乳児用液体ミルク

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乳児用液体ミルクとは、誕生から12か月までの乳児母乳の代わりとして飲むことができるように、栄養成分を調整されたミルクのことである。乳児用に調整されたミルクは、粉状のものと液体状のもの2つが存在するため、前者を「粉ミルク」、後者を「液体ミルク」と呼ぶのが一般的である。乳児用液体ミルクを単に乳児用ミルクと呼ぶこともある。

日本における乳児用液体ミルク[編集]

乳児用液体ミルクは、欧米では一般的に販売されているものの、日本国内において製造されているものは、乳児用の調整豆乳とし三育フーズ株式会社が製造販売している商品のみである[要出典]乳及び乳製品の成分規格等に関する省令では、乳児用粉ミルクである「調製粉乳」は定義されているが、液体ミルクに関しては定義されていない[1]。従って、欧米では主流である牛乳を主成分として製造された乳児用液体ミルクは、日本国内において製造および販売されておらず、流通していない[2]。但し、製造販売が禁止されているわけではない[3]。インターネットでの個人輸入が行われているが、利用は少ない[4]2018年3月、厚生労働省の専門家部会で、製造や保存方法の基準を盛り込んだ省令改正案を示し、夏にも省令が改正される見通し

災害時における乳児用液体ミルク[編集]

乳児用液体ミルクは、容器内のミルクを乳幼児がそのまま飲むことができるため、災害時においても衛生的な水や煮沸消毒をする必要がないため、阪神・淡路大震災東日本大震災のような大規模災害が発生する度に国内販売を求める市民による活動が行われている。また、2016年に発生した熊本地震では、駐日フィンランド大使館から救援物資として配布された[4]。しかし厚生労働省による規制(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)により乳児用液体ミルクは認められていないため、阪神大震災から20年以上が経過した今でも乳児用液体ミルクに省令等の改正は行われておらず製造・販売されていない。阪神・淡路大震災当時の朝日新聞は、乳児用液体ミルクに関して『厚生労働省は「省令は、成分や配合の割合を承認するためのものであり、液体タイプを禁じているわけではない」との見解を発表しているものの、事実上、液体タイプのミルクを生産したり輸入したりしても「乳児用ミルク」としては認められず、単なる乳飲料とされてしまう。』と掲載している[5]。 東日本大震災を受けて、2015年5月に日本小児科学会は関係省庁に対し、「災害時の液状ミルクと使い捨て哺乳瓶の確保」を要望している。[6]

乳児用液体ミルク販売に関する諸問題[編集]

乳児用液体ミルクが国内販売されない理由のひとつにコスト面の高さがある。現在、明治乳業などの大手企業は技術面では液体状の乳児用ミルクを製造することができる。しかし液体ミルクは粉ミルクに比べ、製造原価だけで粉ミルクの2倍、流通コストなども加わると3倍くらいになるとの見方もある[5]。従って、乳児用粉ミルクの市場が大手乳業メーカーの寡占状態が続いている日本においては、利益が下がる液体ミルクを販売しないのは企業としては当然のことである。故に液体ミルクの製造は大手乳業メーカーの使命感にとよるところが大きい。アメリカなどの諸外国では、乳幼児の食品に対する国民意識が高く、液体ミルクの製造に国家予算を投じている国も多い。

国内製造メーカーの動き[編集]

乳児用粉ミルク製造販売大手である森永乳業のホームページ上では、乳児用液体ミルクが販売・製造できないのは厚生労働省の規格基準が設けられていないことが理由と記載されている[7]。一方で厚生労働省は、規格基準を設けることができないのは製造会社からの資料提供等の協力を得ることができないことを理由としている。牛乳・乳製品の業界団体である日本乳業協会が、2009年に液体ミルクの規格作成を厚生労働大臣に対し要望したが、実際には日本乳業協会は厚生労働省に対し技術的な協力は行っていない。また、日本乳業協会によると、液体ミルクの製造ができないのは「ミルクに含まれるミネラル成分が沈殿したり、ミルクが変色したりする技術課題があるため、あと数年はかかる」見通しを2009年の要望時に示している。しかし、9年以上経過した2018年現在においても、「技術開発にあと数年はかかる」という見解を示し続けている。

脚注[編集]

  1. ^ 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令”. 厚生労働省. 2016年10月16日閲覧。 “この省令において「調製粉乳」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料とし、これに乳幼児に必要な栄養素を加え粉末状にしたものをいう。”
  2. ^ 乳児用液体ミルク「国内にも」 「衛生的で使いやすい」海外で普及 母親が声あげメーカーなど協力 研究会発足、提言提出へ 毎日新聞 2015年12月5日
  3. ^ 規制改革ホットライン検討要請項目の現状と措置 (PDF) 内閣府
  4. ^ a b “乳幼児液体ミルク 解禁へ” (日本語). 読売新聞 (東京都: 読売新聞東京本社): p. 1. (2016年10月16日) 
  5. ^ a b 朝日新聞、1995年4月19日「欧米のお母さんに人気 乳児用液体ミルク」
  6. ^ 東日本大震災での経験を基に検討した日本小児科学会の行うべき大災害に対する支援計画の総括
  7. ^ お客さまからのご質問 | 東日本大震災への取り組みについて”. 森永乳業. 2016年10月19日閲覧。 “現在の法律では液状の育児用ミルクは「乳児用のミルク」として規格基準が設けられていないため製造・販売はできません。”

関連項目[編集]

外部リンク[編集]