ワディ・ラム

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ワーディー・ラム
現地名 وادي رم
Wadi Rum Monument.jpg
ワーディー・ラムの山々
所在地 ヨルダンの旗 ヨルダンアカバ県
座標 北緯29度34分35.4秒 東経35度25分11.74秒 / 北緯29.576500度 東経35.4199278度 / 29.576500; 35.4199278座標: 北緯29度34分35.4秒 東経35度25分11.74秒 / 北緯29.576500度 東経35.4199278度 / 29.576500; 35.4199278
面積 720km2
標高 1,750 m (5,741 ft)
設立 紀元前8000年
管理者 アカバ県特別政府
区分 複合遺産
基準 iii, v, vii
登録日 2011年 第35回世界遺産委員会
登録コード 1377
ヨルダンの旗 ヨルダン
地方 アラブ地域
IUCNカテゴリーIa(厳正保護地域
登録日 1998
面積 720 km2
ワディ・ラムの位置(ヨルダン内)
ワディ・ラム
ヨルダンにおけるワーディー・ラムの位置

ワーディー・ラム[1][2]アラビア語: وادي رم‎、ラテン文字:Wadi Rum、ワディ・ラム[3]とも表記、月の谷 - وادي القمرとしても知られる)はヨルダン南部・アカバ県の県都アカバより東に約60kmの地点に位置する砂岩花崗岩でできた谷であり、ヨルダン最大のワーディー(涸れ川)である[4]。ラムの名前はアラビア語で「高い」を意味する語根に由来していると考えられている[5]フスハー(正則アラビア語)の発音と対応させるため、考古学者は通常ラテン文字では「Wadi ramm」と表記する。

2011年第35回世界遺産委員会にて複合遺産に「ワディ・ラム保護区」として登録された。アラビアのロレンスをはじめとする映画の撮影場所としても知られる。

歴史[編集]

ワーディー・ラムにあるペトログリフ

ワーディー・ラムは先史時代より多くの人類文化を育んできた。ワーディー・ラムにはナバテア王国の人々が残した壁画、落書き、遺構などが残されている。

西洋においては、ワーディー・ラムはイギリスの将校トーマス・エドワード・ロレンス(1917~1918年に起きたアラブ反乱中数回に渡りワーディー・ラムを通った)に縁のある場所として名高い[6]。1980年代、ワーディー・ラムにある砂岩の一つがローレンスの書籍英語版から「知恵の七柱(The Seven Pillars of Wisdom)」と呼ばれるようになった。しかし、ローレンスの書籍で取り上げられている「七柱」はワーディー・ラムと何の関連もない。

地理[編集]

保護地域はワーディー・ラムの谷周辺に集中している。ヨルダンの最高点はウム・ダーミー山英語版山頂の1840mであり、ワーディー・ラム村の南30kmの地点に位置する。この山頂はワーディー・ラム出身のザラビア・ベドウィンであるDifallah Ateegが初めて登頂した。晴天時には紅海サウジアラビアとの国境を一望できる。

ジャバル・ラム(標高1374m)はヨルダンで二番目に標高の高い地であり、ラム中央部では最も標高の高い地である[7]

ワーディー・ラムにあるKhaz'ali渓谷はペトログリフがある場所であり、洞窟の壁にはサムード族英語版が暮らしていた時代に描かれた人間や鹿の壁画が残されている。ワーディー・ラム自体には数百人のベドウィン(遊牧民)が暮らしている。また、男子校と女子校がともに1つ、数軒の店、そして砂漠パトロール隊の本部がある[8]

観光[編集]

ジェベル・ラムでロッククライミングを行う様子
ワーディー・ラムの観光地

ワーディー・ラムは登山家やトレッカーとともに働くザラビア・ベドウィン(遊牧民)の故郷であり、エコツーリズム開発の成功により、現代では彼らの主な収入源となっている。ワーディー・ラム周辺地域はヨルダンの観光において有数の観光地であり、外国の旅行者年々増加しており、登山家やロッククライマーによる訪問だけではなく、ラクダ乗り体験のためアカバペトラから日帰りで訪れる旅行者も増加している。砂漠の環境の中で人気のある観光としては満天の星空の下のキャンプやアラブ馬の乗馬体験、ハイキングやロッククライミングが挙げられる。

サハラマラソン中東初の女性参加者として有名なディマ・ハッターブとラマ・ハッターブ姉妹はジャバル・イシュリーンと呼ばれる地方マラソン大会を主催している。

ロッククライミング[編集]

ベドウィンは長年に渡りワーディー・ラムにある砂岩でできた山を登ってきた。彼らの「ベドウィンの道」と呼ばれる登攀ルートの多くは現代のロッククライマーにより再発見され文書化されている。この道の幾つかはトニー・ハワードにより書かれた登山ガイドブックやLiênとGilles Rappeneauによるオンラインの案内情報に記載されている[9]

1949年、シャー・ハムダーンはジェベル・ラム山頂へと調査隊を派遣した。ヨーロッパ人で初めてジェベル・ラムの登頂に成功した者はハムダーンの案内を受けたCharmian LongstaffとSylvia Branfordtookであり、1952年11月に登頂に成功した。 ロッククライミングに関する記録は1984年に開始され、イギリスの登山家ハワード、ベイカー、テイラー、ショーが初めて登攀に成功した。多くの新たな登攀ルートは1980年代にフランスの案内人Wilfried Colonna、スイスのレミ兄弟、そしてHaupolterとPrechtのチームにより登攀が行われた[10]。ワーディー・ラムの登攀に関する初のガイドブックである「Treks and Climb in Wadi Rum」はトニー・ハワードにより1987年に出版された。登山家のための新ルートに関する本はワーディー・ラムにあるゲストハウスに置かれている。

映画撮影[編集]

ワーディー・ラム周辺地域は数多くの映画の撮影場所として利用されてきた。

  • アラビアのロレンス - 1962年の映画。デーヴィッド・リーン監督は映画撮影の大部分をワーディー・ラムにて行った[11]
  • レッドプラネット - 2000年の映画。ワーディー・ラムを火星の表面に見立て撮影が行われた。
  • 砂漠の情熱 - 1998年の映画。ワーディー・ラム周辺地域が撮影に使用された。
  • The Face - BBCの映画。ワーディー・ラムのロッククライミングの先駆者であるトニー・ハワードとディ・テイラーを取り上げている。
  • トランスフォーマー/リベンジ - エジプトに見立てて撮影が行われた。
  • The Frankincense Trail - 列車からのシーンや空撮にて使用
  • プロメテウス - エイリアンの惑星に関するシーンに使用[12]
  • Krrish 3 - 挿入歌「Dil Tu Hi Bata」のシーンにて使用
  • May in the Summer - Cherien Dabis監督による2013年度サンダンス映画祭出展映画。ワーディー・ラムで撮影されたシーンを多用しており、映画の方向性を決定づけている。ワーディー・ラムは主人公が平安を周辺世界から離れた自身の内部に見つけるシーンで使用されている。
  • オデッセイ (映画) - 2015年の映画。火星の表面に見立てリドリー・スコットが撮影。主演のマット・デイモンは、「そこはあまりに特別な場所で、畏敬の念さえ抱いたよ。今まで見てきた中で最も素晴らしく美しい場所の一つで、地球上にこんな場所はないよ」と述べている[13]

ギャラリー[編集]

世界遺産 ワディ・ラム保護区
ヨルダン
Wadi Rum 010.JPG
英名 Wadi Rum Protected Area
仏名 Zone protégée du Wadi Rum
面積 74,180 ha (緩衝地域 59,177 ha)
登録区分 複合遺産
登録基準 (3), (5), (7)
登録年 2011年
公式サイト 世界遺産センター(英語)
使用方法表示

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 対ヨルダン国別援助方針の評価結果 - 観光産業のインフラ整備 (P.65)”. 外務省. 2014年5月3日閲覧。
  2. ^ 安田慎. “世界の情勢(中近東) II - ワーディー・ラム-中東のエコツーリズム”. 帝京大学. 2014年5月3日閲覧。
  3. ^ ワディラム”. ヨルダン政府観光局. 2014年5月3日閲覧。
  4. ^ Mannheim, Ivan (2000-12-01). Jordan Handbook. Footprint Travel Guides. p. 293. ISBN 978-1-900949-69-9. http://books.google.com/books?id=LWh_GohTy6AC&pg=PA293 2014年5月3日閲覧。. 
  5. ^ tours in Wadi Rum
  6. ^ Ham, Anthony; Greenway, Paul (2003). Jordan. Lonely Planet. p. 212. ISBN 978-1-74059-165-2. http://books.google.com/books?id=5x2pJuvWeOQC&pg=PA212 2014年5月3日閲覧。. 
  7. ^ Scheck, Frank Rainer (1997) (ドイツ語). Jordanien: Völker und Kulturen zwischen Jordan und Rotem Meer. DuMont Reiseverlag. p. 12. ISBN 978-3-7701-3979-8. http://books.google.com/books?id=bMVut1r9Y8YC&pg=PA12 2014年5月3日閲覧。. 
  8. ^ Howard, Tony; Taylor, Di (1997-05). Treks and Climbs in Wadi Rum, Jordan. Cicerone Press Limited. p. 20. ISBN 978-1-85284-254-3. http://books.google.com/books?id=fweY0lTEJogC&pg=PA20 2014年5月3日閲覧。. 
  9. ^ Gilles, Rappeneau. “Les Voies Bedoiun du Wadi Ramm”. website. 2014年5月3日閲覧。
  10. ^ Howard, Tony (1987). Treks and Climbs in Wadi Rum. Milnthorpe, England: Cicerone Press. pp. 192. ISBN 1 852841354. 
  11. ^ Touristic Sites - South of Amman”. Kinghussein.gov.jo. 2014年5月3日閲覧。
  12. ^ McClintock, Pamela (2012年6月1日). “Box Office Report: 'Prometheus' Opening Ahead of 'Snow White' in the U.K.”. The Hollywood Reporter (Prometheus Global Media). オリジナル2012年6月12日時点によるアーカイブ。. http://www.webcitation.org/68N0fB1GE 2014年5月3日閲覧。 
  13. ^ Ridley Scott and Matt Damon on Going to Jordan to Recreate Mars”. Yahoo! Movies. 2015年9月30日閲覧。

外部リンク[編集]