ロレンツォのオイル/命の詩

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ロレンツォのオイル/命の詩
Lorenzo's Oil
監督 ジョージ・ミラー
脚本 ジョージ・ミラー
ニック・エンライト
製作 ジョージ・ミラー
ダグ・ミッチェル
製作総指揮 アーノルド・バーク
撮影 ジョン・シール
編集 リチャード・フランシス・ブルース
マーカス・ダルシー
リー・スミス
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
公開 アメリカ合衆国の旗 1992年12月30日 (有限)
アメリカ合衆国の旗 1993年1月15日
日本の旗 1993年5月15日
上映時間 129分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
興行収入 $7,286,388[1]
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ロレンツォのオイル/命の詩』(ロレンツォのオイル/いのちのうた、原題:Lorenzo's Oil)は、1992年アメリカ映画ジョージ・ミラー監督。

難病副腎白質ジストロフィーに悩むひとり息子ロレンツォを助けるため、間断なく解決策を探す銀行家のオドーネ夫妻の実話に基づく物語。

あらすじ[編集]

ひとり息子であるロレンツォの難病を治すことの出来る医師が居ないと知り、オドーネ夫妻(夫オーギュストと妻ミケーラ)は医学的知識が無いにもかかわらず自力で治療法を探すことを決意。

治療法を見つけ出すため、もはや手の尽くしようがないと信じる医師、科学者、支援団体らと衝突する。しかし自らの意志を貫き、医学図書館に通い詰め、動物実験を参照し、世界中の研究者や一流の医学者らに問い合わせ、さらに自ら副腎白質ジストロフィーに関する国際的シンポジウムを組織するに到る。

死に物狂いの努力に関わらず、息子の様態は日々悪化する。次第に彼らが参加していた支援団体のコーディネーターからも疑いの念が抱かれるなか、彼らは食餌療法として特定のオイル(実際にはエルカ酸オレイン酸トリグリセリドを1:4の割合で配合したもの)に関する治療法を思いつく。100以上の世界中の会社に問い合わせた結果、適切な方法で蒸留することが出来る定年間近の英国老化学者を探し出す。

キャスト[編集]

※括弧内は日本語吹き替え

その後について[編集]

その後、ロレンツォは処置が遅れたため劇的な回復は見られなかったものの、簡単な意思表示や、絵本や音楽を楽しむまでには回復した。

母親のミケーラ・オドーネが2000年7月に肺癌により亡くなり、父親のオーギュスト・オドーネがその後も看病していたが、2008年5月30日にロレンツォは誤嚥性肺炎のために死去した(30歳没)。 オーギュスト・オドーネは、2013年10月26日に亡くなった。

実話との比較[編集]

オードネ夫妻など、登場人物の名前は実際の名前を使っている[2]。夫婦が専門家を訪ね歩きディスカッションをしたり、専門家を集めたカンファレンスを開くなどの描写はすべて実話である[2]。劇中の最後にはロレンツォのオイルで命が助かった子供たちの実際の笑顔の映像が流れる[2]。なお、日本では「銀行家のオドーネ夫妻」と紹介されているが、作中でも実話でもオーギュスト・オドーネは国際連合の専門機関である世界銀行の職員(エコノミスト)であり、「銀行家」という肩書は適切ではない。

ロレンツォのオイルの医学的効果[編集]

副腎白質ジストロフィー adrenoleukodysprophy(ALD)は、ロレンツォが発症した1982年当時治療方法がまったくなく、診断されてから多くは2年以内に死亡することが多かった。オドーネ夫妻が考案した「ロレンツォのオイル」はオレイン酸エルカ酸の混合物で、ALDの病態である脱ミエリン化を起こす極長鎖脂肪酸(VLCFA)を低下させる一種の栄養療法である。

映画にあるように血中VLCFA値の低下作用は明らかだったが、治療効果については当時より賛否両論であった。多くの患児の両親が「ロレンツォのオイル」を求めて争って投与したが、実際にはALD症状改善を認めることは少なかった。植物状態で死を待つだけだったロレンツォが「ロレンツォのオイル」によって劇的に改善し、両親との意志疎通さえも可能となる映画のラストが感動的だっただけに、逆に多くの両親の失望は大きかったといえる。1993年(映画公開の翌年)に「ロレンツォのオイルは無効である」という論文[3]が発表されており、さらにEditorialで「医学は映画のように簡単にはいかない」という痛烈な批判がなされたことが決定的だった。

映画の中で、両親の性急さをしばしば諌め、ALDの全患児に責任ある医師の立場として「ロレンツォのオイル」の臨床使用を断る、いわば「悪役」としてのニコラウス教授のモデルとなったのは、ALDの世界的な権威であったヒューゴ・モーザー英語版である。しかし実は「ロレンツォのオイル」が無効と言われ、詐欺師やインチキとまで批判されたロレンツォの両親を最後まで支持し擁護していたのがそのモーザー医師だったのである。「オイル」の臨床試験を地道に続け、2005年に「ロレンツォのオイルはすでに症状が進行した患児には無効だが、血中VLCFA値が高値を示す児の発症予防や症状軽減には有効」という画期的な論文を出した[4]。現在では,スクリーニングによって発症前の患児を見つけ、早期から「ロレンツォのオイル」を投与して発症予防を行うというプログラムが北米では進められている。

ノミネート[編集]

スーザン・サランドンはこの映画でアカデミー主演女優賞ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされた。

関連項目[編集]

  • 私の中のあなた - ジョディ・ピコーの小説および、それを原作としたニック・カサヴェテスの、白血病少女とドナー用に造られたその妹の映画。
  • 小さな命が呼ぶとき - 難病;ポンペ病治療薬の開発実話。ジータ・アナンド原作、ハリソン・フォードの映画。
  • いのちの子ども - 余命わずかと診断されたパレスチナ人の赤ん坊を救うため、イスラエル人医師が奔走する話。紛争が続くイスラエルにおいて民族や宗教の垣根を越えていく、ハンチントン『文明の衝突』への強烈なアンチテーゼ。
  • ジョンQ -最後の決断- - 最愛の息子を救うため、病院の救急病棟を占拠する男の話。保険制度の問題を問うたマイケル・ムーアの『シッコ』的な要素も備えている。
  • 絶体×絶命 - 白血病の息子を救うため、ドナーの終身刑服務中の凶悪犯にサンフランシスコ市警の刑事が交渉する話。マイケル・キートン主演、バーベット・シュローダー監督作。
  • 7つの贈り物 - 運転中に携帯電話に気が取られ、事故で7人を殺してしまい、その償いとして7人の障害者に自分の体のパーツをプレゼントしていく話。ウィル・スミス主演、ガブリエレ・ムッチーノ監督。
  • ペイ・フォワード 可能の王国 - 「不幸の手紙」の逆転発想。善意を人に配っていくが、『パッチ・アダムス』的な不幸な展開に。不条理な話。ハーレイ・ジョエル・オスメント主演、ミミ・レダー監督。

脚注[編集]

外部リンク[編集]