016年1月31日). 2016年5月4日閲覧。
  19. ^ 第3話。卒業アルバム参照。
  20. ^ a b c d e f CHART”. 「傘をもたない蟻たちは」公式サイト. フジテレビ (2016年). 2017年5月4日閲覧。
  21. ^ 第1話。劇中雑誌参照。
  22. ^ NEWS加藤シゲアキ小説が連ドラ化 主演は桐山漣&加藤も重要人物で出演”. ORICON NEWS. オリコン (2015年11月17日). 2017年5月4日閲覧。
  23. ^ 第3話。劇中『文藝界』冊子参照。
  24. ^ “NEWSの新曲が主題歌に決定!加藤シゲアキ原作“土ドラ””. 産経ニュース. (2015年12月3日). http://www.sankei.com/entertainments/news/151203/ent1512030006-n1.html 2017年5月4日閲覧。 
  25. ^ 傘をもたない蟻たちは”. フジテレビオンデマンド. フジテレビ (2016年). 2016年2月11日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2017年5月4日閲覧。

外部リンク[編集]

フジテレビ 土ドラ
前番組 番組名 次番組
トランジットガールズ
(2015.11.7 - 2015.12.26)
傘をもたない蟻たちは
(2016.1.9 - 1.30)
武道館
(2016.2.6 - 3.26)