ワールド映画

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ワールド映画株式会社
World Film Company, Ltd.
種類 株式会社
市場情報 不明
略称 ワールド、WFC
本社所在地 日本の旗 日本
104
東京都中央区銀座8-10-8 銀座8丁目10番ビル6階
本店所在地 530
大阪府大阪市北区堂島船大工町15 堂栄ビル内 (関西支社)
設立 1960年代
業種 商社
事業内容 映画の輸入・製作・配給事業
代表者 大野豊 (1977年)
資本金 300万円 (1977年)
主要子会社 ワールドテレビジョン (WTV)
関係する人物 島田八洲直
代々木忠
真湖道代
山下治
小川欽也
奥脇敏夫
佐々木元
梅沢薫
小金井次郎
影山明文
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ワールド映画株式会社(ワールドえいが)は、日本の映画会社である[1][2][3][4][5][6][7]。2012年(平成24年)7月現在の活動は不明であるため、本項では、同社がもっとも活発に活動していた形跡がある1966年(昭和41年) - 1986年(昭和61年)の時期について詳述する[1][2][3][4][5][6][7]

略歴・概要[編集]

1965年(昭和40年)9月14日、レフ・サーコフ監督のソビエト映画『壮烈501戦車隊ロシア語版』を配給して公開したのが、ワールド映画の記録に残る最初の事業である[5]。翌1966年(昭和41年)2月には、山下治を監督に、成人映画初めての感触』を製作・配給している記録がある[6]。製作については、同作ならびに同年3月に公開された遠藤由希夫監督の『人妻がもえるとき』は「センチュリー」という製作会社が製作した、とする資料も存在する[8][9]。同年から1969年にかけて、ナオプロダクション菜穂俊一がプロデューサーとして関与している作品については、実製作は同プロダクションが行なっていた[10]。この時期にのちの映画監督の代々木忠が入社し、助監督を務め、同社の作品に出演していた女優の真湖道代と結婚している[11]

1967年(昭和42年)には、ピエトロ・ジェルミ監督の『ヨーロッパ式クライマックス英語版』の製作に出資した記録がある[12]。同作は、同年5月に行なわれた第20回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本では、翌年1968年(昭和43年)4月27日にユナイト映画が配給している[13]

同社が成人映画のうちとくにいわゆるピンク映画を安定供給していたのは1966年(昭和41年)から1975年(昭和50年)までの9年間であり、1976年(昭和51年)上半期には作品はみられなくなった[4][5][6][7][14]。この時期に記録にみられる監督は山下治のほか、小川欽也奥脇敏夫佐々木元梅沢薫、秋山駿(津崎公平[15])、加奈沢史郎および小金井次郎影山明文および名和三平[16](蔵田優[14])らである[4][6]

1977年(昭和52年)以降は、ピンク映画については製作のみで配給はミリオンフィルムが行い、おもにアメリカ映画イタリア映画を配給するようになった[4][5][6][7]。この時期にパスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ監督の『ヒッチハイク』(1977年)、マーティン・バーク英語版監督の『パワープレイ』(1978年)等の秀作を輸入配給している[5]。『映画年鑑 1978』あるいは『映画年鑑 1984』によれば、取締役相談役を島田八洲直(1984年死去)が務めているが、島田はパラマウント映画大映第一フィルム(副社長)、ニッポンシネマコーポレーション(1961年に合併して日本ヘラルド映画、現在の角川映画)でアメリカ映画やイギリス映画の輸入配給を多く手がけた人物である[17]。取締役関東支社長を務めた内山武彦は、のちにニューセレクト(1973年創立)に移籍し常務取締役、専務取締役を歴任した[18][19]

1986年(昭和61年)1月、新東宝映画が配給して公開された宮嶋利明監督の『本番ミス18才 ひとみの体験』を製作して以降の記録がなく、1990年代後半の『映画年鑑』には社名も社長の人名も掲載されていない[4][5][6][7][20]。同社社長の大野が社長を務める、劇場用映画の輸入やテレビ映画の製作を行なうワールドテレビジョンが、同社と同一の所在地に存在したが、その後、新宿区四谷に移転した[21][22][23]。ワールドテレビジョンは、1999年(平成11年)にはギャガとともに『アタック・オブ・ザ・ジャイアント・ケーキ』を輸入提供したり、古くは1970年代、日活出身の丹野雄二ダックスインターナショナルと提携し『まんが世界昔ばなし』を製作した会社である。

2012年(平成24年)7月現在、東京国立近代美術館フィルムセンターは、同社の製作・配給した作品群のうち、影山明文が監督し、新東宝映画が配給した『緊縛変態集団』(1982年)、『獣色』(1984年)、『ザ・ベストONANIE』(1985年)の3作のみを所蔵している[7]。作品の再評価については、山形国際ドキュメンタリー映画祭実行委員会が、2003年(平成15年)に『ベッドダンス英語版』(監督奥脇敏夫、1967年)、『クライマックス』(監督奥脇敏夫、1968年)、『燃えたい女』 (同)、『好色 きんちゃく切りの女』(同)、『女は二度燃える』(同)、『OH! モーレツ ハレンチレポート』(監督杜野煌、1969年)を上映し[24][25]神戸映画資料館が、2011年(平成23年)に『燃えたい女』、『女は二度燃える』を上映している[26][27]。アメリカ合衆国では、2006年(平成18年)にペイスファインダー・ホーム・エンタテインメントが、『昂奮』(監督奥脇敏夫、1968年)を Naked Pursuit のタイトルでDVD発売している[28]。かつて同社本社が所在した「銀座8-10-8」は、かつて日本最初の映画会社であった吉沢商店の跡地(かつての京橋区南金六町13番地)である[29]

企業データ[編集]

参考

フィルモグラフィ[編集]

文化庁「日本映画情報システム」、および日本映画データベースキネマ旬報映画データベースに掲載されている同社製作・配給作品の一覧である[4][5][6][7]。輸入映画については日本公開順である[5]

1965年
1966年
1967年
1968年
1969年
1970年
1971年
1972年
1973年
1974年
1975年
1976年
  • 淡路島性のうず潮』 : 監督名和三平、出演大原恵子、配給大蔵映画、1976年7月8日審査(映倫番号18789)、1976年8月10日公開 - 製作[14]
  • 母と娘 禁じられた性戯』 : 監督名和三平、出演中野リエ、配給大蔵映画、1976年7月20日審査(映倫番号18805)、1976年8月21日公開 - 製作[14]
  • 成熟妻と未熟亭主』 : 監督名和三平、出演茜ゆう子、配給大蔵映画、1976年8月20日審査(映倫番号18831)、1976年10月1日公開 - 製作[14]
  • 牝獣の遍歴』(『生獣の遍歴』) : 監督名和三平、出演茜ゆう子、配給大蔵映画、1976年9月30日審査、1976年10月22日公開 - 製作[14]
  • 新妻の性秘密』 : 監督名和三平、出演原悦子、配給大蔵映画、1976年10月12日審査(映倫番号18885)、1976年11月12日公開 - 製作[14]
  • (秘)邪淫修道尼』 : 監督名和三平、出演原悦子、配給大蔵映画、1976年11月26日審査(映倫番号18940)、1976年12月4日公開 - 製作[14]
  • 姦通(卍)くずし』 : 監督蔵田優(影山明文[14])、出演原悦子、配給ミリオンフィルム、1976年10月12日審査(映倫番号18884)、1976年12月7日公開 - 製作[14]
  • 暴走痴漢車性旅行』 : 監督名和三平、出演長友達也・原悦子、配給大蔵映画、1976年12月24日審査(映倫番号18967)、1976年12月26日公開 - 製作[14]
1977年
1978年
1979年
1980年
1982年
1984年 - 1986年
2005年
  • 心の杖として鏡として』 : 監督萩原磨、製作心の杖として鏡として製作委員会/プロダクション135/ワールド映画、配給心の杖として鏡として製作委員会、2005年12月17日公開 - 共同製作

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 『映画年鑑 1978』、p.220.
  2. ^ a b c d e f g 『映画年鑑 1984』、p.226.
  3. ^ a b c ワールド映画Yahoo! ロコ、2010年7月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g ワールド映画、日本映画情報システム、文化庁、2010年7月6日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i ワールド映画キネマ旬報映画データベース、2010年7月6日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h ワールド映画日本映画データベース、2010年7月6日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j ワールド映画東京国立近代美術館フィルムセンター、2010年7月6日閲覧。
  8. ^ 初めての感触、日本映画情報システム、文化庁、2010年7月6日閲覧。
  9. ^ 人妻がもえるとき、日本映画情報システム、文化庁、2010年7月6日閲覧。
  10. ^ 菜穂俊一、日本映画データベース、2010年7月6日閲覧。
  11. ^ 物語、映画『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』公式ウェブサイト、2010年7月6日閲覧。
  12. ^ a b L'immorale, インターネット・ムービー・データベース (英語), 2012年7月6日閲覧。
  13. ^ ヨーロッパ式クライマックス、キネマ旬報映画データベース、2010年7月6日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『映画年鑑 1978』、p.166.
  15. ^ a b 幻のピンク映画発掘! 偶然から見つかった貴重なドキュメント・ポルノ・シリーズがDVD化!アップリンク、2010年7月6日閲覧。
  16. ^ a b 影山明文鳥取県立図書館、2010年7月6日閲覧。
  17. ^ 佐々木徹雄『三分間の詐欺師』松岡正剛、2000年12月1日付、2010年7月6日閲覧。
  18. ^ 『映画年鑑 1992』、p.314, 322.
  19. ^ 『映画年鑑 1998』、p.258, 314.
  20. ^ 『映画年鑑 1998』、p.266, 315.
  21. ^ ホタル帰る - 特攻隊員と母トメと娘礼子石井宏草思社、2001年4月付、2010年7月6日閲覧。
  22. ^ 『日本民間放送年鑑 1996』、日本民間放送連盟コーケン出版、1996年。
  23. ^ 『日本民間放送年鑑 2004』、日本民間放送連盟、コーケン出版、2004年
  24. ^ a b c 金曜上映会のお知らせ 1月-3月山形国際ドキュメンタリー映画祭、2003年1月17日付、2012年7月8日閲覧。
  25. ^ a b 金曜上映会のお知らせ 11月-12月、山形国際ドキュメンタリー映画祭、2003年10月29日付、2012年7月8日閲覧。
  26. ^ プログラム11/09神戸映画資料館、2012年7月8日閲覧。
  27. ^ プログラム11/10、神戸映画資料館、2012年7月8日閲覧。
  28. ^ Naked Pursuit、ペイスファインダー・ホーム・エンタテインメント (英語)、2012年7月8日閲覧。
  29. ^ 東京写真帖 吉澤商店、中央区立京橋図書館、2012年7月6日閲覧。

参考文献[編集]

  • 『映画年鑑 1978』、時事映画通信社、1977年12月1日
  • 『映画年鑑 1984』、時事映画通信社、1983年12月1日
  • 『映画年鑑 1992』、時事映画通信社、1991年12月1日
  • 『映画年鑑 1998』、時事映画通信社、1997年12月1日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]