丸尾末広

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まるお すえひろ
丸尾 末広
生誕 (1956-01-28) 1956年1月28日(68歳)
日本長崎県
職業 漫画家
活動期間 1980年 -
代表作少女椿[1]
受賞 第13回手塚治虫文化賞新生賞(『パノラマ島綺譚』)
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丸尾 末広(まるお すえひろ、1956年1月28日[1] - )は、日本漫画家イラストレーター。男性。長崎県出身[1]。別表記は丸尾 末廣[2]。代表作に『少女椿』など[1]

来歴[編集]

長崎県諫早市に7人きょうだいの末っ子として生まれる。実父は不明で4歳の時に母が継父と再婚したが「自分が生まれてから父親が死ぬまでに全部あわせても5分くらいしか喋ったことがない」と丸尾は述べている[3]。その後、小学六年生までの間に親戚の養子になったり生活保護を受ける継父の家に出戻ったりと複雑な少年時代を送った。

中学卒業後、家族や学校に対する執着心のなさから高校に進学せず、16歳の時に上京して板橋区凸版製本に就職するも無断欠勤のため2年で退社[3]。以後、スリの見張り役やパチンコ店などを始め30もの職業を体験[3]。絵は完全に独学だという。17歳の時に『週刊少年ジャンプ』に作品を持ち込みするも、作画が週刊誌のスタイルに合わないとの編集者の指針により不採用となる[3]

1980年官能劇画誌『エロス'81 劇画悦楽号2月号増刊』(サン出版)にて『リボンの騎士』でデビュー[1]。1982年、青林堂から初の単行本『薔薇色ノ怪物』を刊行。以降、小説の挿絵などを描く傍ら官能劇画誌『漫画エロス』や『ガロ』を中心に作品を発表する。

一時期活動を中断していたが、2007年、『コミックビーム』2007年7月号より江戸川乱歩の『パノラマ島綺譚』完全漫画化作品の連載を開始。2008年に単行本化され、2009年に同作品で手塚治虫文化賞新生賞を受賞した[1]

2014年5月より、webマガジンぽこぽこにて肖像画を依頼できるサービスへ参加している[4]

2020年10月より京都のGallery SUGATAにて、画業40周年を記念した原画展「NEXT ONE」を開催[2]

エピソード[編集]

  • 劇団「東京グランギニョル」の宣伝美術を担当し、役者としても活動していた。また、湯澤幸一郎作・演出のオリジナル舞台「マグダラなマリア」の舞台美術を第一作目の2008年から現在までシリーズを通して担当している。
  • 23歳の時(1979年)にも某アングラ劇団に参加していたが「メンバーのほとんどが学生で親からの仕送りで生活しながら国家を告発するかの如き大げさな芝居をやり、メジャー文化を似非文化と馬鹿にして得意がっているのを見てあきれる。20歳を過ぎて親から金をもらって生活している人間がこの世に存在することが信じられなかった」と述べている[5]
  • 代表作『少女椿』は1990年代初頭にアニメ化されている。この作品は神社の境内で上映され、スモークや紙吹雪などの独特の演出がなされた。なお、この作品のメディア化は日本国内では基本的に行われていない(VHSビデオは少数が配布されたことがある)が、フランスでは『MIDORI』というタイトルで正式にDVDになっている。また、『少女椿』の主人公「みどりちゃん」は、筋肉少女帯の「何処へでも行ける切手」という曲を経て『新世紀エヴァンゲリオン』のヒロイン綾波レイのキャラクターデザインに影響を与えた(詳細は綾波レイを参照)。
  • 日本国外でも、アメリカイタリアフランスドイツスペインでも単行本、またはアンソロジー本の一部として作品が出版され、エログロにカテゴライズされている。また、アメリカのアヴァンギャルドジャズグループ、ネイキッド・シティアルバムジャケットにもイラストが収録されている。

作品リスト[編集]

漫画[編集]

イラスト集[編集]

  • 江戸昭和競作無惨絵英名二十八衆句月岡芳年・丸尾末広・花輪和一共作
  • 丸尾画報I
    • 1996年 - トレヴィル
  • 丸尾画報II
    • 1996年 - トレヴィル
  • 新世紀SM画報
    • 2000年 - 朝日ソノラマ
  • 丸尾画報EX I
    • 2005年 - 河出書房新社
  • 丸尾画報EX II
    • 2005年 - 河出書房新社
  • 乱歩パノラマ 丸尾末広画集
    • 2010年 - エンターブレイン
  • 新世紀SM画報 新装版
    • 2012年 - 河出書房新社
  • 無惨絵 新英名二十八衆句 (*ポスター・ブック仕様での復刻)
    • 2012年 - エンターブレイン
  • 丸尾画報DX I
    • 2013年 - 河出書房新社
  • 丸尾画報DX II
    • 2013年 - 河出書房新社
  • 丸尾画報DX I改
    • 2018年 - エディシオン・トレヴィル/河出書房新社
  • 丸尾画報DX II改
    • 2018年 - エディシオン・トレヴィル/河出書房新社
  • 丸尾画報DX III
    • 2018年 - エディシオン・トレヴィル/河出書房新社

装画[編集]

  • 山田詠美 - 『賢者の愛』(2015年1月9日発売)
  • 後藤護- 『悪魔のいる漫画史』 (2023年12月21日発売)

CDジャケット[編集]

『個性派ブレンド~純情・情熱編~』(2002年11月17日発売)
『個性派ブレンド クラシック〜OLDIES TRACKS〜』(2005年6月1日発売)
  • R指定 - 『日本沈没』(2012年2月1日発売)
  • 怪人二十面奏 - 『怪人二十面奏』(2017年6月21日発売)
          『聲命力』(2019年6月26日発売)

レコードジャケット[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • ティム・リーマン『マンガマスター 12人の日本のマンガ職人たち』美術出版社、2005年
  • 細川涼一「丸尾末広『少女椿』源流考」『言語文化論叢3』京都橘大学文学部野村研究室編、2009年、p.62-73

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f “丸尾末広”. コミックナタリー (ナターシャ). https://natalie.mu/comic/artist/1850 2021年10月17日閲覧。 
  2. ^ a b “画業40周年を祝う「丸尾末廣大原画展」、サイン会も実施”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年10月17日). https://natalie.mu/comic/news/449373 2021年10月17日閲覧。 
  3. ^ a b c d 青林堂『月刊漫画ガロ』1993年5月号(339号)丸尾末広インタビュー「麗しきパクリ人生」
  4. ^ コミックナタリー - 丸尾末広も参戦!マンガ家が肖像画を描いてくれるサービス
  5. ^ 東京おとなクラブ・別冊『丸尾末広 ONLY・YOU』1985年
  6. ^ “丸尾末広の新連載は“地下潜行的マンガ道”、ビーム26周年号で「アン・グラ」開幕”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年11月12日). https://natalie.mu/comic/news/453322 2021年11月12日閲覧。 
  7. ^ “家事代行アンドロイドが奥様に押し倒され…辻恵の読み切りがビームに2号連続掲載”. コミックナタリー (ナターシャ). (2022年2月12日). https://natalie.mu/comic/news/465422 2022年2月12日閲覧。 
  8. ^ 月刊コミックビーム 2022年11月号”. 月刊コミックビーム. KADOKAWA. 2022年10月12日閲覧。
  9. ^ “ビーム新連載は逃避行劇「偶像エスケープ」、5年ぶり登場・久野遥子の読み切りも”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年3月10日). https://natalie.mu/comic/news/516049 2023年3月10日閲覧。 

外部リンク[編集]