ビーナスライン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
信州ビーナスラインから転送)
ビーナスライン(小県郡長和町和田付近)
(2011年(平成23年)8月)

ビーナスラインは、長野県茅野市から、同県上田市美ヶ原高原美術館に至る全長約76キロメートルの観光道路である[1][2]

概要[編集]

長野県の茅野市街と美ヶ原高原をつなぐ、日本の代表的な観光山岳道路のひとつ。「ビーナスライン」の名は、沿道にある蓼科山の山容を女神に例えたことに由来するもので[3]蓼科有料道路霧ヶ峰有料道路を併せてよぶ愛称[4]として1968年に公募で決定し[5]、無料開放後も継続して使用されている[6]

もともとは、軽井沢上高地とを結ぶ大規模観光道路として計画された「中信高原スカイライン」の一部として計画されたもので[3][注釈 1]長野県企業局によって、有料道路として建設・運営されてきたが、1986年より順次無料開放され、2002年に全線無料開放[7]された。中央自動車道諏訪IC中央本線茅野駅から蓼科高原八ヶ岳山麓、白樺湖車山高原霧ヶ峰美ヶ原といった高原の観光地を結ぶ。国道152号国道142号に連絡。八島ヶ原湿原駐車場(霧ヶ峰と和田峠の中間部) - 美ヶ原の区間は11月下旬から4月下旬まで冬季閉鎖される[6]

道路は大きく4区間に大別でき、茅野市街地 - 白樺湖間の蓼科高原エリア、白樺湖 - 車山 - 霧ヶ峰間の白樺高原・霧ヶ峰エリア、霧ヶ峰 - 落合大橋間の鷲ヶ峰・茶臼岳脇を通るワインディングロード区間、落合大橋 - 美ヶ原高原間の急勾配・最高所に至る区間と、それぞれ違う特徴を持つ道路で構成される[2]

国道・県道としての路線名[編集]

  • 国道152号(茅野市ちの・あけぼの隧道交差点 - 本町東・御座石神社交差点)
    茅野市の市街地エリア。ビーナスラインの中で最も標高が低い[2]
  • 長野県道192号茅野停車場八子ヶ峰公園線(茅野市本町東・御座石神社交差点 - 北佐久郡立科町芦田八ケ野・白樺湖交差点)
    茅野市市街地郊外から白樺湖までの蓼科高原を抜ける区間。温泉街や観光施設が点在する区間[2]
  • 長野県道40号諏訪白樺湖小諸線(北佐久郡立科町芦田八ケ野・蓼科牧場交差点 - 諏訪市四賀)
    白樺湖から車山高原を経て、霧ケ峰高原(標高約1,650メートル)までの区間。視界が大きく開けている[2]
  • 長野県道194号霧ヶ峰東餅屋線(諏訪市四賀 - 小県郡長和町和田)
    霧ヶ峰高原から国道142号(中山道)と交差する和田峠まで。ワインディングロードで多彩なカーブがあり、標高は1,600〜1,700メートル付近で保たれる[2]。なお、県道40号と県道194号が交差する霧ケ峰高原には、霧ケ峰高原ドライブイン「霧の駅」が約40年にわたって営業していたが、老朽化により2022年5月31日で営業を終了することになった[8]
  • 長野県道460号美ヶ原公園東餅屋線(小県郡長和町和田 - 上田市武石上本入)
    和田峠 - 美ヶ原高原までの区間。和田峠から落合大橋まではワインディングロード。落合大橋からは最も急勾配な区間で、標高約1,600メートル付近から最高地点1,959メートルまで標高差がある[2]

地理[編集]

八ヶ岳中信高原国定公園の高原地帯を通るルート上には、蓼科高原、白樺湖、車山高原、霧ヶ峰、八島ヶ原湿原、美ヶ原高原といった観光地が並び、森林や高原地帯をワインディングロードで抜けてゆく日本有数の景観を誇る地にある[9]。 長野県道40号諏訪白樺湖小諸線の沿線は、レジャー施設が集まる白樺湖や、なだらかな丘陵地を登ると草原が広がる車山があり、八ヶ岳連峰や南アルプス乗鞍岳北アルプスの山々を望むことができる[10][11]。澄み渡った天候が良い日であれば、富士山まで遠望できる[2][11]。 霧ヶ峰は、7月ごろに高山植物のニッコウキスゲの花が長野県道40号諏訪白樺湖小諸線の沿道で咲き乱れる地で知られ、長野県道194号霧ヶ峰東餅屋線の沿道に、国の天然記念物に指定される八島ヶ原湿原がある[12]。霧ヶ峰周辺では、春から秋にかけての早朝、雲海となることもある[11]。和田峠付近で国道142号と落合大橋で立体交差し、これより以西の長野県道460号美ヶ原公園東餅屋線・長野県道178号美ヶ原和田線の区間は針葉樹林地帯で、アップダウンのあるワインディングロードと、落合大橋から美ヶ原高原まで約2 キロメートルのヘアピンカーブが連続するつづら折りの道路となる[9][13]。標高約2,000メートルの道の駅美ヶ原高原からは、上田盆地と北アルプスを一望にできる[11]

通過する自治体[編集]

交差する道路[編集]

沿線[編集]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 美ヶ原スカイライン(美ヶ原 - 王ヶ頭)も、中信高原スカイラインの一部として計画されたが、環境保護のため一部区間が工事が中止され、その名残として今の道路が残されている[3]

出典[編集]

  1. ^ ビーナスライン”. 美ヶ原観光連盟 (2011年8月15日). 2015年9月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 小川・栗栖・田宮 2016, p. 47.
  3. ^ a b c 佐々木・石野・伊藤 2015, p. 21.
  4. ^ ビーナスラインに関する参考資料2” (PDF). 長野県. 2013年4月7日閲覧。
  5. ^ ビーナスラインの由来について”. 長野県 (2004年1月23日). 2013年4月7日閲覧。
  6. ^ a b 中村淳一編 2018, pp. 54–55.
  7. ^ 平成14年 県政おもなできごと”. 長野県. 2013年4月7日閲覧。
  8. ^ 霧ケ峰高原のドライブインが老朽化により閉鎖、解体へ 31日に最後の営業”. 信濃毎日新聞 (2022年5月28日). 2022年5月28日閲覧。
  9. ^ a b 須藤英一 2013, p. 93.
  10. ^ 須藤英一 2013, pp. 92–93.
  11. ^ a b c d 佐々木・石野・伊藤 2015, p. 22.
  12. ^ 須藤英一 2013, pp. 90–93.
  13. ^ 佐々木・石野・伊藤 2015, p. 23.

参考文献[編集]

  • 小川秀夫、栗栖国安、田宮徹 著、中村純一編 編『ニッポン絶景ロード100』枻出版社〈エイムック〉、2016年4月10日、46-47頁。ISBN 978-4-7779-3980-0 
  • 佐々木節、石野哲也、伊藤もずく 著、松井謙介編 編『絶景ドライブ100選 [新装版]』学研パブリッシング〈GAKKEN MOOK〉、2015年9月30日、20-23頁。ISBN 978-4-05-610907-8 
  • 須藤英一『新・日本百名道』大泉書店、2013年。ISBN 978-4-278-04113-2 
  • 中村淳一編 編『日本の絶景ロード100』枻出版社、2018年4月20日。ISBN 978-4-7779-5088-1 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]