中原徹

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中原徹(なかはらとおる、1970年4月26日 - 、神奈川県横浜市出身)は、カリフォルニア州、ニューヨーク州、日本国弁護士大阪府立和泉高等学校長(民間人校長)、大阪府教育委員会教育長を歴任した。橋下徹の大学時代の友人。

経歴[編集]

弁護士時代[編集]

早稲田大学法学部卒業後、24歳で日本の司法試験に合格し、東京永和法律事務所に入所。2年後に東京永和法律事務所を退所し、米国ミシガン大学ロースクールに入学。 ミシガン大学卒業後、ニューヨーク州およびカリフォルニア州の弁護士資格を取りつつ、2009年まで、米国大手法律事務所(ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン法律事務所)にて勤務する。ハリウッドにおける映画やスポーツ関連の仕事などを専門とした。民間人校長になるために日本に帰国した際には同法律事務所の共同経営者(パートナー)を務めていた[1]

在米中には、ロサンゼルスの日本人補習校「あさひ学園」の理事長もボランティアで務めていた。「国際社会で活躍できる人材を育てることで、自分を育ててくれた日本に恩返しがしたい」と民間人校長に応募することを決意した[2]

和泉高等学校長[編集]

就任の経緯[編集]

2010年4月1日より、大阪府立和泉高等学校長に就任。2009年12月に中原の校長就任予定が大阪府教育委員会から公表され、全国最年少校長(当時)の誕生と報道された[3]

民間人校長選考の過程で、中原が橋下徹大阪府知事(当時)の早稲田大学時代の同級生であり、応募前に知事の特別秘書が大阪府教育委員会に「知事の友人が受験するかもしれない」と伝えていたことが報道された[4]。 中原は、朝日新聞の取材に応じ、「今すぐ辞めると言うつもりはないが、問題ないかきちんと検証してほしい。おかしいとなったら、私の採用は取り消すべきだ」と語った[5]

国歌斉唱時のチェック(和泉高等学校長時代)[編集]

2012年3月の卒業式で、公立学校教職員が国歌斉唱の際に起立斉唱しているかを確認する「口元チェック」を行った。大阪府教育委員会からは国歌斉唱時に起立斉唱を求める職務命令が出ていた[6]

橋下徹市長は「素晴らしいマネジメント」だとして中原を評価した[7]

大阪府教育長[編集]

2013年4月1日、大阪府教育長に就任。全国の都道府県の教育長としては最年少の教育長となる[8]

松井知事との訪米[編集]

2013年6月10日、松井一郎知事と中原は、米国視察のため、サンフランシスコに出発した。橋下徹大阪市長の従軍慰安婦に関する発言への現地での批判に対し、松井知事は「誤解を解きたい」とカリフォルニア州のブラウン知事との会談において、微妙な言い回しに配慮する必要が生じれば米国での弁護士経験のある中原に協力を求める考えだった[9][10] 。実際の訪問では話題に上らず、松井知事は「カリフォルニア州とは来年、友好交流提携して20年。もっと絆を太くしていきたい」と語り、中原もカリフォルニア州との交換留学の拡大をブラウン知事らと話した[11]

国歌斉唱時のチェック(教育長時代)[編集]

2013年9月4日付の通知で、国歌斉唱時に口の動きをチェックする規定を設けた[12]。この規定は2014年3月に削除された[13]

校内人事問題[編集]

大阪府立高校138校のうち約6割で校内人事の原案を教員が作成する「校内委員会」を設置し、一部の役職の決定に向け選挙を行っていた問題で、2014年4月、中原は「校内人事などの内規を合法性、適切性の観点から全府立校長に確認してもらう。時代遅れのものは変えないといけない」と述べ、実態調査をする意向を示した[14]。下村文部科学大臣も、校内人事が教員間の選挙で決められている実態を問題視し「法を無視した運営だ」として全国実態調査に乗り出すことを決定した[15]

大阪府教委は、校内人事を決める選挙を行わないよう各校に通知。中原は「人事は組織をつくる上での根幹。身内で選挙行為があるのはおかしい」と改善の理由を述べた[16]

校内人事問題をめぐり、松井一郎大阪府知事は、府教委の陰山英男教育委員長と小河勝教育委員について「橋下知事時代に両氏は(校内人事については)『何ら問題なし』と言ってきたが、実際は大問題だった」と不快感をあらわにし「おかしなったら、教育を受けた子供たちに『悪かった』と謝らなければならない」「責任を取るのは当然だ」と述べた[17]

教育長辞職の経緯[編集]

2015年3月11日、部下へのパワー・ハラスメント問題で辞職表明

2015年3月12日、任命者である松井一郎大阪府知事が辞職を承認、正式に退職

教育委員と職員へのパワハラ[編集]

中原による教育委員へのパワーハラスメントがあったとして、大阪府教育委員会は弁護士による第三者委員会を設けた。府教委は2015年2月20日、第三者委員会の報告書を公表した[18][19]。中原は、立川さおり教育委員と教育委員会事務局の職員4人(うち1名は既に退職)に対し、パワハラに当たる発言を行ったと認定された[20]。中原は立川に対し「誰のおかげで教育委員でいられるのか。罷免要求出します」と発言[21]、職員に対しては「精神構造の鑑定を受けないといけない」「邪魔になっているので仕事を外れて」などと発言した。これにより退職せざるを得なくなった職員も出た[22]。中原は取材に対し「職員らへの発言は曲解され、納得できない部分もある」と述べる[23]一方、「議論が泥沼化するのは好ましくない」として事実関係は争わない意向を示し[24]、「教育改革を続けたい」と続投に意欲をみせた。

続投への批判と辞職[編集]

3月9日、大阪府議会の野党会派は、「セクハラ教職員の懲戒処分なら停職」「パワハラが複数行われている」として、中原への辞職勧告決議案を共同提出した[25]。3月10日、大阪府内41市町村の教育委員会(大阪市と堺市以外の全て)から、毅然とした対応を求める要望書が府教委に提出された[26]。3月11日、中原は府教委に辞職の意向を伝え、同日夕方に了承された[27]。3月12日、任命権者の松井一郎大阪府知事が同意し、中原は同日正式に辞職した。松井知事は「教育改革が実現するはずだった」として自身の任命責任を否定[28]。橋下徹大阪市長は「中原氏の言い分を一切採用しておらず(調査は)でたらめだ」として、「辞める必要はない」と述べた[29]

辞職会見[編集]

3月11日の辞職会見で、中原は第三者委員会の報告書について「それぞれの案件でお互いに証人になっている。かつ1人、ほぼすべての案件で証人になっている人がいる」「通常は証人尋問、反対尋問の中で(問いただす)機会があるが、今回の第三者委員会では、そういう機会がなかった。私としては真実が反映されていない」[30]として証言の信憑性を疑問視しつつも、「現場に迷惑をかけている」と考え辞職に至ったと述べた。大阪府民に対しては「教育改革が道半ばで終わり申し訳ない」と謝罪した[31]

セガサミーホールディングス役員に[編集]

2015年5月1日パチンコ台メーカー、サミーの持株会社、セガサミーホールディングスの役員に就任した[32]

教育に対する姿勢[編集]

英語教育改革[編集]

校長として[編集]

「東大を卒業した人間でも、留学経験がなければ英語で道を尋ねられても困ってしまう。そんな英語教育では意味がない」と英語教育改革に力を入れている[33]

校長就任後、「コミュニケーション英語講座」という授業を受け持ち、平日の1限目の前や土曜日など通常授業の時間外に英語を教えた[34]

また、「使えない英語教育はもうやめにして、若者を海外に出すべきだ」と2011年から既存の英語クラスを変えて、TOEFL対策授業「英語超人」クラスを新設した。2012年、TOEFLの指導方法などで情報交換する「アライアンス」を新潟、神奈川県、大阪府の公立高校らで行った[35]

高校1年生の現代社会の授業でも教壇に立ち、法律の授業を行った[36]

教育長として[編集]

「今、日本人が思っている最低限の英語力は、世界から見ると低すぎる」との持論[37]を持つ中原は、教育長就任後も、英語教育に力を入れた。大阪府において、小学校1年生からフォニックスという文字と音声を連動させた英語指導法を大阪府全域の小学校に広めようと、パイロット校でフォニックス指導を実施した[38][39]

高校入試において、平成29年度入試から、最も難易度の高い英語のテストを「読む」「聞く」「書く」の3技能をほぼ均等に求める大胆な入試改革を行うことが決定され、中原は「入試が変わらなければ学校が変わらない。入試は生徒に一番分かりやすいメッセージだ」と述べた[40]。これらの英語入試改革に対し、京都大学松本総長や楽天三木谷社長らの有識者が激励メッセージを送った[41]。また「読む・書く・聞く・話す」という英語の4技能をはかる検定試験である、TOEFL、英検、IELTSのスコアを独自の基準で換算し、入試の英語の得点と比べて高い方を採用することを決めた[42][43]

大阪府立高校のトップ17校に対し、極めて英語力の高い人材を集め、Super English Teacherと名付け、年収約800万円を支払って各校に配置し、TOEFL iBT指導を授業に導入した[44][45][46]。Super English Teacher制度の導入にあたり、英国ケンブリッジ大学のマイケル・ロブソン名誉教授が「英語教育の確固たる基礎を築く取組になる」とのメッセージを送った[47]。中原は「海外大学と日本の難関大学の双方に進学できるチケットを生徒に与えたい」(“As educators, we have to give our students two tickets: one to get them to international universities outside of Japan and the other for domestic universities. I want to give them a choice. And to become prospective leaders, we have to educate them so that they can clear a base TOEFL score of 80, or 100 for top-notch universities”)と語った[48]。 日本の英語教育につき「公平性とか平等性とかいろいろ言われるが、誰かが国際競争で戦わないといけない。国際的なリーダーになるためには最低限の英語力がいる。そういうリーダーを育てないと、日本は終わる」[49]と取材に対して答えた。

エンパワメント・スクール[編集]

箕面東高校、西成高校、長吉高校の3校を「エンパワメント・スクール」と名付けた。同校では、高1で中学までの内容を習熟度別で復習し、高2から高校の履修科目を始め、学習を習慣づけるために国数英の授業を毎朝各30分間行う。また、独自教材を使う「エンパワメントタイム」では、正解が一つではない課題に取り組み、社会人に必要な基礎力を養う。中原は「『勉強が分からない』と自分を諦めたくない生徒にぜひ来てもらいたい。大逆転を可能にしてくれると思われる学校をつくりたい」と語った[50]

日中交流[編集]

2015年2月4日、日中の子どもたちの交流を深めるため、大阪府教育委員会は中国駐大阪総領事館と協定を結んだ。中原が総領事館へあいさつに行った際に、連携強化で合意した。協定では、府立高校などが中国の交流校を探す場合に両者が橋渡し役を担うほか、日本の大学で学ぶ中国人留学生が府内の小中高校などと交流できるよう、後押しすることも盛り込まれた。中原は、「友好的な日中関係を築くには、若い世代の交流が特に重要。誤解や偏見なく交流できる機会を増やしたい」と語った[51][52]

平和・国防教育[編集]

「平和と国防を考える」という特別授業を実施。 被爆者の証言ビデオを見て「平和」を考察する授業と、自衛隊の訓練を見学して「国防」を考える授業から成る二部構成の特別授業。中原自身も弁護士として日本国憲法第9条の諸説を解説するなど、「相反するとも表裏一体ともされる二つの事柄について『一つの正解』に誘導せず、情報という選択肢を増やし、生徒に考えてもらう」との狙いで中原は企画を実施した[53]

「信条や思想をおもんぱかるあまり、日本の教育は、生徒たちへの情報提供を避けていたように思う。すぐに答えが出なくてもいいんです。高校生ならば自ら考え、あふれんばかりの情報から取捨選択する力を身につけて欲しい」と中原は取材に対して答えた。

教育委員会改革[編集]

「教育再生・東京円卓会議」(2012年4月11日)に石原慎太郎都知事や猪瀬直樹副知事(いずれも当時)らとともに出席。教育委員会制度の見直しを主張した[54]

エピソード[編集]

大阪府知事選[編集]

2011年11月27日に行われた大阪府知事選挙の知事候補者として中原が浮上したと産経新聞が報道する。中原は、時事通信発行の情報誌で、維新の教育基本条例案などについて「教職員だけが教育目標を定めていては方向を見誤る。選挙を通じた民意の反映が不可欠」と支持するコラムを執筆したと報道される。 この報道に対し、中原も橋下徹大阪府知事(当時)も出馬を否定した[55]

脚注[編集]

  1. ^ 『朝日新聞』2010年1月14日、『日経ビジネス』2010年9月27日、『毎日新聞/ストーリー』2012年4月15日
  2. ^ 『朝日新聞』2010年1月14日、『日経ビジネス』2010年9月27日
  3. ^ 『産経新聞』2009年12月16日
  4. ^ 『産経新聞』2009年12月16日
  5. ^ 『朝日新聞』2009年12月17日
  6. ^ 大阪府教育委員会による 「君が代」 斉唱時に起立しなかった教員に対する. 懲戒処分の撤回を求める声明
  7. ^ 『読売新聞』2012年3月13日、『朝日新聞』2012年3月13日、『毎日新聞』2012年3月13日
  8. ^ 『読売新聞』2013年3月28日
  9. ^ 松井知事 米国視察の“裏ミッション”にも意欲「慰安婦発言の誤解解く」 産経新聞 2013年6月7日
  10. ^ 釈明封印、トラブルなし…松井知事、米視察終了 読売新聞 2013年6月16日
  11. ^ 「カリフォルニア州との絆太く」州知事と会談 産経新聞 2013年6月13日
  12. ^ 君が代斉唱、口元監視を正式通知 大阪府教育委員会 47NEWS 2013年9月19日
  13. ^ 君が代の「口元監視」を削除へ 大阪府教委が新通知 47NEWS 2014年3月25日
  14. ^ 「全校長に確認してもらう」中原教育長、実態調査指示 産経新聞 2014年4月18日
  15. ^ 教員の選挙で校内人事決める!?下村文科相「法を無視した運営だ」全国実態調査へ 産経新聞 2014年6月27日
  16. ^ 「民間ならありえない」選挙で決める校内役職人事 中原徹府教育長インタビュー 産経新聞 2014年4月28日
  17. ^ 松井知事もバッサリ「陰山氏が責任取るのは当然!」校内人事問題で教育委員長を非難 産経新聞 2015年1月31日
  18. ^ 調査報告書(PDFファイル)
  19. ^ 急施議題 第三者による調査の取扱いについて 大阪府 平成27年2月委員会会議概要・議題資料
  20. ^ 大阪府・中原教育長 女性委員だけでなく職員にもパワハラ発言 MBSニュース 2015年2月20日
  21. ^ 大阪府:「大勢の前で叱責」教育長のパワハラ認定 毎日新聞 2015年2月20日
  22. ^ 府教委職員に「精神鑑定を受けないといけない」 パワハラ認定の教育長 第三者委が違法性指摘 産経WEST 2015年2月20日
  23. ^ 中原教育長パワハラ認定…大阪府教委の第三者委 読売新聞 2015年2月20日
  24. ^ パワハラ認定の大阪府教育長、続投に意欲 議会は責任追及へ 産経新聞 2015年2月20日
  25. ^ 府議会委員会 “被害者”の女性教育委員、いたたまれず途中退室 産経新聞 2015年3月9日
  26. ^ 教育長パワハラ問題で、41市長村教委が府教委に「毅然とした対応を」 産経新聞 2015年3月11日
  27. ^ パワハラ発言認定された大阪府教育長が辞職意向 読売新聞 2015年3月11日
  28. ^ 大阪府:パワハラ認定の教育長、正式に辞職 毎日新聞 2015年3月12日
  29. ^ 【パワハラ教育長辞職】「辞める必要ない」「調査デタラメ」橋下市長、旧友を全力擁護 産経新聞 2015年3月11日
  30. ^ 【パワハラ教育長辞職会見詳報(2)】「辞職を決断したのは今日」 産経新聞 2015年3月11日
  31. ^ 「報告書は真実でないところがある」 第三者委報告書に異議 道半ばの教育改革には言葉詰まらせ… 産経新聞 2015年3月11日
  32. ^ セガサミーホールディングス人事異動
  33. ^ 『日経ビジネス』2010年9月27日
  34. ^ 『日経ビジネス』2010年9月27日、『朝日新聞』2011年11月16日
  35. ^ 『読売新聞』2012年8月19日
  36. ^ 『読売新聞』2010年10月14日
  37. ^ 入試英語「スピーキング」導入は大学“パンドラの箱”…国際リーダー育成しなければ「日本は終わる」 産経新聞 2013年10月22日
  38. ^ 大阪府教委でも小1から英語強化方針「フォニックス」導入 都道府県では全国初 産経新聞 2013年11月20日
  39. ^ Osaka embraces English Reformation Japan Times 2014年3月30日
  40. ^ 大阪府教委「難易度別入試」導入へ 国数英を3段階で 産経新聞 2014年9月26日
  41. ^ 大阪府「読む・聞く・書く・話す」を重視…英語学力検査問題改革 リセマム 2014年9月29日
  42. ^ 朝日新聞 2013年9月21日
  43. ^ 日経新聞 2013年9月21日
  44. ^ Osaka embraces English Reformation Japan Times 2014年3月30日
  45. ^ Osaka bets big on TOEFL to boost English levels Japan Times 2014年7月27日
  46. ^ 大阪府教委でも小1から英語強化方針「フォニックス」導入 都道府県では全国初 産経新聞 2013年11月20日
  47. ^ 「英語教育に風穴あけたい人」 府教委が人材募集 大阪日日新聞 2013年11月12日
  48. ^ Osaka embraces English Reformation Japan Times 2014年3月30日
  49. ^ 入試英語「スピーキング」導入は大学“パンドラの箱”…国際リーダー育成しなければ「日本は終わる」 産経新聞 2013年10月22日
  50. ^ 「大逆転が可能な学校に」エンパワメントスクール概要判明 大阪府教委 産経新聞 2014年7月24日
  51. ^ 交流促進協定を締結 日中両国の児童、生徒 大阪日日新聞 2015年2月5日
  52. ^ 協定:日中の子らの交流、後押し 府教委と総領事館が調印 毎日新聞 2015年2月5日
  53. ^ 『毎日新聞/新教育の森』2011年1月22日
  54. ^ 『毎日新聞』2012年4月12日朝刊
  55. ^ 産経新聞2011年9月14日

外部リンク[編集]