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交響曲第1番 (モーツァルト)

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交響曲第1番 変ホ長調 K. 16 は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した現存する最初の交響曲である。

概要

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『交響曲第1番K.16』を作曲した場所を示す史跡案内板。ロンドンベルグレイヴィア地区エブリー・ストリート180番地にて

本作はモーツァルト一家がロンドン滞在中の1764年頃に書かれ[1]1765年2月21日ヘイマーケットの小劇場で行われたとされている[2]。僅か8歳のときの作品であり、自筆譜には父レオポルトによる修正の跡が数多く見られる。当時のロンドンを代表するシンフォニスト、ヨハン・クリスティアン・バッハカール・フリードリヒ・アーベルの影響が認められる。自筆譜はヤギェウォ大学のヤギェウォ図書館に所蔵されている。

編成

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『交響曲第1番K.16』自筆総譜・第1頁

演奏時間

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約12分(提示部の繰り返しを含む、各6分、4分、2分の割合)

曲の構成

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3つの楽章からなり、イタリア式序曲風の急 - 緩 - 急の楽章配置をとる。3楽章構成の交響曲は、モーツァルトの初期の交響曲における典型的な形式である。4楽章構成になるのはもっと後のことである。

音楽・音声外部リンク
全曲を試聴する
W.A.Mozart:Sinfonie No.1 KV.16 - ヨハネス・クルンプ指揮エッセン・フォルクヴァンク室内管弦楽団による演奏。当該公演指揮者の公式YouTube。
第1楽章第2楽章第3楽章
エーリヒ・ラインスドルフ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。
第1楽章第2楽章第3楽章
カール・ベーム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。
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以上の演奏は何れもYouTubeアートトラック公式収集による。
  • 第2楽章 アンダンテ
    ハ短調、4分の2拍子。
    緩徐楽章で、ほとんど全体に渡って16分音符3連符が伴奏として奏される。中間部には、"E♭ - F - A♭ - G"という音形が登場するが、これは彼のその後の作品のいくつかに登場し、特に最後の交響曲である第41番ハ長調 K. 551「ジュピター」の終楽章で有名となったため『ジュピター音型(ジュピター主題)』と呼ばれるが、これはこの音型が初めて交響曲に登場した例となる。
  • 第3楽章 プレスト
    変ホ長調、8分の3拍子。
    急速で活発なフィナーレである。静かな音と大きな音、ヴァイオリンのみで演奏されるフレーズとトゥッティ、といった対比が見られる。

脚注

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  1. ^ 新モーツァルト全集 (NMA) IV/11/1: Sinfonien · Band 1, Kritischer Bericht (Allroggen/Ferguson, 1999). 自筆譜には「Sinfonia di Sig: Wolfgang Mozart a London(シンフォニア ヴォルフガング・モーツァルトによる ロンドンにて)」とあるが、続けて書かれている「1764」は、音楽出版者ヨハン・アントン・アンドレにより後年記入されたものという。NMA (Vorspann p. IX). は、ヴォルフガングの最初の交響曲創作にまつわる姉ナンネルの回想 (1799, 1800) を根拠に、父レオポルトが病床にあった1764年8月から9月の成立としている。ただし、同書も認めているように、ナンネルの述べる「最初の交響曲」の楽器編成と、K. 16 のそれとは一致しない。
  2. ^ 父レオポルトによる1765年2月8日及び同年3月19日の手紙。及び1765年2月6, 14, 21日付『公衆新聞 Public Advertiser』の広告。なお、2月8日の手紙には"Die Synfonien..."、2月21日付の広告には"All the Overtures..."とあり、複数のシンフォニーが演奏されたことが分かる。しかし、編成・調性等の特徴が述べられていないことから、何が演奏されたかについて確かなことは分からない。

外部リンク

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