ワールドイメージ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
ワールドイメージ実施中の機体 (一例)

ワールドイメージ (英語 : World Images) は、イギリスの大手航空会社であるブリティッシュ・エアウェイズが、一時期行なっていた塗装キャンペーン。バラエティ豊かな垂直尾翼デザインを多数施していたことから、ワールドテイルズ[1]ワールドレヴァリーとも言う。また、英語では「Ethnic Liveries (民族模様)」と称されることもある[2][3]

背景[編集]

統一された塗装の基となったコンコルドの尾翼
1997年から使用されているユニオン・フラッグ塗装(現在も使用中)

1997年、ブリティッシュ・エアウェイズはコンコルドで使用していたデザインを基に、新たな塗装を発表した。(現在も使用されている、ユニオン・ジャックの一部を使用したデザインである。)これと同時に、同社は「ワールドイメージ」のキャンペーンも始めた[4][5][6]。このキャンペーンは、ブリティッシュ・エアウェイズが運航する全ての旅客機に対し、それぞれの機体ごとに全く異なる垂直尾翼のデザインを施すというものであった。それぞれのデザインはブリティッシュ・エアウェイズが考案したものではなく、標準塗装のユニオン・ジャックカラー以外は、世界中のあらゆる芸術家が考案したものである。デザインの総数は35種類(当初は10種類程度を予定していたものの、それを遥かに上回った[7]。また、同じ芸術家による同名のデザインでも、微妙に模様の異なるものが多数存在することから、それらも全てカウントすると50種類程度[5]。)にも及び、デザインの改装にかかったコストは合計で約60,000,000ポンド日本円にして約8,106,900,000円)にもなったという[8]

そもそもこのキャンペーンの目的は、ブリティッシュ・エアウェイズが国際的で規模の大きい航空会社であることをPRすることであったが、垂直尾翼の塗装が異なると、同じ航空会社かどうか判別が困難である(別な航空会社であると誤解されやすい)、どこの国の航空会社なのかはっきりしない、イギリスの航空会社と分からない、などの意見があり、評判は良くなかった。(ただし、航空ファンからは人気を集めていた。)それを機に、同社は垂直尾翼のデザインを完全に統一することを決め、2001年からは現在の塗装になっている。

施された尾翼デザインのリスト (全て)[編集]

ブリティッシュ・エアウェイズのワールドイメージ一覧[9][7][1][10][11][12]
デザイン名 考案者の出身国 デザインについて 垂直尾翼デザイン(画像)
チャタム・ドックヤード・ユニオン・フラッグ イギリスの旗 イギリス 現在も使用されているこのデザインは、コンコルドで使用されていたデザインが基となった。
チャタム・ドックヤード英語版・ユニオンフラッグ
アニマルズ・アンド・ツリーズ ボツワナの旗 ボツワナ ボツワナに住む一族が考案した。オアシスに生息するジャッカルをデザインしたものである[13]。「アニマルズ・アンド・ツリーズ」とは、「動物」という意味。
アニマルズ・アンド・ツリーズ
アビニョン ドイツの旗 ドイツ ドイツの現代の美術によって描かれたデザイン。
アビニョン
バヴァーリア (エーデルワイス) ドイツの旗 ドイツ 「バヴァーリア」とは、ドイツ語で「バイエルン州(ドイツの地方の名前)」という意味であり、バイエルン州に咲くエーデルワイスという花がモチーフ。
バヴァーリア
ベニーホーン イギリスの旗 イギリススコットランドの旗 スコットランド スコットランドの伝統的模様である「タータンチェック」をモチーフにした鮮やかなデザイン[14]。「ベニーホーン」とは、「」という意味。
ベニーホーン
ブロムステラン  スウェーデン 考案者はスウェーデン出身。ガラス製品の製造会社に勤める芸術家による考案。ハートと花がテーマの、ガラスのボウルによるデザイン[15]。ただし、普通に植物を描いたものだという説もある[7]。「ブロムステラン」は、「お花畑」という意味である。
ブロムステラン
ブルー・プール イギリスの旗 イギリスイングランドの旗 イングランド イングランドの町、プールで使われる花瓶に用いられた模様が由来[16]。考案者は、地元イングランド出身。
ブルー・プール
ブリティッシュ・ブレンド イギリスの旗 イギリス コーヒーカップをデザインしたもの。1機(エアバスA320-200)のみに施された。 [1] (外部リンク)
ブリティッシュ・オリンピックチーム イギリスの旗 イギリス 2000年に行われたオリンピック)の際にデザインされた。イギリス・オリンピック協会の、ライオンのロゴも描かれている[17]。「チーミング・アップ・フォア・ブリテン」とも呼ばれる[7]
ブリティッシュ・オリンピックチーム
チェルシー・ローズ イギリスの旗 イギリスイングランドの旗 イングランド ロンドンチェルシーバタシーなどにある、公園庭園バラがモチーフ[18]。かつてブリティッシュ・エアウェイズの傘下だった、ブリテッシュ・エアウェイズ・ワールド・カーゴでも使用されたことがある[19]
チェルシー・ローズ
カラー・ダウン・ザ・サイド イギリスの旗 イギリスイングランドの旗 イングランド イングランド出身の芸術家が考案。1968年に描かれた抽象絵画由来する[20]
カラー・ダウン・ザ・サイド
カラム アイルランドの旗 アイルランド アイルランド人による考案。聖コルンバを蘇らせるデザイン。「カラム」とは「」という意味[21]。同じカラムの塗装機であっても、それぞれの機体ごとに微妙にデザインが異なり、例えばボーイング747のカラム塗装機だけを見ても、2種類のデザインが存在する[1]。(後述も参照)
カラム
クロッシング・ヴォーダーズ  エジプト エジプト人による考案。テント職人の装飾を基にし、ファラオイスラームの色をモチーフとしたため、とても歴史を感じるデザイン[22]。「クロッシング・ヴォーダーズ」とは、「国境を越す」という意味。
クロッシング・ヴォーターズ
デルフトブルー・ディブレーク オランダの旗 オランダ オランダ人による考案。デルフトという町で、陶器に使用された模様に由来する。「デルフトブルー・ディブレーク」とは、「デルフトの夜明け」という意味[23]
デルフトブルー・ディブレーク
ゴールデン・ホッフロマ ロシアの旗 ロシア デザインされたのは1978年。ホッフロマ英語版装飾(食器に使われた装飾)をモチーフににしている[24]
ゴールデン・ホッフロマ
ゴシック ドイツの旗 ドイツ 考案者はドイツ出身。
ゴシック
グランド・ユニオン イギリスの旗 イギリス バッキンガムシャーにあるグランド・ユニオン運河における、イギリスの伝統的な運河ボートアートに基づく[25]
グランド・ユニオン
コグトゥキ・ロウィッキー ポーランドの旗 ポーランド 「コグトゥキ・ロウィッキー」とは、「ウォヴィチ雄鶏」という意味。孔雀、花形に切り抜いたの鶏などがモチーフとなっている[26]
コグトゥキ・ロウィッキー
レスプリット・リヴェルテ 国際的 人権運動を祝ってデザインされた。他のデザインと違い、特定の国 (芸術家) が考案したものではない。「レスプリット・リヴェルテ」は「自由な精神」という意味。
レスプリット・リヴェルテ
ラ・ピラマイデ・デュ・ルーヴル フランスの旗 フランス 「ラ・ピラマイデ・デュ・ルーヴル」は、パリにある有名なルーヴル美術館のこと。美術館の外観をイメージしたデザインである。透明ピラミッド型の入口も描かれている。
ラ・ピラマイデ・デュ・ルーヴル
ナランジ・ドリーミング オーストラリアの旗 オーストラリア 1995年に描かれたアボリジニアート。本来はカンタス航空ボーイング747-300に描かれていたものだったが、ブリティッシュ・エアウェイズのワールドイメージにも採用された[27][28][29]。「ナランジ」とは、「我々の場所」という意味。
ナランジ・ドリーミング
ンデベレ・エミリー  南アフリカ共和国 エミリーという名前の芸術家が考案したため、この名前が付いた。壁画のような絵とビーズからなるパネルを基にデザインされている[30]。エミリーは双子であり、双子のもう片方の人物(マーサー)が、「ンデベレ・マーサー」という別のデザインを考案している。
ンデベレ・エミリー
ンデベレ・マーサー  南アフリカ共和国 「ンデベレ・エミリー」と同様にパネルを基にしたデザイン[31]。このデザインを考案したのは、エミリーの姉妹(双子)である。名前はマーサー。そのため、この名前になった。
ンデベレ・マーサー
パイタニ インドの旗 インド ベースとなったのは、パイタニ英語版繊維業の伝統的模様である[32]
パイタニ
ポウス・トゥー・リメンバー イギリスの旗 イギリス このデザインは、記念日の前後に使用されるもので、「ポビー」と呼ばれる。
ポウス・トゥー・リメンバー
ランデヴー 香港の旗 香港 考案者は香港出身で、書道で書かれた漢字がデザインされている。この漢字の語句は、中国における、水煮にまつわる詩から抜粋されている[33]。香港はかつてイギリスの植民地であったこともあり、多数あるワールドイメージの中でも特に実施機体が多かった[7]。「ランデヴー」とは、「出会い」という意味。
ランデヴー
プリマベラ  ルーマニア 「プリメベラ」は「」を意味し、その名の通り春をデザインしたもの[34]。ルーマニア人が考案。
プリマベラ
スタンタイラー ドイツの旗 ドイツ 「スタンタイラー」とは、「バウハウス」という意味。3Dの「セラミック・オブジェクト」というアートがベースとなっている[35]
スタンタイラー
ウォーター・ドリーミング オーストラリアの旗 オーストラリア 水の波紋を再現したアボリジニアートである[7]
ウォーター・ドリーミング
ウェイブズ・アンド・クレインズ(濤と鶴) 日本の旗 日本 これは、日本人の芸術家である加山又造によって考案されたものである[36][37]。タイトルは「波と鶴」ではなく「濤と鶴」が正しい[38]。日本を象徴する鳥であると、魂の込められたが描かれた和風絵画である。
ウェイブズ・アンド・クレインズ (濤と鶴)
ウェイブズ・オブ・ザ・シティー アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 この抽象的なデザインは、「凍った動きの感覚」を伝えることを目的としている[39]
ウェイブズ・オブ・ザ・シティー
ホウェール・ライダー カナダの旗 カナダ カナダ人による考案。伝統的な捕鯨を示す木彫りに由来する[40]
ホウェール・ライダー
ウィングス  デンマーク デンマークの芸術家が考案。飛行している際のカモメのモダニストを表したデザインである[41]。「ウィングス」は翼という意味で、この模様は翼を組み合わせて構成されている[7]
ウィングス
ウナラ・ドリーミング オーストラリアの旗 オーストラリア ナランジ・ドリーミングと同様に、本来はカンタス航空で使用されることを意図してデザインされたものであり、カンタス航空のボーイング747-400に施された。しかし、「オーストラリアにおける自然の色」であったことが人々の反感を買い、ヤヌワの人々によってデザインされた新たな模様がベースとなっている[42][43][44]
ウナラ・ドリーミング
ユム・アルスク サウジアラビアの旗 サウジアラビア 考案者はサウジアラビア人。「ユム・アルスク」は、「市場の日」という意味である[45]
ユム・アルスク

ワールドイメージ 画像集[編集]

ボーイング747[編集]

キャンペーン実施当時、ブリティシュ・エアウェイズが運航していた機種の中で最大だった、ボーイング747の塗装画像ギャラリー[10][1]。ブロムステラン、ブルー・プール、パイタニの3模様はいずれも747-200に塗られたが、それ以外のデザインは全て、747-400に描かれている[10]

その他の機種[編集]

ボーイング747以外のワールドイメージ画像ギャラリー[12]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d British Airways World Tails Boeing 747 Fleet on Skyscape” (英語). www.airlinersillustrated.com. 2019年9月12日閲覧。
  2. ^ "British Airways Ethnic Liveries" | Photo Album by QF32flyer”. Airliners.net. 2019年9月11日閲覧。
  3. ^ British Airways Ethnic Liveries Photos and Pictures - AirTeamImages.com” (英語). www.airteamimages.com. 2019年9月13日閲覧。
  4. ^ Jarvis, Paul (2015年4月15日). “The story of the short-lived British Airways “World Images” livery” (英語). Design Week. 2019年9月13日閲覧。
  5. ^ a b ブリティッシュ・エアウェイズ. “Our memorable liveries” (英語). www.britishairways.com. ブリティッシュ・エアウェイズ. 2019年9月13日閲覧。
  6. ^ LondonAirTravel, Author (2017年6月10日). “British Airways “World Images” Tailfins: 20 Years On” (英語). London Air Travel. 2019年9月13日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g 飛行機アイコン EUROPE-BAのワールドイメージ”. sonicrailgarden.sakura.ne.jp. 2019年9月11日閲覧。
  8. ^ Teather, David (1999年10月28日). “Taking flight - BA's ethnic tailfin man leaves” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/business/1999/oct/28/4 2019年9月14日閲覧。 
  9. ^ British Airways Liveries” (英語). Yesterday's Airlines. 2019年9月11日閲覧。
  10. ^ a b c Knapp, Nick (2011-06-17), British Airways World Tails Boeing 747 Aircraft Fleet Custom Made Artwork, https://www.flickr.com/photos/airlinerart/5841898554/ 2019年9月12日閲覧。 
  11. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  12. ^ a b British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  13. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  14. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  15. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  16. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  17. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  18. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  19. ^ ChrisChen76 (1999-07-11), N495MC B.747-47UF British Airways World Cargo, https://www.flickr.com/photos/chrischenn76/6312806510/ 2019年9月13日閲覧。 
  20. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  21. ^ lockonaviation.net”. 2018年10月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月11日閲覧。
  22. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  23. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  24. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  25. ^ Grand Union England”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  26. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  27. ^ Qantas announces special Indigenous aircraft livery” (英語). Qantas News Room. 2019年9月11日閲覧。
  28. ^ Flying art series | Qantas US”. www.qantas.com. 2019年9月11日閲覧。
  29. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  30. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  31. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  32. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  33. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  34. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  35. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  36. ^ 加山又造|美術品 買取市場”. www.g-bianca.jp. 2019年9月11日閲覧。
  37. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  38. ^ 加山又造 | 骨董品買取、古美術品買取なら古美術寿永堂へ”. jyueidou.com. 2019年9月11日閲覧。
  39. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  40. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  41. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  42. ^ Qantas announces special Indigenous aircraft livery” (英語). Qantas News Room. 2019年9月11日閲覧。
  43. ^ Flying art series | Qantas US”. www.qantas.com. 2019年9月11日閲覧。
  44. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。
  45. ^ British Airways World Images - Plomi”. plomi.smugmug.com. 2019年9月13日閲覧。