乱雑位相近似

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乱雑位相近似(らんざついそうきんじ Random Phase Approximation, RPA)は、元々D. J. BohmとD. Pinesによって展開されたN粒子系における基底状態の量子揺らぎ及び励起振動状態(フォノン)を記述するための近似手法。

N粒子系(N電子系)における密度演算子、

\rho(\vec{q})=\sum_{i=1}^{N} \exp(i\vec{q}\cdot\vec{r}_i)

において、位置座標ベクトル\vec{r}_iが無秩序なら、逆格子ベクトルと位置座標ベクトルとの積、\vec{q}\cdot\vec{r}_iも無秩序(乱雑)なので、\rho(\vec{q} \neq 0)からの寄与が、\rho(\vec{q} = 0)よりずっと小さいとして無視する線形応答理論における摂動論的な近似法の一つ。

\vec{q} \neq 0においては、\vec{q}\cdot\vec{r}_iが乱雑なことにより各項の位相も乱雑となり、和の各成分が相殺し合って全体としての寄与が無視できるほど小さくなることによる。勿論、この近似が適用できない場合も多々ある。

粒子系(電子系→電子ガス)が高密度の場合は、乱雑位相近似が妥当な近似であることが分かっている。

同等な近似手法が、多方面(例:GW近似)で利用、応用されている。

乱雑位相近似の基本的な考え方[編集]

まず第0近似としてハートリー-フォック近似を考える。ハートリー-フォック近似で得られた基底状態には量子揺らぎ効果は含まれてはいない。 そこで、量子揺らぎ効果を含んだ量子状態が一体演算子\hat{F}を用いて次のように与えられると仮定する。

|\Psi\rangle=e^{i\lambda\hat{F}}|\Phi_{HF}\rangle

そして、次にこのように与えられた状態を用いて計算されるハミルトニアンの期待値を\lambdaに関してテイラー展開すると 次のようになる。


\langle\Psi|H|\Psi\rangle
=
\langle\Phi_{HF}|H-i\lambda[\hat{F},H]+\frac{\lambda^2}{2}[\hat{F},[H,\hat{F}]]+...|\Phi_{HF}\rangle

[\hat{F},H]の期待値がゼロになるように求めるのがハートリー-フォック近似であるので右辺第2項はゼロとなる。 従って、


\langle\Psi|H|\Psi\rangle
=
\langle\Phi_{HF}|H|\Phi_{HF}\rangle+\frac{\lambda^2}{2}\langle\Phi_{HF}|[\hat{F},[H,\hat{F}]]|\Phi_{HF}\rangle+...

=
E_{HF}
+
\frac{\lambda^2}{2}
\sum_{minj}
\begin{pmatrix}f^*_{mi} & -f_{im}\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
A & B \\ B^* & A^*
\end{pmatrix}_{minj}
\begin{pmatrix}f_{nj} \\ -f^*_{jn}\end{pmatrix}
+...

と表されることがわかる。


A_{minj}=\langle\Phi_{HF}|[a_i^\dagger a_m,H,a_n^\dagger a_j]|\Phi_{HF}\rangle,
B_{minj}=-\langle\Phi_{HF}|[a_i^\dagger a_m,H,a_j^\dagger a_n]|\Phi_{HF}\rangle
と定義されている。

また、この定義で次のように定義される二重交換関係 
[X,Y,Z]=\frac{1}{2}[X,[Y,Z]]+\frac{1}{2}[[X,Y],Z]
を用いている。

乱雑位相近似に関してのもっとも簡便な説明は、これまでの計算で現れた行列 
\begin{pmatrix}
A & B \\ B^* & A^*
\end{pmatrix}
を対角化するための固有値方程式を考え、その固有値と固有ベクトルを求めること=乱雑位相近似、であるという言い方ができる。

固有値及び固有ベクトルを求める方程式はRPA方程式と呼ばれ


\begin{pmatrix}
A & B \\ B^* & A^*
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
X^\nu \\ Y^\nu
\end{pmatrix}
=
\hbar\omega_\nu
\begin{pmatrix}
1 & 0 \\ 0 & -1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
X^\nu \\ Y^\nu
\end{pmatrix}

の形で与えられる。

ここで 
\begin{pmatrix}
X^\nu \\ Y^\nu
\end{pmatrix}
は固有ベクトルであり、\hbar\omega_\nuは固有値であり励起状態を表す。

また、RPA方程式から得られる固有値が正の値をとる時、ハートレーフォック基底状態はエネルギーの極小値であることから 系のエネルギーは安定であることがわかる。しかし、固有値のなかに一つでも負の値のものが含まれる場合、 もはや安定ではなく異なる基底状態(真空)が存在する可能性、つまり相転移の可能性を示唆している。

固有ベクトルと固有値の存在は量子状態|\nu\rangleを状態 |mi\rangle=a^\dagger_m a_i|HF\rangleの線形結合によって、


|\nu\rangle (=O^\dagger_\nu |\Phi_{RPA}\rangle)
= \sum_{mi}(X_{mi}^\nu |mi\rangle-Y_{mi}^\nu |im\rangle)

と表せることを示している。

この時、量子状態|\nu\rangleはその異なるもの同士は直交する、すなわち\langle\nu|\nu'\rangle=\delta_{\nu\nu'}と仮定する。

更に|mi\rangle=a^\dagger_m a_i|HF\rangleの線形結合で定義される状態|\nu\rangle の最もエネルギーの低い状態(基底状態)|\Phi_{RPA}\rangleO_\nu |\Phi_{RPA}\rangle = 0 と定義する。

以上の条件のもとで上述のRPA固有値方程式は


\langle \Phi_{RPA} |[O_{\nu'},[H,O^\dagger_\nu]]|\Phi_{RPA} \rangle= \hbar\omega_\nu\delta_{\nu\nu'}

と等価である。

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