三田証券

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三田証券株式会社
Mita Securities Co., Ltd.
本社
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
103-0026
東京都中央区日本橋兜町3番11号
設立 1949年[1]
業種 証券、商品先物取引業
法人番号 6010001058171 ウィキデータを編集
金融機関コード 0646
事業内容 証券業
代表者 門倉 健仁(代表取締役社長)
資本金 5億円
従業員数 83名(2023年3月現在)
外部リンク https://mitasec.com/
特記事項:
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第175号
貸金業者 東京都知事(5)第27088号
宅地建物取引業 国土交通大臣(1)第9342号
不動産特定共同事業 金融庁長官・国土交通大臣第76号
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三田証券株式会社(みたしょうけん : Mita Securities Co., Ltd.)は、東京都中央区に本社を置く証券会社である。独自路線を歩むブティック型証券で、投資銀行業務に強みを持つ。TOB代理人業務[2][3]においては、大手証券が敬遠する敵対的買収[4]の代理人実績を保持する。同業務では、マネックス証券株式会社[5]と提携している。ウェルス・マネジメント業務では、ヘッジファンドやPEファンドを個人向けにも販売している。不動産業務も行い、日本の証券会社で唯一不動産特定共同事業者許可を受け、京都の町屋再生事業を行っている。[6][7]

企業理念[編集]

「証券業の持つ無限の可能性を追求し新たな付加価値を創造し続ける」をミッションとしている。[8]

エクイティファイナンスにおける最後の駆込み寺[編集]

三田証券は、もともと所謂地場証券の一つであったが、創業家の3代目に当たる三田邦博が社長となった1998年以降、融資関連や投資銀行、ファイナンスなどの業務を中心に事業を展開するようになった[9]。そのような中で、特に資金繰りが悪化しているなどで経営状況が良くない上場企業に対する営業手法の一つとして、MSCBMSワラントなどを割当先に特に有利な条件で公募し、三田証券が割当先となる第三者割当増資を実施する事で、発行体企業の運転資金を確保できるようにしつつ、三田証券側も利益を得るという手法が取られた[10][11][12]。その中で、かつて橋梁分野の土木建築で名門と呼ばれたサクラダ(2012年11月27日に自己破産申請)に対して、投資顧問業者であるスピードパートナーズ経由で、第三者割当増資方式の新株予約権証券を募集するよう助言し、2012年1月27日付で新株予約権の行使価格10円という大幅なディスカウント率[注 1]を以てして引き受けるという事を行った[10]。三田証券はサクラダの発行済株式数の36.61%を保有する筆頭株主となった[10]。しかし、同年8月には、その保有する株式すべてを売り抜けた[10]。それからおよそ3ヶ月後に発行体であるサクラダが自己破産に至ったという経緯から、「最後の駆け込み寺」と呼ばれるようになったという[10]

アンジェスMG社のMSワラント引受け[編集]

創薬ベンチャー企業である、アンジェスMGは2015年12月期の営業損益が41億円の最終赤字となっていた[10]。前年同期にも22億円の最終赤字を出しており、また2016年12月期には64億円程度の最終赤字を見込んでいて、継続企業としての前提条件が揺らいでいる[10]。一方で、2015年12月期末のアンジェスMGの現預金は20億円程度で何もしなければ資金ショートを引き起こす危険をはらんでいた[10]。さらには、それまで、夢真ホールディングスや投資ファンドへの第三者割当増資、更には既存株主に払込みを受けるライツイシューなどの形で資金を捻出するということを続けていた[10]。そのような中で2016年3月25日、アンジェスMGはリーディング証券が紹介した三田証券が第三者割当の割当先となりその全額を買い受ける形で、MSワラント[注 2]を活用した約28億円の資金調達を行うことが発表した[10][13]。これについて、三田証券以外には買い受ける者が見当たらなかったのではないかという観測が、一部報道でなされていた[10]

結果的に、上記の第三者割当増資で買い受けた新株予約権は2016年4月18日までに、すべてが行使転換され売却された[15]。しかし、アンジェスMGの資金繰りは、依然として良い状態ではないこともあり、同年8月22日運転資金臨床実験費用に充当する目的で、約23億5979万円の調達をMSCBを発行し、再度三田証券が第三者割当の割当先となる形で実施している[16][17]

敵対的TOBの買付代理人業務[編集]

2016年頃以降、当時、日本の証券界では協力がタブー視されていた敵対的TOB買付代理人業務に注力するようになった[2][3]。これは、企業やファンドによる経営者や投資家が企業価値の最大化へ敵対的な手段も辞さないようになったことを受けて開始したものであり、敵対的TOBに関する日本の市場慣行に穴を開けた[2][3]。本業務は2012年に行われたPGMホールディングスによるアコーディア・ゴルフへの敵対的TOBで、三田証券はPGMホールディングスの代理人業務を務めたことがそのきっかけである[2][3]。当該TOBは失敗に終わったものの、日本経済新聞によると「投資銀行業界に『三田』の名前はとどろいた」という[2]。その後、2016年頃より、本業務への取組みを本格化させると、富士通ソレキアをTOBで子会社化しようとした際、対抗TOBを行った佐々木ベジに証券口座を提供し、この対抗TOBを成功に導いた[2]。M&Aオンラインの調査では、2016年から2021年6月までの5年半の間でなされた敵対的TOB全15件の内9件は当社が関わったものであったという[3]。これについて、3代目社長の三田邦博は「対抗TOBなどが出るのは日本市場にとってよいことだ」と考えており、三田証券としては、対象企業の賛同を得られない敵対的TOBだったとしても、コーポレート・ガバナンスの強化等、既存株主のメリットになる案件であれば、業務受託することを基本に取組みを加速させるとしており[2][3]、その一環としてマネックス証券との間で、同社の個人顧客によるTOBへの応募を簡略化するための業務提携を行った[18]

脚注[編集]

脚註[編集]

  1. ^ サクラダの前日終値は36円であった。[10]
  2. ^ 発行新株総数:200万株 発行価格:235円 当初行使価格:435円(但し転換条項があるため、行使価格は236円以上の値に修正されうる。)[13][14]

出典[編集]

  1. ^ 「余分なものも買う 顧客は前向き」三田証券・三田社長  日本経済新聞 2013年9月7日掲載
  2. ^ a b c d e f g 敵対的TOB、証券会社も動く 三田証券が台頭、大和参入 代理人業務 タブー薄れる日経電子版 2020年1月20日配信)2021年8月28日確認
  3. ^ a b c d e f 証券会社、争奪戦のTOB「代理人」 最新ランキングは?M&Aオンライン 2021年6月28日配信)2021年7月10日確認
  4. ^ FINANCIAL TIMES
  5. ^ マネックス証券株式会社
  6. ^ 幻冬舎 GOLD ONLINE
  7. ^ 三田証券-Mita Platinum Club-
  8. ^ 三田証券株式会社
  9. ^ 老舗中小証券会社の苦境、相次ぐ廃業・撤退 東証の合併上場を契機に加速も 東洋経済オンライン 2012年5月5日配信 2016年8月21日閲覧
  10. ^ a b c d e f g h i j k l あの有名ベンチャー企業、資金ショート危機を一旦脱出…「継続企業の前提に重要な疑義」ウェブアーカイブ版) ビジネスジャーナル 2016年3月31日配信 2016年9月1日閲覧
  11. ^ 第三者割当により発行される新株予約権の募集に関するお知らせ (サクラダ開示資料 (みんかぶ掲載分)2012年1月27日開示 2016年9月3日閲覧)
  12. ^ サクラダ、2期連続最終赤字  日本経済新聞2012年11月19日付 2016年8月21日閲覧
  13. ^ a b E05301:アンジェス MG株式会社 S100788F:有価証券届出書(参照方式) EDINET 2016年3月25日開示 2016年9月3日閲覧[リンク切れ]
  14. ^ <マザーズ>アンジェスが大幅続落 新株予約権の大量行使で  日経電子版 2016年4月13日13:44配信 同日閲覧
  15. ^ 第 27 回新株予約権(第三者割当て)(行使価額修正条項付)の大量行使、行使完了および月間行使状況に関するお知らせ アーカイブ日経電子版掲載の適時開示情報 2016年4月18日掲載)
  16. ^ E05301:アンジェス MG株式会社 S1008CXD:有価証券届出書(参照方式) (EDINET 2016年8月5日開示 2016年9月3日閲覧)[リンク切れ]
  17. ^ 第 28 回新株予約権(第三者割当て)(行使価額修正条項付)の発行に係る 払込完了に関するお知らせ アーカイブ (日経電子版掲載の適時開示情報 2016年8月22日 2016年9月3日閲覧)
  18. ^ 三田証券と提携し、公開買付代理業務を開始 ~マネックス証券から公開買い付けの応募が可能に~マネックス証券 2020年8月12日公表)公表日に閲覧

外部リンク[編集]