乙女座 (呉市)

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乙女座
情報
用途 資料館
旧用途 芝居小屋劇場)、映画館
設計者 不詳
構造形式 木造
竣工 1937年(昭和12年)
所在地 734-0302
広島県呉市豊町御手洗
座標 北緯34度10分47.1秒 東経132度52分2.8秒 / 北緯34.179750度 東経132.867444度 / 34.179750; 132.867444 (乙女座)座標: 北緯34度10分47.1秒 東経132度52分2.8秒 / 北緯34.179750度 東経132.867444度 / 34.179750; 132.867444 (乙女座)
文化財 指定なし
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乙女座(おとめざ)は、広島県呉市豊町御手洗にある建築物。1937年(昭和12年)に芝居小屋(劇場)として建築され、その後映画館として使用された。2002年(平成14年)に復元されて資料館の江戸みなとまち展示館(えどみなとまちてんじかん)となっている。御手洗のメインストリートである相生通りに南面している。

歴史[編集]

乙女座の経営者だった鞆田家住宅

戦前[編集]

1937年(昭和12年)時点の豊田郡御手洗町には劇場がなかったことから、鞆田稔町長が私財を投じて劇場の乙女座を建設した[1]、1937年(昭和12年)11月に開館した[2]

名称は鞆田の母親である鞆田トメに因んでいる。鞆田家は明治期に躍進した廻船問屋であり、鞆田稔の父親も御手洗町長を務めている。明治初期に蛭子町に建てられた鞆田家住宅(鞆田邸、鞆幸)はなまこ壁が目立つ建物である[3]。乙女座は映画の上映、芝居大道芸の興行、青年会の社交場などとして使用された[4]

戦後[編集]

1955年(昭和30年)の『全国映画館総覧 1955年版』には開館年が掲載されていないが、経営者は鞆田稔、定員は350の映画館だった[5]。1958年(昭和33年)の『映画便覧 1958』によると、経営者はやはり鞆田稔、定員もやはり350で邦画を上映する映画館だった[6]

1953年(昭和28年)頃から1965年(昭和40年)頃まで、大工の築山克己が映写技師助手をしていたという[7]。夏場は19時頃から2本立または3本立で上映し、上映終了時間が23時を過ぎることもあった[7]。1953年(昭和28年)公開の映画『君の名は』は観客が多かった[7]。1960年代初頭まで映画館として親しまれた[8]映画産業の斜陽化後には大長みかんの選果場に転用された[4]。青年団の演劇やダンスパーティ会場として使用されることもあったが[2]、長らく空き家となっていた[4]

復元[編集]

1994年(平成6年)7月4日には「呉市豊町御手洗」が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。地元住民の強い要望を受けて、2002年(平成14年)4月14日には復元工事が完了[1]。こけら落としとして住民による芝居・唄・踊りが披露され、劇場には200人近くが集まった[1]。その後は資料館として[2]一般公開されている。

2008年(平成20年)11月18日に開通する豊島大橋の記念イベントに合わせて、11月30日には御手洗演芸大会が開催され、御手洗節・寸劇・舞踊などが行われた[2]。この際には消防法上の利用用途を資料館から劇場に変更し、自動火災報知機や避難誘導灯を新設した[2]。『朝日新聞』は御手洗演芸大会を「約40年ぶりに興行が復活」と報じている[2]

2009年(平成21年)6月10日には太平洋戦争を主題とする映画『真夏のオリオン』の特別試写会が行われ、約半世紀ぶりに乙女座で映画が上映された[8]呉市立豊小学校呉市立豊中学校の児童生徒全員が映画を鑑賞し、出演した俳優の堂珍嘉邦吉田栄作がティーチインを行った[8]

2010年1月11日、豊町観光協会などが成人の日に合わせて「懐かしの無声映画上映会」が開催された[9]。『チャプリンの酔いどれ天国』、『キートンの警官騒動』、『血煙高田の馬場』の3作品が上映され、弁士兼映写技師の井上陽一が声を付けた[9]。戦後間もない時期まで乙女座では無声映画が上映されていた[9]

2014年(平成26年)には広島県土木局営繕課によって、乙女座が「ひろしま たてものがたり」のベストセレクション30(“訪れたい”と思わせる魅力ある建物)に選定された[10]。2019年(令和元年)12月8日には乙女座で重伝建選定25周年記念シンポジウムが開催された[11]。2020年(令和2年)11月14日・11月23日には「日本博 せとうち音回廊」の一環として、コトリンゴ奇妙礼太郎によるコンサートが行われた[12]

建築[編集]

舞台

外観は木造モルタル仕上げであるが、内部は伝統的な芝居小屋の様式を有している。花道奈落などの舞台装置や、2階の桟敷席も備えられている[2]

利用案内[編集]

  • 入館料 - 一般200円、高校生120円、小中学生80円
  • 休館日 - 火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
  • 開館時間 - 9時00分~17時00分
  • アクセス : JR呉線広駅からバスで「御手洗港」下車後徒歩1分

脚注[編集]

  1. ^ a b c あの乙女座がよみがえる!」『みたらい通志』2002年9月号、第10号
  2. ^ a b c d e f g 「40年ぶりに乙女座興行 呉・御手洗、30日に演芸大会」『朝日新聞』2008年11月5日
  3. ^ 鞆田邸 ひろしま観光ナビ
  4. ^ a b c 乙女座 呉市
  5. ^ 『全国映画館総覧 1955年版』時事通信社、1955年
  6. ^ 『映画年鑑 1958年版 別冊 映画便覧 1958』時事通信社、1958年
  7. ^ a b c 泣いて、笑って 夢のあとさき。昭和、乙女座、懐古録。」『みたらい通志』2002年9月号、第10号
  8. ^ a b c 「『真夏のオリオン』きょう試写会 呉・御手洗の乙女座、半世紀ぶり映画上映」『朝日新聞』2009年6月10日
  9. ^ a b c 「懐かしのチャプリン・キートン・阪妻 無声映画を復活 11日、呉の乙女座」『朝日新聞』2010年1月8日
  10. ^ 「魅力ある建築」ベストセレクション30(審査部門) ひろしま たてものがたり
  11. ^ 重要伝統的建造物郡保存地区選定25周年記念シンポジウム 呉市、2019年12月10日
  12. ^ 広島・呉で日本博「せとうち音回廊」 大崎下島の御手洗で開催へ 広島経済新聞、2020年11月11日

参考文献[編集]

  • 『呉の魅力・お宝90選』呉市、2013年

外部リンク[編集]