保護司

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保護司(ほごし)は、保護司法(1~5条、7~9条、11~18条)・更生保護法(32条、61条、64条)に基づき、法務大臣から委嘱を受けた非常勤の国家公務員で、犯罪非行に陥った人の更生を任務とする[1]

概要[編集]

法務省所管の地方支分部局であり、各都道府県庁所在地(北海道にあっては、札幌のほか、函館、旭川、釧路)におかれた保護観察所の長の指揮下に職務を行う。身分は国家公務員(人事院指令14-3で指定された非常勤国家公務員)であるが、俸給は支払われないためボランティアである[2]

更生保護法では「保護観察官で十分でないところを補う」とされているが、保護観察官の人数が絶対的に不足していることから、更生を支援する活動の担い手は、保護観察官より保護司が主となっているとの指摘も一部にある[3]。また、「更生保護は国の刑事政策の一環なのに、その相当部分を民間の篤志家が担っている。そこに政策の矛盾はないか」という指摘もある[4]。こうした更生を手助けする公的なボランティア制度は、日本発祥の制度であり、フィリピンなどにも制度が輸出されている。

構成[編集]

  • 保護司法については、以下では条数のみ記す。

保護司の任期は2年で、再選を妨げない(第7条)。全国に約48,000人の保護司がいる(保護司法規定の上限は52,500人)ものの、なり手の減少や高齢化、女性の比率の増加が顕著である[5]。保護司は各保護区(政令で定められた区域)ごとに定員がある。

保護司は以下の要件すべてを満たす者の中から各保護区の保護司選考会の意見を聴いた上で保護観察所長が推薦した者のうちから法務大臣が委嘱する(第3条1項)。法務大臣はこの委嘱を地方更生保護委員会の委員長に委任することができる[1]

  • 人格及び行動について、社会的信望を有すること。
  • 職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。
  • 生活が安定していること。
  • 健康で活動力を有すること

ただし、以下のいずれかに該当する者は、保護司になることができない(欠格事由、第4条)。なお成年被後見人又は被保佐人欠格条項とする規定については、令和元年6月14日に公布された「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」によって削除され、心身の故障等の状況を個別的、実質的に審査し、必要な能力の有無を判断することとなった。

  • 禁錮以上の刑に処せられた者[注 1]
  • 日本国憲法の施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
  • 心身の故障のため職務を適正に行うことができない者として法務省令で定めるもの

法務大臣は、保護司が欠格に該当するに至った時は解嘱しなければならない(第12条1項)。また法務大臣は保護司が以下に該当するに至ったときは、保護観察所の長の申出に基づいて、これを解嘱することができる(第12条2項)。保護観察所長は、この申出をしようとするときは、あらかじめ、保護司選考会の意見を聴かなければならない(第12条3項)。

  • 第3条1項各号に掲げる条件のいずれかを欠くに至つたとき
  • 職務上の義務に違反し、又はその職務を怠ったとき。
  • 保護司たるにふさわしくない非行があったとき。

「禁錮以上の刑に処せられた者」の欠格を除き、解嘱は当該保護司に解嘱の理由が説明され、かつ弁明の機会が与えられた後でなければ行うことができない(第12条4項)。

保護司が年々高齢化しているため、若返りを図る目的で、法務省は2004年以降76歳以上の者への再委嘱はしないことを決めた。そのため、大量に退任者が出ることとなったため、人材難が憂慮されている。平均年齢は64.7歳(2015年1月1日現在[6])。

地域の警察署や公共団体が推薦することもあるが、多くは保護司自身の人脈によって候補者を探し出しているため[7]、人材を発掘するための方策が模索されている。現状では地方議会議員宗教家、自営業者、公務員経験者といった様々な分野の人が保護司として活動している[8]

任務[編集]

保護司は保護観察所の長の承認を得た保護司会の計画の定めるところに従い、以下の事務であって当該保護観察所の所掌に属するものに従事するものとする。

  • 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図るための啓発及び宣伝の活動
  • 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図るための民間団体の活動への協力
  • 犯罪の予防に寄与する地方公共団体の施策への協力
  • 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助けるために、その者を雇用する事業主の確保その他の雇用の促進を図る活動
  • 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助けるために、教育、医療又は福祉に関する公私の団体又は機関からの協力の促進を図る活動
  • 犯罪の予防を図るために、公私の団体又は機関からの協力の促進を図る活動
  • 犯罪の予防に寄与する公私の団体又は機関の施策又は活動への協力
  • 犯罪の予防に関する事項について、住民からの相談に応じ、必要な助言その他の援助を行う活動

また地方更生保護委員会又は保護観察所の長から指定を受けて当該地方更生保護委員会又は保護観察所の所掌に属する事務に従事する。

犯罪や非行に陥った者が保護観察を受けることになると、その期間中、保護観察所の保護観察官とともに、対象者と面接して生活状況を調査し、保護観察中に決められた約束事(遵守事項)を守るように指導をし、生活相談など社会復帰への手助けをする[1]。また、刑務所や少年院などの矯正施設に入っている者について、釈放後の帰住先が更生のために適当かどうかを調査し、その環境を調整する[1]

組織[編集]

保護司選考会[編集]

委員は「地方裁判所長」「家庭裁判所長」「検事正」「弁護士会長」「矯正施設の長の代表」「保護司代表」「都道府県公安委員会委員長」「都道府県教育委員会委員長」「地方社会福祉審議会委員長」「地方労働審議会会長」「学識経験者[注 2]」から、13人以内[注 3]が法務大臣から委嘱されて組織される。保護観察所の長の諮問に応じて保護司の委嘱及び解嘱に関する意見を述べる。また保護区及び保護司の定数、保護司の人材確保その他保護司活動の充実強化に関し、保護観察所の長の諮問に応じて意見を述べることができる。保護司の推薦は保護観察所の長が保護司候補者推薦名簿を作成し、地方更生保護委員会を経由して、法務大臣に提出して行うものとする。

保護司会・保護司連合会[編集]

保護司は、その置かれた保護区ごとに保護司会を組織する。また保護司会は都道府県ごと[注 4]に保護司会連合会を組織する。保護司会又は保護司会連合会は以下の事務を行うことを任務とする。

  • 保護司の職務遂行における計画の策定その他保護司の職務に関する連絡及び調整
  • 保護司の職務に関し必要な資料及び情報の収集
  • 保護司の職務に関する研究及び意見の発表
  • 保護司の職務に関する研修
  • 保護司及び保護司会(又は保護司会連合会)の活動に関する広報宣伝
  • 保護司の人材確保の促進に関する活動
  • 保護司の職務遂行に関し災害が発生した場合の救済に関すること

関連作品[編集]

関連項目[編集]

保護司の著名人[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 沖縄の復帰に伴う法務省関係法令の適用の特別措置等に関する政令第38条により、沖縄の法令の規定により禁錮以上の刑に処せられた者も対象。刑法第34条の2により、刑期満了後に罰金以上の刑に処せられないで10年を経過した時は、欠格事由の対象外となる。
  2. ^ 任期は2年であり、再任は可能である。
  3. ^ 東京地方裁判所の管轄区域を管轄する保護観察所に置かれる保護司選考会にあつては15人以内
  4. ^ ただし、北海道にあっては法務大臣が定める区域ごとに組織するものとする。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 保護司とは|全国保護司連盟”. www.kouseihogo-net.jp. 2020年3月28日閲覧。
  2. ^ 法務省:保護司ひとくちメモ”. www.moj.go.jp. 2020年3月28日閲覧。
  3. ^ 川出敏裕・金光旭『刑事政策』(2012)成文堂、254頁。
  4. ^ “無給の国家公務員”5万人 ―――更生担う「保護司」の役割と思い” (日本語). Yahoo!ニュース. 2020年3月28日閲覧。
  5. ^ 保護司の現況|全国保護司連盟”. www.kouseihogo-net.jp. 2020年3月28日閲覧。
  6. ^ 「再犯防止」の最前線に危機感… 「保護司」6年連続で減少、深刻な高齢化と人材不足
  7. ^ 減少する保護司 | 公明ニュース(2012/10/22)” (日本語). 公明党. 2020年3月28日閲覧。
  8. ^ 法務省:Q&A”. www.moj.go.jp. 2020年3月28日閲覧。
  9. ^ 読売新聞 9月3日(水)8時43分配信

外部リンク[編集]