ロバート・フリップ
ロバート・フリップ Robert Fripp | |
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2024年ワイト島音楽祭にて | |
基本情報 | |
生誕 | 1946年5月16日(78歳) |
出身地 | イングランド ドーセット ウィンボーン・ミンスター |
ジャンル |
プログレッシブ・ロック サイケデリック・ロック フュージョン 環境音楽 |
職業 | ミュージシャン、作曲家、音楽プロデューサー |
担当楽器 | ギター、キーボード、メロトロン、シンセサイザー、オルガン、ピアノ |
活動期間 | 1968年 - 2011年、2013年 - |
共同作業者 |
キング・クリムゾン リーグ・オブ・ジェントルメン プロジェクト フリップ&イーノ ブライアン・イーノ デヴィッド・ボウイ ピーター・ガブリエル デヴィッド・バーン デヴィッド・シルヴィアン ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター トーヤ・ウィルコックス 他多数 |
公式サイト | Robert Fripp's Diary |
ロバート・フリップ(Robert Fripp、1946年5月16日 - )は、イングランド出身のミュージシャン、ギタリスト、作曲家。プログレッシブ・ロックを代表するバンドであるキング・クリムゾンのギタリスト兼リーダーである。
「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」において2003年は第42位、2011年の改訂版では第62位。
来歴
[編集]幼少の頃から地元のクラシックギター教室に通った。13歳の時には、ドン・ストライクという指導者に学んだ[1][注釈 1]。
18歳の時、アンディ・サマーズ[2][3]の後任としてボーンマスのマジェスティック・ホテルのジャズバンドの専属ギタリストになり、3年間ステージをこなす。
1967年、ジャイルズ兄弟(マイケル・ジャイルズ、ピーター・ジャイルズ)とジャイルズ・ジャイルズ&フリップを結成して、アルバム1枚を発表する。このバンドにイアン・マクドナルド、グレッグ・レイク、ピート・シンフィールド(作詞)が参加して、キング・クリムゾンへと発展した。
フリップは1969年の結成から現在に至るまで、キング・クリムゾンにおける主導権を握り続けてきた。本人は否定しているが時に強権的なまでのリーダーシップを執ることがあり、それがバンド内に亀裂を生み出すことがあった。メンバー・チェンジなどの人事的な決定権も握っており、シンフィールドやデヴィッド・クロス(ヴァイオリン)の脱退も実質的には彼による解雇だと言われている。
そのリーダーシップと厳格な音楽への取り組みによって1960年代から1970年代のプログレッシブ・ロック・ムーブメントを支え、その語義どおりの音楽スタイルから多くのアーティストに影響を与えてきた。特にインプロヴィゼーションを主体とした演奏で人気を博した。デビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』(1969年)や『レッド』(1974年)におけるギター・プレイは非常に高く評価されている。しかし彼はプログレッシブ・ロックのイメージを刷新するごとく音楽的な変化を求め続け、キング・クリムゾンのサウンドも時代時代によって大胆な変遷をたどった。
キング・クリムゾンでの活動以外に、デヴィッド・ボウイ、ブライアン・イーノ、ピーター・ガブリエル、ダリル・ホール、デヴィッド・バーン(トーキング・ヘッズ)、アンディ・サマーズ(ポリス)、デヴィッド・シルヴィアン(ジャパン)など、錚々たる個性派の面々と音楽活動を共にしてきた。1974年のキング・クリムゾン解散後、「もうギターは弾かない」と決心して半ば音楽業界から引退した状態にあったが、ボウイとイーノの呼び掛けで音楽活動に復帰した。自ら開発した「フリッパートロニクス」や「サウンドスケイプ」と呼ばれる機材のライブ音源などを収録したソロ作品や、リーグ・オブ・ジェントルメン、プロジェクトといった外部ユニットの作品も多数発表している。イーノと同じく、Microsoft Windowsの起動音の製作も手がけた[注釈 2]。
2012年のフィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「ユニバーサル・ミュージック社との版権を巡る係争に集中するため」ミュージシャン活動からは引退したと明かした。しかし翌年9月に係争が決着する目処が立ったとして、ミュージシャン活動への復帰とキング・クリムゾンの再始動を発表した。
音楽的ルーツ
[編集]ビートルズとジミ・ヘンドリックスのファンで、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に感銘を受けてミュージシャンを志したという[注釈 3]。ジミ・ヘンドリックスに対しては「天才だ」と称している。因みにヘンドリックスも彼のライブを観てギター・プレイに感銘を受け、楽屋を訪れて「心臓に近いほうの左手で握手してくれ」と頼んだという[注釈 4]。
その他、20世紀前半に活躍したクラシック音楽の作曲家バルトークも好んでおり、緻密な構造や旋律主体の楽曲など、作風にも影響が見られると言われる。
プレイスタイル
[編集]ロックのギタリストとしては珍しく、常に椅子に腰掛けてプレイすることでも知られる。
いわゆるリードギター的な主張には乏しいものの、バッキングとするにも強烈なパッセージや複雑なリックを機械的正確さで弾きこなす、シーケンシャルなプレイが持ち味である。「Fracture(邦題:「突破口」)」などに代表される激しいアルペジオや、エイドリアン・ブリューのバックに徹する時の独特のエフェクト遣い、ライブにおける奔放なインプロヴィゼーションでも知られている。クロマチックスケールの多用も特徴。
使用機材
[編集]ギブソン、フェルナンデス、東海楽器製造などのレスポール・タイプギター。ギターシンセとしての機能とサスティナーがついたものも使用。80年代はGRギターシンセサイザーを使用していた。レコーディングではストラトキャスター等使い分けている。 使用しているアンプに付いてはアルバム『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』の時期にはローランド社製のトランジスタアンプJC-120、デジタルアンプがブレイクした時期にはJOHNSON社のデジタルアンプを使用していた。
使用エフェクトはコルグのA-1、A-2、プログラムできるタイプのサンズアンプ等。
1980年代にはレコーディング時、ギターの音をより豊かにするためあらかじめ録音したギタートラックの音をJC-120で再生しさらにその音を録音するという手法を用いていた。彼はこの手法を「フリッパートロニクス」と呼んでいる。
2014年頃のツアー時のセッティングは、『Music Radar』誌の記事に詳しい。それによると、Roland GR-1 Guitar Synth/US20 splitter、Fractal Audio Systems Axe FX II XL、Sound Sculpture Switchblade、Eventide H8000、H3000/3500、Eventide Eclipse、Rocktron MIDI Raider、Boss Expression pedalなどを主として使用しているとのことである。
変則チューニング("ニュー・スタンダード・チューニング"と呼ばれる:C、G、D、A、E、G[注釈 5]。使用ゲージは、0.052、0.038、0.024、0.016、0.012、0.010)を常用する。NYのサウナに入っていた時に思いついて始めたとギタークラフトのインタビュービデオで述べている[注釈 6]。彼は一時期、自分の変則チューニングをギタークラフト・チューニングと呼んでいた。
特記事項
[編集]- 妻は女優で歌手のトーヤ・ウィルコックス。1986年に結婚。ITVが2013年5月8日に放送した"All Star Mr & Mrs"[4]に夫婦で出演して、仲睦まじい姿を披露した。
- 神秘思想家のグルジェフに強い影響を受けた。彼が主宰して精力的に開催しているギタークラフトの講座にもその影響が見て取れる。
- ギタークラフトは「ギターとその演奏を通じた心身の修練」をテーマとした、主に合宿形式のコースである。在籍経験者にはキング・クリムゾンのメンバーの他、カリフォルニア・ギター・トリオ、ビル・リーフリン (ミニストリー)、フェルナンド・カブサッキ等がいる。ギターの演奏のみならず、食事や清掃などに至るまで、幅広い意味での修練を目的とするコースを各国で行っている。1992年と1994年には日本でも開催された。2010年3月25日をもって活動を終了した[5]。
- 自分の音楽がプログレッシブ・ロックと呼ばれることを嫌っている。
- 食事や筆記など、日常生活では左利きである。
- 現在でも1日2時間はギターの練習をしているという。
- 飲酒は全くしない。その代わりに大の甘党である。
- 新型コロナウイルスによるロックダウンをきっかけに、2020年より妻トーヤとともに"Toyah and Robert's Sunday Lunch"と題した動画をYouTubeに投稿しており、レッド・ツェッペリン「ブラック・ドッグ」、セックス・ピストルズ「アナーキー・イン・ザ・U.K.」、メタリカ「エンター・サンドマン」などのカヴァーをコスプレなども交えつつユーモラスに披露している。
ディスコグラフィ
[編集]キング・クリムゾン
[編集]ジャイルズ・ジャイルズ & フリップ
[編集]- 『チアフル・インサニティ・オブ・ジャイルズ・ジャイルズ & フリップ』 - The Cheerful Insanity of Giles, Giles and Fripp(1968年)
- 『ザ・ブロンデスベリー・テープス』 - The Brondesbury Tapes (2001年) ※未発表音源集
- Metaphormosis (2001年) ※未発表音源集
ソロ・アルバム
[編集]- スタジオ・アルバム
- 『エクスポージャー』 - Exposure (1979年)
- 『ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン』 - God Save the Queen/Under Heavy Manners (1980年)
- 『レット・ザ・パワー・フォール』 - Let the Power Fall: An Album of Frippertronics (1981年)
- 『ザ・ゲイツ・オブ・パラダイス』 - The Gates of Paradise (1998年)
- ライブ・アルバム
- 『1999』 - 1999 Soundscapes: Live in Argentina (1994年)
- 『レディオフォニックス1995 サウンドスケイプスVol.1 - ライヴ・イン・アルゼンチン』 - Radiophonics: 1995 Soundscapes, Vol.1 (1995年)
- 『ア・ブレッシング・オブ・ティアーズ1995 サウンドスケイプスVol.2 - ライヴ・イン・カリフォルニア』 - A Blessing of Tears: 1995 Soundscapes, Vol.2 (1995年)
- 『ザット・フィッチ・パッスィズ1995 サウンドスケイプスVol.3』 - That Which Passes: 1995 Soundscapes, Vol.3 (1996年)
- 『ノーヴェンバー・スイート』 - November Suite: Soundscapes Live at Green Park Station 1996, Japan (2000年)
- 『ラヴ・キャンノット・ベアー (ライヴ・インUSA)』 - Love Cannot Bear: Soundscapes - Live in the USA (2005年)
- At the End of Time: Churchscapes Live in England and Estonia (2007年)
プロジェクト
[編集]コラボユニット・アルバム
[編集]- フリップ & イーノ
- 『ノー・プッシーフッティング』 - (No Pussyfooting)(1973年)
- 『イヴニング・スター』 - Evening Star(1975年)
- 『エッセンシャル・フリップ&イーノ』 - The Essential Fripp and Eno(1994年) ※コンピレーション
- 『イクエイトリアル・スター』 - The Equatorial Stars(2004年)
- 『ビヨンド・イーヴン (1992-2006)』 - Beyond Even (1992–2006)(2007年)
- リーグ・オブ・ジェントルメン
- 『リーグ・オブ・ジェントルメン』 - The League of Gentlemen(1981年) ※ロバート・フリップ名義
- 『ゴッド・セイブ・ザ・キング』 - God Save the King(1985年) ※ロバート・フリップ/リーグ・オブ・ジェントルメン名義
- 『スラング・スラング・ゴジンブルクス オフィシャル・ブートレッグ・ライヴ・イン・1980』 - Thrang Thrang Gozinbulx(1996年)
- アンディ・サマーズ & ロバート・フリップ
- 『心象表現』 - I Advance Masked(1982年)
- 『擬制の映像』 - Bewitched(1984年)
- ロバート・フリップ・アンド・ザ・リーグ・オブ・クラフティ・ギタリスツ
- 『Live!』 - Live!(1986年)
- The Lady or the Tiger(1986年) ※Toyah & Fripp Featuring The League Of Crafty Guitarists名義
- Live II(1991年)
- 『ショウ・オブ・ハンズ』 - Show of Hands(1991年)
- 『インターギャラクティック・ブギー・エクスプレス ライヴ・イン・ヨーロッパ1991』 - Intergalactic Boogie Express - Live In Europe 1991(1995年)
- サンデイ・オール・オーヴァー・ザ・ワールド
- 『ニーリング・アット・ザ・シュライン』 - Kneeling at the Shrine(1991年)
- デヴィッド・シルヴィアン & ロバート・フリップ
- 『ザ・ファースト・デイ』 - The First Day(1993年)
- 『ダメージ』 - Damage: Live(1994年)
- ロバート・フリップ・ストリング・クインテット
- 『ザ・ブリッジ・ビトウィン』 - The Bridge Between(1993年)
- FFWD(ロバート・フリップ、Thomas Fehlmann、Kris Weston、Alex Paterson)
- FFWD(1994年)
- ビル・リーフリン/ロバート・フリップ/トレイ・ガン
- The Repercussions Of Angelic Behavior(1999年)
- フェイマン & フリップ
- A Temple in the Clouds(2000年)
- トラヴィス & フリップ
- 『スレッド』 - Thread(2008年)
- 『ライヴ・アット・コヴェントリー・カテドラル』 - Live at Coventry Cathedral(2010年)
- Discretion(2012年)
- Follow(2012年)
- 『ビトウィーン・ザ・サイレンス 』 - Between The Silence(2018年)
- デヴィッド・クロス & ロバート・フリップ
- 『スターレス・スターライト』 - Starless Starlight (2015年)
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ キング・クリムゾンを一緒に結成することになるグレッグ・レイクも、彼がストライクにギターを学んだ2年後にストライクにギターを学んだ。
- ^ イーノはMicrosoft Windows 95、フリップはMicrosoft Windows Vista。
- ^ 初期のキング・クリムゾンは「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」をカバーしていた。
- ^ フリップもヘンドリックスも左利きである。
- ^ レギュラー・チューニングはE、A、D、G、B、E。
- ^ 雑誌等の記述によると、変則チューニングを用いるようになったのは初心者の頃、たまたまギターを弾いているのを聴いた近所の人に演奏が下手だと言われ、その後変則チューニングを用いて演奏するようになった。
出典
[編集]- ^ Smith (2019), pp. 14, 33.
- ^ 『アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書』2007年ブルース・インターアクションズ P62~65
- ^ https://rodolphepilaert63.files.wordpress.com/2011/07/14283738-eric-tamm-robert-fripp-from-crimson-king-to-crafty-master.pdf Eric TammROBERT FRIPP FROM CRIMSON KING TO CRAFTY MASTER 27ページ
- ^ “imdb.com”. 2024年6月28日閲覧。
- ^ http://www.guitarcraft.com/
引用文献
[編集]- Smith, Sid (2019). In the Court of King Crimson: An Observation over Fifty Years. Panegyric. ISBN 978-1916153004
参考文献
[編集]- エリック・タム『ロバート・フリップ ― キング・クリムゾンからギター・クラフトまで』(JICC出版局、塚田千春訳)