佐川眞人
佐川眞人 (さがわ まさと) | |
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生誕 |
1943年8月3日(81歳) 日本・徳島県徳島市 |
国籍 | 日本 |
研究分野 | 金属工学(磁性体) |
出身校 |
神戸大学工学部 神戸大学大学院工学研究科修士課程 東北大学大学院工学研究科(工学博士) |
主な業績 | ネオジム磁石の発明 |
主な受賞歴 |
朝日賞1990年 日本国際賞2012年 エリザベス女王工学賞2022年 |
プロジェクト:人物伝 |
佐川 眞人(さがわ まさと、1943年8月3日 - )は、日本の研究者・実業家。ネオジム磁石の発明者として知られている。インターメタリックス株式会社初代代表取締役社長。大同特殊鋼顧問[1][2]。眞は真の旧字であるため「佐川真人」と書かれることもある。 徳島県徳島市出身。
略歴
[編集]尼崎市立尼崎高等学校を経て、1966年神戸大学工学部電気工学科を卒業、1968年神戸大学大学院(電気工学)で修士、1972年東北大学大学院で金属材料工学を研究し工学博士[3]。博士論文が『金属表面皮膜のエピタクシャル歪に関する研究 』であるように、もともとは磁石を研究していたわけではなかったが、1972年富士通に入社し磁性材料の研究を命じられる。研究を重ねる中で従来の「強い磁石はコバルトを主成分にしないとできないという常識」に疑問を持ち、鉄とレアアースの組み合わせでの磁石開発に取り組む。ネオジム磁石のアイデアを見出し研究中の1982年に富士通を退社、住友特殊金属(現、日立金属)に移籍し1982年5月ネオジム磁石を作り上げた。1988年住友特殊金属を退社し永久磁石に関する研究開発を専門にするインターメタリックス株式会社を設立し代表取締役社長。2012年から2017年まで同社最高技術顧問[2][4] 。2013年 NDFEB株式会社を設立し代表取締役[5]。2016年 大同特殊鋼株式会社顧問に就任[2]。2023年 電磁材料研究所評議員(兼任)[6]。
ネオジム磁石の開発
[編集]佐川が富士通時代に磁石の研究に取り組んでいたときには、鉄が主成分の磁石では強い磁石は作れず、強い磁石はコバルトを主成分としたものであることが常識とされていた。しかしコバルトは希少で高価であり、資源も偏っていた。そこで佐川は鉄とレアアースの組み合わせで強い磁石を作ることができれば安く安定した磁石が提供できるものと考えた。鉄を主成分にした磁石が強い磁性を持つことができないのは鉄の原子と原子の距離が近すぎるためと知った佐川は「ならばホウ素など原子半径の小さい元素を加えれば、鉄の原子間距離を広げられるのではないか[4]」と考え、この考えをもとに試行錯誤のすえネオジム磁石を完成させた[4]。
佐川が発明したネオジム磁石はネオジム、鉄、ホウ素を主成分とするが温度が上がると保磁力が落ちるため、その欠点をカバーする目的でジスプロシウムを添加する。しかしジスプロシウムは資源が中国に偏り、また磁石のエネルギーを相殺する作用がある。佐川は自分が設立したインターメタリックス株式会社やNDFEB株式会社においてジスプロシウム無しでも高温に耐え、コストも低減なネオジム磁石の開発に取り組んでいる[4][7]。
受賞
[編集]- 1984年 - 大阪科学賞[8]
- 1985年 - 科学技術長官賞[8]
- 1986年 - ジェームス・C・マックグラディ新材料賞[8]
- 1990年 - 朝日賞[8]
- 1991年 - 日本応用磁気学会 学会賞[8]
- 1993年 - 大河内記念賞[8]
- 2003年 - 本多記念賞[8]
- 2006年 - 加藤記念賞[8]
- 2012年 - 日本国際賞[8]
- 2016年 - 永守賞特別賞[9]
- 2018年 - 物質・材料研究機構よりNIMS Award 2018[9]
- 2022年 - IEEE環境・安全技術メダル[10]
- 2022年 - クイーンエリザベス工学賞[11]
- 2023年 - 本田賞[12]
- 2024年 - 国際純粋・応用物理学連合より磁気学賞ネール・メダル(de)
- 2024年 - 欧州発明家賞 非欧州部門
主要論文
[編集]- M. Sagawa, S. Fujimura, N. Togawa, H. Yamamoto and Y. Matsuura, "New Material for Permanent Magnets on a Base of Nd and Fe", J.Appl.Phys.55, pp.2083-2087, 1984.
- M. Sagawa, S. Fujimura, H. Yamamoto and Y. Matsuura and K. Hiraga, "Permanent Magnet Materials Based on the Rare-Earth-Iron-Boron Tetragonal Compounds", IEEE Trans.Magn.MAG-20, pp.1584-1589, 1984.
- M. Sagawa, S. Hirosawa, Y. Otani, H. Miyajima and S. Chikazumi, "Temperature Dependence of the Coercivity of Sintered R17Fe83-xBx Magnets(R=Pr, Nd)", J. Magn. Magn. Mat.70, pp.316-318, 1987.
- M. Sagawa, S. Hirosawa, K. Tokuhara, H. Yamamoto and S. Fujimura, "Dependence of Coercivity on the Anisotropy Field in the Nd-Fe-B type Sintered Magnets", J. Appl. Phys.61, pp.3559-3561, 1987.
- M. Sagawa, P. Tenaud, F. Vial and K. Hiraga, "High Coercivity Nd-Fe-B Sintered Magnet Containing Vanadium with New Microstructure", IEEE Trans. Magn. 26, pp.1957-1959, 1990.[8]
著書/監修
[編集]書籍
[編集]- 佐川眞人, 浜野正昭, 平林眞 編『永久磁石 : 材料科学と応用』2007年、アグネ技術センター、ISBN 978-4-901496-38-4
- 佐川眞人 監修『ネオジム磁石のすべて : レアアースで地球を守ろう』2011年、アグネ技術センター、ISBN 978-4-901496-58-2
- 佐川眞人, 浜野正昭 編著『図解希土類磁石』2012年、日刊工業新聞社、ISBN 978-4-526-06911-6
- 豊橋技術科学大学編集、佐川眞人 他 述『理工系のための明日への教科書 : 時代を担うトップからのメッセージ 』2012年、講談社、ISBN 978-4-06-217563-0
- 中村修二,佐川眞人『最強エンジニアの仕事術 』 実務教育出版、2016年、ISBN 978-4-788911-95-6
記事
[編集]- 佐川眞人「磁気研究よもやま話 ネオジム磁石の発明 : なぜ世界一になれたのか」『まぐね』10巻3号、日本応用磁気学会、2015年
- 佐川眞人「永久磁石材料の高性能化を極める」『学術の動向』19巻12号、日本学術協力財団、2014年12月
- 佐川眞人「永久磁石の発展と日本の役割」『公益社団法人 日本磁気学会 第178回研究会資料 磁気の歴史と新展開』社団法人日本磁気学会研究会資料、2011年5月
他 多数
出典
[編集]- ^ “永久磁石の世界的第一人者 佐川眞人氏に聞く(大同特殊鋼顧問)(上) 金属学会シンポ 開発のヒント得る”. 産業新聞. 2017年2月17日閲覧。
- ^ a b c インターメタリックス株式会社・会社案内・創業者プロフィール2019年10月3日閲覧
- ^ 大同特殊鋼株式会社『佐川眞人顧問が「NIMS Award 2018」を受賞しました。』2023年9月30日閲覧
- ^ a b c d 「「脱レアアース」は無用 最強の磁石さらに強く-佐川眞人氏」FACTAonline2016年9月26日閲覧
- ^ 京大桂ベンチャープラザ入居者紹介・NDFEB株式会社
- ^ 電磁材料研究所 法人組織と職員数、土地・建物
- ^ 日刊工業新聞「NDFEB、ネオジム磁石 製造コスト6割減を実現-希土類半分 」2016/9/30 05:002019年10月4日閲覧
- ^ a b c d e f g h i j 日本国際賞歴代受賞者佐川眞人2016年9月26日閲覧
- ^ a b 大同特殊鋼株式会社プレスリリース 佐川眞人顧問が「NIMS Award 2018」を受賞しました2018年8月25日閲覧
- ^ IEEE Medal for Environmental and Safety Technologies
- ^ 2022 QEPrize Winner The World's Strongest Permanent Magnet
- ^ 2023年本田賞 プレスリリース