互酬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

互酬(ごしゅう、: Reciprocity)は、文化人類学経済学社会学などにおいて用いられる概念。人類学においては、義務としての贈与関係や相互扶助関係を意味する。日本語では互酬性という表記も見られる。

カール・ポランニーは、互酬は社会統合の主要なパターンのひとつであり、非国家レベルにおける主要な経済形態とした。互酬は集団の対称性(symmetry)を特徴とし、2つの配置における財やサービスの運動によってギブ・アンド・テイクを促進する。マーシャル・サーリンズは、近親者に多い「一般化された互酬」、等価交換である「均衡のとれた互酬」、敵対関係に多い「否定的な互酬」に分類して分析を加えた。

互酬の例[編集]

互酬の例として、マルセル・モースが研究をした太平洋岸北西部のポトラッチダホメ王国のドックプウェ、ニューギニアのバナロ族やアフリカのティブ族の婚姻制度、インドネシアのゴトン・ロヨン、日本のなどがある。ポランニーは、アリストテレスが唱えた相互依存の原理(アンティペポントス)も互酬に含めた。また、ヘシオドスの『仕事と日』は、部族社会の変化によって互酬関係が衰え、孤立した家政が入り込んできた時代を描いているという解釈をしている。

互酬と交易[編集]

共同体の外部に対する互酬は交易の形をとることがあり、ブロニスワフ・マリノフスキが研究をしたトロブリアンド諸島クラや、沈黙交易をはじめとする管理交易も含まれる。贈与交易と呼ばれる場合もある。

出典・参考文献[編集]

  • ブロニスワフ・マリノフスキ 『西太平洋の遠洋航海者』 増田義郎訳、中央公論新社〈世界の名著(59)マリノフスキー/レヴィ=ストロース〉、1967年。
  • マルセル・モース 『贈与論』 吉田禎吾江川純一訳、ちくま学芸文庫、2009年。
  • カール・ポランニー 『経済と文明―ダホメ]経済人類学的分析』 栗本慎一郎端信行訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2003年。
  • カール・ポランニー 『人間の経済 1 市場社会の虚構性』 玉野井芳郎・栗本慎一郎訳、岩波書店 / 『人間の経済 2 交易・貨幣および市場の出現』 玉野井芳郎・中野忠訳、岩波書店、2005年。
  • マーシャル・サーリンズ 『石器時代の経済学』 山内昶訳、法政大学出版局〈叢書ウニベルシタス〉、1984年。
  • 若森みどり 『カール・ポランニー-市場社会・民主主義・人間の自由』 NTT出版、2011年。

関連項目[編集]